農家の子   作:マジックテープ財布

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3話

 旅人の道。文字通り行商人といった旅人がよく行きかう道にて俺達は採集に来ている。……いや、来ていただったかな?

 

「ガイア、あんたに任せたわよ」

 

「一発かましてやれ!」

 

 姉ちゃんとレント兄ちゃんに見送られながら、俺は目の前にいるオオイタチマザーと呼ばれる大型のイタチに目を向け、姉ちゃんから託された斧を手に1本足でのバッティングフォームに構える。

 

 すると、俺の敵意に反応したのだろうか。大きな声で威嚇をした後にオオイタチマザーが飛び掛かってきた。

 まだ遠い──まだ──もうちょっと──今っ!

 

「うおぉぉ!」

 

 ブォンという風切り音と共に斧の刃先がちょうどオオイタチマザーの横っ面を叩く。その後にボキリという斧の柄が根元からへし折れる破壊音と『あ"ー!4本目ぇ!』という姉ちゃんの悲鳴が聞こえるが、俺のフルスィングによってオオイタチマザーは地面に2~3回バウントしながら足をもつれさせてもがいていた。

 うーん、あの飛距離ならロビカスは納得しないだろうな。やっぱりもうちょっと頑丈な武器にしようかな。

 

 そう考えていると、体勢を崩した甲斐あってかあっさりオオイタチマザーの討伐が完了した。

 

「ちょっとガイア! あんたまた壊したわね!」

 

「なんちゅう脆い斧じゃ……」

 

「ガイアがおかしいだけだと思うよ?」

 

 タオや、俺的には採集中に襲われたから俺を連れてお礼参りしたいという姉ちゃんのヤンキー的思考がおかしいと思うわけですよ。俺は用心棒でもピンチヒッターでも金太郎でもないただの農民なのですよ。お分かり?

 

「とりあえず、例のあの魔物に出会わないうちにさっさと帰るぞ」

 

「そんなにそいつってまずいの?」

 

「あぁ、俺達じゃ時間稼ぎも出来ないと思う」

 

「なら、逃げようか」

 

「さ、ささ賛成!」

 

 うーん、そんな危険そうな魔物なら一番近いこの村でもなんか残ってると思うんだけどなぁ。でも、古老は『伝承は伝承。なぜだかは知らん』って感じだし、案外残っているけどタオみたいに解読する人やアンペルさんみたいに伝承からさらに1歩踏み込んで考える人が居ないから、それでスルーされてるのかも。

 今度、アンペルさん連れて古老のところにでも行こうかな。ほら、姉ちゃんもそろそろ依頼に使う素材溜まっただろうし、帰るぞー。

 

 そんな感じで俺達はクーケン島に戻った後に解散。それぞれ別の夜を過ごした。

 さてさて、例の魔物からの秘密基地乗っ取りから進展はあるかなっと。

────────────────────

秘密基地、修繕1日で乗っ取られた件について【ライザのアトリエ】スレより

1:ガイア

 変な魔物対策だかなんだかで、秘密基地がいきなりアンペルさん達に乗っ取られて草ぁ! 

 

7:名無し

 >>1

 おいおい、農家が雑草放置するなよ

 

12:名無し

 あの人らが居る以上、近辺は安全になるし

 そちらにとっても、悪い話ではないと思いますが? 

 

15:名無し

 建ておつ。若い男女が一つ屋根の下……来るぞ! 

 

22:名無し

 >>12

 オー●ルの方はお帰りください

 

30:ガイア

 姉ちゃん達の自由だから良いんだけど、クーケン島の家引き払って住み込むなら家賃ぐらいとは思ってる

 まぁ、姉ちゃんがお世話になってるから良いのか

 

38:名無し

 >>15

 こねーよ、アストラル。それに若くもねぇ

 とりあえず、アンペルのことは分かった。ガイアは最近どうなん? 

