鬼獄呪魔と仕鬼祇使い(ばか)ども   作:三概井那多

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VS鏡鬼 其の参

 とある一軒家。小汚い家。服は乱雑に脱ぎ捨てられていて、ゴミは溜まっており、炊事場は使った皿などがそのまま。かろうじて最低限の生活スペースと見られている少しだけ汚い箇所があちらこちらに見受けられる。

 

 そんな家に三人の家族が住んでいた。

 

 母親と思われる化粧を上手く使い若く見られる女性、名前は竹馬花南、29歳。インスタグラマーであり、自身の化粧やファッションセンスを活かしてSNSでそこそこに知名度である。それが流行の先端に立とうと躍起になっては、母であることを、主婦であることを、二の次、三の次に回している女性だ。

 

 父と思われる眼鏡をかけた男性はなにやらノートPCに打ち込んでいる。名前は竹馬隆二。36歳。自称教育社会問題相談家にして、善心教団の外部顧問兼相談役を担っている。

 

 具体的には教育方針について悩みを持つ人達やあるいはいじめや挫折などで傷を負って社会に溶け込めない人間達の心のケアして、そこで出た問題を社会に訴えては改善する仕事がメインに、宗教団体である善心教団においても一部の面から相談役として働いている。

 

 と、聞こえはいいが、実際のところ詐欺まがいの悪徳で根拠のない出鱈目を口先三寸で騙す……いや騙すまでならばまだしも、最初の一回のただの会話以降一切何もしないことだってたたある人間だ。

 

 彼曰く、社会を悪くしているのは学校、いじめの被害は虐められる側が悪い、引きこもりを作るのは学校側の責任、生きる活力は出会うこと、学校に行くことが最初の一歩。問題を学校側に押し付けるのはあまりにも酷であり、子を育てる親にも責任がある。

 

 一見すると良いことを言っているようだが、その全てがその場限りの言葉であり、一貫性がない。確かに状況に置いて臨機応変に言葉を変えてしまうことはあるかもしれないが、彼の場合そうではない。

 

 彼自身の本音も建前も矛盾だらけ。

 

 別に情熱が行き過ぎて本音と建前が入れ替わってそうなったのではない。自分の都合のいいような言動しかしていないからこそ、矛盾だらけの言動なのだ。

 

 最初から一貫性はなく、その場限りの都合のいい言葉でしか吐かないのだ。

 

 隆二がノートパソコンを打ち終えると印刷機にかけては出来上がったものを見て、娘へと叫ぶ。

 

「おい、ちづり! こい!」

 

 怒声が家の中に響く。一声では呼んだはずの娘の姿が現れずに舌打ちをして、ドン! と壁を強く殴っては「三、二ィー! 」とカウントを叫び、「い」と最後まで言い終わる前に部屋から慌てて出てくるツインテールの少女が怯えた顔で出てくる。

 

 震えた口元で「な、なに?」と言葉にする前にとビンタが飛んでくる。

 

「呼んだらすぐに出てこいっていつも言ってんだろうが!」

「ごめんなさいごめんなさい!!」

 

 泣き叫ぶ調子で謝罪の言葉を何度も口にする。その様子に舌打ちする。鳴き声が耳に憑いて煩わしいからだ。腹部への蹴りを入れて、ごほごほと悶えるちづりに、ちづりの目線に合わせるように身を屈めて痛みから脱していないのにも構わずに髪を釣り上げて視線を合わせる。

 

「いつも言ってんだろう、泣くなよ。イライラすんだよ、その声」

「……っ! ぅ~~~」

 

 腹部から響く激痛と、じりじりとする赤い頬、目の前にまるで実在する鬼のような恐怖を表す存在感に直面しながらも、言われた通りにそれらを全部堪えた声にならない悲痛を溢す。

 

 その様子に舌打ちしつつ、髪を離してボトンと少女の地面に転がり、置いてあった数枚の紙の束を叩きつけるようにして彼女へとぶつける。

 

「今度の台本だ。明日には取る。ちゃんと覚えろ」

 

