なぜ俺はここにいるんだろうか。それが、感想だった。
「それで、ザザだったかしら? あなたどこから来たのよ?」
1つの机を囲みながら、金色の髪を輝かせる女が線の細い青年に声をかける。やけに気品のある動作でザザは答えた。
「隣の帝国の首都──ザンギギエだよ。君らからすれば少々イメージしずらい場所だろうね」
「そうかしら、結構行くわよ?」
そのやり取りを見ながら、思った。
(冷戦中なんだよなぁ、今)
しかし、それを突っ込む人は周りにはなぜか誰もいなかった。遠巻きに見ている人はいるが、それが最大。理由は明白だ。俺以外の4人が、明らかにヤバい。
向かいに座る、妙な装飾の服を着た少女が静かに語り出す。異様に整ったその外見は、だがその黒い瞳を見れば一瞬で忘れる程度のもの。黒く淀んだ瞳。生気のない顔。端的に言うと、恐らく彼女の頭はイっているのだった。
「──ああ、所詮皆等しく滅ぶべき同列の人。赤髪の青年。出自の何を卑下する必要があるでしょうか」
「そうかい? ミリシトフ、君にそう言って貰えると嬉しいね」
会話が壊れていた。爽やかに笑うな、ザザ、お前。
そしてミリシトフは軽くうなづくと、手元に淀んだ赤色に染まった歪な十字架を──そこで目をそらした。
「あ、なんだそれ? 面白い形だな」
最後の一人が会話を続けた。止めろお前! それ完全に地雷だろ!
ミリシトフはぼんやりとした瞳を数秒揺らすと、やがて男へ焦点を合わせた。
「『■◆■□◆◆◆』」
男が目を見開いて手を伸ばす、そして、
ぐちゃり、と物的な音は聞こえなかった。色も衝撃もなにもなかった──だけど、今、確実に何かが起こった。
(……は? え? いまの何だ?)
俺が呆然としていると、男は、高らかに笑い出した。
「お前、危ねぇなあ!! ははは!!!」
それを横で見ていた二人も身を乗り出した。
「へえ、今の面白いわね。私にもやり方教えてくれない?」
「僕も気になるね。今のはなんだい?」
緊迫の時間が流れる。ミリシトフは、数秒チャリチャリと十字架を鳴らすと、しまった。
そして、相変わらず焦点の合わない瞳が宙を向く。
「我が神の慈悲、救いの御言葉……私はそれを代弁するのみです」
「なるほどね」
「あー、そういう感じか」
ザザも同調するように軽くうなずいていたが、俺の心は疑問符で埋まっていた。
(どういう感じだ!!???)
場の流れについていけない。完全に地蔵だった。そんな俺を無視して話は進む。
「私には難しそうね、フォーリンとやら。あなたは出来そうかしら?」
「いやあ、俺には無理だね。こいつにしか無理だろうよ」
「そうだね、あれは方向性が違う。
半ば現実逃避しながら右から左へと会話を流す。そうでもしなければやってられなかった。
そもそもなぜこんな地獄に俺は参加することになったのか──それは、この場所、王立魔術学園の入学式に遡る。