夜の帷が消えるまで   作:発狂する雑草

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任務編ですね~。いやぁ戦闘シーンってホント書くの面倒くさゲフンゲフン、難しいですよね!(^ω^)


第二項

コツンカツンと真っ暗闇に数人の靴音が響いては消えていく。

ゆらりと闇を照らすライトの光が揺れる。

 

「なにこの生き物」

 

目の前にはよくわからない生物を見て八生は思わず呟いた。

今いるここは殲滅隊本拠地の地下だ。

請け負う任務は基本不死者が現れた地区へ出向き殲滅するというものだが、その際地区へいくための移動は地上ではなく、地下を通っていくものらしい。

ただでさえ地下にある殲滅隊基地、そのさらに地下への階段を通り、錆びた扉を空けると真っ暗な地下通路にでた。そしてその通路には見たことのない生物がちょこん鎮座していた。猫くらいの大きさで、真ん丸な体。体は真っ黒で楽しそうに揺れる犬のような尻尾からはドロドロと黒い液体が滴り落ちている。

フワフワな耳にはアルストロメリアの花が生えていてピンクのリボンが結ばれており、マジックペンで書いたような可愛らしい目と口の絵が描かれている。

 

「なんだこいつ……不死者の仲間か?」

 

誠はその生物を睨む。

 

「"ハコビ"って名前」

 

今までしゃべらなかった律がいう。

律の方を見れば、彼は少し離れた場所に置かれている看板を指差していた。

看板に近寄り、銀色のリングの機能の一つであるライトで看板を照らす。

 

【その生物はハコビといい。皆様を目的地まで運ぶ役目を担っています。

ハコビに任務地区を言えば、連れていってくれます有効活用してください。

また帰ってくる際はハコビの名前を呼べば来ます】

「ハコビ……」

 

ハコビという名前らしい不死者はぴょこぴょこと短い足を世話しなく動かして寄って来る。その際、ハコビの背中が露わになる。

そこには不死者の象徴である大きな目玉が一つついてあった。

その目に少しぞわりとする八生。だがそれは彼女だけではなかった。

 

「やっぱこいつ不死者じゃねぇか!!」

「えー?でも害意はないみたいだよー?」

「わかんねぇだろ?!こいつがいつ俺らに危害を与えるかなんて!!」

 

誠は警戒したように叫んだ。

だがそんな誠のことはスルーし、紡は警戒することなくハコビに近寄るとハコビの黒い頭を撫でる。ソレが嬉しいのかハコビの尻尾ははち切れんばかりに振られる。

 

(か、かわいい……)

 

不死者は好きにはなれない。だがまるで子犬のように駆け回るハコビのことは不覚にもかわいいと思ってしまった。

背中の目玉は悍ましいとは感じるが、それでも愛着に近い感情が湧いてしまう。

ハコビが八生の方を向き、ぴょこぴょこと跳ねるように近寄ってくる。

八生の前までやってくると、まるで撫でろと言わんばかりに八生の足首の周りをくるくると回る。

八生はなんとなく、ハコビに触れ、撫でる。

黒い体はゴワゴワしているが意外と手触りが良い。撫でているとスリッとハコビが頭を押し付けてくる。

 

(っ、かわいい…!)

 

なんだか負けたような気になったが可愛さの前で人間は無力である。大人しく屈するほかない。その光景を見ていた誠が吠える。

 

「なに馴れ合ってんだよ!!!」

 

だがそんな誠の言葉を切ったのは意外なことに律だった。

 

「不死者を殲滅するために作られたような組織の地下通路でのうのうと生きてるうえ、あんな説明書きまで用意されてる。

今まで人に害をなさなかった。だから生かされてる。蔦だって抜かれてる。問題はない」

「それでも安全って決まってねぇだろ!?」

「…そんなに嫌なら、お前は徒歩でJ地区まで来ればいい」

 

律の言葉に誠はギリっと奥歯を噛み締める。

 

「……別に、使わねぇとは言ってねぇだろうが。馴れ合うなっつっただけだ」

 

ハコビと律を睨みながら誠がいう。

一先ず、誠も一緒に来るらしいので八生はまた喧嘩が始まらないウチにハコビのマジックペンで書いたような目を見ながらしゃがみこむ。

 

