星の子どもたち   作:パーペチュアル

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 Santamaria Aquamarine/サンタマリアアクアマリン

 最高級品のアクアマリン。
 アクアマリンは青色の濃さや透明度が高まる程に価値が上がるのだが、サンタマリアアクアマリンはその最高峰とされている。
 通常のアクアマリンは淡い水色なのに対し、サンタマリアアクアマリンは色が濃く鮮やかな青色なのが特長。
 かつてはブラジルのサンタマリア鉱山で産出されていたが、現在は枯渇し閉山されており、その宝石の価値は年々上昇し続けている。


Aquamarine (Santamaria)

 

 

 

 心を撃ち抜かれる瞬間、というものがある。

 

『嘘はとびきりの愛なんだよ?』

 

 どうしようもないほど、心惹かれる時がある。

 

『母としての幸せと、アイドルとしての幸せ。普通は片方かもしれないけど――』

 

 黒髪の青年医師は。そうして、彼女に尽くすことを決めた。

 

『どっちもほしい。星野アイは、欲張りなんだ』

 

 

 

 

 

 

 ――およそ9年前。星野アクアが、小学1年生の時。

 

「ミヤコ、痛いよ……」

「大人しくしなさい、アクア」

「でも……」

「ほら、こっちを向いて。余所見してないで、私だけを見なさい」

「……わかったよ」

「じっとしていればすぐに終わるから。もうちょっとの間、我慢しなさい」

「うん……」

「……」

「……」

「――アクア。何で、あんなことをしたの? 暴力は駄目だって、貴方も判ってるでしょう」

「悪いのはあいつだ。……俺は悪くない」

「私は理由を聞いてるのだけど」

「あいつは……ミヤコを偽物だって言った。本当の母親じゃないって、言ったんだ。だから――」

「……そんなことで? それじゃ理由にならないわよ」

「これ以上の理由なんて要らないよ。ミヤコは、俺の……母親だから。誰にも、偽物なんて……言わせないから」

「アクア……」

「それに、あいつは俺の作文を(ろく)に聞いてなかったし……。でも、一番気に入らないのは、あいつがミヤコに色目を使ってたことだ」

「もう、本当に……仕方のない子ね」

「反省はしてるよ。でも……後悔はしてない」

「……」

「……」

「……本来なら」

「え?」

「本来ならこういう時、貴方を叱らないといけないのだけど――」

「ミヤコ……?」

「アクア、

 

 ……ありがと」

「……どういたしまして」

 

 

 

 懐かしい夢を見た。

 アイの遺言の一つ、俺たちの授業参観に出たかったこと。ミヤコは苺プロの立て直しで忙しいと承知していながらも、そこを何とかと頼み込み、彼女は俺の願いを快く笑顔で受け入れてくれた。

 

 授業内容は、作文の発表。テーマは「母親」。

 流石にアイのことを詳しく書くわけにもいかないので、代わりにミヤコについての美辞麗句をつらつらと書き連ねておいた。運悪く教師に指名されてしまった俺は、全員の注目が集まる中、その作文を音読する羽目になったのだが。

 クラスメートにも、担任教師にも、他の十数人の母親たちにも、聞かれて困るような内容ではない。だが、ミヤコの前でその文章を読み上げるのは堪らなく恥ずかしかったことを今でも覚えている。

 彼女は列席した母親たちの中で、最も美しかった。それが身内贔屓だということを差し引いたとしても。

 仕事の時よりもやや淡い色のリップグロスに、授業参観のドレスコードに相応しい派手さを抑えた服装であったが、他の母親たちと比べても一際輝きを放っており、心の奥底で多少なりとも誇らしさを覚えたものだ。

 今にして思えば、その美しさが逆に仇となったのだろう。

 放課後のことだった。

 

 ――なんでおまえの母親、みょうじがおまえとちがうんだよ。

 ――じつは本当の母親じゃないんだろ?

