ひょんなことから変なおまけが憑いてきたわけだが、姉ちゃんが言うには弓を最優先で調合しただけで準備がまだ終わっていないらしい。今回は本当に総力戦なので、素材を回収する籠にもアイテムを大量に入れて道中の素材は無視するとのことだ。
マジか、錬金術士ってどんなにおかしい物でも素材はすかさず籠に入れて持って帰ろうとする異常者の集団じゃないのか!? うわ、アンペルさんも苦虫を数百匹単位で噛み潰したようなすっごい悔しそうな顔してるし……。
「万全の状態で女王を倒すためだ。仕方がない」
「アンペル、度々思うがその素材に対する情熱は少々行き過ぎだと思うぞ」
「仕方ないだろう! 錬金術士は素材が無ければ調合が出来ないんだ! 良い素材で良いアイテムにするのは我らの義務だぞ!」
珍しく熱弁するアンペルさん。姉ちゃんも首を上下に振って肯定を示してるが、俺やレント兄ちゃん達にはちっとも理解できない内容であったため、無視して今後のことを話し出した。
それぞれの予定を聞いて回ったが、レント兄ちゃんは父親であるザムエルさんに勝負を挑むと鼻息を荒くし、タオはボオス兄さんから渡されている留学についてのあれこれを調べるために家に閉じこもると宣言する。一方でボオス兄さんはというと、雇い入れる2人の賃金について当事者と入念に打ち合わせした後にモリッツさんにそれを報告。そこから承認まで話し合いを行うらしい。
「クラウディアさんは?」
「私も、そろそろ勇気を出そうかなって」
そう言ってクラウディアさんはフルートを取り出す。
皆して憂いがないような行動をしているが、俺はどうするかなぁ。父さんと母さんへの挨拶は長くすると絶対ボロが出そうだから簡潔にしたいし、そこら辺をぶらつくのも無為に時間を潰しているようでもったいなく感じる。
「姉ちゃーん、準備にどのぐらいかかりそう?」
「3日でなんとかするー!」
3日か。ふーむ……、ここは。
────────────────────
ドキッ★ フィルフサだらけの異界ツアー【ライザのアトリエ】スレより
24:ガイア
ほい
30:名無し
お、きた
34:名無し
またなんか困りごとか?
35:ガイア
準備に3日かかるんだとさ。だから、1日目と2日目の予定を決めようかと
39:名無し
>>35
と、いうことは?
48:名無し
>>35
来るか!
54:ガイア
安価を行う!
1日目の朝>>114 昼>>147 >>158
2日目の朝>>195 昼>>224 >>250
56:名無し
ひゅー!
65:名無し
きたぜ、ヌルリと
75:名無し
ksk
82:名無し
そろそろか
91:名無し
クーケンフルーツ祭り
97:名無し
砂浜でピク●ンごっこ
106:名無し
クラウディアにセクハラ
114:名無し
矢の増産
120:名無し
英雄の魂とシャーマンごっこ
121:名無し
最初は矢の増産。堅実だな
129:名無し
シットロト踊り
132:名無し
何かの賭け事で120億コル溶かす
143:名無し
タイムマシーンを探す
147:名無し
弓の練習
155:名無し
ライザの太ももについての研究を行う
158:名無し
弓関係しか当たってねぇ!
167:名無し
訓練だらけはつまらんぞ
172:名無し
>>158
お前なぁ……
177:名無し
>>158
処す?
180:ガイア
後で振り直すべ 安価なら休息
184:名無し
お前らそろそろ減速しろよ セクシーコ●ンドーの練習
195:名無し
その辺をぶらり旅
204:名無し
もうちょっと皆はっちゃけろよ
206:名無し
でも、セクハラし過ぎてゲームオーバーはかわいそうだろ
211:名無し
一人で異界へ向かう
216:名無し
ひたすら水を生み出しまくる
221:名無し
漁師にお礼参り
224:名無し
アガーテ姉さんに喧嘩を売って訓練代わりに暴れる
226:名無し
琳派式マッサージをライザに施す
233:名無し
>>224
やりやがったww
240:名無し
あー、こりゃ死ぬわ
247:ガイア
マジで許さんぞ。安価なら休憩
250:名無し
クーケン島のどこかで踊り狂う
256:名無し
ロミィさんにセクハラ
257:名無し
さて、>>158はどうする?
