「じゃあ、始めましょうか。先攻は……そうね、あなたの方からどうぞ。大丈夫、カードじゃなくて、それはあなたの仲間たちだから」
結局ルールはまるでわからないままだったが、言われたように手札を立てて自分に向ける。その瞬間、クエムの言っていたことの意味がようやく理解できた。カードごとの色の違いや、並んだ星の意味。そして下半分に詰め込まれた意味不明のワードで構成されるテキスト、そして最も面積を占めるどこで撮ったというのか見慣れた仲間たちのイラスト。知るはずもないそれの意味が、なぜか自然と頭に馴染む。
だから少女は、カードを出した。それが間違った行動なのではないかという臆病は、まるで顔を出さなかった。クエムの言葉通り、それが鉄獣戦線の戦いとして自然な動きだったからかもしれない。
「……!」
最初に出したのは、茶色のカードの中で手札にある中で最も星の数が少ない1枚。ガスマスクで素顔を覆う、巨体の猛牛が描かれたもの。
鉄獣戦線 ケラス 攻1200
次いで間髪入れず、緑色をした1枚を表にする。鉄獣戦線の真骨頂は単体戦闘ではなく連携技、速攻にして獰猛な攻め込みだからだ。
「速攻魔法、
「……」
こくこくと頷き、一度手札を裏向きにして机に置く。カードの束を手に取りぱっとまとめて表返すと、こういった局面でいつも戦場に降り立つ仲間の姿がちょうど一番下、真っ先に目に入った。だからそれをさっと取り出し、ケラスの横に置く。
鉄獣戦線 ナーベル 守2000
「それとあなたが多分探している、あの泥棒猫だけど。彼女ならそっちじゃなくて、最初に分けてもらった方……エクストラデッキに入っているわ」
「……」
アドバイスは素直に受け取り、もう一度手に取ろうとしていたデッキを置き直す……が。それはそれとして、少女にも譲れないものがある。本人なりに懸命に目つきを険しくして無言の不満を訴えかけると、クエムもしばらく考えはしてくれたものの少女が何が言いたいのかまでは伝わらなかったらしい。そこで少女も少し考え、まずエクストラデッキと彼女が呼んだ方をひっくり返して目当ての1枚を取り出す。ケラスとナーベルのカードを横にどかして戦場に立たせたそのカードの上部、名前欄を指さしてもう一度頬を膨らませてみせると、ようやく得心がいったらしい。
「……ああ、そういうこと。ふふふ、愛されているのね彼女。それとも、あなたが大事にされているのかしら。じゃあその勇気に対して謝罪するわ、彼女は『仇花』……仇花のフェリジット、そうだったわね」
鉄獣戦線 仇花のフェリジット 攻1600
どうにか言いたいことが伝わったことに安堵し、少女がこくこくと頷く。確かにフェリジット自身は面白がってその蔑称である泥棒猫を自称することもよくあるし、ルガルをはじめ団員からも軽口の一環としてそう呼ばれることもある。
だが、それとこれとは話が違う。目の前のクエムはあくまで部外者であり、例え力は足りずとも鉄獣戦線の一員である自分を前にして部外者に仲間を侮辱されるいわれはない。勝負を中断してまで伝えたかった異議への謝罪を受け入れ、改めて盤面の処理に取り掛かる。
「今リンク素材として墓地に送られたのは、ケラスとナーベルの2体。そのうちケラスは何もないけれど、ナーベルの方には墓地に送られた場合に発動できる効果がある。それは、次の鉄獣戦線をデッキから選んで手札に加える仲間のサーチ」
次に呼ぶメンバーは、もう決まっていた。こういった場面では常に全体の戦局を見る術に長け、その機動力を生かし冷静に立ち回るいぶし銀の戦士。
「そう、フラクトールにするのね。それから?」
フラクトールのカードを手札に加え、そのままフェリジットを指さす。テキストの意味は理解できずとも、そこに書かれたことが何を意味しているのかは感覚でわかる。手札から仲間を戦場に追加する能力……鉄獣戦線の姉として皆の前では明るく振る舞い、背中を叩いて前に一歩を踏み出させる優しさを持った彼女らしいものだ。
だが、そこでクエムが待ったをかける。
