雨のちウエディング   作:夢枕悪

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北○夢想転生!





『day14』

ぴたり、と照準が向けられている。

だが、切っ先は、ほんの少し、気になるか気にならない程度に揺れている。

何かで読んだ記憶がある。

比較的、新しい記憶だ。

セラフ部隊に、入ってからの記憶だ。

武術の本でも読んだ。

小説にもあった。

北辰一刀流の、鶺鴒の尾だ。

近代剣術の祖と言われた、千葉周作の編み出した必殺の構え。

相手にプレッシャーを与えつつ、攻撃の起こりを悟らせない構え。

知る事と識る事の、違いが分かる。

切っ先に集中すれば、相手が見えず、相手に集中すれば、切っ先が見えなくなる。

背中を、嫌な虫が這い回る。

百足のような多足類の虫である。

数匹、数十匹と増えていく。

じくじく

じくじく、と。

つい、意識が、そちらへ向いてしまう。

意識を、ドールへと向ける。

まだ、動いていない。

ふっと、息を抜く。

その瞬間、

 

ひゅ

 

と、凶風が襲う。

 

「いっちー!」

 

月歌が叫ぶ。

 

「くうっ!」

 

咄嗟にセラフで、逸らす。

しかし、二撃、三撃と凶風は、止まない。

必死に、逸らす。

突き、殴り、払う。

 

「ユッ…ー、…護!」

「…メだ!近……る!」

 

周りの声が、遠い。

上手く聞き取れない。

息が、苦しい。

頭に、酸素が届かない。

凶風の暴風。

それでも…

前に…

私は…

お姉ちゃんだから!

ドールの一撃を、弾き返す。

ドールは、警戒したのか、距離を取る。

一千子は、肩で息をしている。

自分でも、どうやって弾いたか分からない。

なんとなく、見えた?

なんとなく、感じた?

いや、違う。

誰かが、教えてくれたのだ。

ああ、そうか。

長女だからと、気負っていた。

長女だからと、背負っていた。

自分が、支えなければ、と。

自分が、守らなければ、と。

しかし、違った。

 

(オープン・ザ・ロック。あたしに、開けられない鍵はない。攻撃パターンは、解けたよ)

 

きっと…

 

距離が取れたものの、呼吸が整っていない。

ドールは、既に構えている。

 

(あんまり焦るなぁ~、ゴロゴロしよぉぜ~)

 

私も…

 

余計な力が抜け、リラックスする。

呼吸を、一つ、二つ。

三回目の瞬間に、また凶風が襲ってくる。

 

(ほら、姉さん。この角度の方が、美しいですよ)

 

みんなに…

 

動きが、最適化される。

ほんの少しの動きで、凶風が逸れていく。

驚きが、隠せない。

ほんの少しの角度で、デフレクタの削られ方が違う。

ほんの少しの違いで、体力の削られ方が違う。

少しずつ。

ほんの少しずつ。

呼吸が、整っていく。

 

(さあ、一千子姉。息を、止めてみて。ほら、気持ちいいー!)

 

妹達に…

 

余分な酸素は、いらない。

頭ではなく、全身に行き渡らせる。

頭脳を、身体に委ねる。

足が、前に進む。

それに合わせて、ドールが退がる。

一歩進めば、一歩退がる。

二歩進めば、二歩退がる。

攻めているはずのドールが、押されていく。

攻めているはずのドールが、退いていく。

ぎん、と鳴り、ドールのセラフを跳ね退ける。

跳ね退けられたドールは、よろめき、隙を見せる。

 

(今だよ、一千子姉さん!ダメージを…)

 

支えられていたんだ!

 

「お届けえ!」

 

 

 

 

 

 

 

月歌達は、目を奪われていた。

ほんの少し前まで、防戦一方であった筈だった。

密着児過ぎていたドールに、手を拱いていた。

しかし、である。

和泉に、どうにか出来ないか、と目を向けた瞬間、

 

ぎん

 

と、金属音と共に、ドールが弾かれていた。

ほんの数瞬、距離が出来、援護に入ろうとした。

しかし、ドールは、一千子を攻める。

攻める。

攻める。

それを一千子は、ゆるりと捌いていく。

その姿に、月歌は、目を奪われた。

くるくると回る一千子。

浮き上がるスカートからは美しいステップを踏む足が見え、ベールはふわりと舞い、新郎以外を拒否するようセラフはドールを捌いている。

いつの間にか消えた雨雲から月が照らし、木々に残った雨粒が、ステンドグラスの様に、一千子を照らす。

優しく、美しく、気高く、気品が漂い、そして、貞淑を誓った花嫁の様に。

 

「お届けえ!」

 

一千子の絶叫と共に、ドールが弾き飛ばされる。

 

「皆さん、今です!」

「よっしゃ!任せとき!」

 

次の機会を逃すまいと、構えていた逢川が飛び出す。

サイキックを乗せた一閃が、直撃する。

ドールの動きが、鈍る。

 

「良くやった、大島長女。さあ、どのような数値を弾き出すかな、愉しみで仕方ない!」

「ヴァゥゥゥゥ!」

「見直したぜ、大島!さて、お前は、今から塵となって消える…これでな!」

 

逢川に続き、いちご達が畳み掛ける。

 

「つかさっち!」

「ええ!こんな攻撃はどう?はい、ばーん!」

「ひぃーひゃっひゃっひゃ!切り刻ーむ、切り刻ーむ、切り刻ーむ!カレンちゃんでしたー!」

 

きーん、と高い音と共に、ドールの外殻が割れる。

 

「ユッキー!」

「分かってるっての!派手なのいくから、後は頼んだぜ!どうだ!」

 

ドールが、更に弱まる。

 

(いつも支えてくれて、ありがとう…)

「二以奈、三野里、四ツ葉、五十鈴、六宇亜…見てて!」

 

一千子のセラフが、燃え上がる。

やがて、鳥を成し、月歌へ向けて、飛翔する。

月歌の身体が、熱を帯び、力が漲るのを感じる。

 

「サンキュ、いっちー。さて、黒焦げにしてやんぜ…」

 

月歌のセラフに、炎が迸る。

一閃。

ドールを、炎が包んでいく。

力を解放するよう、更に切る。

切る。

斬る。

切る。

斬る。

切る。

斬る。

切る。

 

「結局、切り刻むんだけどな」

 

ドールが悶え、倒れ込み、弾け飛ぶ。

そこに、小さな尖塔が出来上がる。

 

「ええとこ取りか!」

「何とかなったわね…」

「本当に、死ぬかと思ったよ」

「助かったぜ、茅森」

「ヴァウウ」

「月歌さん!」

 

一千子が、月歌に駆け寄る。

 

「…ざっと、こんなもんだぜ!」

 

月歌は、にっと歯を見せる。






先月末に機種変して、未だに操作に悪戦苦闘している夢枕悪です。
前のスマホ、落として液晶ぶっ壊れますた…。
液晶が、虹色になりました(泣)
焦って機種変したから、ラインの引き継ぎ失敗しました(泣)

皆様、ABコラボはどうだったでしょうか?
自分は、11月くらいから石貯めて、前回のカナディ含め揃えることが出来ました。
その分、犠牲が大きかったです…リクルートおタマさんとか、地上げ屋めぐみんとか…。
社長と一緒に、キャッキャッとガチャ回してました。

何だかんだで、5章前半の配信ももうすぐです。
ストーリーもボスも、楽しみです。
皆様と一緒に、体調に気を付けて、楽しみに待ちたいと思います。
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