 ――わざわざ偽物をつれてくるとか、はずかしくないのか。

 

 復讐を誓って以来。久方ぶりに、本当の怒りを覚えた。

 (はらわた)が煮えくり返るを通り越して、不思議と波は穏やかであり。

 ただ、目の前の不愉快な囀りを止めなければいけないと、心の底から強く、強く。

 気付けば、俺は全力で拳を振り抜いていた。

 担任の教師に止められるまで、ただひたすらに拳を振り上げ続けた。

 

 

 

「……そんなこともあったな」

 

 薄暗い部屋、窓から明かりが差し込んでいる朝の時間。

 いつもなら俺が起きるくらいの時間帯であり、ルビーはまだ夢の中にいる頃で、ミヤコが朝食を作っているくらいの――。

 

「……っ!?」

 

 思い出した。昨日の、家族会議のことを。

 神木ヒカルの挑発に乗って殴りかかり、あっさりとあしらわれたこと。

 突き付けられる数々の証拠品は、奴が12年前の事件に関与している可能性は低いことを示しており。

 語られる、俺の知らない奴とアイの過去。

 それでも、アイとルビーを省みなかった神木ヒカルが許せなくて。自分の命すら交渉のテーブルに乗せてくる奴のことが、どうしても気に入らなくて。

 この手を、奴の首にかけ、絞めようとして。それを、ミヤコに止められた。

 そこから先はもう……彼女のことしか思い浮かばなかった。

 

「ミヤコ……!」

 

 この時間ならちょうど、彼女は朝食を作っているくらいの――。

 ソファから起き上がる。何故だか痺れる感覚がする両腕を振り回して、掛けられていた毛布を脱ぎ捨てる。

 慌てて部屋を飛び出し、事務所から家に移動し、リビングへと繋がる扉を乱暴に開け、

 

 そこには、いつもの光景が広がっていた。

 モノトーンにまとめられた色彩のキッチン。

 床に置かれた、子どもの背丈ほどもある観葉植物。

 木目調のフローリングに、ルビーのお気に入りの兎形スリッパ。

 湯気を立てる鍋と、そこから漂ってくる味噌汁の匂い。

 そして……窓から差し込む朝日と。

 その光を浴びて輝いている彼女が、居た。

 

「あら、アクア。起きたの――」

 

 最後まで彼女が言い切る前に。

 無意識に、衝動的に、ミヤコを背中から抱き締めていた。

 

 ――ああ、夢じゃない。

 

 彼女は、ここに居る。俺の腕の中に、確かに存在している。彼女の鼓動を、吐息を、匂いを、温かさを、柔らかさを感じる。

 あの時、復讐という目的を失い座り込んでいた俺に手を差し伸べ、必死に声を上げてくれて。

 絶望に沈み、闇に溶けていくだけだった俺を、この世に繋ぎ止めてくれた。

 彼女も俺と同じ罪を、苦しみを抱えていた。

 それでも、俺を守ってくれていた。寄り添ってくれていた。

 

 そんな彼女を、誰よりも愛おしいと、思った。

 

「アクア、昨日お風呂に入ってないでしょう。シャワーだけでも浴びてきなさい」

「もう少し……、もう少しだけ……」

「それに、昨日の晩御飯も食べてないわよね。早く準備しないと、朝食も食べられなくなるわよ。今日も学校なんでしょう?」

「あと5分……」

「もう、本当に……仕方のない子ね。私は貴方のベッドじゃないのよ」

「なら、ミヤコが俺のベッドになってくれ」

「最低の口説き文句ね。まだ寝惚けてるのかしら?」

「……すまん」

 

 彼女の機嫌が傾きつつあるのを悟り、慌てて身体を離す。先程まであった彼女の感覚が遠ざかり、名残惜しさを禁じ得ない。

 残ったのは鼻腔を刺激する味噌汁の匂い。今更ながら、自分が空腹であることを自覚し――何となく思いついた。

 

「ミヤコ、一生味噌汁を作ってくれとプロポーズする男をどう思う?」

「味噌汁で顔を洗って出直しなさい、と思うわね」

「だよな……」

 

 ミヤコは、ベタでも気障(キザ)でも歯が浮くような台詞だとしても、映画やドラマのような口舌を好む。画面の中でイケメン俳優に口説かれる女たちを見ていて、「私もこんな台詞を言われてみたい」と顔に書いてあったのをよく覚えている。

 この様子では「一緒の墓に入ってくれ」なんてのもNGだろう。元港区女子を落とすには、それ相応の高いハードルを越えなくてはならないようだ。

 

「もっと気の利いた口説き文句を待ってるわ」

「……任せろ」

 