258:名無し
>>158の処遇どうすっかね
263:ガイア
どうせ弓関係が続いてるし、1日中弓の修練とか矢の増産で良くね?
266:名無し
>>263
それが無難か
271:名無し
>>263
せやな。>>158は感謝しろよ
272:名無し
>>158
ペェッ!
278:名無し
んじゃ、以下の通りか
1日目 朝昼晩ひたすら矢の増産と弓の修練
2日目 朝:散策 昼:アガーテと喧嘩 晩:一晩中踊る
281:名無し
うーん、2日目のオーバーワーク感
285:ガイア
2日目の昼と晩は難易度高過ぎね?
288:名無し
よゆーよゆー。ちょっと肩ぶつかって治療費請求すればすぐよ
291:名無し
>>288
本気で治療費発生しそう
292:名無し
怪我で女王戦不参加だったら笑うしかない
296:ガイア
畜生、やってやらぁ! やらんとお前らのことだからレス消化に協力してくれないだろうしな!
299:名無し
その意気だ
301:名無し
>>296
当たり前だよなぁ!?
────────────────────
こいつら本当に容赦しないな。いや、油断した俺が言うべきことじゃないか。
ひとまず、安価は絶対だけどわざと解釈を捻じ曲げることも可能だと思うし、斜に構えてれば大丈夫な物ばかりだ。長期間の用事を頼まれるかもしれないしな。
「ガイアはどうすんだ?」
「特にやりたいことないから弓の練習。後は散歩とか」
「あ、じゃあ後でちょっと頼みたいことがあるんだけど」
おっと、クラウディアさんからお呼びがかかった。
ふっ、これはモテる男ですわ。すまんな。掲示板の皆の衆、これも俺の英知が醸し出すインテリジェンスな雰囲気の賜物。あ、……ッスー、ワカリマシタ。
俺に『話は後でするから』と言って来てはいるのだが、クラウディアさんの目線が俺ではなくて姉ちゃんにずっと向いていることに気づいてしまう。そのことから瞬時に頼みごとのメインは姉ちゃんで、その付き添いみたいな立ち位置なのだと理解した俺は心の中で泣いた。
そうこうしている間に夕方になりかけてきたので、無理やり姉ちゃんを釜から引き剥がした俺達はクーケン島へと戻っていく。道中で『まだ作りたいー!』と暴れる姉ちゃんだが、俺が母さんの話をすると即座に大人しくなった。──ほんとちょろいな、こいつ。
***
矢を作る。弓を引き絞る。当てる。
魔石の森の奥で俺は朝からずっとこの動作しかしていない。たまに通りがかった人が『なにしてるの、あの子』といったような視線を送ってくるが気にしない。
なにせ、安価は絶対なのだ。ここで変に事実を捻じ曲げたり、誤魔化したりするといざという時に『またか』という雰囲気になってスレを見てくれる人が居なくなってしまう。
そうなれば精霊の通り道の拡張も上手くいかなくなってしまうので、従順な雰囲気を出して見てくれる人を維持するためにも俺は機械にならなければならない。
「ガイアがまた変なことをしていると通報があったが……、弓の訓練か」
『Yo●tuberとか芸人とか大変なんだろうな』と思っていると、アガーテ姉さんが後ろから声をかけてきた。また通報されたらしいが、俺って放し飼いの熊とかそういった認識を持たれているのだろうか。1回クーケン島の全員に聴取したいところだが、今は目の前で仁王立ちしているアガーテ姉さんに謝罪するのが先決だろう。
「あ、ごめんなさい。こっちの方が近いから」
「人気が無いが、一応練習中の看板でも立てておけ。……で、どうなんだ?」
「どうなんだとは?」
「先ほど明後日から数日間における街道の往来の禁止がモリッツさんから発表された。お前達だろ?」
