雨のちウエディング   作:夢枕悪

4 / 15
間に合わんかった…orz





『day4』

しっとりと雨が、降っている。

鬱陶しい雨も、今は心地よい雨音を奏でている。

薄い雲の向こうから、月の光がぼんやりと見える。

優しい雨、優しい月明かりに照らされ、木々の滴がほんのりと輝く。

 

(今日は楽しかったなぁ)

 

基地内の森の中、隠れ家的な場所に月歌達のスタジオはある。

食事を終えた月歌は、なんとなくスタジオに行きたくなり、1人で此処に来た。

照明は点けず、カーテンを開け、優しい雨と優しい月を見ている。

和泉達と写真を撮り、現像された写真を見ながら、皆でワイワイと食事をする年相応の休日。

何事も無ければ、それが日常だったのだろう。

放課後に集まり、教室で、帰り道で、帰り道のファストフード店で、授業が、先生が、あの店が、あの服が、と他愛のない会話をしていたのかもしれない。

だが、そもそもキャンサーの襲来が無ければ、出会うことも無かったかもしれない。

和泉はハッカーとして、東城は諜報員として、國見は艦長として活躍し、逢川は超能力集団の中で、朝倉はゲームの得意な普通の女子高生として生活していただろう。

 

(それでもユッキーは、ライブに来てるかな?)

 

観客席で、憧れの目を自分に向ける和泉を想像し、くすりと笑う。

そう考えると、逢川は自分をライバル視していたし、会いにくるかもしれない。艦隊イベントなんかあれば、國見に会えたかもしれない。東城も諜報員だとしても、日常生活に溶け込む為に、ライブに来てくれるかもしれない。朝倉も同級生に誘われて、ライブに来ていたかもしれない。

出会う機会は、いくらでもあるんだな、とまた笑う。

 

「よっ、と」

 

月歌は、ギターを手に取り、窓辺に座る。

チューニングをしながら、ふと考える。

このスタジオを使っていた先輩達のこと。

自分が見つけた時には、流石に手入れはされていなかったが、大切にされていた事は分かる。

経年劣化はあったものの、弦を張り替え、錆びを取り、チューニングすれば、すぐに使えた。

先輩達は、どんな人達だったのだろう。

どんな思いで、どんな曲を作っていたのだろう。

もしかしたら、自分の曲も、弾いていてくれていたのだろうか。

それでも、ここを使っていた先輩達は、もういない。

自分達の先輩は、白川達しかいない。

無念だっただろう。

死にたくなかっただろう。

悲しかっただろう。

哀しかっただろう。

悔しかっただろう。

救いたかっただろう。

救われたかっただろう。

痛かっただろう。

泣きたかっただろう。

笑いたかっただろう。

歌いたかっただろう。

もっと、

もっと、

もっと、

生きたかっただろう。

ギターのチューニングが、終わった。

音を、確認する。

問題は、ない。

そのまま、指が動く。

 

ぽーん。

きゅ。

ぽーん。

きゅ。

ぽぽぽーん。

 

指の動きに任せ、音を紡ぐ。

今はいない、先輩達へ向けて。

今もいる、隊員達へ向けて。

東城が、言っていた。

音楽は、神への祈り。

音楽は、戦士の鼓舞。

ならば、神へ祈ろう。

鎮魂を。

ならば、部隊へ贈ろう。

鼓舞を。

天へ。

基地へ。

ドームへ。

雨の中に。

ぼんやりとした月の光に。

ゆっくり。

ゆっくりと、混ざりゆく音。

悲しみも。

怒りも。

笑いも。

優しさも。

先輩達も、ドームの人々も、隊員も、部隊も、自分も。

何にも、響かなくていい。

誰にも、届かなくていい。

何かに、響いて欲しい。

誰かに、届いて欲しい。

 

ぽーん。

きゅ。

ぽぽぽん。

きゅ。

ぽぽーん。

 

キャンサーを、倒すとか。

人類を、救うとか。

ただの、どこにでもいるアーティストだった自分に、出来るかどうかなんて、分からない。

でも、

ユッキーや、

めぐみんや、

つかさっちや、

かれりんとカレンちゃんや、

おタマさんや、

他の部隊も、司令官も、ななみんも、あさみんも、皆んな守るから。

だから、

先輩達は、ゆっくり休んでて。

 

ぽぽーん。

 

 

 

 

 

 

 

 

きゅ。






相変わらずの社畜生活を堪能している夢枕悪です。
花嫁ガチャ、終わっちゃいましたね。
皆様は、マリーかいっちーお迎え出来たでしょうか?
え?両方お迎えした?
…90回してお迎え出来なかった自分は、負け組ですね…orz
えーっと…
これから、更に日射しが厳しくなってくるでしょう。
自分の近所では、救急車のサイレンを聞かない日はありません。
どうか、熱中症には、気をつけてお過ごしください。
一応、まだ続きますので、もう少し、お付き合い頂ければ、幸いです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。