どこにでもいる平凡な女子中学坂谷八生はある日突然クラスメイトと家族が"不死者"という化け物に惨殺される悲劇に襲われた。
彼らの無念、自身の無力さから八生は不死者を殺す組織"不死者殲滅隊"に入ることを決める。
天満善指導の下、彼女は半年に渡る鍛錬を受け見事殲滅隊、戦闘部隊に入隊する。
試験で出会った氷雨誠達とチームを組み殲滅業務をこなす。
だがその矢先、不死者の中でも最高ランクであり、この世界が闇に閉ざされる原因となった"夜縁"に遭遇してしまう。
そして八生は夜縁の手に掛かりその生涯に幕を閉じるのだった。
無慈悲な雑草の一言«誰が主人公だっつったよォォォォォ!!!!第二章開幕じゃぁぁぁ!!!!(´∀`∩)↑↑
第一節 第一項
____思えば死ぬ理由が欲しかったんだと思う。
風が止んで、空一面を覆った薄い雲が夜空に登る月を霞ませる。
酷く静かで人っ子一人いない、そんな日だった。
そこを歩く少年と女性。二人とも顔が似通っており、家族であることが伺える。
彼等は手を繋ぎ、家への帰路をゆっくりと歩いていた。
繋いだ手はお互いの体温からかジンワリと汗ばんで、それでも離す様子もなく、楽しそうに繋いだ手を揺らしながら少年と母親は楽し気に話していた。
少年は幸せ、だったのだ。
彼の家は余り裕福ではない。だが父親は母親を愛していて、母親もまた父親を愛していた。
そしてまた、少年も優しくて暖かい両親のことが大好きであった。
絵にかいたような優しい家庭。不満何て何一つなかった。
いつまでもこんな日が続くのだと、少年は信じて疑わなかった。
「誠!!!!」
しかしその薄っぺらい幸せは、いとも簡単に崩れ落ちた。
最初に瞳が捉えた色は赤、一色だった。
少年は冷たい地面に尻餅をついて動くことなくその光景を見つめていた。
見たくない景色がそこにはあった。目を背けたい現実が眼の前には存在した。
だというのに、彼の目は石化したのかと思えるほどに動くことはなく、その光景を見つめ続けた。
まるで大きなテレビの中の映像を見つめるかのように目は無機質となり、色が褪せていく。
母親が、真っ黒で大きな影に覆いかぶさられている。
明らかにソレは人間の姿をしていない。
巨大ななにかに覆いかぶさられた母親から流れ出した真っ赤な液体が、ジンワリと隙間なくコンクリートを染めあげる。
濃い鉄の匂いと肉を割るグチャグチャという不快な音、ゴリ、ボキンという硬いものを砕くような音が機能することをやめた耳から脳みそを犯すように響いた。
「おかあさん」と言いたかった口はハクハクと喋ることのできない金魚のように、間抜けに開閉を繰り返すだけで言葉が発せられることはない。
綺麗な彼女の顔、そこには何もなかった。
あったのは空洞。”顔の皮”がなくなっていたのだ。
顔の中身、骨と脳みそと、そして眼球が見えていて、右頬のあたりの骨はぐちゃぐちゃに砕かれていた。
脳みそに蔦のようなものが巻き付いて、どんどんと搾り取られるように形が萎んで皺くちゃに小さくなっていく。
血管が見える眼球には生気がなく、ビー玉のように物を反射する機能しか持ち合わせていない。それが少年の顔を映し出した。
目は死んでいる。いや、脳も死んでしまったのだろう。
なのに、誠のことを押しのけた白い手は痙攣するようにピクピクと指先が小刻みに動いて…だがそれもダンダンと動かなくなって、やがてだらりと地面に垂れた。
少年は、その光景を見ているだけだった。
自身を助けた母親が目の前で弱り、苦痛に藻掻き、息絶えるのをただただ見ているだけだった。
少年は、見ているだけだった。
気が付けば事態は収束していた。
目の前に飛んできた男が巨大な怪物を切り殺したのだ。
だが少年はそちらに目を向けることはなく、白い布が掛かったソレを見つめた。
母親は当然助かりはしなかった。脳みそは壊され、骨を砕かれ、内臓は潰された。助かるわけがなかった。
残った母親の死体は見るに絶えない姿となっていた。
それこそ、男なのか女なのかさえ判断するのが難しいほどに悲惨であった。
葬式では、棺桶に入れられた母親を少年は父親とともに遠くから見送ることしか出来なかった。
死体の損傷の激しさから、最後の見送りでさえ見ないほうが良いと言われた結果だった。
たが、少年は実際に母親の凄惨な死体を見ている。
遺影の中で笑う母親の姿を見るたびにあの光景がフラッシュバックして、少年は母親の遺影から目を逸らした。
母親は皆に愛されるような人間だった。
その為、葬式には多くの人が足を運んだ。
誰もが気立てのよく優しい彼女の死に嘆き悲しんだ。
線香を上げる際、その場で崩れ落ちて泣き出す人間がでてしまうほどに、母親は皆から愛される存在だった。
だからだろう、彼らの目が言うのだ。
"なんで彼女なんだ"
そして、最愛の妻を失い、日々焦燥し窶れていた父親もまた、葬式が執り行われている間、涙を流し、そして少年を睨みつけたのだ。
”なんでお前なんだ”
誰も口にはしなかった。だが目は口程に物を言う。
彼等の視線が少年の体を貫いて、少年の存在を否定していく。
生きていることを否定された。彼らの目が少年の心を壊していく。
同時に彼は気づいてしまった。
男が愛しているのは母親"だけ"であった、ということに。
温かい家庭など、最初から存在しなかった。
そして一年後、少年は男に捨てられた。
施設に入れられた彼は一人ぼっちで部屋の隅に座り込んだ。彼は周りからすれば完全に邪魔な存在だったといえる。
”どこかにいけ”
ここでも彼の居場所はなかった。
だからこそ、彼は邪魔にならない場所を探すようになった。
彼を厄介払いしたかったのか、はたまた彼の境遇と心情を察して同情をしたのか、施設の院長は不死者殲滅隊という組織を少年に紹介した。
紹介された少年は一も二もなく頷いた。天職だと思った。
天職だと思ったから、頑張ろうと思った。
でも…結局彼は彼のままだった。
(駆逐してやるゥ一匹残らずぅぅぅ!!!という人と仲良くなれそうだなぁと思う雑草→)(・∀・)