 数日前の自分なら「努力する」と返しただろう。でも今は、自然と「任せろ」の言葉が口をついて出ていた。

 彼女の為に絶対にやってみせる、という強い覚悟と意志。そして、過去ばかりではなく未来のことを考えられるようになったからだろう。

 

「それはそうと、大事なことを忘れてるわよ」

「……そうだったな」

 

 彼女は顔を少し傾け、右の頬を俺に向けて。

 俺は僅かに顔を下に向け、彼女の頬に唇を寄せて。

 

「おはよう、アクア」

「おはよう、ミヤコ」

 

 いつも通り、彼女の頬に親愛のキスを落とした。だが――。

 いつもなら、心が満たされ温かくなるその行為が、今の俺にはどうにも物足りなく感じられた。

 

 

 

 

 

 

 その後、やや急いでシャワーを浴び、起きてきたルビーともども食卓を囲み。

 朝のニュースを背景に朝食を摂り、制服に着替え。そして、登校する時間がやってきた。

 

「おい、まだかかるのか。ルビー」

「もーっ、ちょっと待ってってばお兄ちゃん!」

 

 つい数日前の、入学式の日と同じようなやりとり。

 あの時は、高校生活が始まると同時に、いよいよ俺の復讐劇が本格的に動き出すのだと、陰鬱な気分を募らせていた。

 でも今はもう、違う。

 

「いってきます、ミヤコさん」

「いってらっしゃい。ルビー、アクア」

「いってきま――

 

 ……いや、まだだ」

「お兄ちゃん?」

「アクア?」

「ルビー。忘れ物があるから、先に行っててくれ」

「それくらい待ってるよ?」

「いや、いい。一番大事なことを忘れてた。ちょっと時間がかかるから、先に行け」

 

 ルビーは俺を見て、ミヤコの方を向き――。

 やがて、怪訝な表情から一転して、笑顔になった。

 

「それじゃ先に行ってるね、お兄ちゃん。……ごゆっくり」

 

 パタン、と玄関が閉じられ、ルビーを見送ってから後ろを振り向くと。

 ミヤコはいつもと同じように、俺に向けて優しげな笑みを浮かべていた。いつもと同じ筈なのに、何故だろうか、どこかが違うように見える。

 何が違うのか。一体、いつもと何が……?

 ――いや。違うのはきっと、俺の方だ。

 

「アクア、また背が伸びたかしら?」

「まさか、そんな急には伸びないだろう」

「いえ、背が伸びたというより、雰囲気が変わったって感じかしらね。一回り大きく見えるわよ」

「そうか?」

「そうよ」

 

 成程、それは確かにそうかもしれない。昨日まで俺の中に澱んでいた強迫観念とでも呼ぶべき重圧が、綺麗さっぱり消え失せていた。動作の重いPCを初期化したような、肩と背中に憑依していた悪霊たちが全て祓われたような、そんなイメージ。

 そのぽっかりと空いた場所に入ってきたのが、目の前の彼女だった。

 俺の空虚を埋めてくれたのは、星野アクアという人間の中で一番多くを占めているのは、間違いなく彼女だった。

 

「それで、何か言いたいことがあるんでしょう? アクア」

「ああ、そうだ。……ミヤコ」

 

 

 

『僕には、父親が居ません。僕の産みの母親は、シングルマザーでした。仕事が忙しくてなかなか時間が取れなかったけれども、それでも仕事終わりにはただいまと言ってくれて、一緒にご飯を食べたり、お風呂に入れてくれたり、枕を並べて一緒に眠りに就きました。寂しくはなかったし、母親に不満を持ったことは一度もありませんでした』

 

 

 

「復讐はもう……ここまでで、いい」

「……いいのね? アクア」

「ああ。復讐に人生を捧げた星野愛久愛海はもう、ここには居ない。俺の心は皆、ミヤコに持っていかれたから」

「もう、大変だったわよ。貴方の復讐心を何とかしようと、ずっと昔から考えに考え抜いたわ。ある意味で、苺プロの再建よりも頭を悩ませたわね」

「……本当にすまなかった。ありがとう……ミヤコ」

「どういたしまして。それで、今後はどうするの? 改めて聞かせてくれるかしら」

 

 

 

