詳しくは活動報告に投げておきますので、裏話とか見たい人は暇つぶし程度にどうぞ。
山猫の一声
「シュライグー?ちょーっと意見具申するわよー?」
ある晴れた日の昼食の席。自らの名を呼ばれたシュライグの手が、ピタリと静止した。隣で他メンバーより一回り大きな特注のどんぶりに長い鼻を突っ込まないようにしながらも器用なペースで中身をかきこんでいたルガルも、隣の卓で戦闘中でさえ束ねようとしない一番の自慢兼、己のシンボルでもある長い金髪をメニューを見た瞬間あっさり後ろで結び何食わぬ顔して口に運んでいたフラクトールも……いや、彼らだけではない。その場にいた
より正確に言えば、どうすべきかを決めかねていた。
「「(どっちだ……?)」」
フレンドリーで打ち解けたあの声の掛け方は、彼女のひとつの顔の表れである。仲間には誰よりも優しく(自己申告)しかし強く頼もしく、皆に慕われる姉貴分として凛と咲く一輪の花。だとするならば、どんな話であろうとも悪いようにはならないだろうという信頼が彼女にはある。
しかし問題は、彼女の口にした『意見具申』という単語のチョイスだ。名指しされた鉄獣戦線のリーダー、シュライグがあくまで自らの上であるという周知の事実をあえて口にしつつ、戦場でしか聞き得ないような硬い言葉。
もし彼女が、その理由は何であれこの食堂を戦場に変えることも辞さないほどの覚悟を背負っているのであれば。それはつまり、この午後全てにおける鉄獣戦線全メンバーの業務が『食堂の再建と後始末』に書き換わる覚悟。そして今すぐ自分の食事を持ってとばっちりを受けない場所まで逃げる判断と瞬発力が要求されかねない。
固唾をのむ視線もなんのその、プレッシャーなどまるで感じていないかのような……いや、事実彼女はそんなもの感じていないのであろう。戦場を駆け、命の行く末を見つめ、そしてそれを散らす。最強の狙撃手として数多の戦場を渡り歩いてきた彼女にとって、敵意と殺意のない視線などリアクションするほどのものではない。
……ほんの数十秒前までの喧噪はどこへやら、時が止まったかのような沈黙。最初にそれを破ったのは、やはり彼らのリーダーだった。
「どうした、フェリジット」
当たり障りのない、言い換えれば確実に正解ではない代わりに地雷を踏む確率も限界まで落とした60点狙いの答え。有事とあらば千の戦場を飛び回り、鋼鉄の片翼を広げ太陽を覆い、月を隠し、ただ死の影を大地に落とす凶鳥にしては、あまりにも日和った一手だと思うだろうか?否、そんなことを思うメンバーはここにはいない。重要なのは、トスを繋ぐこと。この最初の反応が遅れれば遅れるほどに、『ハズレ』を引いていた場合の後が怖くなる。
果たしてフェリジットはちょっと肩をすくめ、ここまでずっと手にしていた今日の昼食……カレーうどんの器が乗ったおぼんを彼の正面の席に置いた。
「実はね。私もついさっき、ようやく気付いたんだけど」
そこで一呼吸置き、まだ湯気を立てる器に箸を突っ込んで慎重にカレーが絡んで明るい茶色の光沢を放つ白い麺から数本を摘み出す。ふぅふぅと文字通りの猫舌でも耐えられるようにと冷ましにかかりながら、目の前の席でじっと答えを待つシュライグ(と、その隣でこっそり厄介事なら巻き込まれる前に逃げ出そうと計るも更に先手を打ったシュライグに机の下で足を踏みつけられて動けなかったルガル)に視線を合わせた。
「遠征に行く必要があるわよ。それも、なるべく早いうちに」
鉄獣戦線第十四回遠征記録
5月1日
本日より、この日誌を遠征記録として私が付けることになりました。と言っても出発はまだ少し先の話ですし、こういう時に何から書けばいいのかわからなかったのでフェリジットさんに聞いたところ、「後から読む人のために自己紹介なんかがあるといいわよ」とのアドバイスを頂いたため、そのようにします。
私がこうして鉄獣戦線の一員として拾って貰えたのはいわゆる「決戦のゴルゴンダ」……大国ドラグマが崩壊するに至った長い戦争の始まる少し前でした。私は、口をきくことができません。生まれつき非力だったうえに幼いころ患ったらしい大病のせいで声を発する能力も失い、そのせいで群れから捨てられた、というのがお医者さんやルガルさんの見解ですし私もそう思いますが、正直なところ私自身その時のことはもうほとんど覚えていません。両親と言われても、正直あまりピンとこないです。
今は、鉄獣戦線の皆さんが私の家族だからです。
あの大戦では武器もろくに持てないほどに力のない私は戦線に立つことすらできませんでしたが、せめて何か皆さんのお役に立てるようにとずっと後方で支援をしていました。今回の遠征では記録係という大役を頂きましたので、最後までこの務め果たしたいと思います。