「ハコビ、J地区に連れてってくれる?」

 

声を開けた瞬間「にゃーん」という音が聞こえた瞬間、目の前が黒一色に埋まる。

それはまるで、殲滅隊基地に来る際に感じた感覚と全く同じもので。

 

「!」

 

特に何かに乗ったような感覚も、浮遊するような感覚も無く。

まるで瞬きでもするように、黒が消え、目の前に現れたのは先ほど居た場所ではない地下通路だった。

辺りを見渡せば、Jと書かれた扉が見受けられた。どうやら本当にJ地区に来れたらしい。

 

「マジで一瞬だったな」

 

八生以外も来れたらしい。八生同様に驚いているようだ。

 

「普通にここまでくれば十日以上掛かる。それを僅か数秒で到着。効率のいい時短システム」

「でも不死者は人を襲うもんだろ。なんでいうこと聞いてんだよアイツ」

「それは分かんないけど、そういう不死者もいるんじゃないかな?人に友好的な不死者とか!」

 

紡が言う。その言葉に誠は顔を顰め乍ら何かを考えるそぶりをみせる、が。

 

「今は時間ないし任務に集中しよう!助けを求めてる人もいるかもだし!」

「あ?ああ、そうだな」

 

八生の言葉に誠は返答しながら扉の前に立つ。

扉といっても、ドアノブなどの取っては見られない。

ほぼ壁と変わらない。ただ、スキャナーのような物が設置されているだけだ。

 

(あの扉、どうやって開くんだろう?)

 

首をかしげる八生。だが誠は慣れた手つきでスキャナーに自分の端末をスキャンする。

瞬間、ガゴンという音を立てて、どうやらスライド式だった扉が開かれる。

そして何の躊躇もなく、誠達は扉を通り抜ける。

八生も慌てて後に続けばそこは普通の家の中のような場所だった。

 

「えっと、ここは?」

「扉の隠し家、見りゃわかんだろ」

「え、ええ……」

 

誠は開かれたままの扉を閉める。

見ればわかると言われたものの、ただの一軒家に見える。

こんな所に扉を設置していいのだろうかと八生は不思議そうに首を傾げる。

 

「どうしたの?ヤヨちゃん、不思議そうな顔して」

「えっと、殲滅隊に繋がる扉をこんな普通の家の中に設置していいのかなって」

「…もしかして、ヤヨちゃん養成学校通ってないの?」

「実はそうなの。知り合いに殲滅隊の人がいて」

「あー、そういうことね!

えっと普通の不死者ならいいけど夜縁の不死者は頭がいいから。

扉を守るために壁とか防衛するものを作ってたら、ここに何かがあるんだなってバレちゃう可能性があるでしょう?だから逆にこういう一般的な民家とかに扉を隠してるんだって!」

「そうなんだ」

「おい、行くぞ」

「あ、うん」

 

そうして民家を出て……目の前に広がった光景に絶句した。

 

「ここ……」

 

他の地区とは明らかに別世界

崩落した建物、ひび割れた大地、辺りに散乱するガラスや、建物の瓦礫

そして……腐敗や白骨化した死体の山

B地区など比べ物にならないほどの死体が乱雑に転がっていた。

 

「酷い…」

「復興が進んでねぇ地区なんざ何所もこんな感じだ。J地区ならかれこれ60年以上はこのままだろ」

「60年以上……?60年以上もこのままなの…?」

「ああ、人が住めそうな土地が優先的に復興される。此処みたいな草の根一本も生えねぇような場所は後回しにされて行くんだよ」

「でも、いつかここも復興の手が回って……」

「復興作業何てされない」

 

八生と誠の会話に入って来たのは律だ。

 

「どうして?」

「上はJ地区の復興なんてする気はない。

する気も無いのに不死者が繁殖しないように俺等を派遣して、派遣された奴の殆どが入り込んだ不死者に殺されてまた、死体だけが残る。無意味な無限ループ」

 

律が見た視線の先には、ボロボロで血まみれの殲滅隊の制服が地面に落ちていた。

 

