シャケよ、さらば   作:youhi

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05.危うさ、そしてイケメン

「昨日はありがとね」

 

翌日、チヒロはちゃんとバイトに来た。

 

「おう。今日は大丈夫なのか?」

「このとおり、ピンピンしております〜」

 

指でVピースを作るチヒロ。体調は良くなったらしい。

 

「今日は任せてよ。テッパン何匹でも倒せそう」

「口だけは相変わらずだな。まぁ頼んだわ」

 

オレたちはふたりでヘリまで向かう。

 

「おつかれさまです。カミナさん、チヒロさん」

「よう!! カミナにチヒロ嬢!!」

 

ヘリの前にはゲジマユとインテリが待っていた。

今日もまたこのパーティでのバイトだ。

 

「おす、インテリ。そしてゲジマユ」

 

オレはゲジマユの腹を拳でつついた。

 

「いてて!! なんだ、求愛行動か!?」

「お前にはやられたよ。まさか“ナワバトラー”だったとはな」

 

キョトンとしたゲジマユは、「ガハハ!」と大笑いした。

 

「これも叙述トリックだ!!」

「適当なこと言ってんなよ」

「ゲジマユさんこんにちは」

 

ゲジマユとチヒロが話し始める。「さすがに飲みすぎたな!」「ゲジマユさんが負けるからだよ」「いくら酒が強くても量には注意だな!」と聞こえてきた。

 

「よかったですね、カミナさん」

 

横からそう言ってくるインテリ。

 

「まぁな。お前は“ナワバトラー”だとわかってたのか?」

「まぁ。ゲジさんが女の人とできると思います?」

 

さすが、俺がバイトにいない間もデュオを組んできただけある。

 

「しかしゲジさん羨ましいなぁ。チヒロさんと仲良くなれて」

「じゃあ、次はインテリくんと行こうかな?」

「わっ!」

 

いつの間にかオレたちの後ろに立っていたチヒロ。

その顔はあの「誘っている」目だった。挑発よくない。

インテリは慌てたように頬をかいた。

 

「い、いや〜ぼくには高嶺の花ですよ」

「あなたも“バンカラ”する?」

「え〜デッキ弱いですし、お酒も弱いんです」

「ちょっとだけでいいから。先っちょだけ!」

「勘弁してください〜」

 

そんな様子を見ていたオレは、なぜか安心していた。

初日と比べてチヒロがパーティーに溶け込んでいる。

3人と1人だったパーティーが、4人になっている。

そう思いかけて、内心苦笑する。オレは案外、チヒロのことが嫌いじゃないのかもしれない。

 

「ガハハ!! いいパーティだな!!」

「……ああ、そうだな」

 

ゲジマユの高笑いに、オレも賛同した。

良いパーティというのは、笑いあえるものだから。

 

 

§

 

 

そうして当然のように、バイトはすべてクリアした。

あれ? マジで最高のパーティじゃん。

危険度も高いはずなのに、余裕でクリア出来たぞ?

これは継続確定だな……クリアの安定イコール金である。

 

「今日も余裕だったな、戦友!!」

 

ロッカールームでゲジマユが笑う。

 

「おう。おかげで助かってるよ」

「なにを。ワガハイこそ、お前とパーティーが組めて最高だ!!」

 

まっすぐ言ってくるゲジマユ。なんだが恥ずかしくて、オレは苦笑した。

服を脱いでいると、「そういえば」とゲジマユが言った。

 

「カミナよ、お前はこれからもチヒロ嬢と組むのだろ?」

「あぁ、当分はそうだろうな。面倒だけど、バイトの安定はするし」

「そうか。つまりは“近くにいる”ということだな?」

「あ? どういうことだよ?」

 

オレが目を向けると、ゲジマユはいつになく真剣な顔をしていた。

 

「チヒロ嬢のこと、見てやってくれ」

「そりゃ……見たくなくても見るだろ」

「そういうことではない。彼女は“危ない”んだ」

「そりゃ、危ない奴だろ」

「そこだ。彼女は自分の身体を大切にしない」

 

ゲジマユの言葉に、オレは息が詰まった。

身体を大切にしない? どういうことだ?

 

「できることなら、彼女を守ってやれ。これは戦友としての願いだ」

「お前、チヒロの何を知ったんだ?」

 

ゲジマユは首を振った。

 

「何も知らないが……彼女にはなにか危なさを感じる。そうだな、例えるなら……井の中の蛙、だな」

「カエル? あいつはタコだぞ」

「大海に出た蛙だ。いつ何に喰われてもおかしくない」

 

その言葉を聞いて、オレはゾッとした。

ゲジマユの「喰われる」という表現が、あまりに生々しかったのだ。

なにかの比喩だとしても、チヒロは何者かに『喰われる』のだ。

 

しかし、そう言うのも理解はできる。

見知らぬ男に襲われても受け入れてしまいそうな、そんな危うさを。

 

「……警戒しておくわ」

「頼むぞ、カミナ」

 

着替え終わったゲジマユは、ロッカールームを出ていった。

 

「チヒロを守れ、か」

 

ズボンを履きながら、口にしてみる。

現状はオレがチヒロに(テッパンから)守られている状態だ。

チヒロを守るその日とやらは、果たして来るのだろうか?

