雨のちウエディング   作:夢枕悪

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イベント毎に、推しが増えるヘブバン…パねぇッス!






『day9』

それは、いつの間にか出来上がっていた。

皆が思い描くチャペルがそこにあり、それを覆うように倉庫も建てられ、緻密に計算された照明は、陽の光を思わせる。

倉庫の壁には、青空と雲、草花が描かれている。

稚拙に見えるが、モニター越しに見ると、本物にしか見えない。

 

「凄えな…」

 

和泉が、思わず声を上げる。

青空の下に広がる草花、その上に並べられたテーブルと椅子、テーブルは純白のテーブルクロスに覆われ、白と緑の装花がシンプルかつ上品に飾られている。

倉庫の防音は、余程優秀なのか、扉を閉めれば、雨音も聞こえない。

屋根に落ちる雨音も、壁に当たる雨音も、全て吸収されている。

時々、風が吹き、草花の匂いを運び、本当に爽やかな青空の下にいるようだ。

風を感じ、草花を薫り、青空に照らされ、自然と顔が綻ぶ。

 

「工作班の方々が、張り切ってましたからね」

 

淡々とした口調で、七瀬が答える。

七瀬の話しによると、花形のセラフ部隊の中でも、特に31Aの人気は高いらしい。

ライブのある日は、カフェテリアの売り上げが、3~4倍になる。

 

「あの方が、工作班の班長です」

 

月歌達が、七瀬の示す方を見る。

チャペルの前に設置されたステージでは、音響班の隊員達が忙しく動き回っている。

その中に、資料を手に、何やら指示を出している少女がいる。

少女は、月歌達に気付き、ぺこりと会釈をする。

それに応え、月歌は笑顔で手を振る。

少女は、資料で顔を隠し、身悶えながら、隣にいた少女と、キャーキャーと叫ぶ。

こういった所を見ると、隊員達も普通の少女なのだろう。

 

「そういうとこ、ホントに芸能人だよな」

「え?何が?」

「手え振ったり、笑顔振り撒いたりしてるだろ?自然と、そういう事、やってるとこだよ」

「え?それって普通じゃないの?だって、あたしのワガママに付き合ってくれてるだよ?少しでも、『ありがとう』って伝えるのって、当然じゃん?」

「まあ、確かにな」

 

天性のカリスマなのか、天然のたらしなのか、月歌の人気は、高いようだ。

 

「でも、ユッキーも人気あると思うよ?」

「何言ってんだよ、そんな訳ねぇだろ?」

「だって、ユッキーのこと見てる子も、結構いるよ?」

「は?」

 

確かに、こちらに向けられる視線に、なんとなく気付いてはいたが、それは、隣にいる月歌に向けてだと思っていた。

 

「いやいや、後ろの方で、地味にドラム叩いてるだけだぞ?そんなヤツが、人気あるわけねぇだろ?」

「そのドラムを叩く姿が、格好いいと、聞いたことがあります」

「はぁ?」

 

七瀬の言葉に、顔を赤くする。

淡々とした七瀬の口調は、事実を事実として話しているので、余計に現実味が増す。

 

「ほらほら、ユッキーもファンサして」

 

既に、他のメンバー達は、手を振ったり、笑顔を見せたり、ぺこぺこと頭を下げたりと、周囲に応えている。

 

「あ、ああ…」

 

ぎこちなく笑顔を作り、ぎこちなく手を振る。

一斉に、大きな黄色い声が、返ってくる。

 

「見た、今の?」

「慣れないファンサ…ありだわ!」

「この世の全てに、感謝を…」

「月歌×ユキ…いや、ユキ×月歌もあり…か」

 

何やら不穏な声も聞こえたが、当の本人は、心の鎮火に必死である。

 

「な?言った通りだったろ?」

「ああ、分かったから、もう触れないでくれ…」

「やあ、月歌くん」

「よぉ、しっきー。来てくれて、嬉しいぜ」

「それは、告白と受け取っていいのかな?子猫ちゃん?」

「後ろのみんなは、聖歌隊?みんなも、ありがとうな」

 