 

41:名無し

 >>38が親戚のおっさんみたいな近況報告の催促で草生える

 

43:ガイア

 ん? ルベルトさんに村の手伝い屋として地下室の水漏れの相談を受ける傍ら、珍しいもの見せてもらってたら姉ちゃんとクラウディアさんが来てさ

 そんで、あれやこれやっていう内にクラウディアさんが姉ちゃんの冒険についていく許可を得る試験? みたいなのを手伝わされてる

 

47:名無し

 >>43

 相変わらず巻き込まれてるなぁ

 

53:ガイア

 うん、一応俺もクラウディアさんが村の外に出るのは反対したんだぞ? 

 理由は姉ちゃんらと違って何かあった時に責任が取れない。仮に責任を取らせようにも本人らが居なくなってたら家族に迷惑がかかる。最悪のことがあった場合、クラウディアさんに最低でも逃げおおせる実力がないんじゃないか。この3つ

 そしたら姉ちゃんが『どっちの味方なの』ってどっかの風●君みたいに怒り出してさ。

 

56:名無し

 大人の理屈が通用しない子供ならそら怒るだろうなぁ

 

60:名無し

 んだな、ガイアのは大人の意見だよ

 しかも、お前は今まで嫌々ながらも結局は協力してくれた弟だろ? そりゃ、ライザも怒るわ

 

66:ガイア

 んなもんかねぇ。ルベルトさんには褒められたんだけどなぁ

 

67:名無し

 でも、試験を手伝ってるってことは仲直りはしたんだよな? 

 

73:名無し

 >>66

 そりゃ(すべて正論で娘を危険から遠ざけようとしているやつだから)当然よ

 

80:名無し

 そりゃそうよ、大人向けの反対意見だし。俺でも15歳がこんな理由を並べてNOを出してたら一目置くもん

 

84:ガイア

 そっか、俺が悪いのか。反省しよ

 んで、そんなこと言ってたらクラウディアさんが『自分が見定めた人間だからテストして』ってルベルトさんに言ったんだよ。流石、商人の娘だなぁと思う反面でルベルトさんに同情しちゃったよ

 

87:名無し

 >>84

 そりゃ、冒険なんて確固たる理由がなければ死ぬ危険性も大きく上がるだけの行為だし。なのに、仲間は多少腕に覚えのある悪ガキ達だからな

 

92:ガイア

 うん、そこがルベルトさんのすごい所なんだよ。そうなる可能性があるのに、課題を姉ちゃん達に与えてから納得できる成果ならば冒険に同行させるのを許可するんだって

 俺だったら問答無用で姉ちゃん達との交流を強制的に止めさせてるよ

 

99:名無し

 なんだかんだ言っても娘の意見をある程度は聞いてあげる良い父親なんだな

 

101:名無し

 で、この流れでどうしてガイアが手伝えるの? むしろ、お邪魔虫扱いだと思うんだけど

 

109:ガイア

 >>101

 まぁ、俺に相談したことを課題にするように助言したっていうかな? 

 簡単に言っちゃえば、ルベルトさんが俺に相談したことを姉ちゃんの錬金術ならば解決できるんじゃないか。って丸投げした

 

111:名無し

 錬金術が便利屋だと仰る? 

 

112:名無し

 なにも間違ってはないな。むしろガイアが初見ながらそれを言ったことに驚いた

 

117:名無し

 >>111

 歴代のアトリエの錬金術士は皆、便利屋だぞ。

 

────────────────────

 うーむ、勢いのままに言ってみたけどやっぱり間違ってはなかったのか、錬金術士=便利屋論。やっぱり、この世界の錬金術ってよく分からないな。

 掲示板での雑談を片手間に、おれは今日も今日とて畑仕事に精を出す。他にも丁度良く島に来ていたロミィさんからヴァッサ麦の発注が来たのでその対応も行い、全てが終わった時にはもう昼を過ぎていた。

 時間を気にしながら愛用の背嚢と籠を背負い、姉ちゃんに遅いとドヤされないように祈りながら裏の船着き場に向かう最中、俺は農村地区の道を歩くルベルトさんを見かけた。

 

「こんにちは」

 

「あぁ、君か。先日は世話になったね」

 

「こちらこそ、姉がご迷惑をおかけして申し訳ありません」

 

 挨拶と共に謝罪を済ませた俺だが、村の一員としてこんな辺鄙なところまで足を運んできたお偉いさんをそのまま放置するわけにはいかない。どういった目的でやってきたのかと問うと、どうやらクーケンフルーツが実際に栽培されている状態を確認するという、いわゆる実地調査のようなものだと説明される。

 

 ほほう、ならばこのとっつぁんに田舎特有の『O MO TE NA SHI』を味わってもらおうじゃないか。さぁさぁ、こちらですよー。え、姉の手伝いに行くんじゃないのかって? そんなもんより本業が一番大事に決まってるじゃないですか! 

