星の子どもたち   作:パーペチュアル

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Carbuncle 9

 

 

 

「まとめましょう。いつでもヤレる都合の良い女よりも、容易く手が出せない希少な高値の花こそ、真に価値が高いのよ。何人もの権力者が財や命を投げうって、それでも手に入れられなかったかぐや姫のようにね。遊女だけでなく芸能人も、本質は同じ。売れない芸能人は客や仕事を選べないけど、売れている芸能人ほど露出が少なく、仕事を選べる立場にあるのよ」

「そうね。その通りだわ」

「ところで、かなさん。ミヤコさんが以前、飴と鞭を使い分けなさいと言ってたこと、覚えてる?」

「ええ、よく覚えてるわ」

「その言葉は正しいけど、肝心のミヤコさん自身がその言葉を守れていない。アクア君に求められれば、否応なしに応えてしまう。まあ、ミヤコさんもアクア君にあれこれとやらせているみたいだから、ある意味バランスは取れているとも言えるけど……」

「王子とかホストとか執事とか、あとは画家の青年(ジャック)とか、色々なイメージプレイをやってますよ」

「かなさん。貴女も、そのご相伴に預かっているのでしょう?」

「それはもう。控えめに言って最高ですね。凄く愉しいです」

「……ああ、貴女たちが本当に羨ましいわ。わたしにも少しくらいお裾分けして欲しいわね」

「神木さんはやってくれないんですか?」

「残念ながらね。育て方を間違えたかしら……」

「全裸に首輪を付けてバター犬にするのは、少なくとも間違いだと思います」

「甘いわね。ものは試しに、貴女もアクア君に首輪を付けて飼ってみなさいよ。きっと(はま)るわよ?」

「う~ん、私まだそこまで倫理観を捨てきれないっていうか……」

「まあ、あんまり若いうちから倒錯的なプレイに慣れてしまうと、将来苦労することになるものね。お楽しみはもう少し先に取っておきましょうか。

 ――倒錯的と言えば、最近アクア君に変な様子はないかしら?」

「変、というと?」

「前よりも尊大になったとか、態度が大きくなったとかよ」

「それは……。確かに、ちょっとはあるかもですけど」

「そう……、黄色信号(頃合い)ね」

「どういうことですか?」

「ミヤコさんとかなさんで両手に花という、今この状況。ミヤコさんは言うに及ばず、かなさんもミヤコさんに対抗して、アクア君の要求を尽く受け入れているんじゃないかしら」

「まあ、私の出来る範囲でなら」

「身目麗しい複数の女を意のままに出来るなんて、男にとっては夢であり浪漫よ。その状況に舞い上がっているならともかく、それに慣れて当たり前になってしまうとね、男は自分が偉くなったと勘違いしてしまうものなの。古来より、権力者が女たちに入れ込んで身を滅ぼすなんて、至極ありふれた話よ」

「……」

「それだけじゃないわ。複数の女に尽くされるのが日常になってしまうとね、男という生き物はどんどんつけあがってしまう。結果、優先順位の低い女を煩わしくなった男が、苛立っている時にDVを振るうなんて珍しくもないわ」

「アクアは暴力なんて振るいませんよ!」

「でも、女からの愛を当たり前に享受している、自分から動かなくても彼が女に困っていない状況なのは事実よ。この症状が進行するとね、どうなると思う?」

「どう……なるんですか?」

「彼にとって、女たちとのやりとりが食事や睡眠、排泄と同じになってしまう。その結果、女を性処理の道具や便所と同列に扱うようになってしまうことも、あり得ない話じゃない。そういう男は掃いて捨てるほどいるわ、芸能界という世界では特にね。

 実際、清十郎ちゃんもその兆候が見られたから、そうならないように矯正しようとしたんだけど……。結局、余計に夫婦の仲が冷める結果になってしまったわ。大輝ちゃんにしても厳しく育てたつもりだったけど、女癖の悪さは清十郎ちゃん譲りね。血は繋がっていないとはいえ、やっぱり父子はどこかしら似てくるものなのね」

「そんな……。愛梨さん、私どうしたら……」

「――なんてね」

「……へ?」

「ミヤコさんが教育してくれているんだから、まあ大丈夫でしょう。とはいえ、そのミヤコさんがアクア君に甘々だから、不安は拭えないけれど……」

「愛梨さん……」

「さっき話したのは、あくまで可能性の話よ。でも、あり得ないとは言い切れない。だから女は、男がそうならないように首輪を付け手綱を握っておかなくてはいけないの。一流の女は、男の転がし方を心得ているものよ」