「……分かんねぇだろ。復興してくれるかも知れねぇじゃん

今のお前の口ぶりだと、ここにきて死んだ奴らの死は無駄死にだとでも言いたげだけど、ンな事ねぇよ。皆復興を願って死ぬ気で戦ってんだ」

 

誠が言うが、律は首を傾げる。

 

「……理解できない。事実を言ってるだけだろ?何を熱くなってるんだ」

 

律は誠の横をすり抜け、一人で先を進もうとする。

 

「ちょっちょっ!待ってよ!どこ行くの!?」

「ばらけて不死者を探した方が効率いい。俺は一人で行く。不死者見つけたら連絡飛ばせ」

「で、でも危ないよ!?」

「問題ない」

「はっ、勝手にしろよ」

「誠君!」

 

切れる誠と、本当に一人でずんずん進む律

「この二人、間違いない!水と油だ!!」と頭を抱える八生

 

「だ、大丈夫だよヤヨちゃん!僕がリッちゃんについてくから!」

 

紡が律を追いかける。残ったのは八生と誠の二人だけだ。

 

「あ、誠く」

「ちっ、さっさと行くぞ」

「ぅ、はい」

 

頷いて八生は誠に続いて歩き出す。

 

(どうしよう。早くもこのチーム不安でしかないんだけど……!!)

 

八生はこれからの事を考え、頭痛を感じながら広いJ地区を回る…それにしてもここ。

 

「腐臭ヤベェな、ここ」

 

誠も同じことを思っていたらしい。それに同意するように頷き、辺りを見渡す。やはりここも死体だらけだ。

 

「60年間雨風に晒され続けたんだ。こうもなるよ…せめて埋葬してあげたいけど」

「俺らだけじゃ無理だな。東エリアだけでこの量なんだから。

上に掛け合えば、埋葬と清掃作業してくれるかもしれねぇが」

 

そこで誠の言葉は止まる。

何処からともなく、何か扉を引く様な、キーッという金属がきしんだ音が響いたからだ。

 

「……」

 

八生と誠は顔を合わせ、頷く。音の原因は風か…それとも。

 

音を立てないように音の方へ行けば、そこはズタボロの古民家が一つ立っていた。

白い壁は茶色に変色しカビが大量に繁殖していた。

そして家の扉が、少しだけ開いているのが見える。そっと気配を殺して扉に近づき、中を覗く。

 

(女の子……?)

 

そこには普通の女の子が立っていた。

家の中は汚れていて、見るに堪えないことになっていたが、少女はバラバラに壊れた椅子に座って崩れた壁を眺めている。

顔は此方からでは見えないが、異変は無いように見える。

 

(もしかして迷い込んだ……?いや、でもここは何十年も前からこうなってるみたいだし、この子は別にやせ細っている感じでもない…なら、この子は)

「八生!飛べッ!!!」

 

誠の言葉に反応するように飛び上がれば少女が居た地面から真っすぐ八生の居る場所までの地面が唐突に抉れる。

振り返った少女の輪郭は酷く腐乱しており、顔は螺旋のように黒と赤の渦を巻いていて、その表情も判別できない。鎖骨部分には黒い花が咲いていて、どう見ても異常だった。

 

 

 

 

 

_________

 

 

 

 

 

 

「りっちゃん!待ってよぉ!」

 

一方紡は律を追いかけて来ていた。

律は先程から辺りに転がる骨や、人間の一部だった物が散乱していることなどまるで気にせずズンズンと進む。

 

「早く狩って帰る。時間をかけていいことはない」

「そ、それはそうだけどぉ」

 

何とか律に追いつきながら、紡は律の顔を横からチラッと見る。

律の顔は愛も変わらずの無表情

 

「ねぇ、りっちゃん。マコちゃんのこと…嫌い?」

「理解できない」

 

言葉を返され紡は「そっかぁ」と苦笑いする。

 

(多分りっちゃんはマコちゃんに何かされて嫌いになったと言うより、考えが分からないんだろうなぁ。馬が合わないっていうか…。

でも、それならまだ仲良くなれる可能性はあるよね!?

しせつちょーも言ってた!ソウゴリカイは仲良しの第一歩だって!つまり…いっぱいお話しさせればいいんだよね!)