 

「先日の物言いから大人の考え方を持った子供だと思っていたが、どうやら君も錬金術士殿と根っこの部分は同じらしいね」

 

「はぁ……、すみません」

 

「いや、仕事に真摯に向かい合うのは良いことだ。私としても実際の実の状態を農家に聞くのが手っ取り早いと思っていてね。お言葉に甘えさせてもらおう」

 

 まぁ、農家的に言えば俺と姉ちゃんって同じ生産元かつ同じ環境で育ちましたからね。

 そんなこんなでルベルトさんを連れて俺は家にUターン。父さんに事情を話すと、『それなら農家の皆さんも呼びましょう』と言ってルベルトさんとどこかへ行ってしまった。普段は不思議系のおっとりした父さんだけど、こういう行動力の早さと問題に対する最適解への到達速度は見習いたいものだ。

 

 そんな俺だがルベルトさんを案内したことで俺の役割も終わり、あっという間に暇になってしまった。しかーし、ここで素直に姉ちゃんの手伝いに行く俺ではない! なんとしても販路開拓中の凄腕商人様であるルベルトさんにクーケンフルーツを気に入ってもらおうと、俺は畑に出て良さげなクーケンフルーツを4つほど回収する。

 

「母さん、これ冷やしといて」

 

「ん? あぁ、ルベルトさんにお出しするんだね。分かったよ」

 

 クーケンフルーツを両手に持った俺の言葉に母さんもやろうとしていることが分かったらしく、水瓶の蓋を開けてくれる。その中にクーケンフルーツを入れるが、既に中の水は半分ほどで結構ぬるかった。これでは最高に美味しいとは言えなくなってしまう。

 

 致し方ない、やるか! 最高の食べ頃のため、俺は水汲み用のタルを持って水汲み場と家を往復する。もちろんダッシュでだ。

 そんな水汲みの帰り、話し合いが終わったのか父さんとルベルトさんが歩いている姿が見えた。

 

「ガイア、どうしたんだい? 水なんか汲んできて」

 

「あぁ、ルベルトさんに最高に美味しいクーケンフルーツを食べてもらいたくて」

 

「ほう、それは……なにか変わった栽培法なのかい?」

 

 『最高』という言葉に眉を上げたルベルトさんが栽培法について聞いてくるが、別段変わった栽培は行っていないことを告げると首を捻る。その横で父さんが『あれか』と呟いてはルベルトさんにどういうことかと言われているが、父さんは『ガイアに任せておいてください』と話をはぐらかす。

 

 そういったやり取りの末に家にたどり着いた俺は、すかさず汲みたてのつめたーい水をクーケンフルーツを入れた水瓶に入れていく。程よく冷えた水によってクーケンフルーツは徐々に冷えあがり、この時期にぴったりのごちそうへと変化していく。

 

 ……よし、頃合いだ! 

 

「どうぞ、この時期でしか味わえない食べ方です」

 

「いただこう」

 

 ルベルトさんの目から見れば何の変哲もないクーケンフルーツ。だが、彼が小さく口を開けて皮ごと齧った直後、目を見開きながらゆっくりと咀嚼する。そして、もう一度──今度は大きく口を開けて齧りついた。

 大きく齧りついたことでクーケンフルーツ特有の潤沢な果汁がルベルトさんの口の端から零れるが、彼はそれを気にすることなく食していく。

 

 ふふふ、これが俺が考えるおもてなしよ。

 乾期に近い今時分、外出によってカラカラになった身体を喉から潤すよく冷えた果汁たっぷりのあまーいクーケンフルーツ。身体中に沁みないはずがない。

 瞬く間に完食したルベルトさんに近づいた俺は、にこやかにもう1個のクーケンフルーツを差し出した。

 

