農家の子   作:マジックテープ財布

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15話

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クリント王国の末裔とかいうゲーム設定でよくあるやつだった件 【ライザのアトリエ】スレより

326:ガイア

 どーすっかなぁ

 

331:名無し

 やっちゃったなぁ。やっちゃったな、おい。

 

338:名無し

 ガイア。やっちゃったもんは仕方ねぇよ……飲んで忘れちまいな……

 

341:名無し

 やっちまったもんは仕方ねぇよ

 

349:ガイア

 やっちゃったなぁ。まさかあんな森の中で人間が出てくるとは思わないものなぁ。だから……、つい矢をなぁ

 冗談だけど

 

355:名無し

 >>331 - >>349

 いつから宇宙船が飛び交う江戸に転生したんだ お前ら

 

365:名無し

 >>349

 お前の矢は洒落にならないからガチでやめろ

 

371:ガイア

 いやー、マジで自分の精神に従って憤ったんは良いんだけどさ。それやったやつがご先祖ってさぁ

 今まで仲間面しといてこれはリラさんバチギレだろ

 

380:名無し

 あーね

 

388:名無し

 でぇじょうぶだ。最悪、ガイアをサンドバックにする許可を出せば良い

 

398:ガイア

 >>388

 死ぬが? 

 

409:名無し

 >>371

 『楽しかったぜェ、お前との友情ごっこォ!!』ってゲス顔で話せば? 

 

410:名無し

 ジャンジャジャ~ン! 今明かされる衝撃の真実ゥ! 

 

417:ガイア

 >>409

 死ぬが!? >>410も相まって仲良いな、お前ら

 それより、今後はどうすればいいと思う? ネタバレしない程度に指針にしたい

 

422:名無し

 姉ちゃんについて行けば? 

 ていうか、俺らはあまりネタバレできない環境だし

 

426:名無し

 ネタバレしたら削除されるしな。人死に出そうなところはあれだけど、そこら辺はわきまえてる

 

427:名無し

 心はハッピーエンド派。だけど、ガイアには面白おかしな不幸な目に合って欲しい

 

437:名無し

 >>417

 今後のことで思い出した。ガイアってたしかバレンツ商会からなんかいわれてたんじゃね? 

 それやっとかないとマズくね? 

 

444:ガイア

 >>437

 あ、忘れてた。サンキュー

 

446:名無し

 後、詳しくは言えないけど歴史については調べておいた方が良いと思う。理解度で結構どうしたら良いのか取っ掛かりが増えるかもしれないし、クーケン島に住む上では知っとかないといけないと思うんだ

 

456:名無し

 タオについてって調べてもらえば? 

 

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 まー、流石は原作プレイ済みの掲示板の方々。あんな厄ネタをよー黙ってくれたよ。最初から分かってたらどうなってたか分からんもん、俺。

 

「ガイア、ボーっとするな。話はまだ終わってないんだぞ」

 

「いや、あの時は頭に血が上っていたからあんなことが言えたんですがね。ちょっと振り返ってみれば、未だ信じられないことがわんさかですよ」

 

「そうだね。クリント王国と大侵攻とかは歴史的にも興味深かったけど、まさか僕たちがその子孫。故郷も人工島なんて消化に悪すぎるよ」

 

 腹を抑えながら呻くタオに同意する。言われてみれば硬い岩盤といった心当たりはあったが、そうだと認識していなければそれは『ただの気のせい』にしかならない。

 そうなると、これまでの生活の中でいくつかはそんな『気のせい』で済ませていた事態もあったのではないか。そんなレント兄ちゃんの意見で、俺達はクーケン島における『気のせい』をとことん突き詰めることにした。

 

 状況は理解したが、頭で理解しただけで俺達の心は未だ混乱状態だ。現状を纏めるのは大事だよ。

 まずは掲示板の民が言った歴史について、ちょっと考えたら気になりだしたことを踏まえて話してみようと思う。

 

