好みがめっちゃ分かれると思うので、千空×茉莉を側から見たモブなんて知らん!な方は見ない方がよろしいかと!
初めて会った時、自分と大差ない体型の彼女が敵対戦力の捕虜だとは思えなかった。
黒髪に黒い目、ニッキーちゃんのように体術の使える女の子でもなければ、ほむらちゃんのように身軽に動けるわけでもない。どちらかといえば私や南に近い文系少女なのだろうなと思ったし、杠ちゃんからどんな子か聞いてみてもそれを見るまで信じていなかった。
どうせこの世界じゃ司さんに勝てるわけもないし、すぐ負けるのに頑張るなぁだなんて、その時は思っていたのだ。
「──司君は死ぬ気なの?全滅をご希望で?」
「そういう、わけではないんだけど手が回らなくて……」
「なるほど、知識があっても使えなかったわけか。よし、じゃあ私がやるわ」
茉莉と名乗った少女は羽京さんの監視付きで私達の住居を周ると、顔色を変えてそんなことを言った。
その言葉の意味が私達は何をどうするのかと考えているうちに準備を淡々と終え、数日後はモルタル?を使ったちゃんとした壁ができていたのだ。これには羽京さんも驚いていて、木だけで作られていたものより暖かい家で過ごすことができるようになったのである。
その次に彼女が行ったのは食糧庫の確認。
秋までに取れたきのみやきのこ、塩で処理した肉などを溜めていた場所であったが作り手の問題で腐ったものもある。
彼女は顔を顰めた後司さんに許可をとり、それを整理整頓。怪しいものは全て破棄した。これには食料が少なくなると反対の声も上がったが、その日のうちに真っ白で巨大なウサギを二羽狩ってきて狩猟メンバーを黙らせていたのには驚いたものだ。
彼女曰く、ここら辺の土地なら獲れるから。とのこと。
そんな事わかるのと驚いたのは私だけではなかっただろう。
それに彼女は監視を引き連れながら海へ向かい、カメノテ?という貝をみんなにご馳走してくれたのたが、そこに魚醤と呼ばれる調味料が入っていてマジで美味しかった。
塩味オンリーに飽きていたから、本当に美味しかったのだ。
彼女は、茉莉ちゃんはそれからも監視を連れながら敵対勢力である私たちのために文句も言わずに働いてくれた。ひっそりとそれを見つめる司さんやなぜか茉莉ちゃんを睨んでいる氷月さんとの関係も気になるところだが、私たちといる時の方が表情が緩んでいるしどちらかといえば非戦闘員であるのは間違いないだろう。
「茉莉ちゃん、杠ちゃん達には会わなくていいの?」
「ん、別に問題ないからいい。それに会わせてはもらえないだろうし」
「それは私たちがなんとかするよ!」
何せ彼女にはお世話になっているので。
捕虜としてここにやって来た茉莉ちゃんはいつのまにか馴染んでいて、私たちの仕事を率先して手伝ってくれている。動物の皮を使った手芸なんて杠ちゃん以外下手くそで、それをサポートしてくれたしこなした量も多い。
雪解けが始まると当たり前のように狩猟メンバーと狩りに行き、そのまま解体をする。
解体に慣れている茉莉ちゃんのおかげで無駄になるお肉は減ったしちゃんとした塩漬け肉もできたし、本当に何から何まで感謝しきれない。
一度こっそりとお礼を言ってみたが、『千空ならもっとちゃんと出来るんだけど、ごめんね』と逆に謝られたのだ。
今までは司さんの敵としてしかみていなかった"千空"という男の子。
どうやら大樹くんと杠ちゃんの幼馴染である男の子。
今の今まで気にしていなかった少年の存在を気にはじめる者が出てくるのはあたり前で、あの茉莉ちゃんが凄い!と太鼓判を押すというのだから相当すごい人に違いない。
千空とはどんな人なんだろうと呟けば茉莉ちゃんは目をキラキラとさせて、電気を作ったとか綿飴があるだとか、猫じゃらしからラーメンを作ったとか、日本刀を作ったとか。この世界で生み出せるのか怪しいものを作ったのだと教えてくれた。
嬉しそうに笑うその姿に何人の同胞がキュンとなっただろう。
だって茉莉ちゃん、すごい幸せそうに笑うから。
すごい信頼してるんだろうなと思いつつその少年を褒めると、さらに嬉しそうに彼女は頷き笑う。
「千空君はすごいんだ、だって薬だって作っちゃうしここにくる前はカップラーメン作ってたよ。美味しかった」
「何それ、ズルい」
「ふふ、そのうち食べれるよ」
なんて簡単にいうから、きっとこの戦いは科学王国が勝つんだろうななんて思っていた頃。私はニッキーちゃんに呼び出された。
もしかして捕虜である茉莉ちゃんと仲良くしてるのがいけなかったのかとか焦っていると、どうやらそうでもないらしい。
なんとあの千空くんとやら、ケータイまで作り出していたとは驚きだ!