なるほど、もう発表されたのか。そうなると、モリッツさんが否定することで討伐がおじゃんになるという不測の事態が解消されることとなる。喜ばしいことだ。
ただ、目の前のアガーテ姉さんは怒っている。村の盾や矛である自分達の上空を飛び越えて事態が移り変わっていくのが気にくわないのだろう。
「そうだよ。とある魔物の討伐に行くんだ」
「魔物なら私達も連れていけば良いだろう! 何のための護り手だと思っている!」
「竜に負けたアガーテ姉さんや兄ちゃん達を?」
突然剣が首元に突きつけられる。その抜剣速度に目を剥きつつも視線を下に向ければ、アガーテ姉さんが唇を嚙み過ぎているのか口元から僅かに血を垂らしながら睨み付けていた。
だが、俺の意見は変わらない。アガーテ姉さんはいざ知らず、護り手が当時の正規兵すらなぎ倒されたフィルフサを相手にするのは不可能に近い。彼女の怒りの裏に隠された批判はお門違いだ。
ただ、流石に言い過ぎたのも事実なので、俺はそこはかとなくフォローに回る。別に掲示板の民から『どの口が言ってんだ、このメンタルゼロ野郎』と洒落にならない暴言を食らったからじゃないよ。ほんとだよ。
「別にアガーテ姉さんの力を見誤っているわけじゃないよ。むしろ頼もしく思ってる」
「ならばなぜだ!」
「その場所がかなり特殊なところだからだよ」
秘密の一端を喋ってしまうが、少なくともアガーテ姉さんや父さん辺りは他言はしないだろう。それに俺達の『万が一』に気づいて動いてくれるとしたら先ほど言った2人や母さんぐらいなものなので、一応説明しておく必要があると地面に座り込んで話す構えを取る。
訓練が安価だって? 安価は絶対だけど説明したいんだもん。休憩だよ、休憩。
「まず、今から言う事を村の皆や護り手の皆には秘密にしてほしい。特に護り手の兄ちゃん達は外に行く機会も踏み込む自力もあるから絶対に」
「そこまでということはかなり重要なのだろうが、あまり大人を舐めない方が」
「大人だからこそだよ。子供に比べると窘める存在が居ない分、遥かに欲に忠実だ。長年の同僚すらも平気で裏切り、下の存在を自身の鬱屈した気分を解消するために非難するぐらいにね」
一方はアンペルさん、一方は前世の俺の経験だが、大人というものは子供の頃に夢見たような清廉潔白な存在では一切ない。むしろ『出来る力』を持ち、子供の頃の大人のような『押さえてくれるブレーキ役』が少ないからこそ悪辣さに磨きがかかることも十分にあり得る。
もちろん皆が皆、悪人になるわけではない。だが、言うなれば『熟成された樽一杯のワインにスプーン一杯の汚水を入れればそれは樽一杯の汚水になる』だろうか。
たった1人でも門の存在を流布してしまえば元の木阿弥だ。
無論、俺も自身をワインだと断言できるほど人間出来ちゃいなければ、泥水と卑下するぐらいマイナス思考ではない。ただ、樽に混ざる物を監視できる『目』はあるとは思っている。
長々と語ったが、要するに何が言いたいのかというと『樽の中にワインであれ、泥水であれ、混入させる暇を与えない』ためにこうして話しているのだ。
「大人には大人の良さがあるけど、大人でも容易く抗えない程の物があるんだよ。だから、具体的には言えない」
「分かった、ガイアがそこまで言うぐらいだ。あいつらには毒だろうな」
『錬金術士にとっては』という枕詞を意図的に失くしたけど、アガーテ姉さんが納得してくれたから良いか。ここまで長ったらしく語ったが、ようやく俺はフィルフサや異界、そしてクリント王国やクーケン島についての情報アガーテ姉さんに伝えた。
