なのでユッキーは純粋培養乙女新潟県産だと思います。
店内に入ると、湿り気のない心地好い温度が、月歌達を包み込んでくる。
風徐室はないので、 若干の湿気はあるものの、奥に少し進めば、不快感からは完全に解放される。
壁には、ここで撮られたであろう写真が、ここそこに飾られている。
ゆっくり鑑賞出来るよう、テーブルと椅子も設置されており、カウンターからは、コーヒーの香ばしい薫りが漂ってくる。
「いい薫りだな」
先程とはうって変わって、和泉がリラックスした表情で薫りを楽しむ。
「お待ちしておりました♪」
神出鬼没、接客から仕入れまで、揺り篭から墓場まで、スーパー店員、佐月マリが奥から顔を出す。
「よお、マリー。準備出来てる?」
「はい♪皆さん、奥へどうぞ」
佐月が先導し、奥の衣装部屋へと案内する。
「おお!凄いです!!」
今まで隊服や艦長服しか着てこなかった國見が、目をキラキラとさせる。
そこには、目玉となるウエディングドレスとタキシードはもちろんのこと、ゴスロリ、和服、チャイナドレス、カジュアル系、ゆるふわ系、パジャマに水着と種類もサイズも豊富に揃えてある。
「流石の私も、こんなにあるなんて知らなかったわ」
「オメーは、Wikiの知識しかねぇだろうが」
「うう…ドレスもタキシードも着てみたいですぅ」
「おい、タマぁ!」
「は、はいぃぃ!」
「…悩むんやったら、どっちも着たらええねん」
「だから、何でお前は、毎回そんな言い方なんだよ」
「はい、ユッキー、これ」
「何でだよ、何でドレスとタキシード持ってんのに、ドレスをあたしに渡そうとしてんだよ!」
「だって、あたしよりユッキーの方がドレス似合いそうじゃん」
「何で、あたしなんだよ!東城とか朝倉だっているじゃねぇか!」
「ひぃひゃーひゃひゃひゃひゃ!残念、カレンちゃんでしたー!」
「ひぃ!」
「唐突に出てくんなー!収拾つかねぇだろうが!…んで、東城もいい加減、慣れろよな」
「何を言う。純白のウエディングドレスを赤く染める花嫁など、この美少女サイコキラーであるワシ以外におらんだろう」
「何、具体的に怖いこと言ってんだよ!」
「はい、ユッキー、これ」
「オメーも、何事も無かったかのように渡してくんなー!」
「だってさあ、やっぱ最初は、ユッキーと撮りたいじゃん?」
「はあ!?だ、だからって、ウエディングドレスとタキシードとか」
「いや?」
「…い、いやじゃねぇけど…」
「「「「…」」」」
「だから、そんな目で見てくんじゃねぇー!」
「さ、ユッキー、着替えようぜ」
「いや、ちょ、月歌!引っ張んなって!」
「お着替えは、こちらへどーぞ♪」
「さて、うちらも選ぼか」
「私は、このタキシードにします!」
「ほんなら、うちはこれにするか。スカート短くて動きやすそうや」
「ワシはこれにするぞ。いい具合に血に塗れておる!」
「それって、ハロウィンの衣装じゃ…」
「なんじゃ…ワシに文句でもあるのか?」
「ひぃ!あ、ありません!あるわけないです!」
「そぉか…ならば、『ウエディングドレス対決』じゃ!どちらが、よりウエディングドレスが似合うか勝負じゃ!ひぃーひゃっひゃっ!これなら連続殺人鬼美少女のワシの勝利、間違いなしじゃーっ!」
「え?それって判定基準は?いや、ちょっと、引っ張らないで、いやー!殺されるぅー!!」
「めぐみさん、私達も行きましょう!」
「せやな。サイキッカーで、救済主なうちが、1番似合うってとこ、見せつけたる!」
「ごゆっくりお楽しみやがれ♪」
こうして、『第1回セラフ部隊チキチキ31Aコスプレ大会ぃ!』が、幕を開けたのであった。
ー17:30
訓練を終えた隊員達が、続々とカフェテリアに集まってくる。
身体を動かした後の美味しい食事とは、長雨の陰鬱さを吹き飛ばしてくれる。
この時間、この場所だけは、いつもの活気である。
31Aの面々も、もちろんテンションも高く…
「疲れたぁー」
では、無かった。
「どうしたんだよ、ユッキー。それに、つかさっちも。そんな手塚司令と訓練した直後に、デススラッグとロータリーモールとレッドクリムゾンとフィーラーとフラットハンドと戦闘したような顔して」
「どんな地獄だよ、それ」
「和泉さん、わたしは、そんな感じだわ」
「あー、東城もカレンちゃんに、取っ捕まってたからな」
「あら、和泉さんは、月歌さんにお姫様抱っこして貰って、凄く嬉しそうだったじゃない」