そりゃ乗り換えるしかないと文系メンバーは囁き合い、寝返ったのである。
そしてその日、私達は茉莉ちゃんを逃して決戦の場に向かった。
そりゃあ司さんと敵対するのは怖い。でもやっぱり科学は必要だと思うんだ。
それに何よりあの茉莉ちゃんがすごいという千空君に会ってみたくもある。
とそんなことを考えていれば戦車で武装してやってくるし、本当に凄い人なんだと寝返りメンバーは誰しもが納得した。
後の世にストーンウォーズと名付けられるであろう決戦はあっという間に終わったかと思いきや、その後は氷月さんの裏切りにより司さんが大怪我を負うこととなった。
誰しもがもうどうにもならないと諦めた最中現れた茉莉ちゃんは、千空君ならば司さんを助けるからと諦めなかった。走って二日の距離の村まで薬や必需品を取りに行ってしまうあたり、千空君を心底信頼しているのだろう。しかしながら司さんは助からなかった、と言ってもいい。
復活するか出来るかどうかわからないコールドスリープを頼り、眠りについたのだから皆が悲しんだ。
誰しも口には出さなかったけれど。
その時からだろうか、元司帝国民の中に不穏な空気が漂い始めたのは。
司さんが不在で、上の立場にいた氷月の裏切り。そしてトップの代替わり。
寝返っていた私達は別として、武力チームでは反千空派ができていたのである。
勿論千空君には報告はしたがそうなることを見越していたのであろう、放っておけと告げられただけ。
なんとかゲン君が取り持とうとしたけれど、裏切りだと貶されていた。
どうしたものかと頭を悩ませていた最中、茉莉ちゃんは勇敢にもその輪に入り込んでいったのである。
司さんが死んだのはお前らのせいだと責め立てられた茉莉ちゃんは、ケロッと死んでないと真顔で答えたらしい。
そして本当に復活できるかわからないと嘆くメンバーに出来るよと言い切ったようなのである。
「んなわけねぇだろっ!?あるかも分からねぇ石化装置なんてもんをどうやって探すんだよ!テメェらからすりゃ人ごとだからそんな簡単にいえんだよっ」
「探すって言ったら千空君は探し出すよ、絶対に。それに、人ごとだっていうなら私も冷凍保存されてこようか?そうすれば元司帝国民と科学王国民が同じになるし、君らも満足する?」
「っんなことできもしねぇのに、威勢はいいんだなっ」
「できるよ。だって千空君は人類丸っと救う気でいるんだよ、勿論司君も。だから私はコールドスリープされてもいいよ。千空君がもう一度起こしてくれるから」
「なんでそんなに、信じられんだよっ!アイツを!」
「──二年、たった二年。何にもないこのストーンワールドで千空君が何を生み出して何をしてきたかは君らも知ってるでしょ?凡人には出来ないことを千空君はやってのけた、だからこれからもみんなの協力があれば不可能を可能にできると私は信じてる。別に君たちにまで千空君を信用しろとはいわない。けれども司君が助かるんだって信じよう?辛くても、それで救われるのならばそう思いこむべきなんだよ」
「……そんなの、できるわけっ」
「できるよ!だって君たちはこの世界で生きてこれたじゃない!何もない世界で右も左もわからない世界で、仲間を守るために必死に働いて生きてきたんでしょ!君たちにはやり遂げられる力はあるって私は知ってるよ!だってみて来たもん。司君がいたからって言われればそうかもしれない。でもみんなの為にって思って過ごして来たんでしょ、それは凄いことなんだよ!」
「っ──」
「私や千空君、ゲン君なんかは信用しなくていいし、信じなくていい。でもせめてここに帰ってくると誓った司君を信じて頑張ろう。私も力になるから……」
と両手をギュッと握られてそう言われた武力チームは撃沈しそうな。
だってほら、茉莉ちゃんって千空君を無自覚に凄くべた褒めしてる子だってみんな知ってるから。そんな子に凄い人だとやればできると信じられちゃあ、無碍に出来ないわけで。
え、なんで話している内容を知ってるかって?