 

「ま、その時考えればいいだろ」

 

オレは着替え終わってから景品を交換しに行った。

 

『あいよ。ありがとねぇ』

 

今回の報酬は、金の量が多かった。

思わずニヤリとしてしまう。金が多いと嬉しいのだ。

 

「金が入ってる〜って顔してる」

「うおッ! ……って、後ろから声をかけるなよ、チヒロ」

 

私服姿のチヒロが立っていた。

 

「これで生活費が手に入ったね。カミナ?」

「あぁ、嬉しいぜ。少しは酒も飲めそうだ」

「ふーん、そっか。じゃあ」

 

チヒロがそう言いかけた時だった。

どん、と——オレに誰かがぶつかった。

 

「うおっ」

「おっと、ソーリー?」

「ああ、わりぃ…………って?」

 

聞き覚えのある声に、オレはすぐさま振り返った。

 

「おや、誰かと思えば。半年前に辞めたはずのカミナくんじゃないか」

 

前髪を垂らしたイソギンチャクのボーイの『イケメン』だった。

オレはイケメンを睨みつけ、舌打ちをした。

 

「久しぶりだな……クソ野郎」

 

そいつはかつての、因縁の敵だった。

イケメンはやれやれと言うように両腕を広げた。

 

「戻ってきたっていうのに、相変わらず短気そうな顔だね。カミナくん?」

「てめぇこそ、高貴だと自称してるクセに、相変わらずバイトなんてセコいことしてんだな」

 

お互いににらみつける。

 

「ねぇ、この人だれ?」

 

蚊帳の外にいるチヒロが訊いてくる。

 

「同じ『でんせつ帯』だった奴。嫌にも目に入った奴だ」

「ふーん、別に協力すりゃいいじゃん」

「お前はこいつのクソさをわかってねぇんだよ」

 

そこで、イケメンはチヒロをじっと見つめた。

 

「おや……? なんと美しいお嬢様」

 

イケメンはいつの間にかチヒロの後ろに立っていた。

 

「え、あたし?」

「あなたの美貌は、この泥溜めに咲く、奇跡のバラ……」

 

何いってんだこいつ。

 

「そう? 嬉しいね」

「いかがですか。このあと夜の街で、わたくしめと『バンカラ』しませんか?」

 

出た。またバンカラかよ。どいつもこいつもバンカラ脳だな。

まあこんなキザな野郎、チヒロも拒否するだろう。

 

「いいよ〜」

「おい待てコラァ!?」

「んみゅっ!?」

 

オレはチヒロを物陰まで引っ張っていった。

 

「ちょっと、なに?」

「言いたいことが2つある」

「短い方からどうぞ」

「あいつはろくな奴じゃない」

「そんな気はするね。もうひとつは?」

「バンカラするのか?」

「2個目のほうが短いじゃん」

 

チヒロは怪しいほほえみを浮かべる。

 

「あたしも言いたいことが2つある」

「おう」

「1つ目。ろくでもない奴でも、あたしは仲良くしたい」

「なんだそりゃ」

 

よくわからない考えだ。

能天気なイカならともかく、理知的なタコが言うことではない。

チヒロは指を立てて「2つ目」と言った。

 

「バンカラはしないよ」

「本当だな?」

「あんた、あたしをどう思ってんの?」

「ビッチ」

「失礼な奴だ!」

 

にしし、と笑うチヒロ。

 

「大丈夫だって。明日はちゃんとバイトに来るから!」

 

手を振って、物陰から出ていくチヒロ。

イケメンは慣れなれしくチヒロの肩を掴み、歩いていった。

取り残されたオレは、頭を抱えるしかない。

 

「大丈夫かよ……まじでクソ野郎なんだぞ」

 

あのイソギンチャク野郎は、ゲジマユとはわけが違うのだ。

 

「まったく、ウチを出会いの場にしてほしくないね」

 

一連の様子を見ていたのか、クマサンがため息を付いた。

珍しい反応である。

 

「あいつも引退してましたよね。なんで今さら戻ってきたんですか?」

「なんでも、バンカラマッチに飽きたらしくてね。まぁ、わたしとしては、金イクラのノルマさえ達成してくれれば、なんだっていいんだがね」

 

出口から出ていこうとするチヒロとイケメンを目で追う。

外はすでに暗くなっていて、夜がはじまっている。

 

「気になるかい?」

「あのクソ野郎のせいで、何人のバイト仲間が辞めたと思ってるんですか」

 

消えていくふたりの背中に、オレは吐き捨てた。

 

「あいつは、生粋のパーティークラッシャーですよ」




スプラしてたら投稿遅れました。
トライストリンガー強くなってうれしい。体感1.5倍はキル取れるようになった。
いろいろなアプデが来て嬉しいですね。ラインマーカーのダメージ50にしてくれないかな〜。
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