シャケよ、さらば   作:youhi

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06.カクテル、そして協調

「キミの瞳に乾杯」

「かんぱーい」

 

おしゃれなバーで、あたしたちはグラスを交わした。

「好きなのを頼んでよ」と、どうやらおごってくれるらしい。

ところどころギザな言葉が鼻につくけど、気前はいいイソギンチャクだ。

 

「あなたのことは、イケメンと呼んでいいの?」

「あぁ。それでいいよ」

 

マスターから差し出された酒“スペシャルチャージラムネ・サワー”をぐいっと飲む。しゅわしゅわとした炭酸はスペシャルが貯まるようなおいしさだ。

イケメンさんは“ヒトダッシュトマト・メアリー”を飲んだ。健康志向なのだろうか。

 

「お酒、おいしいかい?」

「うん。良いバーだね」

「ぼくのお気に入りのところなんだ。ね、マスター?」

 

ヤドカリの店長が「いつもありがとうございます」とにっこり笑った。

 

「チヒロちゃんと一緒に飲めて、嬉しいよ」

「そう? 誰にでも言ってるんじゃない?」

「はは。手厳しいなぁ」

 

バーのほのかなライトに照らされるイケメンさん。

 

——このイソギンチャク、名前の通りなかなかイケメンだなぁ。

 

振る舞いは優雅さを徹底しているし、いたるところでエスコートしてくれるし、話も話しすぎずに上手く聞き出してくる。そして顔が良い。

カンペキじゃん。カミナとは大違いだ。

 

「キミは、カミナと組んでいるのかい?」

 

思い出したように言うイケメンさん。

やっぱり気になっている様子だ。

 

「仕方なくだけどね」

「あんな金の亡者と一緒で大変だろう?」

 

“金の亡者”というワードチョイスが面白い。

あれだけ「金!金!」と言っているのだから、確かに金の亡者だ。

 

「まぁ、腕はそれなりだし。面白いし」

「なるほど。楽しんでるようだね」

「それなりにね。あんたはカミナと知り合いなの?」

 

私も気になることを訊いた。

イケメンさんは困ったようにくしゃっとした笑みを浮かべた。

 

「同じ“でんせつ帯”のライバルだったんだ」

 

ライバル、という概念がバイトにもあるんだ。

バンカラマッチならわかるけど、バイトでライバルって響きは、ちょっと変な感じがする。

 

「一緒にパーティー組めばいいんじゃないの?」

「組んだこともあったさ。でも、波長が合わなくてね。お互い浮き輪のまま助けないなんてことはザラだったよ」

「仲悪いね〜」

 

カミナの苛ついている顔は容易に想像できる。めっちゃ舌打ちしてそう。

だから、とイケメンさんがカクテルに口をつける。

 

「キミはすごいよ。あんな我の強いイカに合わせられるなんて」

「そうかな?」

「この街では協調できるイカタコが上に行く。強いだけではだめだ。バンカラマッチもバイトも、4人で戦うものだからね。恥ずかしながら、ぼくはようやく気付いたよ。チームの大切さを」

 

困ったように肩をすくめるイケメンさん。

 

あれ……意外といい人じゃん?

 

カミナが目の敵にしているのは、やっぱりライバルだからなのだろう。

ボーイの世界はよくわからない。

 

「話に付き合ってくれてありがとう、チヒロちゃん。次のお酒は何にする?」

「じゃあ……“スペシャルセーブ・カルーアラテ”で」

「おお、チョイスがいいね。今夜は長くなりそうだ」

 

心地よい気分になりながら、あたしは「マスター!」とお酒を注文した。

 

 




ロビーのジュース飲んでみたい。
けどカンジキグレープだけ異色で草。
なんでかんじき(樏、橇、檋、梮)なんだ……?
セーブブーツとかでいいじゃん……?
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