 

戻ったらすぐに「仲良しワクワクお話し大会」を開こうと紡は一人心に決める。

その時。ジジっという機械音が腕から流れた。見れば端末が反応している。

 

〈東エリアに不死者が出た!現在交戦中!位置情報は送るから直ぐに来て〉

 

八生のその言葉を最後にプツリと通信は切れ、代わりに位置情報が送られてくる。

紡と律は、すぐさまその場所へ向かった。

 

 

 

 

 

______

 

 

 

 

 

 

「はは、テメェが花咲きか」

「あ”ァ」

 

誠は不敵な笑みを浮かべ、刀を抜く。そして不死者目掛けて駆けだす。

不死者が背から出した黒い帯のような物が誠に迫る。

それを誠は弾きながら間合いを詰め、一気に切りかかる。

 

「っ、誠君!」

「っ!」

 

だが帯の先端が裂けて、光のような物が漏れる。

それを見た八生は直ぐ叫べば、誠は横に身をよじる。

瞬間通り過ぎて行った一筋の光。光が当たった場所を見れば焼け焦げており、誠の頬も僅かに焦げた跡が出来ている。誠は着地すると、焦げて血が滲んだ頬をグイッと拭う。

 

「なるほどな。コレが噂の異能ってやつか」

「大丈夫!?」

「余裕だわ。ンな事よりお前不死者の核何処にあったか分かったか?」

「さっきから探してるけどそれっぽいのは……」

「と、なれば服の中の可能性があるか…」

「そんなことあるの?」

「普通はねぇな」

 

核は不死者の弱点だ。

だからこそ、非力な女子の張り手でも簡単に破裂してしまう。それくらい、核は弱いのだ。

そんな弱点を服で隠すなんてするだろうか?

そりゃ守ることは出来るだろうが、下手をすれば自爆しかねない。ユラユラと揺れる不死者を見る。矢張り、分からない。

 

「まぁ、やってたら分かんだろ。八生、お前は後方支援。なんか気付いたら教えろ」

「わ、わかった!」

 

振り卸された帯をお互い反対に転がり躱すと直ぐに態勢を立て直す。

素早く飛んでくる帯が誠に当たる前に、素早く銃を発砲し可笑しな方向に飛んで行った光線は、誠の髪を僅かに焼く。

しかしそれを気に留める事無く、誠はただ真っすぐに不死者へ走ると再度不死者の間合いに潜り込み、不死者の股下から首にかけてズバリと刃を切り上げる。

 

「!」

 

その時、真っ赤な目が一つ見える。

長い髪に隠れるようにして存在する目玉…誠が斬った傷の、すぐ横にそれはあった。

 

「誠君!首筋だよ!!」

「っ、首だな!」

 

急所を外させた不死者は悲鳴の一つすら零すことなく誠を蹴りを飛ばす。が、誠は開いている左手で攻撃を受ける。

鈍い音がして誠は顔を歪めたが右手に持っていた刀を逆手に持ち首筋目掛けて突き立てる。

 

(っ、核に届いてねぇ、浅い…!)

 

不死者の本来の弱点は目玉ではない。その奥にある核だ。

その核に刃が届いていないらしい。

不死者の手が伸びてきた。

一瞬反応が遅れた誠だったが、刀を突き刺した状態で後ろに飛び退りながら体を捻って何とか避けた。

それでも完全に避ける事は出来ず、右腕を掴まれそうになるが、その腕は八生の発砲で吹き飛ぶ。

その間に誠は刀を両手で掴むと更に深く差し込んだ。

 

核に届いた。

 

刃と皮膚の隙間から噴水のように血が噴き出す。

誠は刃を引き抜くように抜くと距離をとる。

ぐにゃりと腕を誠の方へと伸ばす。だがその腕は力を失っていき、そのまま声を上げる事無く地面にぱたりと倒れ込む。

不死者は地面をボロボロの指でひっかくだけで、もう何もしてくる気配はない。

 

「な、何とかなったね…」

 

八生は誠に近寄る。

誠は「おー」と曖昧な相槌を返した後、自身の刀に目を落として顔を顰める。

刀には、真っ黒な液体と共に、白い物が付いている。恐らくウジだ。

 

