IS~インフィニット・ストラトス~ for Answer 作:白姫彼方
第6アリーナでの騒動から数時間後、夏音は教室でIS教本を読んでいた。
ガラッと音を立てて教室の戸が開かれる、夏音はそっと視線を音の発生源に向ける、夏音はその少女を見た瞬間、息を呑む。
その少女の容姿が整っていたからだ。青みがかった銀髪を腰まで伸ばしたハイロングストレート、身長は夏音と同じぐらい、体型は出てるところは出て、引っ込むところは引っ込んでいて目は右目が銀、左目が
その少女は夏音を見るとにこりと微笑み、夏音に近付く。
「初めまして」
「初めまして、織斑夏音です。夏音と呼んでください、貴女は?」
「私は
美紗と名乗った少女は握手を求め、夏音はそれに応じて握手をした。
「夏音君はこんな時間まで何をしてたの?」
「ISについての復習と予習かな」
「勉強熱心なんだね」
「只でさえ皆より遅れてるからね、それを早く埋めないとね」
「良い心掛けだね、夏音君。私はそういう人好きだよ?」
美紗はそう言って、夏音に微笑む、それに夏音は頬を少し紅くする。その時、夏音の耳に聞き覚えのある声が複数聞こえてきた。
『まったく!一夏ぁ?あれほど千冬さんに贔屓にするなって言われてたでしょ?』
『本当よ、お父さん?しっかり反省してよね?』
『む……、面目ない』
一夏とその妻と鈴夏は夏音のいる教室に入り、美紗の姿を見た一夏とその妻はピシリと硬直をする。
それはそうだ、『IS戦争』で逝った少女に酷似していたからだ。一夏は、その少女に近付く。
「美緒……?」
「そんなわけないでしょ!?だって美緒はあの時……!」
「凰いえ、織斑鈴音さんの言うとおり、私は千条院美緒ではありません」
美紗は一夏と鈴音の言葉に返事をしながら、2人に向き合う。美紗を見た2人は、息を呑む。
「初めまして、
美紗の言葉に、一夏と鈴音は驚きの声を上げた。
◆
美紗の発言から数十分後、一同は第一回織斑家家族会議と称した、親族会議を会議室で行っていた。ちなみに織斑家家長の一夏は、鈴音、千冬によって鉄拳制裁と言う名の
「それでだ、お前は何者なんだ?」
そう質問するのは千冬だ、その目には疑念が渦巻いており、もしそれが嘘であるならば今ここで切り捨てようと考えている様だ。
「先程も言ったとおり、お母様、千条院美緒とお父様、織斑一夏の娘です」
「だが、一夏はお前のことは知らないと言ってたが?」
「それは当然です、何せお母様がお父様に隠していたことですから」
「何故美緒は隠していた?」
「それはこれを見れば解ると思います」
美紗はそう言って、千冬に一枚のDVDを渡す。千冬はそれをじっと見て、それをPCの挿入口に入れ、再生させる。
そこに映し出されたのは、以前一夏が招かれた美緒の部屋だった。
『皆……久し振りだね。
これを見ていると言うことは、私と一夏の子に会ったって事だね?
目の前に居る私に似た子は正真正銘私の子であり、一夏の子でもあるよ。
皆は何故、隠してたかって思うだろうけど、私が居なくなることで私の事を引き摺って欲しくなかった。
だから私は言峰に頼んで、私の卵子と一夏の精子を私の体内から取り出して貰ったんだ。
そうすることで、一夏は幸せになってくれると……私は思った。
だから、今居る私の子を一夏と私の子にして欲しいなんて言わないよ。
一夏のその時の幸せを崩したくないから……。
だから一夏とその奥さんに言うけど、その子は千条院家の子として育てるよ。
これは美紗緒ちゃんにも既に話してあるから……。
だけど、美紗緒ちゃんを責めないで?