 冷たくそれだけ告げると彼は少女のことはもういないものとして扱いパソコンへと向き直る。焦点の合っていない沈んだ正気のない瞳の少女は頭に布かれた紙を一枚取り、ゆっくりと起き上がってはその紙面に書かれた内容を確認する。……小学生の彼女から見ても穴と矛盾だらけの内容に顔を顰める。

 

 小学生にも分かる内容と謳っているがどう考えたって他人を見下した、自分の低能さをひけらかしているもの。聞くものにとっては苦痛であり、そして、これを代弁する自分がこれによってどういう風に周囲から扱われるか、それを想像するだけで恐怖に震え、涙が込み上げてくる。

 

「ねえ、パパ。……もうやりたくない」

 

 彼女は身体を震えさせ、小さくも縮こまった消えそうなか細い声、勇気を振り絞ってそれを口にした。

 

 パソコンを打っていた竹馬隆二のタイピングの音が止まる。何も告げずに起き上がってはこちらへと振り返ってはゆっくりと竹馬ちづりへと接近する。

 

 ―――あ、逃げないと。

 

 そう頭に走った危険信号は遅かった。強烈な衝撃が飛んでくる。

 

「馬鹿かお前は! それは! ネタに! なんだろうが! どんだけ! あの! クソ溜めが! クソどもを! 作っているのか! クソ以下の! クソだろうが!」

「ごめん、ごめん、ごめん。ごめん、ごめんなさい! パパ!! ち、ちづりが、ちづりが! 間違っていたから!」

 

 何度も何度も娘をけたぐり、踏みつける。幼き肉体に痛烈な暴行を振われて抗う術もなく、ただただ気が狂ったように謝罪の言葉を繰り返すしかない。だが、その鳴き声が逆に竹馬隆二にとっては癪に障り、蹴りの威力が強まる。

 

「いつも言ってんだろうが! 声を上げて泣くな! うっせえって言ってんだろうが! 何度も何度も、言わんせんな!」

 

 弾けて爆発したような大声量。それに比例するように蹴りの威力が増す。

 

 痛くて、辛くて、怖くて、吐きたくて、苦しくて、叫びたくて、泣き喚きたい、そんな様々ものが出てくるがそれしたら苦しみが増すだけなので、必死に口を閉じて父親の命に従う。

 

 やがて肩で息をする竹馬隆二は息を整うを待ってから我関せず知らずと傍でスマホを弄っていた竹馬花南を呼ぶ。

 

「おい、花南。繕っておけ。また今度、教団に金出すヘンタイどもにあてがわせるんだからな。傷なんてあったらあとで面倒だ」

 

 夫から命を受けて竹馬花南は化粧道具を持って寝転がるちづりへと近づく。そう、救急箱ではなく、化粧道具だ。

 

「はいはい、もう、女の子なんだからちゃんと綺麗におめかししないとね♪」

 

 彼女は出来たばかりの痛々しい痣を見て、嫌悪になりながらも無理矢理起こし上げてそう笑顔で告げる。彼女は比較的に傷の少ない顔にしっかり化粧を施して、服で隠せる身体の部分は最低限の化粧を施す。

 

 治療ではない。隠すだけの化粧。

 

 それを選んだ理由は二つ。救急箱を使った応急手当の仕方を知らない。服で隠せる部分は最低限なのは化粧品が勿体ないから、という理由で娘に化粧を施す。

 

 化粧を終えると娘の顔を見て、まるで慈愛の女神のような微笑み、母が娘へと送る優し気な笑みと共に「あなたと一緒に入れて幸せ」と同じような暖かな声色で告げる。

 

「カナンはブザイクな子、キライだから。ちづりちゃん、ブサイクな顔になったらキライだよ♪」

 

 竹馬花南は実の娘であるちづりを生んだ日のことを覚えて『は』いる。

 

 痛みに耐え、生れ落ちてこの両手で抱いた我が子を見て、思わず笑ってしまった。

 