「じゃあ、まずは俺から。俺達の村って遺跡が立ち並んでいる癖にその歴史について分かってないよな」

 

「あたしも思った。禁足地だったり悪魔の野だったり、やっちゃ駄目ってのが多いだけで理由がないよね」

 

「思うに古老が正確に伝承していないだけかもしれない。クリント王国時代の文字も読み方はタオのひい祖父ちゃんが継承せずに死んで途絶えてるんだろ? なら、今まで継承していた歴史が読み方が分からなくて喪失したのも筋が通る話だよ」

 

「それか、王国が記録を消して回ったか……だ。都合の悪い物を消してなかったことにするのが人間だ。あり得ない話ではないだろう」

 

「どちらにしても、例の古式秘具を解体するには実際に歴史を知る必要もあるわけだな」

 

 人工島というのであれば、暮らすための水が確保されているはずだ。それなのに水不足になっているのはなぜか。

 収容人数が増えたのか、それともなにか非常事態が起きたのか。少なくとも俺達は最終的には歴史を紐解く必要があるが、肝心の歴史を記した記録の所在が分からないという結論に至る。

 

 ただ、その点に関しても掲示板の民がヒントを残してくれている。アンペルさんは歴史を抹消した説を推しているが、タオの家の本がまだ全部読み解かれていない。あれらを片っ端から読んでいけば、歴史書とは言わないまでもピースを埋めるぐらいは出来るだろう。

 それに、古老の家にも確か古い本があったはずだ。バイト感覚で家の掃除を手伝ったことがあるけど、古びた本について聞いたら『読めない』って答えられて、読めないのなら必要ないだろうと不要品の箱に入れたら怒られた記憶もある。

 

「結構、ガイアってしっかり考えてるよね」

 

「ハハハ、タオは1人でバレンツ商会に本を持っていけな? アンペルさんは申し訳ありませんが、クーケン島までお越しいただきたいです」

 

「分かっている、大量の本を対岸に送るわけにもいかんしな。クラウディア、すまないが……」

 

「はい、一室を提供するようにお父さんに頼んでみます」

 

「助かる。無理ならば、空き家をどこか調達するとしよう」

 

 泣きながらすがってくるタオは別として、これで歴史からクーケン島の歴史や秘密を調べる下地は出来た。後は2人で共同して調べてもらうとして、俺達は姉ちゃんが見つけた鍵に着目する。

 『中へ入る仕掛け』という文字と遺書の内容から人工島であるクーケン島の中に入る鍵。そこまでは推測できるのだが、こんな特徴的な形の鍵を使用する所があったか全く覚えがない。

 

 そもそも、俺達って遺跡に全く価値を見出してなかったからなぁ。

 

「トレッペの高台かなぁ。あそこって遺跡の中でも特に古いって聞いたことがあるし」

 

「あぁ、モリッツ氏から禁止されていたところのか。たしかに可能性としては高いな、島の中で多少……という感じだが」

 

 トレッペの高台。古い石碑などがある場所だが、かの水生みの離れがあるために人が一切居ない寂しい場所である。モリッツさんとのいざこざが始まった因縁深い場所だが、ボオス兄さんの手引きがあれば調査も可能だろう。

 ただ、いくらそこが怪しいからと言ってそこだけ調査するのも視野狭窄に陥る恐れもあり、何より非効率だ。そういった観点を指摘すると、姉ちゃんがあからさまに嫌な顔をし出した。

 

「あんた、サボる気じゃないでしょうね。あんただけ役割がないんだけど」

 

「年がら年中サボってた姉ちゃんにそれ言われるとは思わなかった。けど、今回ばかりは見逃して欲しいんだ」

 

 うん、今回だけはサボりを容認して欲しい。

 農業辞める宣言をした手前、このまま無職になって親の脛をガリガリ齧る気は毛頭ない。既にルベルトさんから長期依頼の誘いもあるので、調査期間を元手に俺は今後に見据えた行動を取ろうと思っている。