「お気に召していただけたでしょうか?」

 

「いや、もう結構。たった1個なのに、十分堪能させてもらった。しかし、これはこの地域でしか味わえない味だね?」

 

「そうですね。今の時期のこのクーケン島の気候じゃないと、この身体に水分がしみ込む感覚を含めた美味しさは保証できませんね。王都にこれほどの乾期があるのかは不明なので分かりませんし」

 

 そこに気づいてくれるとは流石はルベルトさんだ。ただ、その後の『なぜ?』と言いたげな彼の眼差しに俺は御馳走した理由を説明する。

 なんてことはない。この一連の流れはクーケン島のPRのようなものだ。

 

 作物には地域特有の味わい方──前世で言う郷土料理のようなものが近いだろうか。それが必ずあるのが俺の持論である。今回の乾期間際によく冷えたクーケンフルーツを丸かぶりするのは、まさしくそんな郷土に根付く味である。

 それは王都でいくら金を積んでも実現は厳しいであろう。そうなると、クーケン島という片田舎に興味が出てくる人間も居るかもしれない。

 たしか、モリッツさんも人を呼び込む方針って言ってた気がするし、人を呼び込むっていうのなら特産品の1つでも作ってアピールするのは結構重要だと思うんだよね。

 

「俺……僕は口が達者ではないので、率直に行動に移すことしかできません。なので、ルベルトさんにこの作物の良さを語ってもらいたいんです」

 

「なるほど。商品の良さを分かってもらうには、売り手自身がその商品を使用してみることが一番の近道。というわけだね」

 

「その通りです」

 

 本当によく分かってる御仁だ。リピーターという存在はたった1人でも農家にとってはありがたい存在だ。それが王都の人間ならば、周りに自慢してくれることも期待できるし、そこから芋づる式にリピーターが増えることも十分にあり得る話だ。

 

「君が農業に熱心で、村を思う好青年というのは十分に分かった。その上で、だ」

 

「いやいやそんな好青年なんて……その上で?」

 

「あぁ、クーケンフルーツの話を遮って申し訳ないがね」

 

 『クーケンフルーツを鍋に入れておけば無水料理も出来るんですよー』なんて手札を用意していた俺の思惑に反し、ルベルトさんはいきなり話の話題を変える。あれ、なんだか雲行きが怪しくなってきたぞ。

 

***

 

「依頼を出した手前、私としてもそこは妥協できなくてな。正直に言ってほしい」

 

 なるほどねー。

 なんでも俺のことを大人の会話が出来る稀有な子供という認識をルベルトさんが持ったらしい。そこで、先だっての姉ちゃんに出した依頼が本当にこなせるのか──もっと簡単な言い方をすれば、そのままクラウディアさんとの縁を切って尻尾を巻くか、一向に依頼を達成せずにクラウディアさんを連れ回さないかについてを俺に聞いてきたのだ。

 ……ごめんなさい。既にあの人、対岸の秘密基地作りに関与してます。っと言いたがったが、さすがにそれを言ったらまずいのは分かっているので、俺は思案顔を顔面に貼り付ける。

 

 たしかに冒険と称して働きもせずに遊び回っている3人組で、そのうち2人は男。普通に考えたらちょっと抵抗があるよな。

 ただ、ルベルトさんは姉ちゃん──ライザリン・シュタウトという人間を良く知らないから不安なだけだ。彼とは違って俺は知っている。姉ちゃんは仲間思いの姉御肌な人間だ。今回もクラウディアさんという『仲間』のため、目標に向かって突っ走っていくことは容易に想像できるのだ。

 

「数日お待ちください。必ずや依頼を達成しに姉はやってきます」

 

「そうか……、それは期待にしておこう」

 

 どうやら俺からの力強い説得に納得してくれたようだ。良かったよか「だが、その前に君に別の依頼をしたい」──What? 