・初日の記録、早速見せてもらった。後方支援は立派な戦術の一環だ、恥じることはない。君たちの仕事のおかげで、俺たちはあの大戦を始め生き延びてこれたんだ(シュライグ)
・相変わらず硬いわねえリーダー。あの子コメント読んだ時、不意打ちだったもんだから顔真っ赤にして口パクパクさせてひっくり返っちゃってたわよ?念のため言っとくけど、あなたはお見舞い禁止だからね!?自分の顔がいいことぐらい、いい加減自覚しときなさい(フェリジット)
5月2日
これ、他の皆さんがコメントする仕組みなんですね……。恥ずかしながら、本当に知らなかったもので昨日はお見苦しい所を他の皆さんにお見せしてしまいました。気を取り直して今日は、まだ準備の段階ですし持っていく物資などはまた別の方が纏めて記録してくださるそうなので、この遠征の目的と行先について書こうと思います。
4月末日にフェリジットさんが気づいたのですが、先の大戦のせいもあって今の私たちにはとにかく物資が足りていません。大戦で滅茶苦茶になったこの土地の復興に気を取られていたうえ、この本拠地からは長らく離れていたせいで気づくのが遅れた、と話を聞いたルガルさんは悔しそうに唸っていました。でもそもそも主力部隊の皆様はドラグマの地の復興に携わっていてつい先日ようやく多少の余裕ができるようになったばかりなので無理はないと思います。
むしろ前線に立つ人たちを支える立場にありながらそんなことにすら気が付かなかった私が恥ずかしいです、申し訳ありませんでし
以上の文章ですが、ここまで書いていたらいつの間にか横から覗き込んでいたナーベルさんに笑われてしまいました。そんな反省ばっか書いてたら始末書か記録かわからないからその辺にしとけよ、だそうです。確かに止めてもらえなければもっと書いていたかもしれませんのでこれは記録係として要反省、です。
そして本題の遠征の目的と位置なんですが、実は私のような下っ端にはほとんどわかりません。この辺だと手に入らないものだそうです。
なんだかんだ言っても大国ではあったドラグマ崩壊の余波で現在は大陸中の流通が麻痺しているようなものなので、どれが足りないかと問われれば正直食糧から武器、衣服に至るまで心当たりしかないのですが……最終目的地も、ナーベルさんからはなぜか教えていただけませんでした。そういやお前ウチの遠征に参加するのは初めてだったな、なら秘密の方が面白いじゃん?と笑って訓練に行ってしまいました。今日はもう遅いですが、明日また誰かに聞いて記しておこうと思います。
・げっ!こっぱずかしいから名前は出さないでくれよって…………言い忘れてた!だーっ、この鳥頭が恨めしい!(ナーベル)
・アンタにしちゃよくやったわ。それと、これに関しては私も同意見かしら。今は聞かない方が面白いわよ?(フェリジット)
5月3日
よくわかりませんが、フェリジットさんまでそう言うのなら当日まで聞かないことにしました。それとこの遠征ですが、私たちのような後方部隊も含めて全メンバーでの出発になるそうです。私は体が弱いので遠出なんてしたことがなかったのですが、皆さんの足を引っ張らないようにしなくてはと思います。
本来こういった遠征にはくじ引きでお留守番役を何人か選ぶそうですが、今回は全員で留守にしたところで基地にはもう盗むようなものさえほとんど残っていない、それに喧嘩を売ってくるような戦力はどこの陣営にも残っていないためいっそ全員で行こう、という意見が出たようです。ルガルさんはそういうのは逆転の発想じゃなくてヤケクソっつーんだ馬鹿、と難色を示していましたが、シュライグさんが頑として譲らず押し切っていました。でもそんなルガルさんも荷造りの最中は尻尾が左右に揺れていたので、きっと楽しみにしているんだと思います。
明日の出発、楽しみなので今日は早く寝ようと思います。明日はなんでも、旧い知り合いの『帝国』という場所まで行くそうです。なんだかすごい響きなのでちょっと緊張します、一体どんなところなのでしょうか。
・ノーコメント!ノーコメントだからな!(ルガル)
・ふ~ん、ねえちゃん達にはあんなに怒ってたのにねえ?(笑顔マーク)(キット)
・せっかくだから尻尾のとことアンタのコメントに色ペンで線引いといたわよ(フェリジット)
・リズねえちゃんナイス!(キット)
・ありがとう、ルガル。いつも言いにくいことを言ってもらってすまないな。お前の疑念は、誰かが口にする必要があったものだ。感謝している(シュライグ)
・お前のコメントが一番タチ悪いんだよ!悪気がないから余計に!(ルガル)