オーレン族や水のことは話さない。話したらこの人のことだから俺みたいに断水宣言しかねないからね。
「ガイア、その話はおとぎ話とかじゃないのか? この島が人工物なんて」
「嘘だと思うならばタオとボオス兄さんに聞いてみて。"現場指揮官に事情を話さないのは駄目だと思うってガイアが言ってた"と言えば納得してくれるから」
俺じゃ説明しきれない分は丸投げする。タオ達には悪いけど、俺よりはまともに説明や操作することで実物を見せることができる地頭があるやつだからなんとかなるだろうという考えだ。
そんな俺の説明に『納得できないが分かった』という態度のアガーテ姉さん。こういう態度が一番面倒臭いんだよな、変なところに状況が転がり込んだら修正難しいし。
「なんだ? 何か言いたいのか?」
「いえ、なんでも」
「まぁ、良い。……なぁ、ガイア。私だけでも駄目なのか?」
アンペルさん等という保護者は居るが、島の大人としてついて行きたいのだろう。未だ未練を持っているアガーテ姉さんの心遣いはありがたいが、俺はその提案を拒否する。
既に情報の開示という歩み寄りは終わっている。それにアガーテ姉さんには絶対に言えないが、この作戦は俺達でも生還率が低い。俺達よりまずはアンペルさんかリラさん。彼らが居無くなれば今度は俺かレント兄ちゃん。俺達が居なくなれば本格的に作戦続行は不可能なので、キロさんに無理やり連れて帰ってもらう流れを俺は考えている。
そんな中でボオス兄さんの他にアガーテ姉さんも? 無理無理無理。そもそも護り手の要をそう易々と死地に追いやる方こそどうかしてるよ。っつーことで、申し訳ないがご縁がなかったという事でその申し出には断っておく。
「駄目だね。護り手の要をほいほい外に出歩かせたら余計な勘繰りを生むよ」
「たしかにそうだな。すまない」
────────────────────
ドキッ★ フィルフサだらけの異界ツアー【ライザのアトリエ】スレより
652:名無し
なんか、本格的に俺らの知ってる原作と離れてるな
653:名無し
原作が秘密裏に日常を取り戻す物語だからな
660:名無し
ガイアが無駄に話を大きくした可能性
665:名無し
しょんぼりアガーテ可愛い
673:名無し
>>660
またガイアがでかつよ化するからやめるんだ
675:ガイア
>>660
それってあなたの感想ですよね? 明確なエビデンスを見せていただけます?
677:名無し
お、ガイアが成長した
685:名無し
いつも泣かされてるのに
687:名無し
そういえば、これって『言い争い』だから明日の昼安価にあった喧嘩じゃね?
693:名無し
今喧嘩して明日どうするん?
700:名無し
>>687
あー、たしかにこれ喧嘩だわ。どうするガイア、このまま訓練してもらう?
708:名無し
>>675
原作と異なる人物が介入し、別の事象が起きたというエビデンスがあるが?
712:名無し
こっちはこっちでレスバしようとしてるww
722:名無し
個人的には今日やって次の日も喧嘩ふっかけてくる相手はヤバいと思うの
731:名無し
>>722
オレモソーオモウ。いや、割とガチで
740:名無し
ガチで嫌われに行くならまだしも、今後も関係を続けるとなるとな
ガイア、一旦決取った方が良いわ
746:ガイア
うおーん! 俺のせいじゃないし!
752:名無し
あかん。ちょっと頑張ったと思ったらこれだ
癇癪起こしたエルフみたいな泣き声はやめてもろて
759:ガイア
じゃあ、明日の昼のを今やるって感じで良いかね?
761:名無し
おk
764:名無し
いいよ~
769:名無し
安価は絶対だろ?