不穏な空気を察し、すぐに話題を変える月歌。

 

「ふふ、相変わらずつれないねえ、月歌くん。しかし、私達にも活躍の場を設けてくれて、感謝しているよ」

「いやいや、こっちこそ感謝してるよ。あたしらが演ってるのとは、ジャンルが違うからさ。頼りにしてるよ」

「では、今夜、私の部屋で、存分に語り合わないかい?」

「ボク達の迷惑になるから、やめろ」

「おお、まるちゃん」

「茅森様、本日はお誘い頂き、ありがとうございます」

「やなぎんも、来てくれて、ありがとう」

「どうだ、茅森?今日もボクのセンスが、光ってるだろう?」

 

お馴染みの腰に手を当てたポーズで、月歌にドヤる。

一見すると、普段と変わらないように見えるが、デザインも色も少し違う。

派手過ぎず、地味過ぎず、上品な黒のフォーマルスーツ。

チェック柄のスカートは、淡い水色で、控え目に可愛らしさをアピールしている。

 

「どうだ、茅森。花嫁を引き立てながら、ボクのセンスも溢れていているだろう」

「はい『カシャッ』、お嬢様『カシャッ』。大変『カシャッ』、似合『カシャカシャッ』って『カシャッ』います『カシャカシャカシャッ』」

「また柳が、写真撮ったぁ!」

「相変わらずだねえ、やなぎん」

「お嬢様の日常を記録するのも、執事の勤めですから」

「茅森さん。そろそろ、準備の時間です」

「じゃ、みんな、また後で」

「はい。では、お嬢様。私達も、準備致しましょう」

「二人も、何かやるの?」

「はい。私はお手伝いですが、お嬢様は、華村君に誘われて、聖歌隊メンバーとして、ご出演致します」

「ふふん。ボクのセンスに、畏れ戦くがいい」

「ああ、楽しみにしとくよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

撮影も一段落し、休憩していた月歌達の元へ、参列者役として来ていた他の部隊メンバー達が、集まってくる。

 

「どうでしたか?姉さんのドレス姿は?」

「はあ~、一千子姉の花嫁姿、ホント綺麗だったあ」

「茅森、いい曲だったよ。私も、柄にもなく憧れちまったよ」

「山脇さまには、あんなの似合わないでゲス」

「茅森~、いい子守歌だったぜ~」

「ったく。四ツ葉も、ちゃんと一千子の花嫁姿、見とけよな」

「茅森、本当にいい曲だったぞ(し、神託があ!や、やはり茅森は、セラフ部隊より、アーティストの方が!)」

「どうした、白河?顔色が悪いぞ?」

「カヤモリ!アメイジングで、エクセレントだったわよ」

「ちっ!何で、オレがこんな事」

「ありがとな、キャロル。マリリンも、牧師役ありがとな」

「オレは、カトリックだ。それを言うなら、神父代行だ。殺すぞ?」

「これだけの評判でしたら、制作費と差し引いても、この位の収益が」

「はぁ?マジか!?ケタ間違ってねえよな!?」

「こ、これだけあれば、夢の自販機購入も」

「茅森、中々やるじゃないか。たが、ボクの方が、センスは上だぞ」

「『カシャカシャ』茅森『カシャッ』様『カシャッ』、お『カシャカシャカシャカシャ』嬢『カシャカシャ』様に『カシャッ』負け『カシャカシャカシャッ』ず『カシャッ』劣らずの『カシャッ』大『カシャッ』変『カシャッ』良『カシャッカシャカシャ』い『カシャカシャ』曲『カシャカシャ』でした『カシャカシャカシャカシャカシャカシャ』」

