兵士と別れて数時間後、
「何も起きない」
写真や映像を撮っていたが現場に進展が無く、裏路地に入り会社にいる仲間に連絡した。
『ヒュライツだけで対応するって・・・ふふっ、この写真いいな』
「他国の軍入れてたら早かっただろうな、これ」
突入して周りの建物に被害が出たら、非難されるのは明らかだ。
「他の放送局も同じ感じ?」
『ああ、膠着状態とか交渉難航って』
「しっかり結末まで見届けるけどさ・・・ん?」
ふと今いる路地の入り口を見ると、
「誰?」と子供に突然話しかけられた。
(誰はこっちのセリフだよ・・・子供だけどテロリストかもしれない)
と思ったので護身用の銃をいつでも出せるようにしながら
「俺は事件の取材に来た、君は?」と話しかけた。
「避難所で薬を忘れた子がいて、その子の家に取りに行かなきゃ」
子供の服装は薄着で、身を守れそうにない。
「急がなきゃまずそう?」
「いつ悪くなるか分からないし、事件の解決まで待ってられない」
「巡回中の兵士に話したら安全に送ってもらえると思うけど」
と言うと、子供はムッとして
「自分たちの家なのに許可を取るのはムカつく」と不機嫌に言った。
(そうなんだけど子供ひとりで薄着は危険だよな)
『ちょっといいか?』
「ああ、会社の人と相談するね?待っててね」
「うん」
少し離れた場所で
「もしもし?今の聞いてた?」
『ああ、通話切ってなかったからな』
「現場の撮影か薬探しの二択」
『自分としては撮影、でも助けたいって言うよな』
「もう一人は?」
『判断は任せます、でも気をつけて、だとさ』
「代わりに現地の人に取材する、これでどう?」
『そうするなら俺は何も言えない』
「ありがとうな」
「お待たせ、薬探しを手伝うついでに取材をさせて欲しくて、
一人より安全だと思うけど、どう?」
「邪魔しない?」
「うん」
胸を張って報道したいから、人助けはするのが自分なりのポリシーだ。
「家に向かおうか、質問は歩きながらね」
家に向かって細い路地を早歩きで通る。
「アジトになってる建物に行ったことは?」
「ある、けどいつも見回りの人がいた」
「見つかるとどうされた?」
「手でダメ、あっちいけって」
「近所の大人の話は聞いたことある?」
「うん、大人の誰も中には入れなかったって」
(怪しいとは思っても、まさかテロリストとは思わないだろうな)
と考えながらカメラを回していたら、背後から視線を感じた。
(子供と会った時から尾行されてる?変に伝えて怖がらせるのも良くないし、家に着いたらどうにかするか)
目的の家に着いた時、おもむろに端末を取り出し「あっ」と声を漏らす。
「ちょっと先に薬探してくれる?」
「どうしたの?」
「会社の仲間が連絡寄越せって」嘘をつく。
「分かった」
子供と別れ、物陰に隠れる。
近付いてくるのは機械の駆動音で小型のようだ。
飛行する音は聞こえないので陸上を進んでいる。
息を潜め、それが真横を通った瞬間ヘルメットで閉じ込める。その時『やば』という声を聞き逃さなかった。
捕まえた機械を恐る恐る見ると、
「ネズミ?」
予想していなかった形に思わず声に出す。
『んん゛っ あー、あー』
女性の咳払いが聞こえ、冷静になり質問する。
「どこの誰だ?」
『記者の方ですね?私はスウィージス防衛軍の者です』