 ―――なんてブサイクなサルみたいな子なんだろう、カナンの娘とはとても思えないブザイクな子。あ~あ。子ガチャミスったわ~。

 

 産まれ落ちた可愛くない娘の姿にガッカリしては愛情を抱けず、名前を付ける事すら億劫になりながらも、痛さのあまり血がいっぱいついた姿を見て、そのまま名付けた『ちづり』と。

 

 もし、成長の過程において竹馬ちづりの顔が竹馬花南好みの顔に成長しなかったならば、今とはまた比べられないことになっていただろう。

 

 娘のことは嫁に任せて、この間上げた動画についてチェックをする。相変わらずアンチの批判コメの大量生産にイラつきを隠せない。

 

「おい、鏡鬼」

『なんだ、隆二うっせえぞ』

 

 口の悪い返事と共にPCの画面越しに現れる。竹馬隆二そのものの姿をしており、同時に額には角が生えた存在。鬼獄呪魔において契約した仕鬼祇である鏡鬼だ。

 

「コイツら全員殺してこい」

 

 コイツらとは言うまでもなく、画面内に書かれたアンチコメントの存在。

 

 いつもならネットにしか居場所がいない、引きこもりの底辺が嫉妬丸出しのこちらへと攻撃してきても特に何とも思わないが、最近では誹謗中傷が目立ってきた。

 

 鏡鬼のチカラを得たことで、おいたをする社会常識のないクソダメどもには少しお灸が必要だと思い、そう自身の仕鬼祇に命じる。

 

『全員は無理だ。バーカ。何度も言っているだろうが、殺せるのはあくまでもこの町にいる人間のみ。それくらい頭を使え、カス』

 

 が、その命に完全とは言わず、縛られた条件付きが存在すると告げられる。使えねえ、と内心で悪態を吐く。

 

「じゃあ、それでいい。どうせ引きこもりの自分じゃあ何もできねえでネットに網張っているだけのクソアンチだ。死んだって誰も構いわしねえよ」

『ったくしょうがねえ、今夜中にはこのまた土地周辺の奴らは皆殺しにしてきてやるよ!』

 

 渋々と口調ながらも邪悪な笑みを浮かべて承諾し、竹馬隆二もその返事に愉快そうに嗤う。

 

 鬼と人間ながらもそれに映るのはディスプレイ越しの合わせ鏡のような邪悪な一面に染まっていた。

 

 そんな感じで仕鬼祇との間で取り決めが交わされる。

 

 そう、逆だった。最近の誹謗中傷が良く見受けられるからお灸をすわせるのでなく、元から多かったが煽りコメントで返すことできなかった今までと違い、今は自分の気に入らないものを簡単に攻撃ができるようになったから簡単に攻撃するのだ。しかも自分の手が汚れない最高の形で。

 

 自分は攻撃されたから、その仕返しをしていいと免罪符を掲げて、不快な相手へと『殺す』の選択肢を取るのだった。

 

 この日、この宍戸町に住む五十人近くの人間がスマホやパソコンの前で心臓麻痺とも思われる怪死によって死亡することとなった。

 

 そんなことが起こっていることなど、一切興味もなく、娘の化粧を終え、着替えてはスマホを弄っていた竹馬花南はインスタに上げる撮影をしようと、してスマホに人工AI(バーチャルアシスタント)に語りかけるようにして告げる。

 

「あ、鏡鬼ちゃん。可愛く撮ってね。」

『オッケ丸。カナンは可愛いからね』

 

 スマホの返答はSiriやGoogleなどの機械音声などではなく、竹馬花南の鏡鬼である。

 

 鏡鬼という鬼はこの鬼獄呪魔における仕鬼祇においてもっともイレギュラーの個体である。本来なら使役者と鬼の相性は性格面や思考回路といった部分を近いものを召喚されるものとなっている。

 

 だが、鏡鬼にはそれがない。

 

 彼は鏡の鬼。映る相手の心の闇をそのまま反映させて共感できる鬼。性格相性診断が唯一的外れな鬼である。

 

