IS~インフィニット・ストラトス~ for Answer   作:白姫彼方

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過去の話、母からの贈り物

夏音達が自宅で夕食を取っている頃、美沙は千条院家本宅の地下施設にいた。

 

「ここだね………」

 

美沙は目の前にある巨大なコンピューターを見上げる。

 

「始めないとね」

 

美沙はそう言って後ろ髪をかき分け、後頭部を押すと、そこには鈍色に輝く直径3cmほどのソケットが現れる。そしてその近くにある専用のソファーに座り、後頭部に当たるところに同じ直径3cmの針をソケットに差し込む。

 

「インストールスタンバイ、認識(オーセンティケーション)コード入力『生命戦闘体(アマテラス)』No.Λ-11X認証開始(オーセンティケーション・スタート)

 

美沙の言葉は普段の明るさはなく、機械的な声色………マシンボイスの様に冷たかった。

 

認証完了(オーセンティケーション・コンプリート)、データリンク開始(スタート)戦闘記録(バトルログ)ダウンロード、対象『生命戦闘体(アマテラス)』No.Λ-11」

 

巨大なコンピューターと美沙の瞳がリンクした様に点滅が同時に起こる。

 

戦闘記録参照(バトルログ・リファレンス)No.63584から最終記録(ラストログ)までを参照開始(リファレンス・スタート)

 

巨大なコンピューターから排熱音が響くと同時に、美沙の脳内に『生命戦闘体(アマテラス)』No.Λ-11………千条院美緒が行なった戦闘記録が入り込む。

 

参照完了(リファレンス・コンプリート)参照戦闘記録(リファレンス・バトルログ)を全てダウンロード、肉体及び脳機能への最適化を同時進行で開始」

 

美沙がそう言うと、今まで千条院美緒が培ってきたISでの戦闘記録(バトルログ)が美沙の脳内に記憶されていくと同時にそれを体に馴染ませていく。

 

参照最適化開始(フィッティング・リファレンス・スタート)10………30………50………70………90………100%、参照(フィッティング)最適化(・リファレンス)完了(・コンプリート)

 

美沙がゆっくりと後頭部のソケットから針を抜くと、巨大なコンピューターはシステムダウンをし、動かなくなった。

 

「これが………お母様の記録………」

「ここに居たんだね、美沙ちゃん」

 

美沙が振り返ると、そこには美紗緒がいた。

 

「叔母様………。どうしてここに」

「なんとなく………かな」

「そう………ですか」

 

二人の間に少し沈黙が訪れるが、美沙が美紗緒に声をかける。

 

「叔母様」

「なぁに?」

「お母様は………。どうして何の為に戦っていたんですか?戦闘記録(バトルログ)を見た限りではお父様とも戦っていましたから」

「そう………だね」

 

美紗緒は少し考え、口に出した。

 

「お姉ちゃん………美緒さんは皆を守る為、生かす為に戦っていたんだと思う、当時は一時期洗脳されてた時もあったけど、その時を除いたら全部私達を生かす為に戦ってたんだと思う。

事実上の半不老不死の『生命戦闘体(アマテラス)』として苦しみながらもね………。

美緒さんは強い女性(ひと)だった………。誰よりも優しくて、気配りができて、何よりも一途な気高い人………。

だからこそ、私達はお姉ちゃんが大好きだった。ううん、今でも大好き………だから、お姉ちゃんの子供である美沙ちゃんは絶対死なせない、例え私の命にかえても」

「………お母様は皆様に愛されていたのですね」

「うん、それが姉妹愛であり、親愛であり、恋愛の違いがあっても、皆、お姉ちゃんを愛してたよ、亡くなった今でもね」

 

美紗緒は美沙に背を向ける。

 

「美沙ちゃん、付いて来て、見せたい物があるから」

 

美紗緒はそう言って、巨大コンピューターのある部屋から出た。美沙は何も言わずにその後を付いていった。

 

 

                     ◆

 

 

二人が来たのは、千条院家本宅にある広い庭だった。

そこは数十年前、『新造IS専用補給戦闘母艦レクイエム』が初めて姿を現した所でもあった。

 

「叔母様………?見せたい物とは?」

「まぁ見てて」

 

美紗緒はそう言うと、胸ポケットからリモコンを取り出し、スイッチを入れる。すると、二人の目の前に1機のISが現れる。

そのISは亡くなった千条院美緒の専用機、『月の女神(アルテミス)』と同型であった。

 

「叔母様………これは?」

「これが美沙ちゃんの専用機、『狂月の女神(アルテミス・ルナティック)』。

美沙ちゃんのお母さんが使っていた専用機、『月の女神(アルテミス)』を復元した後に、改良を加えた機体だよ。

武装面ではあまり変化はないけど、その性能は『月の女神(アルテミス)』を遥かに上回り、一夏さんのIS、『白い閃光(ホワイト・グリント)』に引けを取らないほどだよ」

「これが………私のIS………」

 

美沙が『狂月の女神(アルテミス・ルナティック)』に触れる。すると直ぐに展開され、美沙の体を包む。

 

「美沙ちゃん、その子はお姉ちゃんからの贈り物(プレゼント)だよ。大事にしてね」

 

美沙は閉じていた瞼を開ける。

 

「もちろんです、叔母様」

 

美沙と美紗緒は『狂月の女神(アルテミス・ルナティック)』が第一形態移行(ファースト・シフト)をするまで、他愛もない会話をしていた。

そして、『狂月の女神(アルテミス・ルナティック)』が第一形態移行(ファースト・シフト)を終えると、その装甲等のカラーリングが劇的に変わっていた。

本来ならば、『月の女神(アルテミス)』と同じカラーリングではあったが、実際はギアレシーバーは群青色、装甲は真紅、ワンピースとソックスは蒼、ウェスタンブーツは黒に変わっていた。

