(ハードルガン上げしちまったぜ)
☓☓県鹿骨市雛見沢村。
人口約2000人程の山合の谷底に位置する寒村であり、農業・林業などの第一次産業が住民の職業のほとんどを占めるような、いわゆる――言い方は悪いがよくありそうな田舎の村である。
ただ自然は豊かで、冬は豪雪地帯に位置するため雪に閉ざされるという点は問題であるが、もう初夏に近い季節であると言うに、過ごしやすい気温、気候なのは及第点である。
敢えて文句をつけるのならば、飯を買ったり、食う店も場所もないこと、最寄りの隣町まで行かねば宿泊施設がないことぐらいだろうか、簡単に言えばこの土地の第一印象は過ごしやすそうで良いところというものを抱いたということを伝えたかったのだ。まあ、まだ心から気に入ったまではいかないのだが…そんな誰に話すこともないような、愚にもつかないことを考えながら、俺は―吉塚 将也はご機嫌に鼻歌を歌いながら、田んぼのあぜ道を行く自らの担当ウマ娘に視線を向けた。
「♪〜♫〜」
いつもの制服姿とはまた違う、私服のミスターシービーの姿は新鮮で、ついつい目を奪われてしまう。不意に吹いた風がシービーの黒鹿毛の髪と着ているデニムジャケットを揺らした。
「いい風が吹くね、ここは」
「それには概ね同感だが、シービーここが目的地だったのか?
よく、この村のこと知ってたな」
疑問だった、☓☓県の中でも隣町の興宮ならまだともかく、隣接する雛見沢村は失礼な言い方になるが、そこまでメジャーな存在ではない。有名な旅行雑誌にも記載は中々されない、されてもちょっとした記事が書かれるだけ、先にも述べたがホテルも民宿もない村だ、シービーはどうやってこの地の情報を得たのだろう?もしくは今までに雛見沢村を訪れたことでもあるのだろうか?
「別にないよ、理由なんて、なんとなく?ここならいい場所なんじゃないかなって思っただけ、見たのは電車とバスの時刻表くらいかな」
斜め上の返答を聞き、俺は天を仰いだ、まだまだ自分はこの自由人のことを舐めていたらしい。ここまで付いて来てなんだが、行き当たりばったりの無計画の感覚だより、まさか旅行でのやっちゃいけないことのタブー破りをやらかしているとは…シービーの性格を考えれば、予想は出来た筈なのだが。
「俺もまだまだ未熟か…」
「ん、なにか言った?」
振り返りながら、問うてくるシービーに何でもないと返答を返した。
「ただな、シービー、このまま村を無意味に散歩するのもいいが、目的は欲しい、観光できるような場所も調べてはないんだよな?」
「もちろん調べてないよ、面白そうってそのとき思ったとこに行ってみるのが、楽しいんじゃない」
感覚派の気持ちは良くは分からない、最近は少しは分かるようになってきたと自負はしてはいるが、自分が結構、前持ってスケジュールを組み立てておくタイプであるからか、完全理解はできないだろうなとは思っている。
「な~にも知らないよ、でもきみがそう言うならそうだな ――あっ」
シービーは周囲をキョロキョロと見回すと、
「あれ、地元の子達かな?ちょっと聞いてくるよ」
「へっ?!おっおいシービー?!待て待て待て!!」
止める間もなく自由人ウマ娘様は、おそらく学生だろう、登校中と思われる、少年少女達三人組に突撃をかましてしまった。一応、お忍びって形で来てるんだぞ!!二冠ウマ娘、その知名度を考えない行動に、頭を抱えながら、俺は後を追うのだった…ハァ…
声を掛けられたとき、キレイな人だなぁ、何処かで見たことあるようなないようなと最初思った。
多分夏用だろう、デニムジャケットに短パンを身に着けた高身長のウマ娘。
つい見惚れてしまって、返事が遅れても仕方ないと思う。
「あれ?聞こえてる?」
「はっ、はい聞こえてますです!!自分は前原圭一 学生であります!!」
「ハッはうぅ…りゅっ竜宮レナ、同じく学生です」
「えっとなんで二人共自己紹介してんの?すいません、あのソノザキミオンです、学生です一応」
知らない美人ウマ娘に声かけられたが気が動転して、何故かいきなり自己紹介しちまった、俺としたことが…しかも俺の勢いに巻きこまれたのか、レナとミオンにまでわけわからん自己紹介させちまった、マジすまん。
声を掛けてきた多分年上のウマ娘は笑いながら、
「あははっどこか、面白い観光場所ないかなって聞こうとしたんだけど、いきなり自己紹介されるとは思わなかったよ、君たちグッド!!最高に面白いよ」
観光?この時期に?