 そのことを説明すると、農家にならずとも俺が村でなんやかんやすると思っていたのかタオやレント兄ちゃんが驚いてくるが、心配せずともオーレン族の聖地の水じゃなくて人工島本来の水であれば農家は続けるよ。

 

 ……ていうか、塔に水源として水を際限なく生み出す古式秘具を用いているのなら、避難先ではまた別の水源が必ず存在するはずなんだよね。そうじゃなかったら、避難ではなくて囚人を厳密に管理する必要がある監獄として利用されていると思うし。

 まぁ、仮にこっちの水源もどっかからパチッて来たのなら。その時はその時だ。

 

「農業は姉ちゃん次第かなぁ。クーケン島由来の水があるのならそれを活用できれば言うことないよ」

 

「本当にお前は義理堅いというか、真面目というか。お前達はお前達と伝えたはずだぞ」

 

「すみませんね、リラさん。これが俺なんで」

 

 無知のままならばたしかにそのまま使うことが出来た。けど、今はもう知ってしまっている。知ってても尚、知らない風を装って自分の糧に利用することは出来ないよ。

 俺自体が生き辛そうだと思わず考えてしまう発言に、リラさんもため息交じりで『勝手にしろ』と突き放してくる。ただ、完全に突き放したわけではないのは今までの交流関係から分かってる。ほんと、苦労掛けます。

 

「じゃあ、帰ろっか」

 

 塔まで行ったことで既に周囲は暗くなり始めているため、姉ちゃんの声に皆は少々急ぎながら帰路へとつく。

 なお、アンペルさん達はバレンツ商会の護衛や諸々の世話になっていたおかげかルベルトさんが借りている屋敷の一室を融通してくれたらしい。そのため、最初は突っぱねていたタオの家の本を運ぶ作業を彼が泣いて頼むので仕方なく手伝ってやったことをここに記しておく。

 

***

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クリント王国の末裔とかいうゲーム設定でよくあるやつだった件 【ライザのアトリエ】スレより

691:ガイア

 おはようございました! 

 今日はルベルトさんがうちにきて俺の王都行きの説得! 

 次にタオとアンペルさんが本とか手記の調査を行っているので、古老から本を接収してみせる! 

 最後に調査結果を姉ちゃんに発表し、皆ハッピー! 

 以上、3本となります

 

699:名無し

 >>691

 じゃ~んけ~ん ぽんっ! 

 

700:名無し

 俺はパーを出したぞ

 

701:名無し

 なぜ負けたか明日までに考えておいてください

 

721:名無し

 ホント君ら、仲良いな

 

722:名無し

 逆に仲悪くね? 

 

733:ガイア

 まぁ、一部ネタが分からないけど。じゃんけんは良いから王都ってどんなとこかおせーて

 

742:名無し

 ロテスヴァッサ王国の首都。街の区画は露店が立ち並び、中心部の「アースター中央区」、カフェやアーベルハイム邸がある「バイスハイト学園区」、職人達の工房や鍛冶場がある「ラウフ職人区」、クーケン島のような懐かしい雰囲気を感じる「クラーレス農業区」で構成される。

 王都の主要産業は国中から集まる金属の加工で、農業の方はなり手が少なく、実際に農業区は閑散とし、憩いの場の公園のような状態になっている。

 

743:名無し

 >>742

 wikiまるコピ乙。wikiは大丈夫なのか

 

752:ガイア

 露店あるのか。なにが売られてるん? 

 

758:名無し

 軽食とかはなんかあったなぁ。後は花屋とか、珍しい物とか、本? 錬金素材も売られてなかったっけ? 

 

766:名無し

 >>758

 たしか、どっかの絵だかでクレープに目を輝かせてるライザ見たことある

 

771:ガイア

 総菜屋の屋台作ったら売れそうだな

 

779:名無し

 まーたガイアが変なこと考えてる

 

788:名無し

 >>771

 江戸時代に総菜屋ってなかったっけ。そんな感じなら衛生面に気を付ければ流行りそうやな

 

793:名無し

 こんなのばっか考えてるからルベルトに気に入られてるのでは? 