『でも、僕が小さい時に、母親に不幸がありました。僕と妹は母親を亡くして、途方に暮れるしかありませんでした。

 そんな時に手を差し伸べてくれたのが、僕たちの育ての母親、斉藤ミヤコさんです。

 彼女は、僕の産みの母親の仕事仲間で、僕たちのことをずっと気にかけてくれました。彼女も色々と大変だったにも関わらず、僕と妹を里子として引き取ってくれました』

 

 

 

「あれから、少し考えてみたんだ。ミヤコも言ってた、復讐が終わったらどうするのかってことを。

 今後どうすべきかはまだ、判らない。でも、自分がどうしたいかって考えたら、すぐに答えが浮かんだよ」

 

 

 

『それからはずっと、三人で一緒に暮らしてきました。楽しいことも一杯あったけれども、辛いこともありました。

 ミヤコさんが仕事で忙しい時は僕が妹の面倒を見たり、ミヤコさんの代わりに家事をやったりと、僕たちはお互いを支え合って生きてきたと思っています』

 

 

 

 俺は手を伸ばし、ミヤコの頬に手を添える。そのまま親指を動かして、彼女の唇をゆっくりとなぞっていく。

 ミヤコの顔が少し、ほんの少しだけ紅潮し、吐き出された艶めかしい吐息が俺の手のひらの表面を伝わっていった。

 

「俺は――ミヤコが欲しい。もう、頬だけじゃ満足出来ない。こっち()にも……キスしたい」

「ふぅん……アクア、覚悟は決まった?」

「ああ。腹は括ったよ」

「じゃあ……。私のこと……責任、取ってくれるの?」

「俺も、ミヤコと一緒に背負うよ。ミヤコが抱えているものを、悩みも、罪も、後悔も……全部を」

 

 

 

 俺が第二次性徴を迎えた時。ミヤコと風呂に入っていて、彼女の裸身に俺の中の男が反応してしまった、あの時。

 背後から囁くように問いかけられたことを、今でも忘れてはいない。

 俺に覚悟が出来たなら、その時はアクアの方から誘って欲しいという、彼女のどこまでも真っ直ぐな気持ちを。

 彼女は俺の覚悟が決まるまで、何年もずっと――待ち続けてくれていたんだから。

 

 

 

『僕が大変な時は、ミヤコさんは僕を支えてくれました。何度も励ましてくれました。泣き言も聞いてくれました。本当に辛い時は、ぎゅっと抱き締めてくれました。今の僕がこうして生きていられるのは、ミヤコさんのおかげです。

 僕たちとミヤコさんは血が繋がっていないけれども、それでも僕はミヤコさんのことを母親だと思っています。照れくさくて口には出来ないけれど、ミヤコさんが僕のことを自慢の息子だと言ってくれた時は、本当に嬉しかったです』

 

 

 

「そんなに……私が、欲しいの?」

「ミヤコがいい。ミヤコじゃなきゃ駄目だ。

 ミヤコが居ないと俺は――生きていけない」

 

 彼女の頬に添えた手を動かし、ミヤコの顔を上向かせる。

 12年前は見上げるばかりだった彼女の(かんばせ)。俺が包み込まれるだけだった彼女の身体。

 いつしか俺の身体の方が高く、大きくなり、彼女を支えられるようになった。彼女を、抱き締めてあげられるようになった。

 

「アクア、私は貴方の母親なのよ。判ってる?」

 

 心を撃ち抜かれる瞬間、というものがある。

 どうしようもないほど、心惹かれる時がある。

 

 

 

「母としてのミヤコと、女としてのミヤコ。普通は片方かもしれないけど――」

 

 

 

 前世の俺は、雨宮吾郎は。およそ16年前に、そうして、星の少女に尽くすことを決めた。

 今世の俺は、星野アクアは。こうして、斉藤ミヤコに尽くし尽くされることを、望んだ。

 

 誰よりも貴女を、心の底から愛しているから――。

 

 

 

「どっちもほしい。星野アクアは、欲張りなんだよ」

 

 

 

 

 

 

「もう、本当に……仕方のない(ひと)ね」

「斉藤ミヤコさん」

 

 いつも通りの「ミヤコ」でもなく、極稀(ごくまれ)に呼ぶ「母さん」でもなく。星野アクアが彼女にフルネームで呼びかけることなど、過去にどれだけあっただろうか。

 斉藤ミヤコは無意識に背筋を伸ばし、少年の言葉を待ち受ける。

 それがどんな内容であろうとも、彼の真なる感情であるならば、全て受け止めてみせるから。

 

