夜の帷が消えるまで   作:発狂する雑草

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ちょこっとほのぼのとした回だぞ!
雑草も書いてて楽しかったぜ!いえあ!(*^▽^*)


第二節 第一項

「っ、あ”あぁぁ!!」

 

窓枠は大破し、窓枠に本来は待っていたであろうガラスは割れていて、一部のガラスは欠け、透明でなくなり濁っている。

壊れたそこからは風が廃墟に差し込み、静かに部屋の中を吹き抜ける。

足元には砂利や埃が積もり、さまざまな物が散乱している。

朽ちた家具や錆びついた金属のかけら。

時折、足下の床が凹んでいる。

壁は至る所がぐずぐずに崩れ落ち、塗料は剥げている。

その罅割れから蔦や草が侵入しているのがわかる。

 

四方を灰色に囲まれ屋内の中央では一人の少女が叫び頭を掻きむしりながら、ただ一心不乱に足元に転がる”ソレ”を踏みつぶしていた。

ソレはつい数十分前まで人間として形を保ち、喋り動いていたモノだったが、今は見る影もないほどに原形をとどめておらず、グチャグチャの赤い何かに様変わりしていた。

最初こそ勢いよく噴き出していた血も、今では枯れてしまったか一滴も出てくる様子はない。

それでも彼女は一心不乱に同じ行動を繰り返す。

逼迫したその様子に、彼女を見ていた二人の男女が階段の上から首を傾げた。

 

「螺がえらい荒ぶってるけど、あれどないしたん?」

 

長い横髪をセンターで分け、長いパウダーピンクの後ろ髪が緩く団子にまとめ上げている。

口元には黒子が一つ。そして首筋に二つ黒のピアスを付けている。

服装は上がへそが見える程度に短い着物のようなもので、下は黒字の長ズボンに裾に白い糸の花の刺繍が施されている。

男は片膝を抱え込んで呟く。

 

(まと)

 

「わかれへんなぁ。まぁ放っといてもええんちゃう?」

 

同じくパウダーピンクの長髪を緩く巻き、ベビードールを着た女が両膝を抱え、顎を乗せながらそういう。

彼女の足元には恐らく子供の脚首や、手が散らかっている。血抜きを行った後なのだろう。一切血で汚れている形跡はない。それを彼女は指で弄りながらいう。

 

子禽(ことり)

 

するとトントンという階段を下りてくる音が上の方から響いてくる。

二人が揃って顔を上げれば、そこには小さな人影が一つ

 

「おなかすいてるんだって!」

 

頭にはひび割れ、ところどころから黒髪が生えた和風の照明を被っている。

ぶかぶかな詰襟はもはやワンピースのように小さな体を覆っており、長い袖がずるずると階段の埃を巻き取って引きずられている。

 

婁邪(るか)

 

「かっこええ恰好してるやん。どないしたの其れ」

「おとーさまがね!くれたの!!!」

「よかったやん。似合うてんで」

「えへへ、ありがと!!」

 

嬉しそうに体を揺らす婁邪

その際、照明から覗く黒髪がピコピコと動いている。

 

「それにしてもお腹空いてるん?」

「大方、食癖対象を食べられへんかったさかい荒れてるんやろうなぁ、可哀そうに」

「あめちゃんをあげたら、かわいそーなのなおる?」

 

婁邪がいそいそと長すぎる袖をぶんぶん振り回して手を出す。

その手には可愛らしい水玉模様の包みに木の棒が突き刺さった何かを握りしめていた。

それは一見すると、手に持つ棒が枝で出来ているというだけの棒付きキャンディーといえる。

だがそれからはどろりと血が垂れており、とても飴玉だとは思えない。

それを自信満々に見せる婁邪、だが絡と子禽の反応は微妙だ。

 

「止めとけ止めとけ、最悪襲われるで」

「おそわれるの?」

「おん、まぁその時は”キャーエッチー”とでも叫びな。そうしたら誰かが助けてくれるさかい」

「ママとマトにぃはたすけてくれる?」

「気分やな」

「ウチは助けるでー」

 

会話をしている間も螺は自身に襲い掛かる強烈な飢餓に藻掻く。

喉を掻き毟り、苦し気に呻く。

普段は丁寧に編み込まれた髪もボサボサになり、目の焦点はあっておらず、苦痛からか涙眼気味だ。

綺麗な巫女装束は血と涎でグシャグシャに乱れている。その様はまるで獣

歯茎ごと牙を剝き出しにして暴れ狂うその姿をみた三人の感想はその一点に尽きた。

 

そんな喘ぎ苦しむ彼女に一冊の本が投げつけられた。

本来、本一冊ならぶつかったとしても軽く呻きはしても大した支障はない。

だが今の彼女の弱点である目は先の戦闘で日向(ひゅうが)により裂かれ、核こそ無事だが痛覚がむき出しになっている状態だった。

故に、一冊の本とはいえ筆舌に尽くしがたい激痛を伴うのだ。

 