 

799:ガイア

 わしゃ農民だよ。いざとなれば王都の農業区を間借りするのもやぶさかではない! 

 

805:名無し

 >>799

 その農民が廃業寸前なんだけどな

 

813:名無し

 王都の農業部といえば、あの人か

 

821:ガイア

 え、だれ? 金髪? 

 

832:名無し

 >>821

 茶髪

 

833:名無し

 美人

 

842:ガイア

 ふーん

 

845:名無し

 露骨に興味失ってて草

 

847:名無し

 金髪なら誰でも良いんだなw

 タオと仲良くなっとけよ

 

848:ガイア

 いや、金髪好きなだけだから。とりあえず王都には農業区画があるのね、把握

 

────────────────────

 やっぱ皆、色々と知ってんだなぁ。地理関係は歩いて経験していない身からすれば貴重な情報だ。これはありがたく活用させてもらおう。

 

「──なので、ガイア君にはそのお手伝いをしていただきたいのです」

 

「なるほど、事情は把握しました。ガイアもつい最近、一旦農業から離れたいと言っていましたし、丁度良いでしょう」

 

 そんな感じで俺が掲示板の民から進捗や首都に関しての情報を求めている横で、ルベルトさんが俺の父さんと母さんに話を持ち掛けていた。その話とは先日俺に言っていたクーケンフルーツの輸送中における注意点を確認する依頼のことなのだが、あらかじめ父さんに休暇をもらっているので話はすんなり通った。

 

 まぁ、父さんや母さんに『あぁ、このためか』と腑に落ちたような視線を送られたが、ちゃうねん。もっとクリティカル(致命的)なイシュー(課題)がでね。だから、俺の存在をイノベーション(一新)したくて……。もう良いや、言えないことを言わないよう説得するのは面倒臭いし。

 

「こんなたまに変なことを言う息子ですが、よろしくお願いします」

 

「いえいえ、私個人としましても中々付き合いやすいですよ。彼は」

 

 割と酷いことを言われるが、とりあえず農業関係はこれで誤魔化せたっぽい。あとは姉ちゃんが水を何とかしてくれたら良いんだけどなぁ。古式秘具以前の水がどうなっていたのかって歴史も分からんから望み薄なんだよなぁ。

 とりあえず、タオやアンペルさんに新たな養分として古老から本を借りるか。

 

 今後の予定を考えた末に俺はルベルトさんと一旦分かれ、古老の家までやってきた。俺の訪問に古老が珍しそうに対応してくれたので、思い切って『歴史に興味あるんですー』という体で古い本のレンタルを頼んでみた。

 すると──。

 

「おぉ、この島や伝承に興味があるのか。だが、読めるのか?」

 

「最近、アンペルさんが読めるらしくて」

 

「また、あの流れ者か……。本当に内容が合っているのか分からんぞ?」

 

「まーそれは。あ、話のネタになりますよ? こんな村なんだから、娯楽の一つや二つ増えてもバチは当たらんでしょ」

 

「なるほどな。余所の人間の解釈というものか」

 

 未だにアンペルさんのことを良く思っていないのであろう古老だが、咄嗟に『娯楽目的』と称することで割とすんなり古い本を貸してもらう。色んな動画サイトで乱立される『漫画などの作品における考察動画』や『読者の99%が知らない系動画』を参考にしたが、結構上手くいって良かった良かった。

 

 でも、ああいうのって『(自分が考えたから)99%』が知らないならば、総読者的に言えば0.1%にも満たないから過大広告と言えるんじゃないのかな。……いや、よそう。もう俺にはワン●ースが何なのかも分からないんだ、敗北者で有名なところ以降は見たことないけど。

 

「あ、ガイア君。ちょうど良かったわ」

 