770:名無し
別にこいつの交友関係が壊れようと関係ないしな
781:名無し
大丈夫
791:名無し
適当にやれば良いさね
801:名無し
萎えるわぁ
────────────────────
掲示板の民からの指摘で思わぬところで安価を達成したらしいことに気づいた俺は、この際だから掲示板に合った訓練でもやってもらうべきかとアンケート染みたことを行う。すると、『やってもらえ』という反応が多くあったので、『この際だから一手指南して欲しいです』と言ったらアガーテ姉さんが──笑った。
『笑顔とは云々』と漫画由来の蘊蓄がスレッド内に散見する。うん、それ俺も知ってるから別に言わなくても良いよ。それよりもなんだかすっごい良くない流れになったと思うんだけど、これを回避する方法が欲しいな。
「良いだろう。私でも共に行くのを拒否されるほどの所へ行くんだ。それなりに訓練を積まないと危ないだろう」
「あ、あの。お手柔らかに」
「何を言ってるんだ。わざわざガイアが稽古をしてほしいと言ってるんだ」
え、えーと。あ、今日も綺麗ですね! あっ、あっ、洗髪剤変えました? ……あ、これあかん奴や。
うわ、木剣じゃないし! ちゃんと手加減するって言いながら剣引き抜かないで! やっぱこれ、めっちゃ怒ってるやん!
結局、この後とてつもなく訓練をして1日が過ぎていった。もちろん、終始俺が無様に地面に転がったのは言うまでもない。
***
「ねぇ、アガーテ姉さんをやっぱり加えようよ」
「だから駄目だって。門のこともあるんだよ?」
「そりゃそうだ」
次の日。散策がてらアトリエの周辺で俺が農業に勤しんでいると、調合中の姉ちゃんがヘルプを頼んできた。調合中は釜からあまり離れることが出来ないため、鉱石とかを砕いたりや混ぜ合わせたりといった雑務を押し付けられることがあるのだが、今回は準備ということでその量が尋常ではなかった。
昨日味わったばかりのアガーテ姉さんが持っている戦闘能力の高さから、ついアガーテ姉さんをパーティに加えようとする欲望が漏れてしまったが、姉ちゃんに諭されたので大人しく色々やっていく。
「えーっと、こっちのコベリナイトを砕いて……。あっ、品質悪い奴まだ隠してやがったな!」
「それはあたしが初めて取ってきたやつ!」
「じゃあ部屋に飾ってろよ!」
すぐこれだ。錬金術士は素材にご執心なのは分かるが、記念品ならば一緒にコンテナの中に入れないで欲しい。
後、フラムや氷ビシといった錬金アイテム達もそろそろ品質が20とか低品質な物は整理してほしいんだけどなぁ。姉ちゃん、中々処分しようとしないんだよな。
なまじ、コアクリスタルがあるから良い物があれば付け替えるとかするから滅多に無くならないし……。
「姉ちゃん、品質の悪い錬金アイテム処分しとくよ?」
「錬金アイテムは大丈夫だからやっちゃってー!」
自分が生み出した物なのにさらっと処分を任せる傍若無人さに呆れつつ、俺はアトリエからちょっと離れたところで錬金アイテムを使うという作業に入る。ボンガボンガとフラムを爆発させたり、氷ビシで辺り一面を氷塗れにしたりと改めて錬金術のすごさを感じる一方で『何か使えんかなぁ』と思考を巡らせる。
例えば暑い所で氷ビシなんかは商売のタネになる気がするし、フラムの発破能力も鉱山とかで使えそうな気がする。
そう考えると、この錬金アイテムを処分しているという行動が非常にもったいないことをしているような気分になってくるけど、それはそれ。これはこれということで自身を納得する。どうせ、最初に作った品質がとてつもなく低いものだし。他の錬金術をアンペルさんしか知らないから、これがどの程度の価値なのかは知らんけど。
そのまま茶器に火薬詰めたようなボ●バーマンをしてると、スレッドが賑わいを見せ始めた。どうやら、配信に飽きてきたらしい。
────────────────────
ドキッ★ フィルフサだらけの異界ツアー【ライザのアトリエ】スレより
863:名無し
がいあー、あきたー
865:名無し
ボン●ーマンッ!