そりゃ耳の良い羽京さんには筒抜けだったし、気になって隠れて聞いてただけだよ!4、5人で!
まぁ、ゲン君は何があったって悩んでいたらしいけど、茉莉ちゃんだからこそ出来た事だと私は思う。彼女から信用を得るなんてそうそう無いと思えるんだもの。
茉莉ちゃんも千空君のためにそこまでするなんて、本当彼が大切なんだろうなって私は一人で何度も頷いた。
「ってことがあったんだけどね杠ちゃん。実際のところ千空君と茉莉ちゃんはどこまでいってたのかな?おねぇさんにも教えてくれる?」
「ワォ!茉莉ちゃんそんなことまでしてたんだね、びっくりだよ!──でももっとびっくりなのは千空君と茉莉ちゃんは仲が悪かったことなんだけどね!」
「──へ?あ、あんなに千空君のために茉莉ちゃん頑張ってるのに?」
「そうだよ!頑張ってるけど、話してるとこなんて見たことなかったもん!びっくりだよね!!」
「うそ、だろぉおお!?」
「本当だよ?」
司帝国と科学王国は合併したのだから、そろそろ仲の良い二人を見れるかななんて淡い期待を寄せていてもそれは見えなくて。痺れを切らして杠ちゃんにそう聞いてみれば、帰って来た言葉に絶望して。
同じく茉莉ちゃんを好きな同胞に相談してみたところ『あれに恋愛感情はなくない?』と私の思考は全否定。
いやあるって、絶対茉莉ちゃん憧れとか以上に千空君のこと好きだって!と叫んでも困った顔をされた。
なんでもあの行動はどちらかといえば、狩猟チームが司さんに従った感覚に近いだろうって。
違うんだよなぁ、そうじゃないんだよ。ちゃんとみてよ二人を!
と言ったところで同胞は困った顔をしていたし、あの二人の距離も変わらず。
ならばせめて、私の妄想の中では幸せにしようと筆を取ったのである。
何せ私は南の友人で、ライターだった。文字を書くのは得意だし、実のところ同人書きでもあったのだ。
この娯楽少ない世界で自給自足してないわけがない。そりゃナマモノだから当人達にバレるのは非常にまずいけど、オタクなら自給自足するものなのである。
故に細心の注意を払って自足したのだ、私は。
茉莉ちゃんが千空君に怒られている場面を見た時は『あぁ、心配なんですね!』と張り切って書き、千空君が茉莉ちゃんと添い寝してたと羽京さんに聞けばハスハスと文字を綴り、うっかり千空君のためだけに作られたのであろうラーメンの存在を認知してしまえば『好きじゃん!』と興奮して物語を紡いでいく。
何度か羽京さんから情報をもらううちに彼もまた千茉派閥なのではと疑問が生まれたが、それを聞いた際ににっこりと笑われたからやはり同郷だと思うんだ。何せ自衛隊ってオタ多いって誰かが言っていたもの。
そんな妄想を書き留めた冊子はにっこりと羽京さんに手渡し、そして新しい情報と共に返されて。知らないうちにソワソワと読みたいと言ってきた手芸チームの一人に貸出し、そして反千空派の武力チームにもたまに読まれ、いつの間にか仲間がイパーイ!
反千空派彼らが千茉にハマるなんて思わなかったけど、嫌い!と千空君を観察してると茉莉ちゃんとよく絡む姿が見れて悶えていたらしい。
この放っておけない気持ちはなんなんだ!と。
なんでも私の知らないところで無自覚イチャラブがあったらしい。みたかったなコンチクショウ。
まぁ、そんな事はさておき無事に仲間が増えたところで私達科学王国は二分化することとなった。
私も初めは記録係として船員に選ばれていたが怖かったので居残り組を希望し、日本に残ることに決定。その間に茉莉ちゃんと仲良くなろうと意気込んでいたのに、なんと、茉莉ちゃん。船に乗るらしい!
