雨のちウエディング   作:夢枕悪

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多分、二以奈は、こんな子じゃないと思います。
筆者がユッキーおちょくりたかっただけです。





『day6』

「納っっっっ得出来ひん!」

 

基地内の鬱蒼とした森の中、31Aのスタジオがある。

今日も、また雨である。

夕食後、彼女らは、新曲作りの為、スタジオに集まっている。

そこで逢川の不満が爆発した。

 

「何が、納得出来ねえんだよ。逢川、オメーも4回くらい消灯時間遅れてんじゃねえか」

「うちは、6回や!」

「ドヤるんじゃねぇ。それなら罰当番も妥当だろうが」

「うちが、『ついで』なんが、腹立つねん!」

「…何に、対抗意識燃やしてんだよ、オメーは」

 

昨日、月歌が消灯時間に遅れ、その回数が10回に達した。

本来なら、部隊全員の連帯責任となるが、情状酌量により、月歌と、それに次いで回数の多い逢川が、一週間のトイレ掃除を命じられた。

「一千子さん、大丈夫なの?」

「うん、特に問題ないって、ニーナが言ってたよ」

 

朝倉の質問に、月歌が答える。

あの後、一千子が落ち着くまで付き添い、念のためと軍医に連絡。

簡易のメンタルチェック、バイタルチェックを行い、今朝と昼まえに精密な検査が行われた。

特に問題なく、むしろメンタル面は、良好と検査結果が出た。

 

「いやあ、ギターだけで人を泣かすなんて、あたしの腕も落ちちゃいないね」

「オメーは、もうちょい反省しろ。んで、もうちょい天才アーティストってこと自覚しろ」

「てへぺりんこ」

「こいつに、反省させんのは無理やろ」

「…逢川、お前も反省しろよ」

「そうだぞ、めぐみん。ちゃんと反省しろ」

「お前には、言われたくないっちゅーねん!」

「めぐみんさあ、トイレ掃除、パパーっと終わらせる超能力とかないの?」

「そんなもんあるか!マンガやドラマやないねん、あるわけないやろ!」

「小説ならいーの?」

「いいわけあるかー!」

「…」

「どうしたんですか、ユキさん?頭抱え込んで」

「いや、なんかデジャブってるし、端から見ると、こんな感じなんだなと思って…」

「あら、こんな感じじゃないわよ?もっと、イチャイチャしてる感じよ?」

「せやな」

「そうね」

「そうですね」

「逢川わー!しれっと、そっちに混ざってんじゃねー!!」

「んじゃ、そろそろ新曲作ろっか」

「…もう何でもいいから、話すすめてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こういうのも、いいんじゃない?」

「こんなのは、どうかしら」

「こういうのも、ええな」

「こんなのは、どうでしょう!」

「ワシも交ぜろー!」

「ひぃ!」

「ふむふむ…ここはこうして…こっちとあれをくっつけて…あれをあーして…」

「しれっとスルーしてねぇで、東城の事、助けてやれよ」

「…っと。こんな感じかな」

「あたしのことも、しれっとスルーしてんじゃねぇよ。…しっかし、相変わらず、よくそんなサクサクと曲作れるな」

「『昔撮った鬼塚』ってヤツ?」

「『昔取った杵柄』な。大体、鬼塚って誰だよ。グレートなティーチャーかよ。そんなヤツ、撮ってんじゃねーよ」

「いやいや、純愛の方だよ。鬼で爆弾なヤツ」

「前作の方かよ。アプリやってるヤツ、知らない確率の方が、高けぇわ」

「そんなんええから、さっさと演ろうや」

「オメーの変わり身の速さは、称賛に値するわ」

「バンマス、よろしく!」

「あいよ。…ワン、ツー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月歌達は、一通り形にすると、宿舎に戻る。

宿舎は、いかにもな部隊宿舎ではなく、リゾートホテルを思わせる。

一歩中に入ると、正面には、噴水があり、その周りにはテーブルと椅子が配置され、隊員達は、思い思いに過ごしている。

エアコンによる、蒸し暑さとは無縁の温度。

噴水の涼しげな水音が、さらに体感温度を下げ、心地好い空間を作りあげる。

少しずつ上がってきた気温と、まとわりつく湿度から解放され、月歌達は一息つく。

 

「スタジオのエアコン、効き悪ないか?」

「汗で、ベタベタだもんね」

「うぅ!靴を!靴を脱ぎたいです!!」

「傘だけだと、足元グチャグチャだな。早いとこ、風呂に行こうぜ」

「早く脱ぎたいです!」

「誤解招くような言い方すんな」

「ほんと、お日さまが恋しいわ」

 

そんな会話をしていると、左端のテーブルに座っていた少女が立ち上がり、月歌達に近づいてくる。

座っていた姿、立ち上がる所作、歩いてくる様、全てが目を引くような少女だ。

見せるためではなく、魅せるための仕草を熟知し、自然とそれが出来ている。

 

「ニーナじゃん。どったの?出待ち?」

「オメーは、どっかの有名アーティストかよ」

「有名アーティストだよ?元だけど」

「そうだったよ!素のオメー知ってると、脳内バグるわ!」

「月歌さん、先日は、姉がお世話になりました」

 

深々と、頭を下げる二以奈。

頭を上げ、耳元の後れ毛を、耳にかける。

人によっては、色気を感じさせるが、二以奈のそれは、純粋な美しさが残る。

 

「いいって。半分は、あたしのせいみたいなもんだし」

「夕方の検査でも、異常はありませんでした」

「そっか。…ところで、ニーナはお風呂入った?ちょっとお願いがあるんだけど、一緒に入らない?」

「ええ、まだなので、ご一緒します」

「じゃ、ちょっと待ってて、すぐ用意するから」

「お待ちしてます」

 

二以奈に背を向け、急いで部屋へと戻る。

 

「すまねえな、大島。月歌に付きあわせちまって」

「いえ、大丈夫です。私も含め、月歌さんにはお世話になってますし」

「まあ、なんだかんだと面倒見はいいしな」

「それに、素敵な方です」

「はあ!?」

「和泉さん、私、負けませんから」

「ななななななな何の話だよ!」

「ふふ、冗談ですよ」

 

そう言うと、二以奈は、いたずらっぽく笑う。

 

「宣戦布告ね」

「ほんまもんの修羅場や」

「イッツア昼ドラ!」

「本妻と愛人の対決…これは、見ものね」

「ちちち違ぇから!そんなんじゃねえから!こっち見んなぁーー!」

 

今日も、和泉の絶叫が、宿舎に響く。






仕事中、続きを考えていてミスをしないか戦々恐々としている夢枕悪です。
毎度のごとく、日常パートは、31Aの会話が大好きです。
セリフだけで、どのキャラが喋っているのか、なんとなく分かるのは、ヘブバンの魅力だと思います。

次回は、

手塚司令の罠に嵌まり、孤立してしまったユッキー。
ユッキーを救うべく、先を急ぐ月歌達であったが、キャンサーを従えたななみんに阻まれてしまう…
不敵に笑う謎の美少女ニーナ。
果たして、月歌達はユッキーを救うことが出来るのか!
そして、ニーナの目的とは!
次回、セラフ戦隊31A!
『豚のレバーは加熱しろ』
乞うご期待!

…君は、真実の愛を、目撃する。(Usodesu)
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