「なら、少し待ってもらおうかしら。わたしのフィールドにカードが存在しない場合、このカードを手札から直接使うことができる。トラップカード、無限抱影を発動。フェリジットを対象に取って、そのモンスター効果を無効にするわ。つまり、その効果はもう発動できないってこと」
「……」
少女の考えではこのまま加えたフラクトールを呼び出し、さらにほかの団員へと繋げていくつもりだった。だが、これではもう動けない。少し悩んだ末、手札にあった赤と緑のカードを全てフェリジットの下に並べて防衛線を張る。
「割れている手札のフラクトール以外は全部魔法か罠、2伏せに永続魔法、補充部隊の状態ね。なかなか骨が折れるけれど、ターンを貰っていいのかしら……なら行くわよ、ドロー。手加減はできないけれど、気張って耐えてね」
「……!」
その言葉に大きく頷く。クエムが口にしていた通り、自分の一挙手一投足がシュライグ達の動きとリンクしている感覚。何も見えないし聞こえないけれど、確かに少女の傍には彼らの気配があった。しかしそれは逆に言えば、この盤面でのやり取りがその通りに彼らの身に降りかかるということ。それをどこまで防ぐことができるかは、少女の肩にかかっていた。
「じゃあ、まずはこのカードからかしらね。わたしたちはわたし自身、導きの聖女クエムを通常召喚。召喚に成功した際の効果で、デッキからアルバスの落胤の名が刻まれたカード……烙印の
導きの聖女クエム 攻1500
わたし自身の言葉通り、最初にクエムが手に取ったカードにはまさに目の前の彼女自身が描かれていた。流れるような動作で手にしたデッキから1枚のカードを引き抜いて墓地に置き、さらに手札にあった次なるカードに手をかける。
「そしてエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが存在するとき、手札のこのカードはメインフェイズに特殊召喚することができる。最強の聖女、
教導の騎士フルルドリス 攻2500
クエムの隣に置かれたカードのイラストとその名に、少女が小さく震えあがる。雷撃を自在に操り、人の身でありながらあのシュライグと互角の戦闘を繰り広げる化け物聖女、ナーベル曰く鎧を着た雷ゴリラ。
デスピアとの開戦以降はそれどころではなく、あのゴルゴンダの決戦時には共闘すらした仲であるという話は、無論少女も知っている。知ってはいるが、いかんせんずっと後方にいた少女はそれを直接見てはいない。フルルドリスという女に関する少女の知識は鉄獣戦線を異教徒と断じ、やり合っていた時に仲間の言葉や噂話から強く印象付けられたイメージがほぼ全て。そして事実、フルフェイスの全身鎧に身を包んだその姿はかつて遠目に見たあの騎士そのものだった。植え付けられたトラウマと恐怖に心拍数が上がり、小さく手を握りしめる。クエムもそれに気が付きはしたが、あえて何も言わず次のカードを出した。
「フルルドリス……!」
呻くようにその名を口にしながらも、シュライグの理性はそんなわけがないと分析していた。あのゴルゴンダでの決戦時、ほんの一瞬だけ姿を見せて天を割るほどの相剣の一撃を放ち、全てが終わった時には誰にも姿を見せず声も掛けずに夢か幻だったかのように何処かへ去っていた最強の聖女。
確かに幾度も切り結んできたあの大剣も、鎧に深く刻んだ傷の位置も、全てが彼の記憶のままだ。だがそもそも、あの鎧は戦争の最中突如として意思を持つように動き出し、デスピアの存在として彷徨うようになったはずだ。仮にそれが解けて元の神器に戻っていたとしても、やはりそれをフルルドリスが持つはずがない。それにあの影が寄り集まってできた異様な登場といい、これは何かもっとおぞましい偽物だ。
「……っ!どいて、シュライグ!」
後ろから飛んできた鋭い声に、瞬時に姿勢を低くする。その頭上スレスレの位置を貫き、フェリジットの放った銃弾が駆ける。鎧の隙間を貫く正確な狙撃はしかし、『フルルドリス』の鎧を割いて突如としてその中央から現れた奇怪な腕によって弾かれた。
「どうなってやがる、一体!」