 彼はパートナーを選ばない。また一人のパートナーに捉われない。何人ものの人間と契約することが可能な鬼であり、その度に個体が増える。

 

 合わせ鏡が反射して幾つもの鏡が映し出すようにして数は増やすことが可能。

 

 竹馬隆二と竹馬花南の二名は分裂して二体の鏡鬼を従わせるペアである。

 

 だが、同時に二人はこの鬼獄呪魔においてもっとも参加に対して積極性はなく、与えられた鬼のチカラを自己の都合の良い使い方で行動している二名である。

 

 そして皮肉なことにそれが鬼獄呪魔の儀式において本来の役割を全うしている人間達でもあるのだ。

 

 そんなことを露も知らずに彼らは意味の分からない儀式ではなく、己が為にチカラを使うというのはある意味一番人間らしいのかもしれない。

 

 二人は夫婦でありながらも互いに必要以上に干渉せずに自分達の世界のみで自己を独立させる。

 

 その間に挟まれるように、あるいは世界の狭間のゴミ溜めでのみ生きている哀れな少女の世界は鏡としてどう写るだろうか?

 

 子は育て貰った恩を親へと返す生き物だ。

 

 例えそれが仇という意味であろうと。

 

 

× × ×

 

 

『なんだ、これ』

「……時間泥棒かな?」

 

 とりあえずぜっくんから教えて貰ったなんとかちゃんというチャンネルを我鬼と共に観てみた。感想としては…まあ、僕のような人間には何が面白いのかさっぱり分からない代物だった。

 

 内容としては子供向けのファッションやちょっとした化粧とかのそういうの説明……これについては僕じゃなくても特殊な趣味の、雨崎君のようなロリコン野郎くらいにしか男性には興味はないだろう。

 

 まあ、こっちは母親の方の台本についてはオシャレが好きな女子が楽しむ分には問題ない代物だということが分かる。小学生から中学生くらいの女子をターゲットしたもの。女の子は多分好きそうで需要はある。

 

 問題なのは父親の方か。

 

 これに関してはマジで意味が分からない。『学校教育というのは社会的に不要な知識を多く存在し、云々』、『団体行動兼子供の身体を慮る行為であって、教育者の云々』という要約すれば『学校での勉強は社会に出ても使えない』ということや『部活は体罰という名の教師陣のストレス解消』といった如何にも学校嫌いな小中学生が考えそうな頭の悪さを感じる。

 

 正直学校嫌いである僕だが、この手の話は僕らのような学生がこんな風に悪態を吐く程度にはまあ許容範囲だが、……一端の大人がこんな拗らせた青春コンプレックスの衝動のままに主張していると思うと『ああ、この人は多分、漫画やドラマの青春を期待していたら、現実では寂しく悲しい学校生活を送り、どこにも居場所がなかったんだろうな……』って可哀想な人にしか思えない。

 

 鬼である我鬼ですら呆れ果ててしまうほどの内容だ。いや、鬼だから人間のセンス(?)は理解できないのか。

 

 ふと思う。

 

 僕は何度も言うようだが学校が嫌いな人間ではある。が、この手のものを見るとどっちかというと『学校にいた人間が嫌いだった』って思い知らされる。人間関係や集団行動、あるいは空気を読んで周囲に合わせる、といった類のことが苦手だった。

 

 個人プレイ、独り善がり、ソロ、個人主義、単独行動、身勝手、他人は他人で自分は自分、自身の興味関心でしか動かない、ぼっち、そういった要素の人間性でできた僕。

 

 夜名津『我一』。『我、一人』と書いての『我一』。

 

 だからこういった、友達ができなかった青春コンプレックスの人の心情は実はイマイチ理解できなかったりする。

 

 友達がいなくても別にいいじゃん。一人でもなんだかんだでやっていけるし。っていうのが僕の考えだ。

 

 でも、周囲に敵しかいない環境ならばしんどいって言うのは分かる。もう生きていくのが辛くて、楽な死へと足を向けるのは頷ける。

 