 星野アクアは思い返していた。

 何よりも大事なことを、まごころを込めて、本心から、真っ直ぐに……大切な人に伝える。

 ――それだけでいい。それ以上に大事なことなど、何も無い。

 だから金紗の少年は、自分の全てを込めて、世界で最も大切な人に……愛を(うた)う。

 かつて、彼の産みの母親が、彼女の名前の通りに人々へ歌い伝えていたように。

 

 

 

「星野アクアは、貴女を愛しています。

 だから……。貴女の全てを、俺に下さい」

 

 

 

 星野アクアの左目に、斉藤ミヤコが映っている。

 

 水面に小石を投げ込んだように、その姿が揺れて消えた途端、斉藤ミヤコだったものは瞳の中で小さな珠に収束する。そこから一条、二条と光の柱が次々と伸びていき――。

 やがて、少年の左目に鮮やかな星彩(アステリズム)を刻んだ。

 生まれながらにして、その右目に星野アイの光を受け継いだ少年は。

 今日この時をもって、その左目に斉藤ミヤコの光を宿した。

 

「女は生まれながらにして女優である」。フランスのとある作家の言葉だ。

 だが、この言葉には続きがあった。「しかし、男は男として生まれてくるのではなく、男にならなければならない」。

 

 およそ、12年。あの時から四千を優に超える昼と夜を経て、金紗の少年は真の愛を知り、復讐を乗り越え、愛すべき女性を得て。

 星野アクアは今、男になったのだ――。

 

 

 

「……合格。

 アクア、私が今まで会ったことのある男の人はね。本当に責任が取れるのかって聞くと、みんな一瞬言葉に詰まったり、目を逸らしたりする人ばかりだった。壱護だって例外じゃないわ。

 でも、アクアだけは違った。真っ直ぐに私を見て、躊躇いなく即答してくれた。私の欲しかった言葉をくれた。

 凄く……凄く、嬉しかった。安心した。

 ――本当は怖かったの。アクアが私から目を逸らしたり、悩む素振りを見せたりしたら、私はもう、男の人を信じられなくなりそうだったから……。

 だから、本当にありがとう……アクア。不束者(ふつつかもの)ですが、これからも……よろしくね」

 

 

 

『僕は将来、ミヤコさんを助けられる人間に、ミヤコさんを支えられる男になりたいと思っています。

 それが出来るようになったなら、亡くなった僕の産みの母親もきっと――僕のことを褒めてくれると信じて。

 1年○組、星野愛久愛海(アクアマリン)

 

 

 

 斉藤ミヤコは、両の(かいな)を翼のように広げ。

 己の全てを持って、最愛の男を迎え入れた。

 光の中で、二人の影が一つになって。

 そこからはもう……別たれることはなかった。

 

 

 

「……おいで、アクア。私の全部を、貴方にあげる」

 

 

 

 星野アクアの金紗の髪が。

 斉藤ミヤコの目元の涙が。

 

 春の朝の暖かな光を受けて、きらきらと輝いている。

 新たに芽生えた愛の光(アイオライト)を、世界が祝福しているように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……おめでと、お兄ちゃん……お母さん」

 

 

 

 星の子どもたち――第一章〔了〕




 斉藤ミヤコという女性。こんなにいいキャラなのにも関わらず、彼女をメインに扱った小説は本当に少なく、物足りなさを覚えていました。
 恐らく、推しの子世界で最も報われて欲しいキャラだと思いますが、原作を読み進めるごとに「アクアもう復讐止めてお前が娶って幸せにしてやれよ」という気持ちを禁じ得ませんでした。
 そこで一念発起してこのSSを書き始めた訳ですが、自分の想像以上に強キャラとなってしまい、他ヒロインのつけ入る隙間がありません。
 後日談ではあかねも出す予定ですが、このSSでは登場する前から決着がついてしまっているので、どうしたものかと悩んでいます。
 後日談の目標としては、アクミヤの結婚まで何とか書きたいな……と思っていますが、蛇足にならぬよう色々と気を遣っていますので、ちょっと時間がかかるかもしれません。
 今後とも「星のこどもたち」をよろしくお願いいたします。


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