 そんなことを思いながら荷車を引いて本を運んでいると、学び舎の窓を開けてシンシアさんが手招きしながら声をかけてくる。時間的にもまだ余裕があるし、美人のお誘いには応えねばならないと俺の中に潜む謎イタリア人が叫ぶため、荷車を学び舎の近くに置かせてもらって学び舎の中へ足を運ぶ。

 

「なんでしょう? また家具の運び出しですか?」

 

「そうなの、ちょっとタンスの後ろに物を落としちゃって……。ついでに模様替えでもしようと思って」

 

 うん、いつも通りの依頼だ。

 家具系をなんやかんやするのは男手が必要なのだが、タンスといったものは特に若手の力がいる。かと言って学び舎にたまに来るタオは残念だし、レント兄ちゃんも偶然通りかかる道ではないし、その他は村の仕事で日中は忙しい。

 そういう理由のためか、家具の模様替えや動かす系はロルフさんの便利屋かたまに歩いてくる俺にお鉢が回る。……まぁ、依頼料と言う名のお礼が安価なためかシンシアさんのようにひたすら俺を待つ人が居るっぽいけどね。

 

「分かりました。では、さっそく取り掛かりましょう」

 

「助かるわ~」

 

 シンシアさんに連れられた後は、特に苦戦することなくタンスの移動や家具の模様替えが完了する。農家辞めるんだったら引っ越し屋とか、家具の移動関係の副業とかやっても良さそうだな。ロルフさんにはわるいけど。

 そんな感じですっかり様変わりしたテーブルでお茶を飲んでいると、シンシアさんが巾着をそっと机の上に置いてくれる。

 

「はい、これ少ないけど」

 

「毎度どうも」

 

「そういえばガイア君って本読むの? それも古いのばっかり」

 

 巾着を懐に入れた俺にシンシアさんが尋ねてくる。どうやら潮風にやられないために荷車に覆いをかけてくれた際に中身を見たらしく、『読めないでしょ』とちょっと笑っていた。

 しかし、本はタオが読めるということや『島の歴史について興味がある』とボカした説明をすると、何かを思い出したシンシアさんが席を立った。

 

「そういえば、学び舎だからって村のお爺さんやお婆さんから色んな本をもらってたの。ほとんど私も読めなかったから困ってたんだけど……いる?」

 

「いる!」

 

 鋼の意思が見え隠れするような即決で俺はシンシアさんから読めない本を調達。そのまま、バレンツ邸へと向かった。

 

 まぁ、用が終わったらシンシアさんに返し……突き返されたらタオの家の本棚に押し込んでおこう。タオも無料で本が手に入るから喜んでくれるだろう。

 喜んでくれなかったら『オハナシ』すれば良いだけだ。へーきへーき。

 

「ちわーっす。アンペルさんとタオに本を持ってきました」

 

「あぁ、ガイア君か。随分色々持ってきたね」

 

 出迎えてくれたルベルトさんに挨拶をし、庭からアンペルさんが借りた一室に本を搬入していく。やがて、全ての搬入が済んだため、『なるほど』とか『この記載は!』とテンション高めのタオの声を背にバレンツ邸を後にしようとするが、その前にルベルトさんに呼び止められた。

 

「なんでしょう?」

 

「クーケンフルーツの輸送について事前情報が欲しくてね。今は大丈夫だろうか?」

 

 既に姉ちゃんには前もって参加しないことは伝えているし、ビジネスの話ならば協力しないわけにもいくまい。別にサボろうとしてるんじゃないよ? 就職活動、いわば『こんにちは仕事』へ行く作業を行ってるだけだから! ……多分、クラウディアさん経由でバレても許してくれるだろう。

 

 思いっきり理論武装をかましたのだが、『さっそく頼む』と言って奥に進むルベルトさんについて行った俺。その後はクーケンフルーツの保存方法やクーケン島で長期保存する方法やそのデメリットといった内容を話していく。