「あ、あ"ぁ"ぁあああッ?!?!」

 

絹を裂くような叫換が響き渡り、建物を揺すった。同時に螺は膝から崩れ落ち、自身の目を押さえる。

瞳からは涙とともに数的血涙が流れ落ちる。

それから数秒、彼女はその場に丸くなって蹲ると、何度も何度も荒い息を繰り返す。

そうしてだんだんと上がっていた息が落ち着き始めると、螺はバッと顔をあげる。

強い痛みにより冷静さを取り戻したらしい彼女は本の飛んできた方向をキッと睨みつけた。

 

「なに、すんのよ、!」

「さっきから五月蝿いんだよ。家畜じゃあるまいに」

 

ふんわりとした灰色の髪にパッツンの前髪、逆三角のフェイスペイントをし、ラフな黒のTシャツを着た青年が本を片手に足を組み、自身の読んでいる本から眼を逸らすことなく螺に苦言を呈した。

 

(らい)

 

彼の言葉に螺はギリギリと歯を噛みしめ、抗議する。

 

「仕方ないでしょ……!食癖のせいで」

「獲物食べ損ねたのはお前のミスだ。僕たちまで巻き込むな」

「な、なによ偉そうに!!殺すわよ!?」

 

そう吠える。だが儡は特段螺を気にする様子もなく、ぺらりと本のページを捲る。

その様に一切相手にされていないということを悟り、螺は「後悔しても知らないから」といい、蛇を出した。

そこで漸く儡も本から顔を上げ「だからうるさいと言ってるだろ」といい、彼もまた螺を睨んだ。

 

「おやおや、喧嘩かい?」

 

一触即発の空気が流れる…かに思えたが、入ってきた第三者の声により、その空気は一瞬して霧散した。

二人の目が建物の奥の闇から歩いてくるその人物に向く。

現れた人物は長い白髪に紅い瞳を持っており、宗教の教祖が着て居そうな、目の模様が描かれた衣装を身にまとっていた。

 

巫蠱(ふこ)

 

「多少の仲違いは構わないが殺し合いは感心しないな。

家族は仲がいいものだ…そうだろう?」

「…はいはい、仲良し仲良し」

 

適当に返答する儡。巫蠱は儡の前を通り過ぎると、そのままスッと座り込む螺の前に片膝をついた。

 

「可哀そうに。飢餓は三日もすれば段々癒えてくるはずさ。それまで我慢しなさい。

そして目の傷だが……罅が入っているだけで壊されてはいない。これなら次期治るだろう。今日はよく頑張ったね」

 

優しく巫蠱が螺の頭を撫でる。彼の黒い爪が螺の黒髪に絡んではらりと落ちていく。

撫でられた螺は顔を伏せ「ありがとうございます神様(お父様)」と明るい声で言う。

だが俯いて見えない彼女の顔は恐怖が滲みだしており、だらりと脂汗が白い頬を滑り落ちるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

ダンッという音と共に体に加わる衝撃に誠は肺に入っていた息を吐き出すと同時に小さな呻き声を漏らす。

ジンジンする背中、何度か咳き込みながら顔を上げればそこには美しい笑みを保ったまま、その細くしなやかな手に木製の両手剣を握りしめた亜怜の姿が誠の視界いっぱいに移りこむ。

誠の服は少し草臥れているのに対して亜怜は当初の姿と何ら変わらない。

髪一つ、息一つ乱れることなく立っている。

 

「うふふ、少し強すぎたかしら?」

「……もう一本お願いします」

 

誠は悔し気に顔を歪めながら立ち上がり、自身に渡されていた木刀を構えた。

 

現在誠は戦線復帰するために支援部隊の訓練場にて訓練を受けている。

といっても普通の戦闘訓練とそう変わらない。

ただ、誠が片目でも視野が広く成る様に、という目的が加わっているが。

両手剣は大きく、空気抵抗が多いはずなのに物凄い速度で迫って来るソレに冷や汗が止まらない。

剣を交わしていると視界外から蹴りが飛んできて、脇腹に突き刺さりそのまま後方に吹き飛ばされる。

何とか両足で踏ん張り、無様に転がることこそなかったが、蹴られた脇腹はじわじわと痛みを訴えかけてくる。

 

(つ、つえぇ……そりゃどこの部隊もいざという時の為に戦闘訓練は受けてるのは知ってたけど、ここまでとは思ってなかった。

訓練を終えるにはこの人から一本取らないといけねぇのに!)