「帰ったらすぐ拭かねぇと」

 

舌打ちをする誠に八生は苦笑いする。

 

「あ、もう倒してる!」

 

そこで紡がやってくる。

 

「遅かったな」

「こ、これでも急いだんだよ!?りっちゃんおいてきちゃったし!」

「はっ、あののろま野郎。恰好つけるくせになんの役にもたたねぇじゃねぇか」

 

この場にはいない律を嘲る誠と「そういうこと言っちゃダメなんだよ!」という紡

二人の会話を聞く八生は「さっきまで戦闘したとは思えないくらい平和だな」とほおを緩ませる。

しかし、平和というのは突如として崩壊するものだ。

最初に気づいたのは八生だった。彼女の目は誠と紡の背後を捉えていた。

 

「二人とも後ろ!!」

「!」

 

叫ぶ八生。誠と紡、その背後で黒い物が蠢いた。

二人が八生の声に反応し振り返ればそこには、帯があって。

 

「っ」

 

紡が凪ぎ飛ばされる。

同時にその帯の根元から裂けて出来たらしいもう一本の帯が誠を見ている。

そこには目玉が一つ生えていた。

 

「なっ」

 

目玉の付いた帯。その中心には既に白い光が集まっていて。

 

(この距離じゃ逃げられない…!!)

 

思わず身構える誠

衝撃を少しでも軽減するために両腕を庇う様に前に出す。

だが、衝撃はやってこなかった。代わりに一陣の風が誠の前をよぎる。

 

「!」

 

どこからともなく現れた律。彼が持っていた斧が横に流れる。

驚くほど正確に振りぬかれた斧は、帯を切り飛ばした。

すぐに距離を取る誠と八生、そんな中だ。

 

「突然、何するんだよぉ!!!」

 

吹き飛ばされていた紡が彼の専用武器であろうツヴァイハンダーを引きづりながら飛んでくる。

 

「紡くんっ、よかった無事で…って、え?」

 

そのまま振り上げた紡は、死して尚動こうとする不死者の体に目掛けて武器を振り落す。

振り落されたツヴァイハンダーは勢いよく地面に叩き付けられる。

物凄い音と共に地面の砂や石が巻き上げられ、罅が入り、ボコっと凹む。

それはまるでクレーターだ。尋常じゃない怪力をもってとどめを刺した紡に八生は思わず目を白黒させる。

 

「もう!ちょっと痛かったんだから!!」

 

ぷくーっと頬を膨らませる紡。だが彼の体には泥の汚れこそあれど傷らしい傷はなく、ダメージも全然追っている様子がない。

そんな彼はこの場面だけ見れば愛嬌のある可愛らしい男の子として映っただろう。

だが彼の足元に出来ているクレーターを見てしまえばその感想などいとも容易く吹っ飛んでしまう。

呆然としていれば無表情の律が八生たちのもとへやって来る。

 

「不死者は核を複数持ってる個体が居る」

「あ、うん…ごめん、油断して…」

 

そう謝りながら八生は「善さん、そういえば複数目玉を持つ個体もいるって前に言ってた。死ぬ直前まで足掻く個体もいるし、最後まで絶対に油断するなって言われてたのに…」と顔を歪める。

 

「死亡確認はとれ。常識だろ」

「うぐっ、はい……助けてくれてありがとう。紡君も」

「いいよ!それに試験の時も助けてくれたしね!!!」

 

にこっと笑う紡になんてことなさそうな表情を浮かべる律

 

(二人とも凄いな。誠君もすごかったし。私全然力になれてないや。もっと頑張らないと)

 

初任務。花咲きとの戦闘を終えた八生は更なる実力向上に向けて決意する。

 

(ってあれ、誠君が妙に静かな気が…)

 

そこで、先程から誠が静かなことに八生は気づく。

誠の方を見ると彼は、俯きプルプルと震えていた。

 

(どうしたんだろう…もしかして怪我でもしたんじゃっ)

 

心配になった八生が誠に声をかけようと近づく。

 

「誠くっ」

 

だがそれより先に誠が動き出す。彼はズカズカと大股で紡と律に近寄る。

軈て、何かが爆発したようにバッと顔を上げた誠はビシッと二人…特に律を指さし叫んだ。

 

「タイミングよくやって来てイイ所持ってってんじゃねぇよ!