 友達がいなくても生きてはいけるけど、敵しかいないならば環境なら生きていく必要はない、っていうのが中学までの学校生活(笑)で過ごしてきた僕の答えだ。

 

『っていうカ、コイツおそらく仕鬼祇使いだゾ』

 

 いつものように根暗に思考を耽っていると我鬼の言い放った一言。ただでさえきな臭い話だというのに、さらに面倒くさそうな状況になるような不穏なことを言ってくる。

 

『従えているのはおそらく鏡鬼だな』

「狂気? また怖い感じの名前だな」

『凶器じゃねエ。鏡鬼ダ。鏡の鬼で鏡鬼ダ。いひひ』

 

 我鬼の間違いを指摘してくる。鏡の鬼、『鏡鬼』だと。

 

 ……そんなどこぞの化物語や戯言やら忘却やらを手掛ける、某西尾維新の言葉遊びの如く語っても、現実には『鏡鬼』に『凶器』に『狂気』とどれもこれも似た発言で言葉だけでは上手く伝わってこない。

 

 ……西尾維新はその手の発言のやり取りをちゃんとして、掛け合いで訂正し合うな。

 

「で、その『鏡鬼』はどんな妖怪だい?」

『いひひ、鏡の妖怪って言ってもアイツらは結構面倒な奴らでナ』

「アイツら?」

『鏡だからナ。言ってみれば一体いても鏡を反射させれば増えるンダヨ』

「クソ厄介なヤツだ。何、元になった鏡割らないと分身は解けないとか、本体を殺さないといけないとかそんなの?」

『いひひ、そういうのダ』

 

 僕の疑問にいつもいやらしく薄気味悪い調子で返答をする。頭を抱えつつも、ざっくりと有り得そうなパターンを口にする。

 

「鏡系の能力者と考えると、ざっと言えば『コピー』『反射』『鏡の世界』っていう所がパッと思いつくわけだけど。うん、厄介だね」

 

 コピーなら数で殴られれば敵わないし、反射なんてされたどう防御を崩せば分からない、鏡の世界に至っては敵の領域で何をしてくるか分かったもんじゃない。厄介な敵であることは確かだ。

 

 だが、僕は伊達にこの十六年から十七年近く生きていない。この程度の相手、これまで読んできた漫画やらラノベやらで攻略してきたことくらいあるんだ。そこから活路を見出すくらいわけないさ。

 

 さぁ~て、それで主人公達がどうやって打ち破ってきたか思い出してみる。……基本鏡を割るとか鏡から出た時に本体を狙う的な力技のパターンが多いな。

 

 結局のところ、フィジカルのパワーで押し勝つ主人公としての勝ち方なんだろうな。僕じゃあ、無理だな。その辺の戦闘は主人公の雨崎君に任せるか。モブの僕は解説でも頑張るか。自称天津飯レベルの銀魂の近藤さんクラスの解説力を見せないとこの作品は読者に飽きられてしまう。

 

 と鏡のキャラ相手の攻略に何か使えないか、と銀魂十四巻を読みながら思う。やっぱ、このトイレの回が好きだわ。

 

 …………ああ、そうだよ、嘘だよ、鏡相手の攻略法のことを思って、銀魂を読んだじゃなくて、単純に銀魂読みたくなかったから銀魂読んでだよ。

 

「まあ、鏡使いが相手ならそう、難しくないな」

『いひひ。随分と強気じゃねエカ、何か策があるのカ?』

「そんなもん、周囲を真っ暗にして光を届かない状態で殴るだけだろ? 鏡なんて光の反射なんだから、光そのものを使えない状態にすればなんとでもなるよ」

 

 ハッキリと告げる。

 

 鏡。ガラスや水といった透明色による光の屈折や反射によって物体を映し出す代物。確かに僕の挙げた能力は脅威的なチカラではあるが、光があってこそ活きるそれは逆にいえば光がなくせば簡単に弱体化させることも可能だろう。

 

