しっとりと雨が、降っている。
鬱蒼とした森の中、少女は、野草を採っている。
今は、雨足が和らいでいるとはいえ、泥がぬかるみ、草を踏むたび、靴が濡れていく。
不快感に顔が歪むであろう状況だが、少女は微笑んでいる。
睡眠にしか興味のない四女が「久しぶりに野草が食べたい」と、珍しくおねだりしてきたのだ。
次女に窘められていたが、四女のあざと過ぎる上目遣いに、何も言えなくなっていた。
少女は、「大丈夫だから」と優しく微笑んだ。
妹達に甘いのも、四女に上手に使われているのも分かってはいるのだが、それでも頼りにされていると思うと、悪い気どころか、嬉しく思ってしまう。
三女や五女が、手伝おうかと聞いてきたが、今回は、何食分も採るわけではないから、と断った。
ならば、せめてと次女が、長靴やレインコートを用意してくれた。
結局、小降りになったので、傘だけで出てきた。
妹達の気遣いが、心地よかった。
(温かい物も用意しないと)
少女は、くすりと笑う。
最近、六女は、特に目をキラキラとさせながら、基地内を走り回っている。
今日も夕食を食べ終わると、まだ雨が強い中、ランニングに出掛けた。
体調は心配だが、好きな事をしている妹達を見ると、どうしても嬉しくなってしまう。
手が掛かっても、手が掛からなくても、我が儘であっても、素直であっても、活発でも、怠惰でも、元気に、笑って、泣いて、怒って、好きに生きて欲しい。
いつも、そう願っている。
だが、これから、妹達には、新しい家族が出来るかもしれない。
そうなれば、長女として、家族として、出来る事は減っていくだろう。
それまで、彼女達の姉として、大島家の家長として、出来ることを、たくさん、たくさんしてあげよう。
(あら?)
妹達のことを考えながら、野草を採っていると、一軒家が見えた。
そういえば、と思い出す。
基地内の森の奥に、31Aが使っているスタジオがあると。
夢中だったせいか、だいぶ奥まで入ったみたいだ。
…ーん。
…ゅ。
微かに、音が聞こえる。
明かりは点いていないが、誰かいるのだろうか。
ぽーん。
きゅ。
ぽーん。
きゅ。
耳を澄ますと、優しい雨音に混じり、ギターの音が聞こえる。
ぽぽーん。
きゅ。
ぽぽぽーん。
弾いている者の想いが、
雨音に混じり、
月明かりに混じり、
葉に混じり、
土に混じり、
空気に混じり、
自分に混じり、溶けて、吸い込まれていく。
音が言う。
何にも、響かなくていい、と。
音が言う。
誰にも、届かなくていい、と。
音が言う。
何かに、響いて欲しい、と。
音が言う。
誰かに、届いて欲しい、と。
優しい鎮魂が、
優しい祈りが、
優しい誓いが、
優しい決意が、
優しい強さが、
ゆっくり、ゆっくりと、自分に混じり、浸み込んでいく。
包み込むといった、大袈裟な感情ではない。
何かあれば、手を差し伸べ、
何かあれば、話を聞き、
何かあれば、隣にいる。
一緒に泣き、笑い、怒り、悔しがり、苦しみ、楽しんでくれる。
そんな、ただ寄り添うだけの音色が、一千子に浸み込んでいく。
(もう、こんな時間か)
時計を見ると、21時半を少し過ぎていたところだ。
ギターに限らず、何かしら楽器を手にすると、時間を忘れてしまう。
悪い癖ではあるが、月歌はあまり気にしていない。
今から戻れば、消灯までには、充分に間に合う。
ギターを窓際に置くと、月歌はスタジオのドアを開ける。
雨は、まだ柔らかい。
傘を差し、一歩踏み出す。
ほんの少しだけ、森の中が輝いて見える。
(月のせいかな?)
まだ淡いが、久しぶりに月明かりに照らされる森を見る。
よく見ると、離れた所に、人影が見える。
傘を差し、きっちりと制帽を被り、着崩すこともなく制服を着ている。
「いっちー?」
「月歌さん」
「どうしたの、こんな所で?」
ほんの少しだけ、違和感を感じる。
月歌が声を掛けるまで、呆けた様に、遠くを見ていた。
しかし、こちらを振り向くと、いつもの表情だった。
「ええ、みんなでコレを食べようと思って」
と、野草でいっぱいになった籠を、月歌に見せる。
「へぇ~、これ食べれるヤツなんだ」
「はい。昔よく食べてたんですよ。しかも今日は、珍しく四ツ葉のリクエストで…」
「…いっちー?」
「はい?」
「大丈夫?」
何気なく、何の前触れもなく、一千子の頬を滴が伝う。
「え?あれ?え?」
本人の意思と関係なく、一筋、また一筋と増えていく。
「あ、あの、月歌さん、ち、違うん、です、これ」
「うん、分かった」
月歌は、一千子の手を取り、スタジオへと引き返す。
(あ~、トイレ掃除だな、こりゃ)
結局、消灯時間には、間に合わなかった。
KETSUフェチの夢枕悪です。
siriではありません。
KETSUです。
KETSUなんです。
大事なことなので、二回言いました。
今年の秋アニメでも月歌役の楠木ともりさんが、多数出演されるみたいで、それを楽しみに、夏を乗り切ろうと思ってます。
…ただ、網羅する時間があるのかが心配です…orz
皆様も、ユッキーのKETSUや迫りくる月歌のOPIやユッキーのKETSUやパイセンのおっぴろげやユッキーのKETSUを録画して、夏を乗り切れるようお祈り致します。