 

「なんでしょう? すでに地下に貯まった水でしたら、復旧後にご依頼くだされば」

 

「あぁ、それも頼もうと思っているよ。だが、これも錬金術士殿関係になるのかな」

 

 姉ちゃん関係? いまいちピンと来ていなかったが、それも考えの内なのだろう。ルベルトさんが順序だてて説明してくれた。

 

「クラウの眼力に対する試験を始めているが、私は付き合う人間を選んで欲しいというのが正直なところでね。彼女達は村ではあまり良い印象を持たれていないのだろう?」

 

「娘を持つ父親の心境というものは分かりませんが、ある程度はお察しします。とどのつまり、クラウディアさんと付き合う人間が悪童という評判のままなのは外聞的にもまずいってことですよね?」

 

 話を聞いていく内に俺の頭に理解が追い付いてくる。

 ルベルトさんからの説明は、ある程度は想像できた話だ。王都へも品物を運ぶ商会の長の娘として付き合う人間が『アレら』だと外観が悪い。

 そして、何度も言っているがこの村はど田舎だ。ゆえに情報が出回るのも早いし、古老側についた人間によって村ぐるみで結託されれば如何にブルネン家の支援があっても伸ばそうとしていた事業が上手くいかない可能性も出てくる。

 

「話が早くて助かるが、君は本当に錬金術士殿の弟かね? 年の離れた兄ではないのかな?」

 

 うん、ふつーに失礼な言葉をどうもありがとうございます。そこ、父さんも母さんも素直に頷いたり、弟で合ってるって言わない! グレるぞ! 盗んだクーケンフルーツ齧りながら走り出すぞ! 

 

 ……まぁ良いや。ともかく、ルベルトさん自身が少しでも安心できるように姉ちゃん達の評判を少しでも上げたいらしい。ただ、村のこととなると一介の行商人である彼が口出し出来るはずもない。

 そこで、先ほどの問答で俺が信頼できる存在であるとルベルトさんのお眼鏡に叶ったらしい。なんでさ。

 

「商人が信頼って言葉を軽々しく使うものじゃないと思いますがね」

 

「もちろん事前に君の評判も聞いて判断しているが、その言葉を聞けて余計に期待が持てるよ」

 

 嫌味代わりに言ったが、どうやら余計に相手を喜ばせてしまった。──ロミィさん、恨むぞ。

 

 そのまま機嫌良く帰っていくルベルトさんを見送った俺は、改めて姉ちゃんの評判を上げるために村内を散策することにした。──と言っても、錬金術についてよく分かっていない俺からすればどの依頼が錬金術で出来るのかさっぱりだけどね。

 

 仕方ない。掲示板で聞くか。ちょうど良く賑わってるし。

────────────────────

秘密基地、修繕1日で乗っ取られた件について【ライザのアトリエ】スレより

364:ガイア

 ドラ●もーん、ルベルトさんから姉ちゃんの評判上げる手伝いをしてほしいって頼まれたんだけどー! 

 一介の農民に振る仕事じゃねぇよ! 

 

368:名無し

 一体全体、どうなってそうなったんだ? 

 

372:名無し

 相変わらず原作とは違うところでなにか起こしてるな

 まぁ、サイドストーリーっぽくて好きだけど

 

373:ガイア

 クーケンフルーツの視察に来たらしいルベルトさんを家に招待して、生産地特有の美味い食い方とかセールストークしてたら気に入られてさ

 本当にルベルトさんが持ちかけた依頼をこなせるのかとか色々聞かれた後に評判の話を聞かされてさ。そのまま受けることになった

 

375:名無し

 >>373

 まぁ、言ってることは分かるな。俺も娘が不良集団に付いていくとか聞いたら卒倒するもん

 

380:名無し

 あんな可愛い子がふとももムチムチな女の子をリーダーとした不良集団に……! 

 

385:ガイア

 ほんと、お前ら謝礼無いと動かないよな

 ほら、今日はちょっとロミィさん関係で墓穴掘ったからロミィさんの笑顔だ

【画像】

 

391:名無し

 俺らだって別に鬼じゃないよ。出すもん出してくれたら相談ぐらいは乗るさw

 とりあえず、モリッツのとっつぁんに相談で良くね? 

