IS~インフィニット・ストラトス~ for Answer 作:白姫彼方
夏音が連れ去られて1ヶ月が経った、表では夏音は入院扱いになっているが、一部の教員、リリウム、ウィンディ、メイは事の真相を一夏から聞いていた為か表情が暗い。
だが、それにも増して鈴夏の表情は暗かった。
「鈴夏ちゃん~。元気出して~?」
「……うん、ごめんね。稚詩」
そんな鈴夏を見かねたのか稚詩が声をかけるが、空返事しか返ってこなかった事に稚詩は肩を落として離れていった。
「(稚詩………ごめんね)」
――――マスター………。
「(アザトース………こんな不甲斐ない操縦者でごめんね)」
――――元気を出して!マスター!
「(アブホースも心配かけてごめんね)」
鈴夏をマスターと呼ぶのは分裂したISコアの人格で、心配そうに声をかけたのがアザトース、その声色は落ち着いた大人の女性の様だ。そして元気を出す様に言ったのがアブホース、その声色はやや幼い少女の様だった。
この事も一夏、鈴音、メイ、ウィンディ、リリウムには話してある。
だが、千冬には一切話をしていなかった。この事に鈴夏は疑問をぶつけたが、夏音が連れ去られた今余計な情報を広めるのは得策ではないと一夏によって切り捨てられた。よって、極一部にしか鈴夏の専用機の情報は一夏達しか知らない。
余談だが、鈴夏の『
「全員座れ!SHLの時間だ」
鈴夏が物思いに耽っていると千冬が入る。
「今日も全員揃っているな?それでは山田君、頼む」
「わかりました!織斑先生」
千冬はそういうと、真耶に引き継ぐ。
「それでは連絡事項ですが、今年の学年別トーナメントは中止となりました」
真耶がそう言うと、鈴夏、美沙、リリウム以外の生徒からブーイングが起こる。
「静かにしてください。理由ですが『IS委員会』からの指示ですので………」
真耶がそう言うと先程よりかは静かになる。
「それでは次ですが、なんと!今日から新しく転校生が来ます!」
真耶の言葉にざわざわと少し教室が騒がしくなるが千冬が咳払いをすると、直ぐに収まる。
「それでは入ってきてください」
真耶がそう言うと、1人の少女が入る。その少女は
体型的には全体的にスリムという事を追記しておこう。
「では、自己紹介をしてください」
「はい、
鈴夏は聞き覚えのある名前を聞いて顔を上げると、幼馴染である人物であった。
「麻井さんの席は………。織斑さんの席の隣ですね」
小鳩は鈴夏の隣に座ると鈴夏にニッコリと微笑む。
「それとですが、今年の郊外特別実習期間は予定を繰り上げて行われることになりましたので、早めに準備をしてくださいね」
真耶が言い終わると同時にSHL終了のチャイムが鳴り、鈴夏達は教科書等を出し始めたのだった。
◆
午前中の授業が終わり、鈴夏、美沙、稚詩、リリウム、小鳩、ウィンディ、メイは食堂の一角に集まっていた。小鳩と稚詩と美沙は自己紹介を休み時間の間に終わらせていた。
「私が来るまでにそんなことが………」
「それで鈴夏ちゃん沈んでたんだねぇ………」
「………ぅん」
鈴夏は小鳩と稚詩に本当のことを話していた。実際は箝口令を出されているのだが、一夏が許可を出した為こうして話していた。
「一夏さんは捜索の方はしているんだろう?」
「お父様と叔母様は伝を使って調べてるみたいなんだけど………どうも見つからないみたい」
「難儀だな………私の方でも調べてみよう」
「ごめんね………ウィンディ」
「いつもの鈴夏らしくないな、まぁ夏音が居たからこそ………か」
ウィンディの言葉を最後にまた沈黙が訪れる、それ程までに今回の夏音拉致に関して責任を感じていた。家族として、姉としての責任を鈴夏の心を蝕み、雁字搦めに縛り付けていく。暫く時間が経つと、メイが声を上げる。
「そだ!鈴夏ちゃん!