872:名無し
([∩∩])<死にたいらしいな
878:名無し
小僧、派手にやるじゃねぇか
881:名無し
そういえば、フラムって爆弾だよな。火薬代わりに推進剤に出来ねぇかな
887:名無し
>>881
どうした急に
895:名無し
>>881
なに? ガイアにフラム背負わせて立体機動でもさせようと?
897:名無し
>>881
ロケットマンだぜ、ベイビー
901:ガイア
>>897
それ俺が死ぬからNG
911:名無し
いや、銃って弾丸のケツの雷管発火させて、中の火薬で先端の弾頭飛ばすやん?多分だけど
フラムを火薬と見立てて、筒の後ろから爆発させたら銃っぽいの出来ないかなって
918:名無し
>>911
つまり、フラムで火縄銃的なことが出来ないかってこと?
921:名無し
弾丸は? あれって結構加工技術必要じゃないっけ
929:名無し
ふふふ、こういうのもあるのだよ
【画像】
937:ガイア
うわぁ、すっごい見たことある。7日ごとにゾンビの群れが来るゲームで見たことある
940:名無し
あー、それか。たしかにそれだと小石でも弾丸になるな
948:名無し
散弾ではなぁ! っていうけど、散弾も結構脅威よね
955:名無し
アトリエキャラでも銃使い居たし、なんとかなるやろ
────────────────────
たしかラッパ銃だっけ? どっかのゾンビゲーで使った気がするけどあれは実用性があるのだろうか。
そう思っていると、掲示板の民の1人が『イメージしやすいように詳しく設計してみた』とスクリーンショットのリンクを貼ってくれた。
ほほう、中々やれる民だ。たまに、こっちの信頼を奈落の底へ落してくるような行動をさせようと誘導してくる他の落書きも見習ってほしい。
えーっと、中折れ式のバレルの中にフラムを装填。次に銃口から散弾とかその辺の小石などを入れる。最後に引き金を引いてフラムを起爆させ、超エキサイティング! っと。
「んー、行けるのだろうか」
俺の率直な意見が空気に溶ける。銃全体がフラムの爆発力に耐えきれるのかをはじめとした運用上の不安が次々と出てくるが、ちらっと他の作品にも銃が出ているっぽいから魔法の力で何とかなるのだろうと思うことにした。だって、『これだから錬金術ってやつは!』って度々言ってるんだもの。仕方がないってやつだ。
そうと決まれば姉ちゃんにお強請りだ。弓を作ってもらったのに舌の根も乾かずに新しいのをねだるのはどうかって? 俺だって色々頑張ったんだし、戦力が増えることは良いことだろう。
うんうん、仕方がない。仕方がない。『僕は悪くない』……よし、理論武装完了。
『姉ちゃーん』と勢いよくアトリエの扉を開くが、姉ちゃんがフルートを持って思いつめた表情を浮かべたクラウディアさんと話をしていたために思わず口を噤む。アイダニハイラナイ オレ オボエタ。
でも、向こうから来るのは仕方がないことだよね。
「あ、丁度良いところに。ガイア、暇でしょ。あたしと一緒にクラウディアの家に行くからね」
「うーん、この猪突猛進女! せめて事情を説明せい!」
「ごめんね。ガイア君」
事情を話さず連れて行こうとする愚姉の代わりに当事者のクラウディアさん曰く、いよいよルベルトさんにフルートの演奏を聴いてもらうらしい。ただ、やはり1人だと踏ん切りをつけるのが難しかったためか、勇気をもらうために姉ちゃんや俺に同席してもらいたいのだとか。
うん、それは良いんだけどさ。『いつもライザには勇気をもらってるから』とか、『クラウディアが自分から勇気を出してるんだよ』とか、俺を余所に喋るの止めてくれね? こう……2人の世界になるっていうか、疎外された感っていうか。女同士の間に無理やり入った場違いな野郎みたいにいたたまれないからさ。ほんと……やめて。
「えー、別にガイアを仲間外れにしたわけじゃないよ?」
「うん、ガイア君のことを仲間外れなんてありえないよ」
『ねー!』
……何なの、この人達。もう良いや、さっさと行くぞオラァン! 別に疎外感に泣いてないんだからね!