「だから戦うなら夜か室内だね。できれば室内がいい、電灯とかがない。……そう、地下的な場所に追い詰めてシンプルに殴れば、まあ、何とでもなるでしょ」

 

 こうやってあっさりと対策を考える僕だったけど、それは全部無駄で終わる。

 

 結論から言おう。僕は鏡鬼とその使役者の仕鬼祇使いとは戦うことはなかった。

 

 ある意味で将来的に厄介なことになるが、今回は戦わない。

 

 今回の僕の対戦カードは叶切利。

 

 僕に恨みを持つ、昔馴染みの彼女が今回の僕の相手だった。

 

『いひひ。よくすぐに弱点を見つけたナ』

「パワポケのデイライトが光を反射して戦ったから、その逆の発想」

 

 我鬼の質問に僕は答える。

 

 パワポケ12のピンクルートに登場するデイライトというキャラクターが存在する。そいつは鏡で光を屈折させて光の届かないビルの内部でもビームを発射させて戦うとかいう強キャラだというのに、ギャグみたいな負け方をしたキャラだ。

 

 やっぱパワポケって一番面白いわ。僕もパワポケみたいな作品を作りたいな。

 

「あ、そうだ。折角思いついたし、これも書き溜めとこ」

 

 パワポケで創作活動について思い出しては今日習ったことを書き留めておこうと思い、僕は画面が消えたスマホを起こしてはユーチューブからメモアプリ『ColorNote』を起動させて、新しくメモページを呼び出し『シナリオ あらすじ2』と打ち込んでパッと書き込んでいく。

 

 さて、どういう風に内容を改変するべきか。敵は鏡の鬼だから……あ、そうだアリスにしようっと。不思議の国だか、鏡の国だかの『アリス』。うん、使い古されたキャラだけど、有名どころだから吸血鬼のように皆に伝わりやすい。……あれ? アリスって意地悪な継母みたいなのがいる話だっけ?

 

 そんなことに頭を捻りながら一先ずパッと思いついたものを書き留めていく。

 

『がのいち、それマジでやんのか?』

「まあね。折角の機会だし、僕も自殺する前にやってみたかった創作活動をやりたくてね。ちゃんと完成するのか、それとも未完で死ぬのか」

『死ぬのは勝手だが、オレを鬼の王にしてからにシロ。いひひ』

 

 我鬼は相変わらず鬼の王になりたい様子。僕のような個人主義至上としてはそういった団体のリーダーだとか何がいいのかがよく分からない。

 

 仕鬼祇使いと鬼の契約において、僕と我鬼は性格面とかで相性がいいという話だけど、そこだけはどうも違うわけだ。根本はひねくれものでも、そこから生え行く方向は違うのだろう。

 

「設定で考えているんだけどさ、やっぱ金って邪魔だな。火、水、木、土はいいんだよ。金って土の上位互換でいいと思うんだよ、誰だよ、金入れた最初に五行考えた偉い奴」

 

 理屈自体は分からなくもないが、『金は水を創る』っていう話は。……いややっぱ分かんない。金が水ってできる? 理屈としては昔の人は『金を冷やせば水が産まれる』っていうのは分かるけど、それよりも現代だと『土が太陽の熱の蒸発で水滴が貯まって水ができる』的な解釈があるわけだし、そっちの方が納得いく。

 

 どうするべきか。一応形としてはまずは物語形式の小説として書き上げたいが、将来的になんかRPG的なもの作りたい僕としては属性的なもの入れたい。だけど、習ったばかりの五行を入れるのは面白いが、どうしても『金』の扱いに困る。

 

 いや、別に普通のゲームとして扱えば気にしないだろうけど。ポケモンの土と鋼だってあるしな。

 

 全く、金なんて属性持っているヤツなんてそうそういねえよ、誰だよ、金属性って。

 

「あれだな。烈火の炎って偉大だわ」

 

 金属性のキャラで思いついたのが烈火の炎の小金井だった。アイツの武器結構好きなんだよな。五形態からの隠された六形態っていう展開が好き。

 

 そんなことを想いながらもとりあえず、ざっくりとした内容を纏めてみる。

 