 

「なるほど、では布をかけて馬車の奥に置いておく方が良いんだね」

 

「基本的には果実系ですが、葉物野菜を扱うような感覚で良いかと。あれの手入れが一番繊細なので」

 

「たしかに。葉物野菜はあまり扱わなかったが、欲しいというお客が居たから運んだが……実に大変だったな」

 

 どうやらルベルトさんも苦労しているようだ。そりゃ、1代で隊商とか商会作ったんだからそうだよな。

 しかし、本当にクーケンフルーツなんて珍しいのかね。向こうでは『リュコの実』だっけ? そんな名称が付けられているなら類似品もあるはずなんだけどなぁ。

 

「ルベルトさん、なんでクーケン島のクーケンフルーツ……リュコの実が人気なんですか?」

 

「他の土地のリュコの実だとあんまり甘くないし、果汁もなんだか青臭いんだよ。だから、リュコの実嫌いの子供が王都に結構いてね。その中にとある貴族の方が"子供にも食べれるリュコの実を~"って言ったら……」

 

「クーケンフルーツが当てはまったと」

 

「私も味わったが、この島の物は甘くてね。それが気に入ったらしい。そこから話が広がっていったんだよ」

 

 なるほど、ブランドが気づかぬ内に出来ていたのか。

 たしかにクーケンフルーツに似たトマトは元はアンデス山脈の高い所が原産らしいし、降雨量的にもクーケン島があの作物にぴったりの土壌だったんだろうなぁ。美●しんぼ知識だからよく知らないけど。

 

「そういえば、王都どころか旅が初めてなんですが何か準備はいりますか?」

 

「大丈夫だよ。我々も居るし、それに復路はクーケン島の支部に配属予定の者や隊商が送ってくれる手はずだ」

 

「それなら安心です。では、王都の有名な食べ物でも楽しみにしていましょうかね」

 

「クレープとやらが人気らしい。私は食べたことはないがね」

 

 クラウディアさんから聞いた話をそのまま再生したルベルトさん曰く、前世で見たような薄手のクレープ生地を使用したお菓子が人気らしい。あぁ、これが掲示板の民が言ってたやつか。

 なるほどねぇ、やっぱり出店関係も結構あるのか。

 

「どうかしたのかい?」

 

「いえ、じゃあ何か屋台やるのも面白そうだなって」

 

 え、別に金儲けってわけじゃないですよ。ただ、立地や街の需要次第では良さげな一案あるだけで……ってこわっ! ルベルトさんいきなり顔近づけないでくれます!? 

 

「話してくれないかい? 君の言う事は的を射ていることが多いから、興味があるんだよ」

 

 真剣な顔をして続きを促すルベルトさんに根負けし、本当に土地柄も把握していない素人考えで恐縮しながら掲示板で言っていた概要を話し出す。本当に素人考えを経営のプロに話すのは非常に恐縮なのだが、『総菜系の屋台すれば良いじゃん』と切り出した。

 

 『総菜?』と首を傾げるルベルトさんに、俺は総菜とは基本的には主食と共にするおかずのことだと定義する。基本的にはスープや焼き、煮込み系といった各家庭それぞれで作られるものだが、どの世界でも『今日は忙しくて夕飯が作れない』や『ガッツリ食べたいけどカフェやレストランは高い』といったお悩みはあると俺は勝手に思っている。

 

「そうだね。王都は貴族も居るが、同時に学生や一般人も多い。特に学生なんかは料理なんてせず、基本的にはカフェで食事をとったりしているね。安価でたくさん買って自宅で食べるのは良い着眼点だと思う」

 

 『私も時間が足りないよ』と笑うルベルトさん。どうやらその悩みは本当に王都や栄えている街で発生しているらしい。……人間ってどこでもそうなんだな。

 

