シャケよ、さらば   作:youhi

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07.ビンゴ、そして1000G

「ダメだ……絶対ろくなことが起こらねぇ」

 

バイトから家に帰り、布団の上でぼんやりと考える。

浮かんでくるのは、やはりチヒロのことだった。

イケメンと夜の街に行くチヒロ——どう考えても危ない。

 

「だからあいつはやばいんだって」

 

イケメンはパーティークラッシャーである。

奴が壊したパーティーは、数十個にも及ぶのだ。

オレもイケメンと一緒に組んていた時があった。

その時は間抜けにも「いいやつ」だと思っていたものだ。

 

だが、奴の本性は——バイト後にあった。

オレと一緒に組んでいたガールたちが次々に襲われた。

酒を飲ませ、その後ホテルまで行く。

そして次の日にクマサンから言われるのだ。「彼女はバイトを辞めるそうだ」と。

 

イケメンが何をしているのか、オレでもわかる。

だからこそ、チヒロが危ないのだ。

 

「どうすっか……」

 

天井をぼんやりと見つめる。

頭に浮かぶのは、ゲジマユの言葉だった。

 

『彼女は危うい』

『大海に出た井の中の蛙』

『彼女を守ってやれ』

 

「……さすがに今回は行くか」

 

オレは家を飛び出した。

 

 

 

 

 

バンカラシティはあいかわらずやかましい街だ。

若者がウェーイと叫んでいるし、スマホで写真を撮ってはしゃいでいる。ピカピカと輝くネオンに、EDMサウンドの雨。

 

「どいつもこいつも浮かれやがって」

 

オレはこの街が嫌いだ。

誰しもが人生なんとかなると思って笑ってやがる。

こっちは金を稼ぐだけで精一杯だっていうのに。

何も考えずに笑えるような人生が羨ましいし、妬ましい。

 

「さて、あいつが行きそうな場所は……」

 

オレは目星を付けてそこへ向かう。

1軒目はバー【ハーミット・クラブ】。

扉をくぐると、「いらっしゃいませ」とマスターの声。

 

「さっきまでイソギンチャクのボーイとタコのガールが来てなかったか?」

 

マスターは「あぁ、イケメンさんですね」とうなずいた。

 

「20分ほど前に出られましたよ」

 

1軒目からビンゴだ。ツイている。

 

「どこに行ったかわかるか?」

「さぁ……でも、女性のほうはだいぶキテましたね。フラフラと歩いてましたよ。イケメンさんが優しく介抱されていましたが……」

 

ほら、やっぱりろくなことになっていない。

イケメンは半年前から変わっていないのだ。

 

「ありがとう、マスター。酒を飲めずに悪い」

 

オレは1000Gをカウンターに置いて店を出た。

 

「さて……本番はこっからだ」

 

チヒロの状態がわかれば、その後の行動も想定内だ。

イケメンはなるべく人目のつかない場所を通って、ホテルに行くはずだ。

 

「なぁあんた。イソギンチャクの男とタコの女を見なかったか?」

 

路地裏に座り込んでいた老人に話しかける。

老人は「15分前ぐらいにあっちに行ったよ」と指をさした。

オレは礼を言って1000Gを老人に渡した。老人は目を輝かせて金を受け取った。

 

「あのバーからここを通って、最短でたどり着くホテルは——」

 

オレは建物を見上げた。

ラブホテル【母なる海】。

間違いない。ここにイケメンとチヒロがいる。

 

「……頼むからヤってんじゃねぇぞ、チヒロ!」

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