筆者がユッキーおちょくりたかっただけです。
「納っっっっ得出来ひん!」
基地内の鬱蒼とした森の中、31Aのスタジオがある。
今日も、また雨である。
夕食後、彼女らは、新曲作りの為、スタジオに集まっている。
そこで逢川の不満が爆発した。
「何が、納得出来ねえんだよ。逢川、オメーも4回くらい消灯時間遅れてんじゃねえか」
「うちは、6回や!」
「ドヤるんじゃねぇ。それなら罰当番も妥当だろうが」
「うちが、『ついで』なんが、腹立つねん!」
「…何に、対抗意識燃やしてんだよ、オメーは」
昨日、月歌が消灯時間に遅れ、その回数が10回に達した。
本来なら、部隊全員の連帯責任となるが、情状酌量により、月歌と、それに次いで回数の多い逢川が、一週間のトイレ掃除を命じられた。
「一千子さん、大丈夫なの?」
「うん、特に問題ないって、ニーナが言ってたよ」
朝倉の質問に、月歌が答える。
あの後、一千子が落ち着くまで付き添い、念のためと軍医に連絡。
簡易のメンタルチェック、バイタルチェックを行い、今朝と昼まえに精密な検査が行われた。
特に問題なく、むしろメンタル面は、良好と検査結果が出た。
「いやあ、ギターだけで人を泣かすなんて、あたしの腕も落ちちゃいないね」
「オメーは、もうちょい反省しろ。んで、もうちょい天才アーティストってこと自覚しろ」
「てへぺりんこ」
「こいつに、反省させんのは無理やろ」
「…逢川、お前も反省しろよ」
「そうだぞ、めぐみん。ちゃんと反省しろ」
「お前には、言われたくないっちゅーねん!」
「めぐみんさあ、トイレ掃除、パパーっと終わらせる超能力とかないの?」
「そんなもんあるか!マンガやドラマやないねん、あるわけないやろ!」
「小説ならいーの?」
「いいわけあるかー!」
「…」
「どうしたんですか、ユキさん?頭抱え込んで」
「いや、なんかデジャブってるし、端から見ると、こんな感じなんだなと思って…」
「あら、こんな感じじゃないわよ?もっと、イチャイチャしてる感じよ?」
「せやな」
「そうね」
「そうですね」
「逢川わー!しれっと、そっちに混ざってんじゃねー!!」
「んじゃ、そろそろ新曲作ろっか」
「…もう何でもいいから、話すすめてくれ」
「こういうのも、いいんじゃない?」
「こんなのは、どうかしら」
「こういうのも、ええな」
「こんなのは、どうでしょう!」
「ワシも交ぜろー!」
「ひぃ!」
「ふむふむ…ここはこうして…こっちとあれをくっつけて…あれをあーして…」
「しれっとスルーしてねぇで、東城の事、助けてやれよ」
「…っと。こんな感じかな」
「あたしのことも、しれっとスルーしてんじゃねぇよ。…しっかし、相変わらず、よくそんなサクサクと曲作れるな」
「『昔撮った鬼塚』ってヤツ?」
「『昔取った杵柄』な。大体、鬼塚って誰だよ。グレートなティーチャーかよ。そんなヤツ、撮ってんじゃねーよ」
「いやいや、純愛の方だよ。鬼で爆弾なヤツ」
「前作の方かよ。アプリやってるヤツ、知らない確率の方が、高けぇわ」
「そんなんええから、さっさと演ろうや」
「オメーの変わり身の速さは、称賛に値するわ」
「バンマス、よろしく!」
「あいよ。…ワン、ツー」
月歌達は、一通り形にすると、宿舎に戻る。
宿舎は、いかにもな部隊宿舎ではなく、リゾートホテルを思わせる。
一歩中に入ると、正面には、噴水があり、その周りにはテーブルと椅子が配置され、隊員達は、思い思いに過ごしている。
エアコンによる、蒸し暑さとは無縁の温度。
噴水の涼しげな水音が、さらに体感温度を下げ、心地好い空間を作りあげる。
少しずつ上がってきた気温と、まとわりつく湿度から解放され、月歌達は一息つく。
「スタジオのエアコン、効き悪ないか?」
「汗で、ベタベタだもんね」
「うぅ!靴を!靴を脱ぎたいです!!」
「傘だけだと、足元グチャグチャだな。早いとこ、風呂に行こうぜ」
「早く脱ぎたいです!」
「誤解招くような言い方すんな」
「ほんと、お日さまが恋しいわ」
そんな会話をしていると、左端のテーブルに座っていた少女が立ち上がり、月歌達に近づいてくる。
座っていた姿、立ち上がる所作、歩いてくる様、全てが目を引くような少女だ。
見せるためではなく、魅せるための仕草を熟知し、自然とそれが出来ている。
「ニーナじゃん。どったの?出待ち?」
「オメーは、どっかの有名アーティストかよ」
「有名アーティストだよ?元だけど」
「そうだったよ!素のオメー知ってると、脳内バグるわ!」
「月歌さん、先日は、姉がお世話になりました」
深々と、頭を下げる二以奈。
頭を上げ、耳元の後れ毛を、耳にかける。
人によっては、色気を感じさせるが、二以奈のそれは、純粋な美しさが残る。
「いいって。半分は、あたしのせいみたいなもんだし」
「夕方の検査でも、異常はありませんでした」
「そっか。…ところで、ニーナはお風呂入った?ちょっとお願いがあるんだけど、一緒に入らない?」
「ええ、まだなので、ご一緒します」
「じゃ、ちょっと待ってて、すぐ用意するから」
「お待ちしてます」
二以奈に背を向け、急いで部屋へと戻る。
「すまねえな、大島。月歌に付きあわせちまって」
「いえ、大丈夫です。私も含め、月歌さんにはお世話になってますし」
「まあ、なんだかんだと面倒見はいいしな」
「それに、素敵な方です」
「はあ!?」
「和泉さん、私、負けませんから」
「ななななななな何の話だよ!」
「ふふ、冗談ですよ」
そう言うと、二以奈は、いたずらっぽく笑う。
「宣戦布告ね」
「ほんまもんの修羅場や」
「イッツア昼ドラ!」
「本妻と愛人の対決…これは、見ものね」
「ちちち違ぇから!そんなんじゃねえから!こっち見んなぁーー!」
今日も、和泉の絶叫が、宿舎に響く。
仕事中、続きを考えていてミスをしないか戦々恐々としている夢枕悪です。
毎度のごとく、日常パートは、31Aの会話が大好きです。
セリフだけで、どのキャラが喋っているのか、なんとなく分かるのは、ヘブバンの魅力だと思います。
次回は、
手塚司令の罠に嵌まり、孤立してしまったユッキー。
ユッキーを救うべく、先を急ぐ月歌達であったが、キャンサーを従えたななみんに阻まれてしまう…
不敵に笑う謎の美少女ニーナ。
果たして、月歌達はユッキーを救うことが出来るのか!
そして、ニーナの目的とは!
次回、セラフ戦隊31A!
『豚のレバーは加熱しろ』
乞うご期待!
…君は、真実の愛を、目撃する。(Usodesu)