シャケよ、さらば   作:youhi

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03.体調不良、そしてデメキン

「なんであいつ、休みなんですか?」

「体調不良だそうだ。今日は別の人とバイトしてもらうよ」

 

クマサンは淡々と言った。

ヘリへ向かう階段を登る中、オレは苛立っていた。

 

「何が大丈夫だよ……ダメじゃねぇか」

 

チヒロのやつ、豪語しておきながらこのザマかよ。

勝手なことして、オレの足引っ張りやがって。

 

「尻拭いするオレの気持ちにもなれってんだ」

「尻がどうしんたんだ戦友!!」

「うおっ!?」

 

後ろからケツを叩かれた。

 

「今日もまた一緒ですね。よろしくおねがいします」

「お、おお……よろしく」

 

ゲジマユとインテリ。

 

「おい、ゲジマユ」

 

オレが問い詰めるのは、この大男。

 

「どうした、戦友よ?」

「お前、昨日……あいつと行ったのか?」

「あいつ? ああ、チヒロ嬢か。もちろん行ったぞ!!」

「で、その……その後、どうなったんだ?」

 

オレが訊くと、ゲジマユは「その話か」とニヤついた。

 

「あの人はすごい!! ワガハイは何度もイカされた!!」

「は!?」

 

予想外の言葉にオレは固まった。

おいおい、こいつマジか!?

 

「もうすごかったのなんの! ワガハイの『ウルトラショット』はチヒロ嬢の『キューインキ』にやられてしまってなぁ、あれは爽快だった!!」

 

なんだよその隠語!

ウルトラショットとか絶対アレじゃん。

キューインキとか絶対アレじゃん!!

 

「マジか……」

「ふふ。この話は酒の肴にしたいところだが……ヘリの中でするとしよう!!」

 

もったいぶりやがって。気になるだろ!

 

「あっ、きょ、今日は、よろしくですぅ……!」

 

ヘリに着くと、すでに待っていたひとりのイカガール。

あの子だ。チヒロと初めてバイトしたときの、初心者ふたりの女の子のほう。

 

「今日はあの男の子は?」

「体調が良くなくて……きゅっ、きゅーきょっ、ひとりでェ……!」

「大丈夫だ小娘よ!! ワガハイの背中に乗りたまえ!!」

「励まし方、雑すぎ〜」

「は、はひいぃ!!」

 

そうしてヘリは飛び立った。

 

 

§

 

 

「でなぁ……これはなんと!! 飼っていたデメキンが逃げ出したんだ!! もうこれは進化だぞ!! デメキンが鉢から逃げるほどに進化したんだ!!」

「おいちょっと待てェ!!」

 

ヘリの中で、オレはたまらず叫んだ。

 

「なんだ、戦友よ? ここから話が面白くなるというのに!!」

「ヘリで『あの話』するんじゃなかったのかよ!?」

 

ヘリに乗ること30分。

このデカブツ男、チヒロとは全く関係のない身の上話ばかりを続けた。

いつ話が終わるか待っていたが、なぜか終わらない。

まるで金魚のフンのように、話が尾を引くのだ。

 

「そんな身内の話をしても、後輩嬢が取り残されてしまうだろ!!」

「デメキンさんの話、面白かったですぅ〜」

「ほらな? 少しは場の空気を読め、このオクタンコナス!!」

「オレはイカなんだが……?」

 

そうこうしているうちに、目的地が見えてきた。

 

「ま、その話は帰りのヘリでするとしよう!!」

 

またかよ!

 

「ほんとだな? 本当に話すんだな!?」

「ワガハイは約束を破らないヒトデ男だ!!」

 

すでに一回約束を破ってるだろ。なぁおい?

 

 

§

 

 

チヒロがいないバイトは、多少は大変だった。

初心者の子がいるっていうのもあるが、かゆいところに手が届かない。

デカブツは勝手に走っていくし、インテリはその介護をしている。

あれ? めっちゃ偏ったパーティーだな? 

 

「ふぇぇ〜大変です〜」

「大丈夫だ、うまくなってるぞ!」

「がんばりまず〜」

 

でも、なんとかシャケたちをはねのけ、ノルマをクリアした。

初心者ガールとインテリが一息ついているなか、オレはまっさきにゲジマユのところに向かった。ヘリが来るまでまだ時間はある。

 

「ゲジマユ、こっちに来い」

「んお? ワガハイはバイトの余韻に浸っているんだぞ?」

「聞かせてもらうぞ。チヒロと……その、やったのか?」

 

デカブツはダイナモローラーを置くと、ガシッとオレの肩を掴んだ。

 

「行ってやれ」

「あ?」

 

何言ってんだこいつ?

 

「体調不良で休んだ相棒を見舞いに行くのも、パートナーの努めだろう?」

「てめぇのせいなんだが?」

「真実は事実ではないのだ!!」

「意味わかんねぇご託並べてねぇで、さっさと何をしたか教えろ!」

「いやだ!! 本人から聞け!!」

 

ニヤニヤ笑うデカブツ。こいつ絶対面白がってるだろ!!

振り回されるこっちの身にもなれよ。ほら?

 

ヘリが来て、その中でデカブツは「で、デメキンとの別れを惜しむべく、ワガハイは……」とまたくだらない話をするのだった。

 

(真実は事実ではないって、どういうことだよ)

 

結局、チヒロとゲジマユの『バンカラ』はわからなかった。

 

……なのだったが、真相を知る機会はすぐにやってきた。

 

 

 

『じゃあ、彼女の家にお見舞いに行ってくれるかな』




Xマッチ上がらん〜エリア1800台の弱ダイナモです……
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