一般転生オリ主が幼馴染兼同僚に看取られた話 作: ҉ 光 ҉
指摘を受け、エクシア→エルに変更しました。読み込み浅くてすいません
同じく指摘を受け転生タグを追加しました
死とは絶対的なものだ。少なくとも、俺はそう思っていた
前世で1度死に、それを覆して今回の人生を生きた俺が言うのもなんだが、死と言うものはあまりに恐ろしく、絶対的で全てのものに平等に訪れる終わりであると考えていた
それが前世と今世の2回も死んだ俺が考えた生死感だ。少なくともこれは圧倒的な説得力はあるだろう。普通なら1回しか死ぬことなんてないしそもそも死んだらそのことを自らの生死感に組み込むことなどできないのだから
まぁつまりどういうことかというと、俺は今人生2回目の死を迎えたことでその生死感に対しての造形をさらに深めたがその後に人生2回目の蘇りを決めてしまい自分自身でその意見に対して自ら疑問を持ったところだった
「子供………じゃないから転生じゃないな」
上半身を起き上がらせたことで俺にかかっていた砂がパラパラと落ちている。それらを手で払っている俺の思考は自分でも驚く程冷静だった
自分の体格やきっちりと発音ができて喋れていることを考えると今回の蘇りの方法は1回目とは違うのだろうと予想がつく
だがここまで考えたところでどうせ人知を超えた何かであると言うこととしかわからないのだから無駄なことだろうと思い、思考を打ち切った
辺りを見渡せば俺が死ぬ直前に行っていた作戦場所である洞窟の中だった。閑散とした場所で、特にこれといって目を引くものは俺の近くに突き刺さっている俺の守護銃で愛銃のスナイパーライフルだ
「墓標のつもりかよ………モスティマ」
口から漏れたのは戦友の名前だった。奔放主義と楽観主義を足したような性格の彼女だが自分がやらなければと思った事は絶対にやるタイプだ。おそらく俺の死体をそのままここに放置しておいておくことが自分で許せなくなって俺の体に砂をかけてスナイパーライフルを突き刺したのだろう
………彼女にやらせてしまった選択はあまりに残酷なものだったと今になってとてつもない程の後悔が俺を襲った。自らがだんだんと死んでいく恐怖、痛み、それに耐えかねてしまって介錯を望んでしまった
俺が死んだ最後の一瞬、モスティマが何をするかわかったときに俺が思ったのは彼女に俺を殺させてしまうという忌避感ではなくて、彼女が行う行為を認めた上で"ごめん"という謝罪の思いだった
「……」
今ここには誰もいないからこそ音は鳴らないし、声も響かない。そんな洞窟の中に痛いほど響き渡る静寂が俺の心を追い詰める
締め付けるような痛みが俺の胸の中から腹まで広がっていくような気がして、そのうち俺の体を突き破って出てくるんじゃないかと思える程だった
俺の3度目の生はカズテルの外れにある洞窟の中で後悔から始まった
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眠れない夜が続いている
あの日から1度夢を見た。他愛もない日々の夢だ。エルの家に行って、アップルパイを食べて、この前ルシェルとショッピングに行ってお揃いのアクセサリーを買ったんだ、なんてエルが自慢して
それにムキになって、この作戦が終わったら次は私と行ってもらうよ。なんてルシェルに言ったりして
それはとても尊い日々、そんな日々を淡々と見せつけられる。ずっと見ていたいと思える程の甘美な夢。そしてその日常の後に、彼が死ぬ
地面に横たわる彼の死体は夢だと言っても現実でそれを見た後だから本物さながらとしている。その死体が起き上がって言うのだ
『お前のせいだ』
それは今では聞きたい声だ。その声で名前を呼んで欲しい。慰めて欲しい。だが夢の中の彼はそんな声で私を責めたてる
そんな中私の心を1番傷つけたのは、彼がそんなことを言うはずがないと言うことだ。つまりはこれは私が私自身に対する自己嫌悪によって生み出されたご都合的なもの。自己欲求のためだけに彼のことをねじ曲げて見せているのだ
その夢を見たあの日から眠りが浅い。昨日もベッドに入ってなかなか寝付けずだが、一昨日もそうだったために体が限界に達していて、半ば気絶するように眠りに落ちた
目が覚めたら、一つの質素なベッドなどがある部屋だ。その部屋は整っているし、洗面台だってあったがそんな中で一際目を引くのが鉄格子だ
その部屋の横の4面は3面が石の壁、もう一つの面が格子でできていて、言ってしまえば牢屋のようであった
ラテラーノに戻った私は黒く染まった光翼と光輪、サルカズの様な角と尻尾が生えていることから拘束の対象となった
一応、執行人の仕事には堕天した同族の排除だったり、作戦内容によっては同族との戦闘だってあるので、執行人に対する堕天の罰は少ない。何人か堕天している執行人だって知っている