「む……」

「それにね、かなさん。さっき貴女は、アクア君が堕落するかもしれないという()()()を覚えたでしょう。人間なんて、放っておけば下り坂をどんどん転がっていくんだから、そうならないよう貴女も気を付けなさいよ」

「肝に銘じます」

「――さて。もうそろそろアクア君にも、危機感を思い出させてあげましょうか。かなさんを喪うかもしれないという意識が芽生えれば、これまで以上に貴女の事を見てくれるようになるわよ。必ずね」

「だから、()()()()。これが、()()()ということですね」

「そうよ。かなさんが喪われるかもしれないという危機感を刷り込み、意識付ける。それだけで、アクア君の貴女への目が変わることは確実よ。これは、安心や癒しを与えるミヤコさんとは全く逆のやり方。危機感を煽り、動揺させ、心を搔き乱す悪女の戦略よ。

 ――かなさん。貴女に出来るかしら?」

「やります。やってみせます!」

「ふふ、頑張りなさい。……かなさん、どうかしたの?」

「どうして……、どうして愛梨さんは、私にここまでしてくれるんですか?」

「前にも言ったでしょう? わたしは、貴女のような娘が欲しかった。わたしにとって貴女とアクア君、ミヤコさんは推しだから――それじゃ足りないかしら」

「そんな、ことはない……ですけど」

「いいわ、少し補足しましょうか。わたしにとってアクア君とミヤコさんは、かつてのヒカル君とわたしのあるべきだった姿。失った夢の続きを見ているようで……とても眩しくて、羨ましくて、ちょっとだけ憎らしい。私にとって理想の母子であり、理想の男女でもあるわ。わたしがテコ入れしなかったら、かなさんは勝負の土俵にすら上がれなかったわよ」

「むむ……」

「――でもね。わたしの育てたかなさんが、そんな理想を凌駕することが出来たなら、乗り越えることが出来たなら。それはそれで愉しそうじゃない?」

「他人の恋路で遊ばないで下さいよ」

「前に言ったでしょう? 世の中は楽しんだ者勝ちよ。――わたしはね、ミヤコさんが勝ってもいいし、貴女が勝ってもいい。愉しければそれでいいの。でもね、三人がこの関係をだらだらと続けて、泥沼に沈むように堕落していくのは看過出来ないわ。夜空の星に負けないくらいに、美しく眩しい輝きを放つ、愛の光(アイオライト)を見ていたいのよ」

 

 

 

 

 

 

「ルビーさん、わたしとアイドルやりませんか? B小町を復活させるので、貴女にも参加して欲しいんですが」

「やる!」

 

 即落ち2コマもびっくりなほどに即答だった。

 

 

 

 

 

 

「師匠、私アイドルになります! だから、アシスタントを卒業させてください!」

「うん、わかったヨ」

「早ッ! てっきり、引き留められると思ってたんですけど」

「まア、いつかはそう言い出すだろうと考えてたからサ。心の準備だけはしてたんだ。

 それよりも――」

「?」

「……いや。頑張ってね、ルビーちゃん」

「はいっ!!」

 

 

 

 

 

 

「――というわけでね、MEMちょ。私、アイドルになることに決まったんだ」

「そっかぁ……。寂しくなるね」

 

 ぴえヨンという有名Youtuberのアシスタントをしていた星野ルビーは、前に仕事を一緒にして以来、MEMちょと親交があった。お互いにアイの大ファンということもあり、すぐに意気投合したのだ。

 

「それで、ルビーちゃん。相談したいことって何かな?」

「うん。今、メンバーは暫定で三人なんだけど、もうあと一人欲しいって話なんだよね」

「へえ……」

「でも、可愛い子や意欲のある子は大手に粗方持ってかれちゃうって前にミヤコさんも言ってたしさ、なかなか見つかりそうにないんだ。MEMちょって顔が広いから、誰か心当たりないかな? ――あ、フリーの子でね」

「う~ん……。ルビーちゃん、そのアイドルグループってどういうグループなの? 予算とか、ユニット名とか」

「あ、それを説明しなきゃだね。予算はたくさん! ユニット名はなんと――B小町!」

「え?」

「あのB小町を現代に復活させるプロジェクトなんだって! 凄いよね!」

「……あの、ルビーちゃん」

「ん? どしたの、MEMちょ」

「それ……、私が、立候補しても……いい?」

「――へ?」

 

 

 




次回でJIF編は終了の予定です。


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