 

395:名無し

 >>391

 錬金術って言ってもあの人分かるのか? 

 

398:名無し

 そういえば原作だとだれかが口聞きしてたよな? 

 それが今回、ガイアの役になったんじゃね? 

 

403:名無し

 ボオスだっけ? んじゃ、ボオスからモリッツさんと丸投げすれば良くね? 

 

405:名無し

 >>403

 異議なし! 閉廷! 

 

────────────────────

 なるほど、ボオス兄さんか。確かに錬金術について調べたとか言ってたな。そうと決まれば早速行ってみるか。

 数分ほどかけ、ブルネン家の屋敷へとたどり着く。ちょうど剣の稽古なのか、剣を片手にボオス兄さんとランバーさんが出てきたので、俺は手を振りながら近づく。……あれ、露骨に嫌がってない? 

 

「うわっ、ガイア! 今から訓練するんだから来るな! また剣を折られるのは勘弁だぞ!」

 

「そ、そうだぞ! もう湖に投げ込むのは無しだからな!」

 

 いや、最初に剣の稽古に付き合ってほしいって言ってきたのボオス兄さんなんだけど。それは横らへんに置いとこう。

 とりあえず何とか誤解を解いたところで、俺は本来の目的である姉ちゃんの評判を上げるための相談をしてみたが、ボオス兄さんの反応は芳しくなかった。理由を聞かなくても分かる。『なんで俺がライザ達のためにそんなことをしなきゃいけないんだ』って顔だ。

 

「なんで俺がそんな面倒くさいことをしなきゃいけないんだ」

 

 ほら見たことか。似たような言葉だが、明らかに面倒くさげだ。

 だが、このまま行けば掲示板で言ってたような展開には絶対ならない。ここが正念場だと俺は決意を込める。

 

「えーっと、ほら。アレだよアレ。あれをこう……なんやかんやしてさ」

 

「いいから、落ち着いて話せ」

 

 ほんと、村に貢献してる人に対しては沁みるほど優しいんだよなぁ。この人。……いやいや、ほっこりしてる場合じゃない。

 ひねり出せ、掲示板でも錬金術のあれこれについてはちょくちょくネタになりそうな書き込みが投下されてたじゃないか。え~っと、樽にはいろんな人の人生が詰まってるんだっけ……。いや、うにが木でくりが水中だっけか……。えぇい、ままよ! 

 

「錬金術みたいな怪しげな術でも使いようだと思うよ。ほら、即座に作り出せる即応性とか」

 

「それが危ないと言ってるんだ」

 

 デスヨネー。やっぱ俺よりも地頭が良いボオス兄さんに言っても無駄だったかーって、なんか考え込んでどしたん? え、お誂え向きなところに思い当たりがある? マッ? 

 

「なんだよマッって。お前向け案件だと思ってな」

 

 そう言って先導するボオス兄さんについていく。途中でクラウディアさんの家に入っていく姉ちゃん達を見かけたが、今は無視を決め込む。すっごい見られているけどボオス兄さんも何事もないようにふるまってるし、無視だ無視。

 

 そうして旧市街を進んでいると、道のど真ん中や脇に瓦礫が積まれた区画が目に入る。どうやら最近の地震で出てきた瓦礫を村の住民がこの区画に不法投棄しているらしく、モリッツさんは頭を悩ませているようだ。

 前世では山の中に家具とか電化製品とかあったからなぁ。瓦礫ぐらい錬金術でなんとかなるだろ。……多分。

 

「本当はお前を中心に若手の護り手や俺達で何とかするべきなんだろうがな。ここなら人通りも少ないし、失敗してもなんとかなるだろう」

 

「なるほど、じゃあ丸投げしても?」

 

「あぁ、任せろ。だが、錬金術やライザ達を認めたわけじゃねぇぞ。直に飽きて元通りになるだろうって考えは捨ててねぇからな」

 

 はいはい、分かってまーす。

 そう言うとボオス兄さんは舌打ちをかましながらランバーさんと戻ってしまった。今まで散々好き放題していたんだ、この程度で済んでいること自体が奇跡だと思う。前世の昭和か大正ぐらいだったら間違いなく村八だったね。

 

 さて、これでルベルトさんからの依頼は終わったから報告に行くかぁっと俺はルベルトさん家に行くと、そこには水浸しで作業に勤しむ姉ちゃんが居た。フハハ、遊び人が必死こいて働く姿は気持ちが良いZOY! 