それも千空君に必要とされて!(羽京さん情報)
そうなって仕舞えば船に乗る隠れ千茉同盟に想いを託し、私は彼らの行く末を見守ったのである。
「──で、どうしてこうなったの!?詳しくっ!」
「落ち着け!落ち着けって言ってんだろぉおお!俺だってわかんねぇんだよ!石化からとけたらあぁなってたんだって!?」
「嘘つけ!私に教えないつもりだな?裏切りものー!」
宝島から帰還した茉莉ちゃんと千空君の距離はずっとずっと近くなっていて、大抵茉莉ちゃんの隣に千空君がいる。
ははぁん、ついに自覚したな?
と思ったけれどそうなる出来事を誰も把握してないのなぁぜなぁぜ?
お手て繋いでるのに?ずっと笑い合ってるのに?いつもお隣にいるのに?なぁぜなぁぜ?
なんで誰もそうなる過程知らんの?
何してたのよ!
ちくしょうこうなりゃ自給だ!と執筆は進み、出来上がった薄い本は3冊。あれれぇ、おかしいなぁ?なんて思わないぞ!
やけにハイテンションな茉莉ちゃん可愛いなぁ。千空君と何かあったんだなぁとみんなが思っていれば、そこに落とされた爆弾に皆の心は傷を負った。
そりゃあいつかはそうなるかもって思っていたけれど、別に茉莉ちゃんじゃなくていいじゃん!忘れてたんだから忘れてて欲しかったよ!
確かに幼馴染(ようやく肯定されたらしい)がそうなって仕舞えば離れられないよね、おてて繋いじゃうよねと半泣きになっていればいつのまにか反千空派からただの千茉派になってる武力チーム勢がいて、推しカプは偉大だと思うの。
推しカプは世界を救う。
ま、もどかしいからってわざわざ茉莉ちゃんに千空君の話聞きに行ったらウキウキと千空君を布教する茉莉ちゃんの熱にやられたらしいけど。愛だね!
それはさておき。
あの二人が仲良しになったわけに悲しい理由があったとして、私のやる事は変わらない。
どんなことがあっても妄想の中では幸せにしてやるんだと筆を取ったのである。
あんな事があった人を対象にするなんて不謹慎だと言われそうだが、だからこそ!幸せな未来を描きたかったのだ。
だって絶対好きじゃん!
好きじゃなきゃ幼馴染がいくら心配でも一緒にいないよ!男女だよ!?
男と女の幼馴染だよ?
「絶対好きじゃん!?」
「そう思うよなぁ。……でもな、俺たち以外はそう思ってないって知ってたか?」
「は?何見てんのその人達はっ!?」
「石神村出身者曰く、元から千空の奴茉莉ちゃんに対して過保護なとこあったらしい。茉莉ちゃんも千空絶対主義者だって認識してるみてぇだし。ゲンの奴だって『千空ちゃんと茉莉ちゃんがレンアイ?ナイナイぜぇーたいない!あの合理的主義の二人がでしょ?まぁ、千空ちゃんが茉莉ちゃん気にしてるのは分かるよ?でもそれってここまでくる過程に問題があったせいもあるわけだし、恋愛感情はないんじゃない?』って──。んなわけねぇだろ!?そうだろ?!」
「絶対好きじゃん!」
「そうだろ?!」
「絶対好きだもん!」
「そうなんだよ!」
「好きじゃなきゃヤダァ!」
「それな!」
「私、私!次は船に乗る!そしてあの二人を自覚させてみせる!だって絶対好きだもん、幸せになってほしいもん!幸せにするもん!後世にこんなに尊いカプがいたんだって残すんだもん!」
「よしやれ、お前ならできるっ!俺も応援してるぞ」
かくして、隠れ千茉同盟による『二人をくっつけよう作戦』は決行されたのである。
「クソ、俺、いやらしい雰囲気にしてきます!」
「まて、まだ早い!この前それで失敗した奴がいるっ!────いや、いまだ!いけ!」
「あ"ぁぁあああ"!おのれ銀狼ぉおお!邪魔しやがってぇぇえええ!間に入るなぁぁああなあ!」
そうして今日も、私たちはペルセウスの上で思考を巡らせるのだ?
「プランCー!プランCー!!」