「う、嬉しそうじゃねぇし」
「ユッキー、いやだった?」
「う…い、いやじゃねぇけど」
「「「「…」」」」
「だから、そんな目で見てんじゃねぇー!…疲れてんだから、大声出さすなよ」
「ごめんなさい、つかささん。カレンちゃん、すっごく楽しそうだったから、止められなかったの」
「ううん、大丈夫よ。そう、カレンちゃんが楽しそうなら良かったわ」
「うんうん、つかさっち、連勝記録も更新したしね」
「うん、だから、カレンちゃん、『次は絶対に勝ぁつ!』って言ってる」
「ひいぃぃっ!こ、今度こそ殺される!」
「なあ、そんな事より、早よメシ取り行こうや。腹ペコペコや」
「背中とお腹が、くっつきそうです!」
「なあ、月歌。悪いけど、あたしの分も取ってきてくれないか?」
「いいよ、何がいい?」
「冷製パスタとか、あっさりしたのを頼む」
「月歌さん、わたしもお願い」
「いいよ。ユッキーと同じのでいい?」
「ええ、お願い」
「オッケー。じゃ、行こっか」
オーダーした夕食を手に、隊員達は、思い思いにテーブルに着いていく。
厨房付近でしか漂っていなかった料理の匂いが、鼻腔をくすぐる。
和泉と東城は、少し後悔していた。
テンションと疲れも、テーブルに座っていれば、徐々に薄れる。
薄れていけば、冷静になってくる。
冷静になれば、空腹を自覚する。
空腹を自覚し、あっさりした物ではなく、もっとボリュームのある物にすれば、と肉料理を手にした隊員の残り香を嗅ぎながら、2人は後悔した。
「お待たせー。はい、ユッキー。はい、つかさっち」
「すまねえな」
疲れと空腹の中、湯気と共に小麦とスープの匂いが立ち昇る。
ああ、いい匂いだ…
…湯気?
「月歌…」
「月歌さん…」
「ん?」
「「これは?」」
「刀削麺」
「「刀削麺んー!」」
「なんだよ、刀削麺って!」
「え?知らない?あの、片手に生地、片手に包丁を持って湯の沸いた鍋の前に立ち、生地を細長く削ぎ落としてゆでる奴だよ」
「知ってるよ!何ん回も聞いたよ!久しぶりに聞いて、懐かしさすら感じたわ!」
「良かったじゃん」
「良くねぇよ!リクエスト聞いといて、全然違う料理じゃねぇか!何で、刀削麺なんだよ!!」
「あたしが食べたかったから?」
「疑問系じゃねぇか!んで、何でお前は、別の注文してんだよ!テメェが食いたきゃ、テメェで注文しろー!」
「てへぺりんこ」
「てへぺりんこ禁止しー!!…ったく、もういいよ。それ食うわ」
「冷製パスタじゃなくていいの?」
「…オメー、知っててやってるだろ?」
「てへぺりんこ」
「疲れるから、やめろ」
「茅森さん」
「お、マリー。マリーも今から?」
「はい♪あと、写真も現像出来ましたので、持ってきました」
佐月が、封筒を渡す。
「おお!早速、見てみようぜ!!」
封筒から写真を取り出すと、1枚目の写真が見える。
ウエディングドレスを着て、お姫様抱っこをされ、顔を真っ赤にした和泉。
その腕は、しっかりとタキシード姿の月歌の首に抱きついている。
「見んなぁーー!」
「おお!めちゃくちゃイイ感じじゃん」
和泉の手に渡る前に、素早く月歌が手に取る。
「こっち渡せぇぇーーーーー!」
「お、うちらも、ええ感じやないか」
「めぐみさんと私…映える!」
「おい、タマぁ!」
「は、はいぃぃ!」
「うちのポニーテール姿も、なかなかのもんやろ」
「はい!めちゃくちゃカッコ可愛いです!」
「ひぃーひゃっひゃっ!ワシの赤ずきんの方が、もっと可愛いぞ!なあ東城?」
「は、はい!わたしも、そう思います!」
「オメー、いい加減、その写真渡せ!」
「なあ、みんな。せっかくだし、この写真、あたしらの部屋に飾らない?」
「やぁめぇろおーーーーーーーーー!」
和泉の受難は、しばらく続いた。
後日、写真を見ながら、にやにやしている和泉が月歌に目撃されるが、それはまた別のお話。
皆様、いかがお過ごしでしょうか。
妄想培養アラフォー社畜県産の夢枕悪です。
今回も妄想をふんだんに使った一品となっております。
作者の中では、花嫁ガチャが終わるまでには完結させたいと思っておりますが、何分、遅筆、リアル多忙、暑さと湿気でやる気低下等々と障害が出てきております。
多分、1番の原因は、花嫁ガチャ80連して、ピックアップスタイルどころか、SSRにも引っ掛からなかったことだと思ってます。
こんなやる気のない作者ですが、もう少しお付き合い頂けたら幸いです。