いっとくがな!俺が不死者潰したんだからな!?いい気になんじゃねぇぞ!?」

「………」

 

怒鳴る誠に八生たちは無言で、ジトッとした目を向ける。

 

(子供だ……)

「小さい子…?)

(餓鬼)

 

八生たちの心がマッチした瞬間であった。

数分前までバラバラだった彼らは互いに顔を合わせると、コクンと頷く。そしてくるりと誠に背を向け歩き出した。

 

「ふぅ、疲れたー!早く帰って次の任務まで皆でアイスでも買って食べない?」

「アイス!?賛成賛成!!あ、それと僕皆とお話ししたいな!好きな色とか食べ物とか!」

「いいねぇ、律くんはなにする」

「寝る」

「えぇ、話そうよ!ね?」

「っ、テメェ等無視してんじゃねぇっ!!!」

 

声が背後から聞こえてくるが、彼女たちの脳内はすでにアイスで一杯だ。

 

「誠君は放っておいて早く行こう行こう!」

「アイス!!」

「…」

「だから勝手に行こうとすんな!!!」

 

こうして初任務は無事、幕を閉じたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キーと、門が開く音が響く。

門を開けたのは、黒髪を編み込み、巫女装束を身に纏った少女だ。

彼女は門を開けると、俯いていた顔を僅かに上げる。

 

「あら、凄い人の数ね」

 

彼女は思わず声を上げる。その声に気づいたらしいこの地区の男が彼女に気さくに声をかける。

 

「凄いなアンタ。一人でその門を開けるとは…殲滅隊の人かい?小さいのに凄いなぁ。ここは初めてかな?よけりゃ俺が案内して」

 

「やるよ」と続く筈だった男の言葉は紡がれること無く切れる。

少女の掌が男の顔を掴んだ。そしてまるで赤子の首を捻る様にいとも簡単に千切ったのだ。

シンと先程まで賑やかだった地区内から音が消え、住民は時が止まったようにその一点を見つめて固まった。

ドボドボと男の首から血が大量に噴き出し、体は糸が切れた人形のように地面に倒れるこむ。

どしゃりと音を立て、自身の血で作られた血溜まりに沈んだ男の体躯。

彼女の裾から小さな蛇の大群がワラワラと出てくると男の死体に群がり、あっというまに蛇に呑まれて行く。少女は温度の無い瞳で男の体を食いちぎっていく蛇達を見つめ、ポイっと持っていた頭部を放り投げる。

投げられた頭部はボールのように弾むと池の中にぽちゃんっと飛び込み、ぷかぷかと浮いたり沈んだりを繰り替えす。

 

「触らないでくれるかしら?」

 

彼女は蛇が付いた死体を蹴りあげる。

蹴られた死体は一度バウンドして近くの家の壁にぶつかる。どれだけすさまじ力で蹴ったのか。壁は凹み、ぶつかった死体はぐちゃぐちゃに崩壊し、人間の形を保つことなくただの肉へと姿を変えた。

 

人間とは思えない所業。水を打ったように静まり返っていた住人達の時が動き出したかのように悲鳴が巻き起こる。

空気を揺らす悲鳴の大合唱に彼女は鬱陶しそうに顔を顰めた。

 

「あんまり気乗りはしないんだけど言われちゃったもの。仕方がないわよね」

 

クスリと笑みを浮かべると彼女は細い指を指揮者のように回す。

すると死体に群がっていた蛇が彼女の白い指先に操られるかのように今度は一斉に住民に襲い掛かった。悲鳴を上げる間もなく、住民たちの口や目に入り込む蛇たちは、内側から肉を食い破り骨を砕く。

 

「さてと、除去を始めましょうか」

 

”紅い瞳”をもった彼女はペロリと頬に付いた血を舐めて嗤った。




ハコビは夜の帷のマスコットキャラです。
可愛い見た目してます。そしてとんでもなく便利です。
一家に一体欲しいぜハコビとか思いながら書てました。
触り心地はビーズクッションを少し硬くしたみたいな感じだと言いな。抱きしめて寝たいと思う雑草であった。
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