 さらに見ればアングルも良いねぇ。よし、これをネタに掲示板の民からさらなる情報を引っ張ろう。そう思った矢先だった。

 

「あぁ、ガイア君。良いところに来てくれたね、溜まった水を外に運び出してほしい。ほら、君たちも」

 

 ルベルトさんが突如、俺やレント兄ちゃんに水の汲み出しを依頼してきた。ほんと、親子だよね。

 この後、タオを巻き込んだ壮絶なバケツリレーが行われたのは想像に難くない。──タオよ、いつもハンマー振り回してる腕力はどうした。

 

***

 

 例の水漏れ修理から数日後。俺はルベルトさんの要請に姉ちゃんらと一緒に先日、ボオス兄さんに案内してもらった瓦礫置き場に来ていた。その場にはモリッツさんも来ており、俺はボオス兄さんがちゃんと推薦してくれたことに密かに感謝する。

 お礼をもっていって面と向かって感謝しても、あの人なら『村のためだ』って照れ隠しするのは目に見えてる。そんなわけで俺は黙って感謝をしていると、唐突にモリッツさんが俺の名前を呼んだ。

 

「本来ならそこに居るガイアにでもやってもらおうと思ったが、錬金術でぱぱーっとやってくれ」

 

「今度はガラクタ掃除かよ」

 

 モリッツさんは俺のことをなんだと思っているのかはさておき、後ろの方でレント兄ちゃんがガラクタ掃除と愚痴を言ってるけど掲示板の言ってることを鵜呑みにするならばこれはほんの序の口だと思うんだ。

 そう考えるともういっそ、便利屋として開業するのもありなんじゃないか? 

 

「それだ! 爆弾でまとめて壊しちゃおう!」

 

 そんなことを考えていると、レント兄ちゃんが何かを言ったあとにそれからヒントを得たのか姉ちゃんが唐突にとんでもないことを言いだした。おい、馬鹿やめろ。

 

「姉ちゃん、それ以外ない? 一応、村の往来だぜ?」

 

「他に……他に……荷車で運ぶとか?」

 

「なぜに人力!?」

 

 あー、もう駄目だこの姉。もしかして、俺のせいで姉ちゃんの思い付きにデバフ掛かってんのか? 十分あり得そうなのが怖いな。

 あ、そうだ。掲示板の奴らなら良いアイデアとか、原作に基づいた軌道修正するかもしれない。うんうん唸る振りをしながら俺は頭の片隅で掲示板に助けを求めた。

────────────────────

秘密基地、修繕1日で乗っ取られた件について【ライザのアトリエ】スレより

673:ガイア

 タスケテ

 姉ちゃんが村に集まった瓦礫を掃除するために爆薬使いだした

 原作知らないけど、なんか違ってたら軌道修正方法を相談したい

 

679:名無し

 嬢ちゃん、派手にやるじゃねぇか! 

 

683:名無し

 >>673

 錬金術士だとふつーふつー。アンペルさんもやってただろ? 

 

688:名無し

 >>673

 ライザも一人前になったんだよ。祝福してやれ

 

694:名無し

 >>673

 安心しろ、原作通りだ

 

────────────────────

 まじかぁ……、原作通りかぁ。

 

「それ以外なさそうだね。だけど、周囲の安全もちゃんと確認すること」

 

「分かってるって」

 

 そう言ってさっそくアトリエに向かう姉ちゃん達──に連行される俺。大丈夫かなぁとか何度も最悪を何度もシミュレートしている間にトントン拍子で爆発物であるフラムが出来上がった。

 いや、早すぎじゃね? しかも無駄に高品質なものを作ってからに……え、素材は俺が余分にとってきた物を使って経験積んだから一度に投入できるものが増えた? ほんと錬金術って何なんだよ! 