 おっと、話を戻そう。

 最初はロスがあって赤字だろうが、定着すれば便利さも相まって時間を有効的に使いたい層には人気が出てくると思っている。問題はこの世界にあるのか分からないが食中毒といった衛生管理をしっかりしなければならないし、屋台のメリットである移動式なところも『この場所を何時から何時まで』という許可式ならば逆にデメリットとなってしまう。

 

 どっかの社長5人から融資してもらう番組ではないが、対面に居るルベルトさんの視線が怖い。説明しながらも頭の中ではこの案を早々に『ボツ』扱いにした俺からしてみれば、『ひと思いにやれー!』と叫びたかった。

 

「面白そうじゃないか、忙しい人に寄り添った店という着眼点も良い」

 

「ふぁ!?」

 

「何か問題があるかね? ……あぁ、別に君を店主にしようなんて思ってないよ」

 

 曰く、王都は行商人にとって物を売りさばく通過点という見方もあってか商会の支部は建てたは良いが本格的にそこに根差した商売はしていないらしい。行く行くは王都にも人を据えて支部を大きくしたいらしいが、大きくするためにはその土地の人間との信頼関係も大事になってくる。ならば、先んじて王都の人間に商会の普及をしてもらうのが吉だろうとのこと……。

 

 まぁ、俺としては案を言っただけだからね。失敗しても俺のせいにならなかったら良いし……、ならない? なら自由にどうぞ。

 え、謝礼? うへへ、どうもすみませんな。あの……、手を放してもらえます? 

 

「ふむ、どうかね? 君ならば歓迎だよ」

 

 どうかね? じゃねぇよ! そんな飲みに誘う感覚で行商人の道へ誘うな! 

 ロミィさんで知ってんだぞ、行商人は結構危ないって! ……馬車でも関係ねぇよ! 

 我、農民! 吾輩、一般市民! 行商人にしたけりゃ、馬車とオオカミになれる美少女連れて来いやぁ! あ、俺の声はよく地面を崩してそうな人でお願いします。こう、羊に金を食べさせて……。

 

 流石に前世のアニメネタは言わなかったが、俺の魂の言葉にようやく手を放してくれたルベルトさんを残して席を立つ。背中から『商人をするなら支部を訪ねてくれ』と言ってきてるが、黙って部屋から出るとタオ達の元へと向かう。

 

「何話してたの?」

 

「商人に誘われた」

 

「訳が分からないよ」

 

 安心しろ、俺もよく分からん。とりま、俺のことはどうでも良いんだよ。──んで、いきなりで悪いけど進捗どんぐらいなん? 

 あ、腹押さえてるのは気にしないで。……ちょっと昔過ぎる古傷が痛んだだけだから。これは誰にも治せないから、アンペルさんもこっち来ないで。

 

 何とも言い難い雰囲気や苦し紛れの言い訳に察してくれたのだろう、タオが代表して自分やアンペルさんが調べてくれた成果を報告してくれる。

 

「まずはこの本のここ! ねっ、鍵の挿絵! これってあの塔のやつと酷似してるよね!」

 

「あぁ、うん。そっくりだね。ちょっと説明早いかな」

 

「あぁ、ごめんね。でさ──」

 

 あの……タオや? 君、歴史のことになると早口になるのは良いんだよ。好きな分野だからね。俺も身に覚えがあるからその行動はある程度許せるよ。

 でもさ、俺に本を見せながら『ここに書いてる●●がー』って詳しい説明を放り投げるのは止めてくれる? 俺が読める前提で話するのは止めよ? 

