マリシャス   作:トワル

1 / 5
ある部屋

『ヒュライツ総合病院の医師が殺害された事件で、警察は今日23歳の男を逮捕しました。

この事件はおととい、ヒュライツ総合病院に勤務している医師のリューク・エタナーさんが自宅で倒れているのを、職場に来ないことを不審に思った看護師が発見し・・・』

 

テレビから流れるニュースを部屋の二人が見ている。

一人目は部屋の主だ。扉から遠い場所の一人用椅子に座っている。外見で説明が必要なことは、仮面を被っていることだ。顔の前面を覆うそれは金属製で、表情は窺い知れない。

服装は白衣だが、洗濯では落ち切らなかったであろう汚れがいくつか付いている。

机には紙があり、ニュースの合間に記入している。

 

二人目は来客用の椅子に座り、目の前の机に置かれた個包装のお菓子を食べている。服装は小汚く、着替えなかった日数が気になる程だ。顔は、ニュースで被害者として写真が公開された男と同じ、つまり

殺害されたリューク・エタナーだった。

 

殺人事件のニュースが終わると、テレビの音量を下げ話しかけた。

「本日担当いたしますバース・デファーです、よろしくお願いします」

「はいよろしくー」

「これからいくつか質問します。緊張せずにお答えください」

バースは目の前の状況を全く不思議に思わず、ただ淡々と言った。

「お名前は?」

「リューク・エタナー」

「ご職業は?」

「医者をやってました」

記入し少し考えたのち

「私と最初に会った場所を覚えていますか?」

「君が覚えてるかわからないけど手術室だったね」

「一緒に治療した動物は?」

「ネズミ、野良だったかな」

「その怪我の種類は?」

「噛み傷だった、こう・・・ガブッと」

リュークは両手で牙を表現した。

それを見たバースは紙を書き終わり「ご協力ありがとうございます」の一言の後、ため息をついた。

「何をしにここまで来たんですか?」

今まで質問の声色とは違い呆れを感じさせたが、それを意に介さず

「一つ目は待ち合わせ、二つ目は君が欲しいと思ったものを持ってきたよ」

リュークは立ち上がり、近くにあったホワイトボードに設計図を書いていく。

 

数分後

「こんな感じだね」

完成した設計図の前で、リュークは大きく伸びをした。

バースはそれを一通り見て、顎に指を当てて考えた。

「どうして私に?」

「君が世界で一番これを悪用しないって分かってるし、作られた時対抗する為の工場でしょ?」

敷地内の建物を指差し、話を続けた。

「俺は研究したいけど戦争に使われたくないんだよ、知ってると思うけど。

軍から提案があった時も返答は濁しておいたけど、そのあとに事件が起きてね?

資料を処分する暇もなく国を出たってわけ。

あ、他の国には絶対教えないよ?」

「昔から胡散臭さが取れない人ですよね、あなたは」

リュークはその言葉を聞くと、「信じてほしいけどなあ」と小声で言い肩をすくめた。

 

その時、バースの端末に通信が入った。

「何かありましたか?」

『こちら積み荷の確認作業中なんですけど、荷物が足りない、院長に聞いてくれって言われて・・・何か分かります?』

リュークに顔を向けると、自分を指差し帽子を被った。

「今持って行かせます、少々お待ちを」

『了解しましたー』

バースが通信を切ると、すぐ別の人に連絡を送った。

その人物は部屋の外で見張りをしていたので、扉が開き

「積み荷の所までご案内します」と少年の声。

リュークが部屋を出ようとした時、「ああ、忘れてた」とバースの方を振り向く。

「じゃあね、久し振りに話せて良かった、健闘を祈ってるよ」

「もう二度と会うことはないでしょうが一応言っておきます、”お大事に”」

 

一人しかいない部屋の中、「もっと集めなければ」というバースの声は、少し焦りを感じていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。