これは私がお願いした最後の我が侭だから……皆は納得出来ないかも知れないけど、それでも納得して欲しい。
一夏や皆には迷惑を掛けるけど……。1人の女の子として扱ってあげて……お願い』
美緒のメッセージが終わると同時に映像が消えた。美紗、夏音、鈴夏を除く全員が拳を握り締め、一夏はその拳を解き、美紗の前に移動して、美紗を抱きしめた。
それに驚いたのは抱きしめられた美紗本人のみならず、鈴音以外の全員であった。
「聞いてくれ、あの映像の中の美緒が言ったことが本当なら、お前は俺の娘だ。
例え皆に否定されても、俺はお前を肯定する。だから美紗、お前は俺達の家族だ」
一夏の言葉に美紗は硬直し、鈴音はやれやれと言った感じで苦笑をし、千冬は呆れた様子で、夏音と鈴夏は、何がなんだかわからないと言った感じで、首を傾げる。
「でも……、それだとお母様が望んでいた、お父様の幸せを壊してしまうと私は思うけど……」
「それなら心配ないわよ」
そう言って、美紗の疑問に答えたのは鈴音だった。
「こういうことになったら、お人好しの一夏は、自分の娘だって言い張るからね、そこは予想済みよ。
養子としてうちに入れても良いけど、それよりも千条院家の子として居た方が夏音にとっては都合が良さそうね」
鈴音は夏音を見てニヤニヤと笑う、夏音は慌てだす。
「何を言ってるのさ!?母さんは!!僕に都合が良いってどういうこと!?」
「ふふん♪そこは秘密よ♪」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ夏音と鈴音を見ながら、一夏は美紗から離れ、クスクスと笑う。
鈴夏は美紗に近付く。
「初めまして、私が夏音の姉の鈴夏よ、よろしくね」
「改めまして千条院美紗です。美紗と呼んでください」
「なら美紗、私は鈴夏と呼んで?」
「はい、よろしくね?鈴夏さん」
「此方こそよ、美紗」
鈴夏と美紗は握手をして笑い合い、織斑家に新しい家族が加わったのだった……現在ではまだ家族ではないが、何れはそうなるだろうと一夏は子供達を見守っていたのだった。
◆
美紗が新しい家族(?)となってから2時間後、夏音は1人自室にいた。
夏音はベッドに座りながら、服の中に隠していたネックレスを取り出して、眺めていた。
「あの子は……、今何処に居るんだろう?」
そのネックレスは十字架を上下逆転にした逆十字架で、交差している部分にはガーネットよりも深くて鮮やかな深紅の宝石が付けられていた。
「千条院美紗……か」
夏音がそう呟いて、思い出すのは美紗ではなく、遠い昔、夏音が6歳頃に出会った1人の少女でこのネックレスをくれた子であった。
「あの子に少し……、似てたかな?」
夏音は目を閉じてそのまま眠りについたのだった。
◆
暗い室内に一つのモニターが映し出されると、その中央に一つのエンブレムが表示され、その右隣に複数の名前が表示された。
『あの2人が『IS学園』に入学したと言うのは本当か?』
最初に聞こえた声は、年老いた男性の声で、それに答えたその声は年若い女性の声だった。
『はい、間違いありません。織斑夏音、織斑鈴夏が『IS学園』に入学しました』
『ふん……、忌々しい『ラインアーク』……いや、千条院家め、我々の邪魔ばかりをしてくれるものだ』
苛立たしそうに言ったのは別の男性の声で、それに拍車をかける様に、更に別の声が響き渡る。
『『織斑一夏』の御陰で破壊された、IS研究所や施設は200は超える!早く『織斑夏音』と『織斑鈴夏』を捕獲するのだ!!』
『まぁ落ち着け、ことを急いでは仕損じるぞ』
怒声を放っていた人物を諌めたのは、最初の男性であった。
『だが!しかしだな!』
『まだ時間はたっぷりとあるんだ、気長に行こうじゃないか』
『くっ!私は私で動くぞ!』
そう言って、怒声を放っていた男性の名前が消えた。それに対して残った2人の男性はやれやれと言った感じで話を続ける。
『全く……最近の若者はせっかちでいかんな』
『そうだな、だがこれも計画の想定範囲内だ。大きな変更はありえんよ』
『なら良いがな……、引き続き監視を続けろ』
『はい、解りました』
3人はそう言って、全員の名前が消えた。
◆
別の場所でも別のエンブレムと複数の名前が書かれたモニターが表示され、話し合いを行っていた。
『あの2人が『IS学園』に入った事で、奴等は動き出すだろうな』
その声は若い男性の声であったが、その声色は確信に満ちていた。
『その通りね、それで?奴等の動きはどうなってるのよ?』
『今は監視のみだ。どうやら様子見と言うところだろう』
その次に聞こえてきたのは女性の声だが、片方は軍人染みており、もう片方は勝気が強そうだった。
『だけど、その前に僕達の計画が始動すれば……だね』
『そうですわね、所で、IS操縦者達の勢力分布はどうなってますの?』
更に別の女性2人の声が聞こえる。その声色は2人とも、落ち着きがあり、育ちが良さそうに聞こえた。
『旧ICHN陣営の全IS操縦者、ドイツの一部IS操縦者、中東の全IS操縦者が此方側だね。世界規模で言うと、45%のIS操縦者が私達に就いてるといった感じで、中立が南アフリカ圏全IS操縦者、世界規模で5%だね』
『それに追加でだが、アメリカの『
2人のうち1人は、何処となく子供っぽさが見え、もう1人は硬く、女傑と感じる声色だった。
『そうか……、なら極めて順調だな。まぁ……、あの老害達も予想外と言ったところか』
『油断はするなよ、私達の頭であるお前が落ちたら……その後の動揺が計り知れんからな』
『俺等の計画の内では一度俺は行方不明になる算段だったな?』
『その際は私も行方不明に……って所ね。あの子達には苦労を掛けるけど』
『そこは僕がフォローするから任せて、それで、『あの人』の行方は?』
『目下探索中だ、アジトであった所はよく見つかるんだがな……』
『まぁ『あの人』の場合は、保険だ。居なくても計画には問題ない』
『そうですわね、私はこれまで通りあの老害達の本拠地を捜索しますわ』
『そうしてくれ、所でだ。『イレギュラー』はどうする?』
『私としては此方側に就いて欲しいけどね』
『就かなかった場合は、俺が『抹殺』するしかないか』
『そうね……、『
『まぁ、今のところ順調だ、『アレ』は今何処までできている?』
『今のところ40%だね、予定では4ヵ月後までには仕上げるよ』
『あぁ、『アレ』はこの計画には不可欠な物だ。早めに完成させてくれ、試運転とか終わらせ次第計画を開始する』
男性の言葉を最後に、モニターは切れた。