ただ私から生えてきた角と尻尾は普通のことではないらしく、作戦終了後帰還した私はすぐに拘束されてそのままだ。一応作戦結果の報告はフィアメッタだけではわからないこともあるので正誤確認をされたりしたが
気が遠くなるくらいの1人の時間、私はただそれを後悔だけで埋め尽くしていた
誰にぶつけるわけでもなく、腹の底から湧いて出てくるような自己嫌悪とあの時ああしていたらという後悔はただ自分に向けられる
誰が悪いのか? なんて考えが頭に浮かんで、すくなくとも私以外は悪くなかった、なんて結論に至る。共感でなにを思って行ったのかという行動の理由を感じてしまえば憎むことは難しい
そんな気が狂いそうな日々をこうやって過ごせているのはフィアメッタのおかげだろう。彼女は日に一回は必ず私に会いに来てくれている。私に対する処遇が今こんな風になりかかっているとかを話してくれる
フィアメッタには本当に頭が上がらない
そんなことを思っていると、鉄格子の向こう側のドアを開けてフィアメッタが中に入ってきた。いつもよりかなり早いことだと思ったかが、私が起きるのが遅かっただけかと思考を訂正する
「あなた、酷い顔をしているわよ。きちんと眠れているの?」
「………いや」
強がる強さも残っていなかった。そんな返答で彼女はおそらく私の精神状態を察したのだろうが言葉を返せるだけマシだと判断したのか顔色を変えることはなかった
「あなたへの処罰が決まったわ」
「……」
私にはどんな罰が下るんだろうか。結果だけを見たら下馬評では簡単だろうと言われていた殲滅作戦にて、メンバー5人うち1人が死亡、1人が重体、さらには謀反を起こした1人には逃げられてしまっている
あの時フィアメッタは現場にいなかったから彼女よりも私に責任を背負わせてほしいと思う
「まずは守護銃の没収、そのかわり錠と鍵の管理を任されることになるわ」
錠と鍵については因縁が深い武器だ、これがあったからこそ彼は謀反を起こしたし、ルシェルは死んだ
管理を任されるということはすくなくとも殺されることだけは回避できたようだ
「そしてあなたをレガトゥスに任命し、龍門に派遣する」
「……それだけかい?」
レガトゥス、という役職名は知っている。たしか最近できた諸外国に対する外交目的のトランスポーターだ
「あなたの処罰に関してはね。あとはわたしがあなたのお目付け役を担って一緒に龍門へ行くわ」
彼女の言う通り、本当にこれだけらしい。彼を死なせてしまって、それでも罰と言う罰は守護銃を奪われるくらいで他は何もない
「さっそく、明日にはもうラテラーノを出るわよ。あなたがする準備はないけれど心の用意だけはしておきなさい」
「……誰かと、会ったりするする時間は?」
「ないわね。だいたい誰と会って何を話すのかしら。私にだって全部話せてないくせに」
彼女が言うことはごもっともだった。やらねばならないことだと思っていた。だが、それを自分ができるのかどうかと聞かれたとき、エルと向き合った私が彼を殺したなんて言えるのかと想像して、それだけで喉が張りついたように何も声が出なくなる今の私に少しだけ失望した
「あなたが誰と会って、何を話すつもりなのか知らないけれど、もっとあなたは自分のことを考えるべきよ」
「……」
「眠れてないのはそれだけ後悔してるからでしょう? 少なくとも1度あなたが自分に折り合いをつけるまではやめたほうがいいわ」
「………でも」
「でもじゃない、少なくともあなたが話そうと思っているあの子の周りには頼れる人がいるわ、まだあなたの方が精神的には参っているはずよ」
間違いない、確かな正論。その言葉に納得を覚える自分がいてそれもただ自分が甘えているだけなんじゃないかと思えてくる。私のことを思って口に出された言葉をフィアメッタに言われるとまた泣きたくなった
「もう一度言うわ。あなたは自分のことをもっと考えなさい。今のあなたほど後悔している人を責め立てるような人はあなたの知り合いにいたかしら? …………それじゃあ」
そう言うと、彼女は私の返答を待たずにドアから外へ出て行った。こんな私を想ってくれる優しさに、胸が痛くなるほどの激情が駆け巡るのを感じた
今夜は、不思議といつもよりもなんだか眠れそうな気がした
個人的な考察ですがモスティマが堕天したらなぜ光輪と光翼が黒くなるだけでなく角が生えたのはモスティマの血筋が関係してるんじゃないのかと思ってます
サンクタの葬儀では出席者同士で共感(光輪を持つもの同士で感情が共有されること)がおきてしまってあまりの悲しみに身動きができなくなる
これが公式設定なアークナイツ君ほんとさぁ
次回はカズテルを歩く主人公君と墓参りをするモスティマです