めっちゃ久々の更新でございますね。おひさしぶりです。
この外伝では主に雪村双子、特に
雪村双子はいいぞぉ、と思いながら楽しく書いてます。ふへへへへ
薔薇1本
ずっと小さいころから自分が幸せだと信じて疑わなかった。
そう思うことで、自分を守り、何も知らないふりをして笑っていられると知っていたから。
この生活は一生変わらないと思っていた。
アイツさえ…天満善さえいなければ____。
雪村の家に双子が生まれた。
可愛い男の子の双子。一卵性でよく似た顔立ちをした少年たちは非常に暖かい家庭で生まれ育った。
父はH地区で医者をやり、母は名家のお嬢様だった。
二人は今時珍しい政略結婚だったが、お互いに惹かれ合い愛し合っていた。
そんな両親の愛情を惜しみなく受け、金に不自由することもなく、双子の少年たちはすくすくと育った。
そう、雪村家は仲の良い、ごくごく普通の家庭だった。
だが、いつしかその家庭は、ガラスようにひび割れ……そうして気づいた頃には粉々に砕け散っていた。
最初のきっかけは何かと聞かれれば、彼らは迷いなく”あの日”を述べるだろう。
あの日…彼らが5つの誕生日を迎えた時だった。
「外に出たい」
どちらが言ったのか。あるいはどちらも言ったのか。双子は両親にそういった。
双子は生まれてこの方、あまり外に出たことがなかった。出るなと釘を刺されていた。
だが、出るなと言われると出たくなるもので。
とうとう この日、その感情が抑えられなくなった。
双子の言葉に両親は困ったような表情をして、そして彼らに言った。
”絶対に傍を離れてはいけない”
そうして彼らは初めて遊園地に連れてきてもらえたのだ。
この日のためにお揃いの帽子を買ってもらって、二人は両親と一緒に始めてきた遊園地を満喫した。
楽しかった。だが、それだけでは終わらなかった。
今でも思い出せる光景だ。
強い風が吹き、舞い上がった自身の帽子
目を見開いて何かを叫ぶ両親の表情
そして
「紅い…目」
こちらを見る、人々の目玉
恐れ、焦り、驚愕、困惑、好奇、不安、その他あらゆる感情を宿した目が彼等を見ていた。
彼らの人生は自分の物、そして他者の”目”によって歪められてしまったのだ。
”紅い目は不吉の象徴”
それは人を蹂躙し、食らっていく不死者が悉く赤い瞳をしていたことから言われ始めた迷信
そう、迷信だ。根拠などどこにもない。
ただ、自分たちを襲う化け物と同じ色だからという傍迷惑な理由で広まってしまった噂
だが、人間はそんなくだらないものを鵜呑みにし、あるいはわかっていながら、体のいい迫害対象を作り、ストレスを発散したいだけか…人は彼等を迫害した。
双子を、そしてその両親すらも。
「そんなこと気にしなくていいのよ」
「二人は俺たちの宝物なんだから」
それでも両親は双子を抱きしめ、笑って見せた。
周りからの悪意の言葉などまるで気にしていないとでも言うように。
しかし人の悪意は加速するものだ。
両親の笑顔は日に日に曇っていった。
家に落書きされることが出てきて、家の中にいても誰かの怒鳴り声が一日中鳴り響いている。
あることないこと噂され、少しでも外に出ようものなら悪意に塗れた目を向けられる。
両親は喧嘩をすることが多くなって…苛立ちを収める様に彼らが双子に八つ当たりをすることも少なくはなかった。
でも大人しくしていたら両親は優しい両親に戻ってくれる。
だからこそ、彼らは大人しくしていた。
極力彼らの望む様に笑みを浮かべて、大人しく。いい子でいられるように。
部屋の片隅で、二人そろって固まって、身を寄せ合う。
いつも優しい料理の匂いで満ちていた部屋はいつしか酒の匂いが充満するようになっていて、綺麗に片付けられていた床には割れた食器の破片や折れた箸が落ちていた。埃だって溜まっていて、ゴミも平然と落ちていた。
そんな汚れた床に母の銀髪が散らばる。
母は泣いていて、何かを叫んでいるが、父は母の綺麗な銀髪を掴み上げ、何度も何度も殴っていた。
「おか、さん……」
か細い声が漏れる。
それは、隣から聞こえた。
見ればそこには自身と全く同じ顔をした少年
綺麗だった銀髪は痛んでいて、澄んだ紅い瞳は今にも零れそうな涙で潤んでいた。
自身と同じ、小さな体が前かがみになったのをみて、彼はその細い腕を掴んで引き留める。
「おか、さんが…!」
「できることはない」
「でも、でも……っ」
揃いの紅い瞳にたっぷりの水を含んだ少年は心配げに母を見つめる。そうして