美紗緒はその事に驚くが、すぐに表情を戻す。

 

「どう?美沙ちゃん、良く馴染む(・・・・・)でしょ?」

「はい………。ずっと乗ってきたか(・・・・・・・・・)のような錯覚に陥る程(・・・・・・・・・・)に」

 

美沙はそう言って、体を軽く動かす。

先程、千条院美緒………『生命戦闘体(アマテラス)』Λ-11の戦闘記録(バトルログ)を参照及び最適化したばかりだからか、若干の違和感を感じるものの、すぐにそれは消えた。

 

「違和感もなくなったようだから、早速模擬戦をやろうか」

「模擬戦………ですか?」

「うん、お姉ちゃんの戦闘記録(バトルログ)を参照してそのまま戦えると言っても、それはお姉ちゃんの動きの模範でしかないからね、だから自分で動けるようにしないとね?」

「解りました、叔母様」

 

美紗緒の言葉に美沙は同意をして、二人は近くにある演習場に向かった。

 

 

                     ◆

 

 

二人が来た演習場はISでの模擬戦闘を想定した広さであった。

 

「それじゃ、美沙ちゃん。ISを装着して」

 

美紗緒はそう言うと同時に自身のIS『カグツチ』を装着する。

 

「解りました」

 

美沙もそう言うと、『狂月の女神(アルテミス・ルナティック)』を装着した。少しの間、無音となるが、何処かで空き缶が転がる音がした瞬間、二人の姿が掻き消え、大型ENライフル『雷切(らいきり)』と『グングニル』の轟音が鳴り響く。

互いに極超音速化をし、ほぼ零距離での射撃武器の応戦と、近接武器によるスパークで演習場が破壊されていく。

二人はそれをものともせずに、美紗緒は『カグツチ』に搭載されている『思兼神』を8基全てを射出、美沙も『狂月の女神(アルテミス・ルナティック)』に搭載されているビット、『ツヌグイ』を16基射出する。

 

「………『シュタインズガンナー』」

 

美紗緒の呟きと同時に肩の発射口が開きトランプのダイヤを象った物体を射出、美紗緒から30mぐらい離れた所で停止すると同時に極太の青白いレーザーが美沙に向けて発射される。

美沙はそれを避けて美紗緒に接近しようとするが、『シュタインズガンナー』が突如爆発した。それを間近で受けた美沙は、吹き飛ばされる。

 

「くっ………」

 

美沙は『連続瞬時加速(アクセレート・イグニッション・ブースト)』を駆使しながら『ツヌグイ』、『グングニル』で美紗緒と『思兼神』に攻撃をするも、全てを紙一重で避けられる。逆に美沙と『ツヌグイ』が美紗緒の『思兼神』と『シュタインズガンナー』の攻撃によって被弾をしている。

『グングニル』を収納、『月光零式改』を展開した美沙は、接近をして切り裂こうとするが美紗緒はそれを予想していたのか『月光弐式』で受け流しながら電撃式蛇腹剣『大蛇(おろち)』で美沙の足を絡めとり、地面に叩きつける。

美紗緒は追撃とばかりに『雷切(らいきり)』を美沙に放ちながら足を絡めとっている『大蛇』から高電圧の電撃を放つ。

だが、美沙はそれが効いてないようで、直ぐに『月光零式改』で『大蛇』を切断する。その直後、殺気を感じた美沙は直ぐにその場を離れると、美沙が居た所に無数の剣が降り注いだ。

美紗緒は外れた事に舌打ちをしながらも、『思兼神』、『シュタインズガンナー』、更に『カグツチ』の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)である『ソードサマナー』を駆使しながら確実に美沙を追い詰める。

美沙はこれでは勝てないと開き直り、『連続瞬時加速(アクセレート・イグニッション・ブースト)』を使い、一気に美紗緒との距離を縮めると、周りに白い粒子が集まり、光を放ち始める………。『アサルト・アーマー(AA)』の予備動作だ。美紗緒は直ぐにその場から離れようとするが既に遅く、球体状に集まりながらもぶれて、轟音と閃光と共に大爆発を起こす。

美沙は直ぐに離脱をして様子を伺うと、美沙の頭上に巨大な剣が現れ、その巨大な剣によって地面に叩きつけられる。

アサルト・アーマー(AA)』によって出来た煙が晴れると、そこには『思兼神』によって守られた美紗緒がいた。美紗緒は『思兼神』の防御形態を解き、その直後に美沙の周りには視界を埋め尽くす程の刀剣があり、美沙は美紗緒に負けの宣告をすると、その刀剣は消え去った。

 

 

                     ◆

 

 

模擬戦を終えた二人はシャワーを浴びた後、談話室で話をしていた。

先程の模擬戦の名残はなく、楽しそうにしていた。

 

「流石叔母様、『生命戦闘体(アマテラス)』である私を圧倒するとは思いませんでした」

「それはそうだよ、『生命戦闘体(アマテラス)』と言えど、まだ雛である美沙ちゃんに負けたらお姉ちゃんに怒られるからね」

 

美紗緒はそう言うと、クスクスと笑う。

 

「そういえば叔母様、あの刀剣は一体なんだったのですか?」

「あれは、『カグツチ』の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)『ソードサマナー』だよ。

効果の方は既にわかってると思うけどね」

 

美沙が頷くと、美紗緒は席を立つ。

 

「明日も学校があるんだから、そろそろ寝ないとダメだよ?………。おやすみ」

「御休みなさい、叔母様」

 

美沙と美紗緒は挨拶をすると、其々の部屋に戻って休んだ。

その日から1週間が過ぎ、いよいよ美沙、夏音、鈴夏の三つ巴のクラス代表選抜戦が幕を開ける。

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