「やっぱ魔法みたいなのが欲しいな。この場合霊能力だけど」

 

 どういう感じのネーミングにしようか。漢字系の文字にしたいんだけど。などと頭を捻っていると属性のことを考えていたおかげで根本的な部分を思い出す。

 

「てか、アリスにしろ、吸血鬼にしろ、日本の妖怪じゃないな。日本の舞台の霊能力者設定だけど」

 

 細かい部分だが、こういうところちゃんとやっておかないと面倒くさい人に突っ込まれるんだよな。設定的になんか霊能力者ってワード以外ものを考えた方がいいか? ペルソナのペルソナ使い的なオシャレワードを。

 

 ネーミングセンスって難しいんだよな。言葉の意味、あるいはそれを捻ることにおけるその時の閃きと言葉そのもの言い回しとか、漢字とルビ振りが如何になるかで、厨二センスとオシャレセンスに綺麗に分けられる。

 

 僕って名前つけるの苦手なんだよな。忘れっぽいから自分で名付けておいて、定着するのに結構時間がかかる。なのでセンスとしては結構シンプルな感じに納まることが多い。あとごちゃごちゃしているよりか、スタイリッシュなシンプルさが一番カッコいいって思っている。

 

 考えれば考えるほど創作が難しいことだと分かる。自分のチカラが如何に空っぽなのかよくわかる。

 

 ……は~、もう死んじゃおうっかな。自殺しようかな。今度相手にする鏡鬼に殺されるか。うん。

 

 死にたがりスイッチが入り、鬱々としていたら、我鬼が不思議そうにしながら訊ねてくる。

 

『ありすってヤツは分からんが、大体、大体日ノ本の外の妖怪は霊媒師達のせいで一部の妖怪は封印されているだろうガ』

「?」

 

 我鬼の一言に僕は首をひねった。え、今聞き間違えじゃなかったら日本の外の妖怪は封印されているって言ったのか? 一体どういうことだ。

 

 そのことをそのまま伝えると、いつも意地汚い笑みを浮かべてはバカを相手する時のような愉し気に語ってくる。こんなことで知識マウント取られても。

 

『いひひ。詳しくは知らねエガ。大昔に外の霊道師と怨霊師との間で大きな戦争があッテ、それで勝ったのが霊道師側デ、それがきっかけに海外の怨霊師の霊力と一部の妖怪は封印されたって話ダ』

「へえ~、そうなんだ」

 

 海外の霊媒師っていえば中国辺りの術士みたいな、あるいは仙人とかその手と悪い術士の……キョンシーの話かな? そこで戦争があって、仙人側が勝った、的な話だろうか?

 

 ……そういえばあの自称魔女もなんか似たようなこと言っていたな。

 

 自称魔女の彼女。去年、ぜっくんのことであれやこれやと出逢った彼女。何でも魔法使いのくせに魔法が使えないだの魔力が封印されただの、主人公を皆殺しにしてやるだの、いい歳した子が常人じゃあ考えられない、傍から厨二病全振りしている痛い子だな、と思えない彼女だがその手の不思議チカラは本物である。ぜっくんでそれを証明してくれたが。その時に彼女が昔魔法戦争があって負けたから魔力を封印されたのなんの聞いたような聞き流したような。

 

 僕として可愛い弟分が変な道に踏み外さないようにするために彼女の話だの主義主張はぶっちゃけどうでもいいって話半分も聞かなかったし、僕のポンコツ記憶力のことだから何かのラノベとか記憶ごっちゃになっている可能性がある。

 

 まあ、どちらにしても僕には関係ない話だし、今回の事件もぜっくんが関わっているとはいえ全く関係ない話だろう。

 

 創作の方では何かと設定として活かせそうな話ではあるけど、正直どう活かせばいいのか分からないため、今の話は頭の中に止めておく程度にしておくか。僕の記憶力だと忘れてしまう恐れがあるけど。

 

 そんな感じに僕らは雑談を交えて明日に控えて寝た。

 

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