人理修復の特等席 作:もう疲れちゃってェ・・・
ポカポカの二次創作増えろ増えろ。
「終わりはない。失われるものがあっても、この
時間はいつまでも続いていくのさ。」
一人の男が
俺のこだわりとぶつかる、殺しを忌避するスタンス。されど勇敢な、汎人類史最後の
甘さと強さ━━━どちらかを立てれば、もう片方がおろそかになるソレ。しかし、奴はそれを両立した。そして、
ならば、認めるのが神たる者。
奴はまごうことなく戦う者━━━戦士だ。
「あいつは行ったぜ、デイビッド」
先にミクトランパの奥に進んだ相棒に話しかける。
デイビット・ゼム・ヴォイド。1日24時間につき5分間分の記録しか覚えておけないという疾患を抱えた善なる者。
ORTを使って地球を破壊するという計画を目前まで成し遂げた戦士。
「そうか……行ったか」
帰ってくるのは、抑揚の無い答え。しかし、1年で随分とわかるようになった。こいつ…なにか未練があるな。
「正しく言えば、お前が逝った事になったんだがな…それで?どうしたんだ?」
「…何がだ?」
「これから
「……少し気になっただけだ。なんでも無い」
「それは何かあるって事だ。これからはお前もゆっくりできる。1日5分の制限もねぇ。気になったことを、一つずつ解決していく。元のお前にとっては無駄な時間。そんな魂の休息がお前には必要だな」
「そうか……時間が有り余るな」
「普通の人間は24時間でも足りねぇって嘆いているのによ…
まぁいい。ここはミクトランパ。戦士の魂の休息所。お前は俺が認めた戦士だ。この俺自らお前の悩みを潰してやろう」
「なら……もう少し彼について知りたい」
「なに?…アイツらの記録は見たんだろう?」
「あぁ、もちろんだ。だが意識を割いたのは僅かな時間、二日くらいだ。必要な情報は頭に入れたが、それだけで理解できるほど、彼の旅は単純では無かった」
「なるほどな。増えた時間を敵だった者への理解に当てる。お手本の様な戦士だ。自分が誰と戦い、何と戦ったのか。戦いの最中は優先されないそれを、余裕が出来たらやる。何も間違ってない。
俺もあいつの辿った道には興味がある。お前からの情報じゃあ、断片的過ぎるからな」
殺しを忌避するスタンス。それでも、一度は人理を修復した戦士だ。しかし、もとはただの一般人だという。ただの凡夫が戦士に、それも俺に認めさせるほどの戦士になるには、どのような過程があったのか。
もちろん道のりは知っている。だが、その時の奴の感情や覚悟は記録されていない。
あのスタンスで、異聞帯を消滅させてきた奴の内とは…確かに興味がある。
「ふむ……あいつの道のりを再上映するか?……いや、それじゃあ味気無い。結果のわかっている映画なんざ満足に楽しめない」
「お前……映画化とか嫌いなのか?」
「いや、ものによるだろう?世界滅亡の危機!しかし、既に救われていることが確定している。なのでご安心ください。ハッ……ハラハラが足りねぇな。臨場感も没入感も無い」
「事象の前後を入れ替える神が言う台詞では無いな」
「未来は覆るためにある。今回もそうだったろう?よし……追体験といこうか」
「なにをする気だ……人理修復の上映会でも開くつもりか?」
「焦んなよイビッド。全能神が自らの神域でそんなつまらねぇことするかよ……LIVE配信だ」
「LIVE……?」
「あぁ、俺の分霊を、別世界、それも人理修復が始まった頃のカルデアに送り込む。その端末の体験をここで見ようじゃあないか」
いつか俺を召喚するのなら、事象を入れ替えて俺が割り込める。俺の権能の得意とするところだ。
「……可哀想に」
「おい……それはどういうことだ」
「お前が行くということは、不運と行動を共にするようなものだろう?」
「……否定はしないが、言葉にするなよ。それを乗り越えてこその戦士だ」
「仮にも冠位を担う英霊が、人理の存亡で遊ぶのか?」
「俺は抑止に頼み込まれた側だぜ。人理は
どうせ、戻った先にはまだ翁がいるしな。
「さて、準備は整った。平行世界とはいえ、魂は同じ藤丸立香だ。そうそう性質が変わるもんじゃない。
奴の戦士への過程、特等席にて観させてもらおう」
そこは地獄だった。日本の地方都市、そう呼ぶにはあまりにも場違いな、過激な情報に溢れている。
私は藤丸立香。わけのわからない施設に、半ば無理やり送られただけの一般人。その施設で事故が起きて、後輩を助けていたら過去に飛んだ。そんな状況だ。
飛んだ先ですぐ、動く骸骨に襲われた。そしたら変身して強くなったような後輩に助けられた。組織のトップとも合流し、どうやら何か援軍を呼ぶらしい。
援軍……
……もう、虚勢を張るのも限界なんだ。
「召喚サークル設置完了!いつでもどうぞ、先輩」
言われた通りの言葉を紡ぎ、強く念じる。
頼りある英霊。寄り添ってくれる英霊。どうか答えて欲しい。
「サーヴァント、アサシン。……ってこりゃあ、どうなってやがる?」