 

「ほら、ここにもライザが見つけた封書に書かれてた"南フルースター管区長"って文字がある! その後ろには注釈で"上記の者が居ない場合は代役が中で祭事を執り行うべし"って書いてあるから、場所さえ分かれば開けるんだよ!」

 

「あー、うん。嚙み砕くと祭儀場ね。……で、それはどこにあるの?」

 

「あー、それがだな」

 

「まだ分かんないんだ!」

 

 アンペルさんが言い辛そうに答える前に自信たっぷりに結論を言ったタオ。その頭部に向かって勢いを殺した手刀を叩きこんだ。

 

「アンペルさん。俺は地図を取ってくるんで祭儀場という単語が書かれた前後の1文を書き出すか、そのページに印を書いた紙を挟み込んでください。祭儀場の場所を割り出しましょう」

 

「地図に書かれていない個所もあるだろ。割り出すのは困難だぞ?」

 

 たしかにそうだ。この世界の地図は航空写真や衛星写真。コンビニで売っている地図のように詳しくはない。クーケン島に至っては水没している場所は立ち入りが難しいという理由で、ブルネン家が所有しているもの以外省かれている地図が出回っている。

 

 だが、関係ない。ここまで分かっているなら人海戦術や力技で何とかなる。

 それに大事なことを行うための目印なんか目立ってなんぼだ。いくら古代の物でもランドマークは早々変えることは出来ないだろ。

 同じく、手順なんかもそうだ。手順書なんか馬鹿に読ませて理解できるぐらいがちょうど良いってサラリーマン時代に課長の矢幡さんも言ってたし。

 鍵穴があって差し込むのか、そこに置くのか、カードキーのように近くでタッチするのかは全然分からないけど、手順書を読み込んで行けばどう使ったのかも導き出せる……はずだ。

 

「ほら、タオも余計な寄り道しない! 時間はないんだからさっさと本を斜め読みしろ!」

 

「えー、こんなに知らない本を斜め読みなんて出来ないよー」

 

「斜め読みか本の汽水湖漬け。どっちか好きな方を選べ」

 

「斜め読みでお願いします!」

 

 まったく、素直に頷いてればいいんだよ。まぁ、借り物は流石にやらないけどな。

 

 そんなこんながあって俺はボオス兄さんに水没区画まで書かれている詳細な地図を借り、そのままバレンツ邸の一室でアンペルさんやタオと解読した内容を基に地図に指を這わせる仕事に入る。

 俺の予想通り、作業手順は初心者を相手にしているのか『どこからどこまで行き、どのようなことをして次の場所に移動』といった具合で書かれている記載が多々あったおかげでスムーズに進んだ。

 

 ただ、恐らく代表者が通ってなにかを行ったであろう場所。場所については見当はつくが、なにがあったか度忘れしてしまった。

 

「タオー。こことかここみたいに、所々止まってなにかしてるっぽい記述の場所あるじゃん? なにがあったっけ?」

 

「うーん、なんだっけかな」

 

「あぁ、たしかそこには石碑があったな。文字が擦り切れていて読めなかったが」

 

 アンペルさんの言葉に俺の記憶が一気に思い起こされる。

 

 あー、石碑か。いつも視界にあったからすっかり忘れてたわ。確かにランドマークとしちゃ最適だな。

 そうなると、石碑から石碑に移動していって──あー、階段とか登っていって高度上げて行ってるから──見つけた! 

 

「トレッペの高台だな」

 

「うん、手順の終点もそのあたりで移動を終えてる。あとは鍵だけど……あの鍵を窪みにはめこむってかいてあるね」

 

 お、これで全部分かったな。本を纏めてー、荷車に置いてー、カバーしてー、ルベルトさんに夜間置いてもらうように交渉してーっと。

 じゃ、姉ちゃん達に報告に行くべ。フゥーハハハー、条件はすべてクリアされた! 

 

 意気揚々と俺達はバレンツ邸を出たところで当の本人達とかち合った。ちょうど良いとばかりにタオが鍵を使う場所や使い方を説明するのだが──。

 

「もうやったわよ、それ。上下左右と裏表で窪みに嵌め込んでみたけど、それでも動かなかった」

 

「えぇ……」

 

「俺達の苦労が……」

 

 姉ちゃんからの無慈悲な報告により、俺とタオは膝から崩れ落ちた。




ガイア君のロールはなんだろうと思ったらガチガチに硬いタンク以外思いつかなかった。
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