そのメイの言葉にリリウム、小鳩、ウィンディ美沙は目を限界まで上げてメイを見る。だが、鈴夏と稚詩はわからずきょとんとしている。
「この馬鹿メイ!そう軽々しく
「え~、でも
「メイは少し静かにしてね~」
ウィンディがメイに怒鳴りつけ、そのメイが反論しようとした時には小鳩に口を塞がれる。だがリリウムは少し考え口に出す。
「それは良い案かもしれません。私が渡りをつけましょう」
「………本当に見つかるの?」
「それはわかりません。けれど、何もしないよりかはマシと言うだけですよ鈴夏」
◆
リリウムが渡りをつけるという話から2週間が経ち、そして
リリウムは
「本当にくるのかな………」
「大丈夫だ鈴夏、
鈴夏が不安がっていた為、ウィンディが不安を取り除く為に言葉をかけ、その後にメイ、稚詩、小鳩、美沙が続く様に言葉をかけていると足音が2人分聞こえてくる。
「鈴夏、お待たせしました」
リリウムの声が聞こえ、振り向くとリリウムの隣に外套を羽織り、のっぺらとし片目だけしか開いてない黒い仮面を被った人物が立っていた。
「すまない、遅くなった」
その声はボイスチェンジャーで変えている声色だった。鈴夏は無意識の内にその人物を見つめる。
「あぁ、この格好が気になるのかな?」
「あっ!えっと………はい」
「まぁ怪しさ満点だけど、素顔を晒さない為と声紋で人物特定されたくないからだよ」
「はぁ………」
「自己紹介が遅れたね、私は『
「織斑鈴夏です」
「さて………リリウムから話を聞いてはいるけど、粗方検討は付いている」
「ほ、本当ですか!?」
テルミドールの言葉に鈴夏は詰め寄り、襟首を掴んでガクガクと揺らす。その奇行(?)に驚いたウィンディ達は鈴夏を引き離す。
「あ~………焦る気持ちは分かるが、取り敢えず落ち着きなさい」
「………はい」
「まぁ落ち着いたみたいだからいいけどね。それでだ、織斑鈴夏さん。貴方には『LIDR旅団』に入ってもらいたい」
「えっ!?その………理由を聞いても?」
「まぁ見ての通り、私が正体を隠している以上『LIDR旅団』は非合法組織だ。それに、君自身も自分で救い出したいとは思ってない?それを踏まえて君を勧誘しているわけだ」
「はぁ………」
「それに、織斑夏音君を拉致したのは恐らくだが巨大な組織だ。そんな組織に君自身だけで行くのも無謀だとは思うが?」
「それは………そうですけど」
「それらのリスクを考えると、私達の仲間になった方が得策だと思うけど?」
「………解りました。『LIDR旅団』に入ります」
「それは良かった。これからは私たちは仲間だね」
テルミドールはそう言って、鈴夏に手を差し伸べる。鈴夏はその手を握り、テルミドールを見つめる。
「それで、夏音を連れ去った組織って誰なんですか?」
「まぁそれは後で話すから、まずは『LIDR旅団』の計画を話すよ」
テルミドールはそう言って鈴夏の手を離し、近くの壁に背を預ける。
「計画の名称は『リターン&クローズ・プラン』、目的はIS関連の全施設、全企業、ISコアの排除と人類の宇宙への進出だ」
「はぁ!?」
テルミドールの言葉に鈴夏は絶句をしてしまうが、それは当然の反応だ。現存するISコアは467個であり、それらを施設、企業等を全て排除と言うのだ。その被害は尋常ではなく、何年にも渡るであろうことは容易に想像がついた。
「ISが生まれたが故に人類は腐敗し、醜い争いが更に泥沼と化している。そしてISによって奪われた命も既に数え切れないほどになっている。直接的、間接的問わずにだけどね、中東に至ってはお払い箱とされた戦闘機等がテロ組織に流され内紛が悪化しているのも確かだ。少を犠牲にして大を生かす、そして人類に新たなる
「えぇ、なんとなくだけど、テルミ………いいえ、旅団長が言う事は解ったわ、それで?何処のどいつなの?夏音を攫ったのは」
「その組織の名は………『IS委員会』、自己の利益しか追い求めない老害共の集まりだ」
「『IS委員会』!?なんで!?」
「理由は簡単だ、『
テルミドールはそう言うと、懐から一枚のメモ用紙を取り出し、鈴夏に渡す。
「これは………?」
「それは私の連絡先だよ、何かわからないことがあればそこに連絡しなさい、それとだけど」
テルミドールは入ってきた所に移動する。
「IS学園の郊外特別実習期間が終わり次第計画を実行する」
「「「「「「「!!」」」」」」」
テルミドールはそう言って廃ビルからその姿を消したのだった。