権能を使い、藤丸立香が初めてサーヴァントを召喚したタイミングに、俺自身を割り込ませた。そして呼ばれた俺は目の前に広がった光景に驚いた。
そこにいたのは戦士ではなかった。いや、藤丸立香コイツが男から女になっていることもそうだが。少なくともこの俺が認めた戦士の姿はどこにもいなかった。やはり初めは戦士ではなかったか。
「さて、どうしたものかね……」
『はじめましてアサシンのサーヴァント。御身がどこの━━━』
「ほぉ…魔術による遠隔通信か……っておいおいおい」
『だれも僕の話を最後まで聞いてくれない……』
このなよっとしている通信越しの男。間違いない、魔術王だ。宮仕えのはずがなんだってこんなところに。記録には無かった。いや、Dr.ロマンという男の素性は知っていた。顔も閲覧した。
しかし、その時はただ人理修復の際に死んだスタッフとしか理解できなかった。
今は違う。俺はこいつを冠位候補であることを知っている。いまのこいつが冠位として現界しているのか、それともただの英霊として駆り出されたのか。少なくとも胡散臭いことには変わりない。
基本的にグランドのキャスター候補なんてのは、そろいもそろって人でなしだからな。腹の探り合いとかしたくもねぇ。
「貴方は我々カルデアに召喚されたサーヴァントの一人です。カルデアとは……」
おっと、今度は未来の大統領か。確かここでレフとかいう獣によって、カルデアスに投げ込まれるんだったか。そしてそれは邪魔してはいけない。なんなら、そいつがやらなくても俺がしなければならない。
じゃないと、こっちのデイビットの計画に支障が出るからな。あくまで平等に肩入れしねぇと。
「━━━ですから……って聞いてるの貴方?」
「あぁ、説明はいらん。大方理解している」
「……え?どうしてただの英霊が私たちの事情を知っているの?」
「まっ、そういうことができると英霊だってことだな」
「貴方、どこの英霊?誰なの?」
未来の大統領に問われるが、俺が見つめるのは藤丸立香の方だ。見れば見るほど不思議だ。この怯えた表情、不安を必死なって押し殺す目━━━俺にすがろうとする瞳……これが戦士になるのだ。
これだから試練は面白い。育成ゲームの魅力ってやつか。
「悪いが、今のお前に真名を明かすつもりはない。今のお前は俺が認める戦士じゃないからな」
「……え?」
瞳は一転、絶望の色に染まる。
「安心しろ。別に見放して還るわけじゃない。ただ、見極めさせてもらう。猶予はこの地獄を乗り越えるまで。それまでにお前が俺の庇護を受けるに足る覚悟……戦士としての覚悟を見せろ。それが俺と取引する最低限の条件だ」
「……覚悟?」
「そうだ。この地獄をのりこえるための原動力……意志の力ってやつだ。なに、初回サービスで頭金さえ払ってもらえればいい。あとは分割で見せてもらうとする」
「もし……私の覚悟が認められなかったら?」
「そん時はそん時だが……俺の予感じゃ、お前の試練はまだ始まったばかりだ。ここすら乗り越える覚悟がなければ……これ以上はサービスしすぎだな」
「足掻けよ少女……それまではほどほどにやらせてもらう」
援軍として召喚したアサシンのサーヴァントは、サーヴァントととなったマシュよりも効率的に、襲い掛かってくる骸骨の群れを蹴散らしている。しかし、本人が言った通りほどほどなのだろう。心ここにあらず、片手間で薙ぎ払っている感じだ。使っている銃も、当てる気がないのか、明後日の方向に飛んでいるものが目立つ。
そんな光景を後ろから眺めながら思う、私にどうしろというのだ。
私の覚悟……そんなことを急に言われても……。
そもそも私は予定されていたマスターでもなければ、魔術師でもない。本来ならこの場にいない人間なのだ。そんな私に覚悟を求めるなんて、そんなの━━━━
「理不尽だと思うか?」
目の前で起こっていた迎撃戦はすでに終わり、音もなく後ろにアサシンが立っていた。
「えっ?」
「どうして自分がこんな目にあうのかわからないという顔をしている」
「そんなの……そんなの当り前じゃないですか!」
たまらず叫んだ。マシュが所長と話していてそばにいなかったから、心が漏れたのかもしれないし、この人にただ叫びたかったのかもしれない。
「あぁ、当たり前だ。こんな試練はお前に課されるべきじゃない。適任はもっと別にいるだろうさ」
「なら!!」
「じゃあ、お前はここで死ぬか?」
━━━━え?
「お前だけじゃない。あっちの二人も同様ここで死ぬ。これも当たり前だ。戦場で戦う覚悟の無い奴は死ぬ。当然だろう?」
死……ぬ……?ここで?……何もわからない状況で?
「状況をよく見ろ。そして認識しろ。ただ勇気を出せと言っているわけじゃない。それは蛮勇であって覚悟じゃない。
この場におけるお前の役割は何だ?」
私の役割、それはマスターであること。それはつまり……
「生きること」
「それでいい……っと、ヒントを与えすぎたな。お前のような奴がいるとついつい話しちまう。」