綿流しのお祭りは終わっちまったし、夏休み前のこの時期に?なんか楽しいイベントなんてあったかな…
「スッスッすいません!
それはともかく、ウマ娘のお姉さん、観光者なんですか?なんでまた雛見沢に?」
お姉さんはウインクひとつすると、
「ん~~ただ気が向いたからかな、さっき連れにも言ったんだけどさ、強いて言うなら東京住みだからかな、たまには自然いっぱいのところに来たかったんだよね、でもそれじゃあ目的がないって連れの人が言うもんだから、君たちに聞けばなんか楽しいところ知ってるかなって」
「――――い…お~い!!」
お姉さんの後ろの方から、男の人が呼びかけながら走って来る、多分あれが連れの人なんだろう。
「ん~~楽しいとこって言っても、都会の人がどんなとこが楽しいと思うか分かんないからね、少し前ならお山の古手神社で綿流しのお祭りもやってたんだけど」
ミオンが顎に手を当てながら答える、それを聞いたお姉さんはまたカラカラと笑い、連れと思われる男の人の人の方に振り返りながら、
「大丈夫、目的がないってのも楽しいだろうしその古手神社?ってのも見てみたくなった、教えてくれてありがとう、あ、そうそう、アタシの名前も一応教えとくよ、面白い自己紹介見せてくれたお返しに」
「アタシはミスターシービー、一応中央で走ってるウマ娘だよ」
そう言って、手をひらひらさせながら飛び跳ねるように走って去っていくお姉さん………………ん?えっ?
「「ミスターシービーぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」」
突然出てきた三冠すら確実と言われている二冠ウマ娘の名前に俺とミオンは驚愕の叫びをあげるのだった…
「お待たせ、聞いたけど都会の人が観光できるようなとこはよく分かんないってさ。山の方の古手神社ってとこでちょっと前までお祭りやってたんだって、残念。まあ、あとは歩きながら考えようよ」
「ハァハァ…いっいきなり走り出しやがって…やっと追いついた…ゼイ…ゼイ…仕方ないか…ん?なっなんかあの子達叫んでるな…まあ、理由はわかるがな、なんとなく」
「なんだろ?なんか驚くようなことでもあったかな?」
自身の知名度には無頓着な天衣無縫であった…
谷河内地区の奥、鬼ヶ淵沼。
そこに佇む一人のウマ娘。
――――管理門《ライノス》同調開始
顕現プロセス――リ―――ク解凍開始
機械的な音声が響く中、彼女は濁りきったお世辞にも綺麗とは言えない水面を見つめながら、言の葉を紡ぐ。
「…母様…」
右耳の紅白紐で括られた、夫婦鈴がチリンと揺れた…
前原圭一 雛見沢には5月末に越してきたばかりの雛見沢分校転入生、転校してきてまだ、短い期間しか経っていないが、クラス内でも雛見沢村内でもその行動から高い信頼を獲得しクラス委員長をまかせられるまでになっている。口先で相手を丸め込めるのが上手く付いた異名は口先の魔術師。
謎のウマ娘 謎です。以上
次は残りの部活メンバー出せるとよいなぁ、中々進まない…すまない、本当にすまない…