理解が追い付かないと言ったルガルの叫びは、誰もが感じた共通認識だった。あまりの不条理な、熱を出してみる夢の方がまだ整合性が保たれているであろう眼前の光景に言葉を失ううちに、鎧の中からさらにもう一本、腕が伸びる。まるで昆虫の脱皮を行おうとしているかのようにぱっくり裂かれた鎧の切り口にその手がかかり力が籠められると、見覚えのある別の鎧姿が獲物の槍と共に裏返った鎧から抜け出した。
そしてその姿にも、シュライグ達は見覚えがある。おぞましいあの大戦の敵、動かぬはずの神器がひとりでに動き出し全てを闇雲に襲いだしたモノ。便宜上、こう名付けられたかの存在。
「デスピアン・クエリティス……」
だが、その場に生まれ落ちたのはかつての敵の姿だけではなかった。最初に姿を見せた方の女が突如としてその足元から頭部に至るまでをまばゆい炎に包まれ、ぐんぐんとそのシルエットが巨大化していく。やがて炎が収まった時、そこに立っていたのは先ほどまでとは二足歩行である点以外は似ても似つかぬ白銀の鎧と爆炎に身を包む紅蓮の剣士だった。
「デスピアが復活して、挙句また訳のわからないもの引き連れてきただと?確かに来るなら来いとは言ったけどな、こりゃあさすがにサービス過剰だろ」
二丁の銃剣を両方引き抜いてさりげなくシュライグの隣に立ったルガルが努めて明るい軽口を叩くが、内容とは裏腹にその口調は渋くその声は不自然に大きい。僅かに聞こえてくる背後の物音からは、巻き込まれた非戦闘要員たちがこの場所から距離を取ろうとしているのであろう様子がうかがえる。どこまで効果があるかはさておき、その大柄な体を盾にして後ろの様子を隠しつつ言葉で物音を誤魔化そうという腹積もりだろう。いかにもルガルらしいと思うと、こんな状況にもかかわらず口元が緩んだ。
それが、いけなかった。決して眼前の未知な敵対存在に慢心していたわけではないが、二対二の睨みあいという状況に持ち込めたことに甘えていたのも事実だろう。デスピアン・クエリティスの鎧が軋み、そこに存在するはずのない口が無数に開いたかのような錯覚を彼らにもたらす。あの『叫び』の動作には、彼らも嫌というほどに見覚えがある。そしてあれこそが、言ってしまえば近距離攻撃しか能のない単体の存在でありながら長いことクエリティスが戦場を闊歩し続けた最大の理由。クエリティスの『叫び』は、その可聴範囲にいる戦士たちの戦う意思を喪失させる。全身の力が抜け、武器を取り落とし膝を折り、祈るような姿勢を取らされたまま審判のごとき槍の一撃を黙って受け入れる他なくなった仲間を、彼は幾度も見た。しかも厄介なのは、その『叫び』が連発も可能だという点だ。下手に手を出せばどれほどの被害が出るかもわからない、それが対応の遅れに繋がった。
とはいえ、彼らとてそれをただ天災のようなものと受け入れたわけではない。幾度もの犠牲を払い、遅々とではあるが確実にあの放浪者への対抗策を確立していた。単純な話だ、『叫び』を聞かなければいい。だからシュライグとルガルは、無数の口が一斉に開く光景を幻視した瞬間即座にその耳を塞いでいた。それだけで、『叫び』は無意味なパントマイムと化す。そしてもうひとつ、あの技には重大な特徴があった。悲劇、喜劇……悪趣味なことこの上ないその名を誰が最初にそう呼び始めたのか、かつてドラグマの民だったはずのモノ。人としての意思は完全に失い、ただ壊れた機械のように延々笑い、あるいは泣きながらただ闇雲な自分たち以外の目に着くものすべての破壊を行おうとするデスピア。同じ仲間であるはずのそれらに対しても、『叫び』は通用したのだ。だからあの炎と白銀の剣士も、『叫び』が終わるまでは身動きが取れないか、あるいは『叫び』が通りさえするかもしれない。
しかし、そうはならなかった。『叫び』をものともせずに予備動作抜きで地を蹴った白銀の剣士が、焼け焦げた跡を後ろに引きながら2人の間を駆け抜ける。両腕の塞がった彼らでは、それを止めるには間に合わず。引き抜かれた長剣が白銀の残像を残して走り、描いた軌道の先にいたのは先ほど銃弾を撃ち込んだ狙撃手。
「きゃ……っ!」