若干、心の雨を流しつつも蚊帳の外の俺は終始ちょっとだけ2人と離れてバレンツ邸へと向かう。部屋に入った後、姉ちゃんらにはその場で待機してもらって俺がルベルトさんを呼びに行く手筈である。
ただ、ついにルベルトさんに目的を打ち明けるためか、俺がルベルトさんを呼び行こうとするのを制したクラウディアさんの手が若干震えていた。
「ど、どうしよ」
「大丈夫、あたしもついてるから」
クラウディアさんに姉ちゃんが勇気づけようとしているが、やはり心配なのだろうか彼女が俺の方を見てくる。
いや、俺の方を見られても異性を勇気づけるなんて高等かつ習得がT大学並みに難しいテクニックを俺が会得しているわけがないだろう。ふざけんな!
……と心の中で暴言を吐いてしまうが。やってきたのがクラウディアさんだということでそれはおくびに出さないよう、俺はサムズアップをしながら退室するというお茶の濁し方でこの場から脱出を果たした。姉ちゃんだったら迷わず手刀込みで言ってたけどね。
「ルベルトさん、今よろしいでしょうか?」
「やぁ、ガイア君。来ていたのか、いらっしゃい。大丈夫だよ」
「クラウディアさんが見て欲しいものがあるそうで」
「クラウが? 自分で来れば良いだろうに……。すまないね」
首を傾げつつもルベルトさんが俺の先導に着いて来てくれる。道中、『総菜屋の案を王都に送っておいたよ』とかなんとか聞こえたけど、もう俺の考える範疇ではないので『そっすかー』とおざなりに答えながら2人が待っている部屋の扉を開ける。
するとクラウディアさんが既に準備を終わらせて立っていたので、後のことは彼女に任せて俺は姉ちゃんの横で待機する。
フルートのこと。音楽のこと。そして……家族のこと。クラウディアさんの口から様々なことが語られ、一言ごとにルベルトさんが頷いている。
「そうか……、だから何度言っても隊商から離れて」
「本当にごめんなさい。でも、フルートを聞いて辛そうな顔をするお父さんを見たくなかったから」
いう事を聞かない娘だと思っていたが、致し方のない──それも自分が理由だったことにルベルトさんの顔が一層暗くなるが、いきなり俺達の方を向いた。
「練習は彼らに見てもらったのか?」
「うん、ライザ達と一緒に居る時に。だからこうしてお父さんに発表できる勇気が出たの」
「そうか。じゃあ、聞かせてくれ」
ん、今ちょっとおかしな会話じゃなかった? 姉ちゃんは……気にしてないから俺の考えすぎか。
その後、クラウディアさんは無事にフルートをルベルトさんに発表することが出来、彼もまた娘に対して『旅をするのが嫌ではないか』という悩みに苛まれていたことを吐露する。しかし、彼女も父親であるルベルトさんの血を引き継いでいるのであろう、『旅が大好き』という答えに2人は揃って笑いながら蟠りを溶かしていった。
「なぁ、姉ちゃん。やっぱりクラウディアさん、メンバーから外さね?」
「う、うん。あたしもそれが正解だと思えてきた。クラウディア、絶対怒るよね」
「絶交レベルだね。それで多分、無断でついてくる」
「そうだよねー」
「そうだよーで候」
『今度、久しぶりに帰って母さんと3人で演奏会をするか』というフラグにしか聞こえない会話が聞こえ、そこでやっとクラウディアさんが付いてくる危うさに気づいた姉ちゃん。
ごめん、それはもう遅いんだ。とりあえず、俺が壁になった後はすかさず撤退してね? 割とマジで。
なお、夜中に安価通りに畑でジ●リ直伝の早く育つ踊りを踊っていたら過去最速レベルでアガーテ姉さんとついでに母さんが来たことはここに告げておく。