「いやぁぁぁぁ」
「うるせぇって言ってんだろうがァ!!!」
母の頭を地面に叩きつけ、そのまま踏みつけようと足を上げた父を見た瞬間
少年が彼の手を振り払い、視界の端に銀が舞った。
「だ、だめ!!」
小さな体を精一杯広げて、必死に母を父から守ろうとする少年の姿があった。
「なんで、なんで殴るの!?なんで!!」
「黙れ!」
父に足蹴にされ、床を転がる少年
父はそれで満足したのだろう。舌打ちをして部屋を出ていく。
蹲った少年は顔を歪めながらも母を見る。
「ぉ……かぁ、さん」
泣きそうな……否、泣きながらか掠れた声で手を伸ばす少年
そんな少年を母は涙で濡れた顔で見下ろすと___平手で打った。
バシッという鈍い音が鳴って、部屋に母の金切り声が響く。
「もとは…元はと言えばアンタ等が悪いんでしょ!?余計な事しないでよッ!!!!」
髪を振り乱して絶叫する母。頬を押さえて恐怖をその目に浮かべる少年
それをみて、漸く彼は部屋の隅から立ち上がった。
「ごめんね母さん。
彼が心底申し訳なさそうな顔で謝れば、母の気持ちは少し収まったらしく、ハッとしたような顔で少年を抱き起した。
「ごめんね。ごめん…ごめんね」
そういって今度は泣きながら少年の頭を撫でる。
そうして彼の方を見て、同じように自身の胸に抱き、謝罪を口にする。
その言葉を聞きながら彼はホッとする。
”よかった。戻ってくれた”と。
母だってこんなことがしたいわけではない。
それは父だってそうだ。だから、これは仕方がない。
暫くすれば元に戻る。なら、耐えればいい。元々こんなことになってしまったのは自分たちのせいなんだから。
内心で呟き、彼は落ち着いた母に「おやすみなさい」と告げて少年の手を引いて自分たちの部屋に戻っていった。
「
部屋に戻ってすぐに彼は少年に言う。
少年はバツが悪そうに視線をうろつかせた。
「でも…」
「でもじゃない。そもそも、あれはストレスの発散じゃなくて火に油を注いでるようなもんじゃん。
父さん、母さんにその気がないなら、あんなことしなくていいんだよ。わかった?」
丸い目を覗き込みながら念押しすると少年は「うん」と小さく頷く。
そして「ほっぺ痛い」と言いながら頬を抑える少年に彼は苦笑いしながら、同じベッドに横になって、手を繋ぎ、揃って夢の中に入っていく、それが彼等の日常だった。
両親のストレスは専ら双子に向いていた。
だからこそ、双子は”役割”を決めた。それはストレスを”ぶつけられる役”と”ぶつけられない役”
でも、ストレスをぶつけられる役だからって、わざわざ怒りをぶつけられに行く、なんて間抜けな真似はしない。
だってこれは、ある種の刷り込みみたいなものだ。
同じ人間ばかりを攻撃すればいつか躊躇がなくなる。反対にそうじゃない人間を攻撃するときはブレーキがかかる。
両方とも殴られるくらいなら、片方は無事でいられる状況の方が好ましいに決まっている。
それでも一心にストレスを請け負えるほど強くはないから、役割を交代して毎日頑張っている。
大丈夫、両親は双子が入れ替わっても気づかないから。役を遂行することは非常に簡単だった。これでいいはずなのに、心のどこかで”悲しい”という感情が湧いたが、彼はそれらすべての感情に蓋をした。
”大丈夫。この日常もいつかは終わる”
両親が彼らを殴るのは彼らが悪い子だから
両親が彼らの手足を紐で縛って冷たい床に放置するのは彼らがいい子になれないから
両親が彼らを狭いクローゼットに押し込んで閉じ込めるのは彼らが迷惑をかけてしまっているから。
いい子になれば問題はない。
いい子になれないから駄目なのだ。
上辺でしか謝罪を言えない彼と、両親の気を逆なでしてしまう少年
いい子になれば、きっと両親は昔のように優しい両親に戻ってくれる。
だから、これは仕方がないことなのだ。
他の人から見ればこの環境は異常だ。普通ではない。
でも彼らにとってこれが”普通”だった。閉じた箱庭。他者から拒絶され、世間から切り離された彼等はこういう形の”普通”しか知らなかったのだ。
今回はプロローグなのでめっちゃ短いな!!
でも仕方ないね。
因みに雑草。最近イラスト関係の課題と仕事に挟まれてくっそ忙しいという。
死にそうです(´;ω;`)
ま、楽しいからいいけどね!!!
それにこの外伝、結構暗めだけど恋愛要素強めだからさ!ちょ、ちょっとは気分も貼れるはず!多分恐らくきっと!!!
因みに一本の薔薇の花言葉は”貴方だけ”らしいです。