あまりに速いその動きに、それでも辛うじて後ろに飛んだフェリジットが空中で横薙ぎに切り裂かれる。衝撃で一気に加速したその体が、受け身すらろくに取れないまま背後の大木に叩きつけられた。
「フェリジット!」
なぜ『叫び』が通用しなかったのか、それを考える暇はなかった。開いた傷口からは血も出ているが、幸いにもあの回避が効いたのか傷そのものは致命傷にはまだ遠いらしい。顔をしかめながらもすぐに立ち上がり、追撃を受ける前に愛銃片手にすぐさま森の奥へと飛び込んでいったその動きはまだしっかりとしており、一瞬ちらりと見えたその瞳からは彼女の闘志が手負いであってもいまだ萎えていないことが読み取れた。
ならばここは彼女の心配よりも、自分たちにできることをやるべきだろう。アイコンタクトだけで隣のルガルと頷きあい、背中を合わせてばっとそれぞれの見定めた相手に飛び掛かる。
「うおおおおっ!」
跳んだルガルがその跳躍力で爆炎の剣士の上を取り、全体重と空中での加速をかけて引き潰すような重い斬撃を叩きこもうとする。攻撃を仕掛けてきた存在を見定めた剣士もまたその長剣を構え、真っ向から獣人の一撃を迎えうった。
切り結び、もう片手に握った銃剣を叩きつけようとしてそれにも対応され、そこで後ろに飛びつつ一度着地、それと同時にノータイムで地面が抉り取れるほどの力で地を駆けて再度の激突。重い剣戟の音をどこか遠くに聞きながら、その禍々しい槍を構えるクエリティス相手にシュライグも相対する。もしここにいるのが彼の記憶通りの存在ならば、他所に気を回しながら勝てるほど甘い相手ではない。
「……来い」
そう呟いた言葉の意味を理解しているのか、それともただの偶然か。猛然と突きに来た左からの一撃をわずかに横に飛んで回避し、その胴体に弾丸を叩きこむべく銃剣の引き金を引く。だが人間どころか獣人にすら不可能な速度で引き戻された槍がその前面でまるで風車のように回され、金属音と共に放った弾丸はすべて明後日の方向に弾かれた。そして間髪入れずに再び放たれた無数の突きに、また回避を強要されて。
おそらくナーベルたちは今頃不意打ちの隙を窺っているか、非戦闘要員たちを安全圏まで送っているのだろう、そうシュライグは考える。ならば彼らの加勢まで無理はせず回避に集中し、連携で相手すればいい。ただし露骨にやりすぎると自分からターゲットが外れてしまう危険もあるし、背中を預け合っているルガルが『叫び』を受けてしまう可能性もあるためこの強敵の相手自体はし続けなければならない。難しい注文だが、それでもやるしかない。鉄と生身の翼を同時に小さく広げてジャンプの距離を底上げし、同時に空中でまた引き金を引く。またしてもそれらが全弾完全に防がれたのを見て、着地しながら改めて思う。本当に、難しい注文だ。
「このまま攻撃するだけでも、確かにフェリジットは倒せる。だけど、ただ『聖女』の力を再現しただけではこの『ホール』の力は御しきれない。だからここではない遥か遠くの異世界、本来何があっても繋がるはずのないほどにか細い糸を60と1番目の『聖女』の力で読み取り、勇者の記憶をここに再現する。魔法カード、異界共鳴-シンクロ・フュージョンを発動」
見たこともないゲームの、見たこともないカード。しかし、少女の体が硬くなる。そのカードに秘められた異世界の、『ホール』の力の一端は、わからないなりに感じ取るものがあったのだ。
「このカードは私の場のモンスター2体を墓地に送り、召喚条件を満たしたシンクロ及び融合モンスターを同時に特殊召喚する。レベル8のフルルドリスに、レベル4チューナーの
先ほど少女がフェリジットを取り出したのと同じように、横に分けられていた小さいほうのカードの束に手をかけるクエム。そこから出てきたのはまず、何かを追い求め闇に染まっても彷徨い続けるがらんどうの鎧。
「デスピアン・クエリティス」
デスピアン・クエリティス 攻2500
そして、もう1枚。
「炎斬機ファイナルシグマ」
炎斬機ファイナルシグマ 攻3000
「……!」
