その日ヒナは一人で歩いていた。先生の連絡の対応として、アコを向かわせた。後は先生達でうまくやってくれるだろう。だけど....私にはどうしても譲れないものがある。トワと再会してまた別れた時、あの目が脳裏に離れないのだ。今にも泣きそうな寂しさ目が、だからこそ、行かなければならない。そして問いたい。「どうして?」と、あんな言葉では到底納得できなかった。
「約束の場所」…おそらくあそこだろう、私とトワが一年前に花を見る約束をしたあの場所。こんな形で果たされるとは思わなかったし、まだ覚えていたとは思ってもいなかったが、それしか心当たりがなかった。とりあえず、ゲヘナ学園の中庭に向かうことにした。
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学園に着いた時、感じたのは沈黙だった。今のキヴォトスはあちこちでロボットや謎の敵が暴走している、とてもだが気軽に外を出歩けるとは思えない。そのため学園には平日だというのに人が誰もいなかった。トワと戦うにはいいタイミングなのだろう。そう思いながら、私は一階の中庭に着く、そこには一面に玉簾(タマスダレ)が花を咲き誇っていて、その真ん中に黒い服に身を筒んだトワが立っていた。
「時の流れは残酷だね……私達が種を蒔いた時にはまだ芽も出していなかったというのに、それが今や綺麗に花弁で着飾って種を蒔いている。いつ見ても命の終わりは綺麗だ……腹が立つほどに…」
そう言ってトワはまた切ない目をする。そうその目だ。儚いような、憐れむような、そんな言い現わしずらい感情を孕んだ目。それがどうしても私は引っ掛かった。私の知るトワはお調子者で、時には真面目なそんな人だったそんな明るさと強さに惹かれたのだ。だからこそ、知りたいのだ。私の知らないあなたを……
「どうしてトワ?どうしてあなたはこんなことを、どうしてそんな悲しい目をするの?」
「どうして?キヴォトスを一つにするためだ。」
すると、トワは体を震わせた後、私の方に向き直り答える
「かつてこのキヴォトスには何もなかった。派閥も、学園も、争いも、だが、時代が下ると共に敵対していった。学園の在り方、時代の流れで風向きのように敵が変わる。こんな馬鹿な話はない。たしかに今のキヴォトスは安定に向かっている。だが、世紀が変わってもゲヘナとトリニティが手を取り合っている保証はどこにある?"先生"が居なくなった後も安定しているとなぜ言える?時代によって、時流に乗って敵は変移する。その中で私達"生徒"は弄ばれるのだ。ヒナ、君と仲良くなったのも、切磋琢磨し合ったのも、こうして戦い会うためにしたことじゃあない。我々の手は傷つけあう為にあるのではない、手を取り合う為にあるべきだ。では、敵とは何だ?時間には関与しない『絶対的な敵』とは?そんな敵はキヴォトス内ではありはしない。なぜなら敵はいつも同じ"生徒"だからだ『相対的な敵』でしかない。キヴォトスは一つになるべきだ。私はキヴォトスを支配し、統合する。私はそのために自分の手を汚そう。『虚妄のサンクトゥムタワー』で、色彩の力で、それを実現する。二年前、私はアビドス砂漠で色彩と言うものに触れた。その時私は感じだのだ。キヴォトスの平和にはこうするしかないと…」
そこまでトワは語ると、息を整えて、左腕の籠手のようなものを外し、私に見せる。
「見ろ。これが私が色彩を封じ込めた時に着いた傷だ。」
その傷は紫色の痣のようで、蛇のように畝っていた。なぜそんな風になったのかわからない。しかし、その傷を見た時。私は嫌悪感と、不気味さを感じた。それと共に、その傷の痛みに耐えるトワに対する憐みを…
「身体も…心も…キヴォトスの平和の為に捧げてきた…もう私の中には何もない。何も残ってない。恨みも後悔さえも、ただいつも痛みだけがジワジワと這いずり回る。蛇のように…」
話し終わったのか、トワは私の顔を見る。
「こんなに自分のことを話したのは久しぶりだ。ありがとう…黙って聞いてくれて」
すると、トワは私に初めて涙を見せてくれた。それも一瞬だったがたしかに見た。目を素早く拭うと、無線機を使ってなにやら指示を出している。
『先生が来たか。時間だけ稼げ、私のミメシスを使ってでもな…』
会話は一言二言で終わり、私との対話にすぐ戻った。
「私はヒナ君を愛し、技術を教え、知恵を授け、高め合ってきた。もう私から与えるものはなにもない。後は私の命を奪え、どちらかが生き、どちらかが死ぬ。これはそうゆう戦いだ。」
全てを言い終わったトワは右手からブレードを出し、それは曲がりナイフのようになって逆手で持っている。
「先生たちがどうであろうと、10分後に『虚妄のサンクトゥムタワー』が自爆する。10分以内に私を殺せれば、この世界の崩壊は止まる。」
トワはそう説明した後、笑いながら、叫ぶ
「ヒナ。人生最高の10分間にしよう」
「トワ!」
「風紀委員として、キヴォトスに生きるものとして、なにより、私を愛するものとして、果たしてくれ」
「……」
そう言われ、私は『デストロイヤー』を構えた。
☆解説
・トワちゃんの演説は全て嘘というわけではない。だけど、彼、彼女はそれでも生徒たちを信じている。
この作品のヒロインと言えば?(エンディングに関わります)
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黒服
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空崎ヒナ
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陸八魔アル
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小鳥遊ホシノ