雨のちウエディング   作:夢枕悪

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とりあえず、ユッキーの後ろに付いて行こうと思います。





『day5』

しっとりと雨が、降っている。

鬱蒼とした森の中、少女は、野草を採っている。

今は、雨足が和らいでいるとはいえ、泥がぬかるみ、草を踏むたび、靴が濡れていく。

不快感に顔が歪むであろう状況だが、少女は微笑んでいる。

睡眠にしか興味のない四女が「久しぶりに野草が食べたい」と、珍しくおねだりしてきたのだ。

次女に窘められていたが、四女のあざと過ぎる上目遣いに、何も言えなくなっていた。

少女は、「大丈夫だから」と優しく微笑んだ。

妹達に甘いのも、四女に上手に使われているのも分かってはいるのだが、それでも頼りにされていると思うと、悪い気どころか、嬉しく思ってしまう。

三女や五女が、手伝おうかと聞いてきたが、今回は、何食分も採るわけではないから、と断った。

ならば、せめてと次女が、長靴やレインコートを用意してくれた。

結局、小降りになったので、傘だけで出てきた。

妹達の気遣いが、心地よかった。

 

(温かい物も用意しないと)

 

少女は、くすりと笑う。

最近、六女は、特に目をキラキラとさせながら、基地内を走り回っている。

今日も夕食を食べ終わると、まだ雨が強い中、ランニングに出掛けた。

体調は心配だが、好きな事をしている妹達を見ると、どうしても嬉しくなってしまう。

手が掛かっても、手が掛からなくても、我が儘であっても、素直であっても、活発でも、怠惰でも、元気に、笑って、泣いて、怒って、好きに生きて欲しい。

いつも、そう願っている。

だが、これから、妹達には、新しい家族が出来るかもしれない。

そうなれば、長女として、家族として、出来る事は減っていくだろう。

それまで、彼女達の姉として、大島家の家長として、出来ることを、たくさん、たくさんしてあげよう。

 

(あら?)

 

妹達のことを考えながら、野草を採っていると、一軒家が見えた。

そういえば、と思い出す。

基地内の森の奥に、31Aが使っているスタジオがあると。

夢中だったせいか、だいぶ奥まで入ったみたいだ。

 

…ーん。

…ゅ。

 

微かに、音が聞こえる。

明かりは点いていないが、誰かいるのだろうか。

 

ぽーん。

きゅ。

ぽーん。

きゅ。

 

耳を澄ますと、優しい雨音に混じり、ギターの音が聞こえる。

 

ぽぽーん。

きゅ。

ぽぽぽーん。

 

弾いている者の想いが、

雨音に混じり、

月明かりに混じり、

葉に混じり、

土に混じり、

空気に混じり、

自分に混じり、溶けて、吸い込まれていく。

音が言う。

何にも、響かなくていい、と。

音が言う。

誰にも、届かなくていい、と。

音が言う。

何かに、響いて欲しい、と。

音が言う。

誰かに、届いて欲しい、と。

優しい鎮魂が、

優しい祈りが、

優しい誓いが、

優しい決意が、

優しい強さが、

ゆっくり、ゆっくりと、自分に混じり、浸み込んでいく。

包み込むといった、大袈裟な感情ではない。

何かあれば、手を差し伸べ、

何かあれば、話を聞き、

何かあれば、隣にいる。

一緒に泣き、笑い、怒り、悔しがり、苦しみ、楽しんでくれる。

そんな、ただ寄り添うだけの音色が、一千子に浸み込んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(もう、こんな時間か)

 

時計を見ると、21時半を少し過ぎていたところだ。

ギターに限らず、何かしら楽器を手にすると、時間を忘れてしまう。

悪い癖ではあるが、月歌はあまり気にしていない。

今から戻れば、消灯までには、充分に間に合う。

ギターを窓際に置くと、月歌はスタジオのドアを開ける。

雨は、まだ柔らかい。

傘を差し、一歩踏み出す。

ほんの少しだけ、森の中が輝いて見える。

 

(月のせいかな?)

 

まだ淡いが、久しぶりに月明かりに照らされる森を見る。

よく見ると、離れた所に、人影が見える。

傘を差し、きっちりと制帽を被り、着崩すこともなく制服を着ている。

 

「いっちー?」

「月歌さん」

「どうしたの、こんな所で?」

 

ほんの少しだけ、違和感を感じる。

月歌が声を掛けるまで、呆けた様に、遠くを見ていた。

しかし、こちらを振り向くと、いつもの表情だった。

 

「ええ、みんなでコレを食べようと思って」

 

と、野草でいっぱいになった籠を、月歌に見せる。

 

「へぇ~、これ食べれるヤツなんだ」

「はい。昔よく食べてたんですよ。しかも今日は、珍しく四ツ葉のリクエストで…」

「…いっちー?」

「はい?」

「大丈夫?」

 

何気なく、何の前触れもなく、一千子の頬を滴が伝う。

 

「え?あれ?え?」

 

本人の意思と関係なく、一筋、また一筋と増えていく。

 

「あ、あの、月歌さん、ち、違うん、です、これ」

「うん、分かった」

 

月歌は、一千子の手を取り、スタジオへと引き返す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あ~、トイレ掃除だな、こりゃ)

 

結局、消灯時間には、間に合わなかった。






KETSUフェチの夢枕悪です。
siriではありません。
KETSUです。
KETSUなんです。
大事なことなので、二回言いました。

今年の秋アニメでも月歌役の楠木ともりさんが、多数出演されるみたいで、それを楽しみに、夏を乗り切ろうと思ってます。
…ただ、網羅する時間があるのかが心配です…orz

皆様も、ユッキーのKETSUや迫りくる月歌のOPIやユッキーのKETSUやパイセンのおっぴろげやユッキーのKETSUを録画して、夏を乗り切れるようお祈り致します。
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