当然、少女はあの戦争でクエリティスを見てはいない。しかしその身に刻まれた『デスピア』の名と見ただけで分かる禍々しい姿は、根源的な恐怖を呼び起こした。
しかしそれを中和するのは、皮肉なことにその存在と並び立つ謎の存在……クエムの言葉を借りるならば、異世界の勇者の記憶だった。闇と対極に位置する浄化の炎が、その恐怖を相殺して少女の心を確かに保つ。
「そしてデスピアン・クエリティスの効果を発動。互いのターンに1度ずつ、レベル8以上の融合モンスター以外あらゆるモンスターの攻撃力を0にするわ。だけどエクストラモンスターゾーンの炎斬機ファイナルシグマは、同じ異世界の仲間以外に由来するあらゆる効果を受け付けない」
フェリジットの攻撃力が、0になる。そうなる前に、少女が張った精一杯の防衛線を機能させる。
「速攻魔法、神秘の中華なべ。フェリジットをリリースすることで、その攻撃力だけライフを回復するわけ」
「……」
小さく頷く。このまま放置すれば、少女の盤面に唯一立つ戦士であるフェリジットはあの恐ろしいモンスターたちを前になすすべなく倒されてしまうだろう。そうなる前に、盤面から逃がす。逃がしてみせる。
「リリースはコスト、ゆえにどうやって求めることは不可能……いいわ、回復なさい。そしてフェリジットは転んでもただでは起きない、彼女が墓地に行った瞬間、あなたはカードを1枚引いて手札1枚をデッキに戻すことができる。本当に、抜け目のない山猫」
『歌わず』 LP4000→5600
「だけどフェリジットを逃がしたことで、あなたの場はがら空きになったのも事実。さあ、捌けるものならば捌いてみなさい。バトルフェイズ……まずはファイナルシグマで攻撃」
「……!」
その攻撃を止めるようなカードは、手札交換を経てもなお少女の手持ちには存在しなかった。すなわちその3000という数値が、直接少女に襲い掛かる。
炎斬機ファイナルシグマ 攻3000→『歌わず』(直接攻撃)
『歌わず』 LP5600→2600
「そして補充部隊の効果により、受けたダメージ1000につき1枚のドローが行える。確かに3枚のドローは大したもの、だけどそれだけではここで攻撃の手を緩める理由としては弱いし、こちらにはまだもう1体のモンスターがいる……続くデスピアン・クエリティスで直接攻撃」
デスピアン・クエリティス 攻2500→『歌わず』(直接攻撃)
クエムの発言は、いくらドローしたところでターンが回ってこなければそれを活かしようがないという常識に沿ったもの。確かに、それは紛れもない真実である。けれど少女には、まだその被害を抑えることができる。さらに1枚のカードが、少女の手によりひっくり返された。
『歌わず』 LP2600→1350
「ダメージ・ダイエット、発動ターンのあらゆる被ダメージの半減、ね。ファイナルシグマの攻撃に対してはあえて使わないことで自身のライフを犠牲にしてでもドロー枚数を限界まで増加、肉を切らせて骨を断つ、と言ったところかしら。見事な判断」
「……!」
声なき悲鳴。少女自身は熱さも痛みも感じてはいないが、カードを通じて繋がっている鉄獣戦線たちの思いが、攻撃を受けてしまうたびに伝わってくる。今の戦局が、防戦一方でしかないことも。
確かに、少女自分にできることを最大限やった。壊滅的な被害を抑え、ギリギリの計算で今の猛攻を潜り抜けライフを守り切った。だがそれはあくまで1ターンを耐えただけであり、累計4枚のドローをもってしても戦局が厳しいという事実に対しては何の気休めにもならない。カードは、ただ引いただけでは意味がない。
勝負は、それを活かす次のターンだ。
「ターンを終了するわ。さあ、カードを1枚引きなさい」
クエムに促され、意を決して少女がそのデッキに手をかける。強い祈りを込めて、そこにあった可能性が引き抜かれた。
Q:クエリティスの『叫び』って公式描写?
A:あるわけないでしょそんなもん
……なんか書いてたら無から生えてくる設定、ありますよね。
私も実際に文字打ち込むまでこの世界のクエリティスがそんなことできるだなんて知らなかったです。何その能力怖っ。