 

 そんなこんなで現場にとんぼ返りしてきた俺達は、念のためにレント兄ちゃんとタオ、クラウディアさんと手分けして周囲に人が居ないか再確認を行う。

 

「今回は下手すれば怪我人が出るから! ちゃんと避難勧告もしてね!」

 

 下手したら死人が出そうだけど、レント兄ちゃんが気負いそうだからランクを落として念入りな確認を行ってもらい、その間に姉ちゃんは爆破位置をどこにすれば被害が少なく依頼を達成できるか考えてもらう。

 ルベルトさんや俺の村での立場が気まずくなるし、最悪残った残骸は俺が運ぶと言ってあるので恐らく大丈夫だろうけど……不安だ。

 フラムを作り出す姉ちゃんの手際に思わずガッデムって言ってしまったが、建造物や人間に被害が出ないことをこの世界に居るか分からない神に祈るばかりだ。

 

「ライザー、こっちは大丈夫だよ」

 

「こっちもOKだよ」

 

「もう一回見て回ったけど誰も居ねぇぞ」

 

「皆、離れてて」

 

 なん十分も確認作業を行って帰ってくると、どうやら爆破位置を確定したらしい。集まった俺達の方に手を振って合図をした姉ちゃんがフラムをセットすると、こっちに向かって駆け出してくる。

 その数秒後、腹に響く爆発音が数回。爆発音から少し経つと、煙と共に火薬特有の鼻につく臭いが周囲にまき散らされ、その煙の奥をよくよく観察すると瓦礫は多少の欠片を残して跡形もなく消し飛んでいた。

 

「ほら! 上手くいったでしょ!」

 

「……大惨事にならずに済んだか、ライザにしちゃ上出来だな」

 

 レント兄ちゃんの言葉に激しく同意する。爆発物を使うって聞いた時はテロリストになるのが正規ルートだと心配になったぐらいだ。まぁ、仮になったとしたら掲示板の諸君には悪いけど俺は農業を取って姉ちゃんと一切接触しないルートを進んだけどな。

 

 その後は爆発音に気づいたモリッツさん達がやってきて依頼の完了報告をしたり、途中でボオス兄さんが嫌味を言いに来たりと様々なことがあったが割愛する。

 え、なんでかって? 

 

「ガイア、依頼だ。ここの欠片の掃除をしてくれ」

 

「安心しろ、後でロルフも向かわせる」

 

 まさかの指定依頼だよ畜生! 結局その後は村でなんでも屋やってるロルフさんと一緒に欠片の掃除する羽目になるし。……あれ、もしかして余計な仕事しただけ?




現在の周囲の反応
ライザ
 農作業以外の時間は手伝ってくれる弟だよ。自分では持ちきれない素材を代わりに持ってくれたりしてかなり助かってるけど、たまに採集道具を壊さないでほしいかな。

レント
 ライザの採集を手伝って、たまに戦闘前に先制攻撃をして体勢を崩してくれる相棒…だな。
 だけど、戦闘開始前にぷにや小妖精を殴り飛ばしてそのまま遠くに飛ばすのは肩透かし食らうからなるべくやらないでくれ。

タオ
 僕と思考が似てるのかな。適度に安全確認を一緒にしてくれたり、危険なことをするライザに注意してくれたりと色々意見を言ってくれるから僕的には嬉しい存在だよ。
 でも、ある時みたいな鎌を両手に装備して魔物を切り刻むのは心臓に悪いから、金輪際しないでね。あ、今みたいにぷにを拳で爆散のもなしだからね! なし、なしだからあ"-ッ!

クラウディア
 最近、お父さんの口からよく話題に上がる子かな。大きい物を持ったり、色んなお手伝いをしてるのをよく見かけてるよ。未だにあの綺麗な文字書いてたって信じられないよ。
 良い子なのは分かってるけど、まだあの『ごげぇぇ!』って叫びながら迫ってくるのは夢に見ちゃうかな。

ボオス
 便利屋。ロルフよりも結構安価で手伝ってくれるしな。…なんだ、まだなんかあるのか?
 ──チッ、頼りになる男だ。これで満足か?
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