「もう、遠慮がなくなってるーぅ!」

「るかっちぃ、凄過ぎて、あーしのインスピレーション、溢れまくりッスよ」

「月歌ちゃん、みんな、よく頑張りましたね。よしよし」

「ばぶ、ばぶばぶ!?(な、なんや!?ばぶしか喋られへん!?)」

「ばぶばぶ、ばぶ!(な、何が起こってるんでしょう!)」

「ばぶばぶばぶ、ばぶばぶ!(ひーひゃっひゃっ!ワシにこんなことするとは、いい度胸ではないか!)」

「ばぶ!(ひぃ!何言ってるか分からないけど、殺される!)」

「ばぶばぶ(いや~、出来上がりが、楽しみだなあ)」

「ばぶばぶばぶ(何でオメーは、落ち着いてんだよ)」

「茅森さん」

 

ウエディングドレスのまま、一千子もやって来た。

恥ずかしいのか、照れているのか、肌はほんのりと紅に染まり、はにかんでいる。

ドレスの薄く淡い赤が、その肌を際立たせる。

デザインは、背中が大きく開いていはが、後ろに流れているベールがそれを隠し、下品な印象を与えない。

頭の上のティアラは、照明に反射し、きらきらと輝いている。

その姿は、本当に花嫁が、親友の所へ来たように見える。

 

「ばぶばぶ(いっちー、凄っごい似合ってるよ)」

「?茅森さん?」

「ばぶー(はあ、一千子姉、キレイ過ぎて、息が止まりそうだよぉ)」

「む、六宇亜?」

「ばぶばぶ、ばぶぅ(馬子にも衣装って、ヤツだなぁ~)」

「四ツ葉!?」

「ばぶ(いや、ホント、いっちーのお陰で、大成功って感じだよ)」

「…」

「ばぶばぶ?(どったの、いっちー?)」

「ぴーがががが」

「ばぶー!(久しぶりに、いっちーが壊れたー!)」

「ばぶ!(む、室伏!少し抑えてくれ!)」

「あらぁ、私ったら、ついつい」

 

数十分の後、多少の混乱はあったものの、どうにか復帰した。

 

「いや、まさか、あたしらの曲で、りさママのオーラ全開にするなんて、予想外だったよ」

「話には聞いていたが、あんな強力なんだな」

「オーラ全開のりさママなら、キャンサーもイチコロなんじゃないの?」

「いやいや、そんな訳ねぇだろ。そもそも、アイツらに、バブみなんてあんのか、分かんねぇだろ」

「月歌ちゃん。そんなこと言ったら、めっ、ですよ?」

「ママぁ」

「おーい、戻ってこーい」

「…あれ、もう、わざとやってんちゃうか?」

「ええ、私もそう思うわ」

「ふふふ」

「あの笑顔、なんだか怖いです」

「うん、そうだね」

「いやぁ、ごめんね、いっちー。ビックリさせちゃったみたいで」

「いえ、大丈夫です」

 

だいぶ落ち着いたのか、笑顔を見せる。

 

「改めまして、茅森さん。本当にありがとうございました」

「あたし、そんな感謝されるような事したかな?」

「茅森さんのお陰で、妹達の気持ちを理解出来ました。私が妹達のことを思っているように、妹達も私のことを思ってくれているんだって、気付けました」

「そっか。あたしは、ワガママ言ってるだけだけど、いっちーも嬉しいなら、あたしも嬉しいよ」

「はい」

 

月歌が見た中で、最高の笑みを浮かべる。

その時、

 

『緊急招集。各部隊長は、至急、ミーティングルームへ集合。繰り返す…』






先日、『自動販売機に~』を視聴し終わり、『Lv1魔王~』と『出来る猫~』を視聴しようとしている夢枕悪です。
リアタイ派ではなく、一気見派なので、ネタバレはご容赦下さい。死にます。

会話シーンで、キャラ全員を出したいと思いつつ、キャラの読み込み不足、実力不足を痛感しております。
こんな筆者ですが、先日、総UV数1,000を超え、読者の皆様方には、感謝しかありません。
まだ、だらだらと続きますが、のんびりとお付き合い頂けると幸いです。
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