 

細い腕の何処から湧いてくるんだと言いたく成程重い剣を軽々と振り回す亜怜に驚愕してしまう。

そして絶えることなく飛んでくる攻撃の連打

ただでさえ、眼帯のついていない裸眼ですら反応するのに精一杯だというのに、眼帯のついている方から飛んでくる攻撃には勿論反応が遅れ、ガシッと腕を掴まれそのまま背負い投げの要領で投げ飛ばされる。

だがそれは、背負い投げなんて生易しいほどの距離を飛行し、その勢いのままに降下していく。

 

(こんなに飛ぶのか!?まずっ、受け身のタイミングミスって…!!)

 

誠はまさかそこまで飛ばされると思っておらず、完全に受け身のタイミングを間違えた。そのため再度受け身の体制をとることもできず、そのまま背中から地面に叩きつけられ、強烈な衝撃が走った。

 

「がっ!?」 

 

はくッと本日何回目かの口から肺にたまっていた空気が漏れた。

かひゅかひゅと苦し気に呼吸をしながらも、彼は立ち上がると息を整えるために大袈裟に深呼吸を繰り返すと、すぐに木刀を握りしめる。

 

「もう一本!」

 

誠は叫ぶなり返事も待たずに駆け出す。

しかし誠如きの特攻、亜怜が反応できないわけもなく、すぐに蹴り飛ばされ、投げ飛ばされる。

その度に起き上がり切り込むが、難なく両手剣で木刀は受け止められて…一切活路が見いだせず、誠は何度も何度も地面に転がされる。

 

気づけば制服は地面の摩擦で少しボロくなってしまい、肌もまた地面の摩擦で擦り傷が僅かにできている。

因みに亜怜は終始笑顔だ。一切笑顔を崩しはしない。常にその優しい微笑みを添え続けている。

 

(そういや笑顔の起源って威嚇行動なんだっけ……)

 

誠はこの日一日で亜怜への評価が一転した。

ただのおっとりとした優しいお姉さんから、おっとりしてるけど実は馬鹿強くちょっと怖いお姉さんになった。

誠は痛む身体を庇うようによろよろと歩く。

 

「ごめんなさいね、誰かに指南するのが久しぶりすぎて…体は大丈夫…じゃないわよね」

 

申し訳なさそうに亜怜が言うが誠は首を横に振る。

 

「いえ、大丈夫です」

「でも明日の訓練は無しにしましょうか」

「平気ですから、明日もやりましょう」

 

咽ながらいうが説得力のかけらもない。

しかし誠は今日一日この訓練を受け、どれだけ自分自身の実力が足りていないかがよく分かった。

例え片目を失っているとはいえ、だ。

ぐいっと口横の血を拭いながら誠が言えば亜怜は「無理はしちゃ駄目よ?」と言って、誠の腫れた額を小突く。

 

「いい?戦いで重要なことの一つは攻撃を受けた後の対処よ。

下手をすると攻撃を受けた後に頭から落ちて死にかねないわ。

そして受け身を取り終わった後の動きも肝心。そこがしっかりできるようになるだけでも大分変るわ」

「はい」

「一先ず今日は終わり。ゆっくり休みなさい」

 

今度は優しく頭を撫でられる。

この年にもなって誰かに頭を撫でられるとは思っていなかった誠は何処か照れくささを感じながらも「はい」と頷き、大人しく部屋に戻るのだった。

 

 

 

 

 

そうこうしているうちに、あれから一月と少しが経過していた。

 

誠は受け身ばかり上手くなるだけで全くと言っていいほど亜怜から一本を取れる気配がなかった。ただ一方的にズタズタになるだけだ。

 

「なんで取れねぇんだ……」

 

誠は自室のベッドに転がりながらそう呟く。

一本亜怜に攻撃を当てること、それがこの訓練を終了する条件だと亜怜は言った。

たった一度。そう、たった一度攻撃を当てるだけだというのに気付いた時には攻撃を防がれ、吹き飛ばされている。

 

(視野の狭さにも慣れ始めて来てる。そろそろ取れてもいいはずだろ…)

 

自身の弱さに歯ぎしりしたくなる気持ちを抑え、誠は自身の手をぐっと握りしめる。

と、そこでトントンというノックの音が響いた。

ベッドから体を起こし扉を開ける。

そこには一月前にあったきりのチームメイトである紡と律の二人が立っていた。

 

「お、お前ら」

「まこちゃん久しぶり!元気そうでよかった!」

 

そういって二パッと笑う紡。その手には菓子の缶をいくつも抱えている。

 

「なんでここに」

「おっじゃましま~す」

「あ、ちょっ、おい!」

 

誠はいいと言っていないのにもかかわらず紡は勝手に部屋に押し入った。

その後ろに続くように律も部屋に入って来る。靴を乱雑に脱ぎ捨てた二人。

紡は床に、律は堂々と誠のベッドを占拠した。

彼らの様子にイラっとする誠は扉を閉め、脱ぎ捨てられた靴をそろえてやると、堂々と寛ぎ始める彼らを勢いよく振り返る。

 

「お前等勝手に入って来るなよ!つかツムグ!!菓子を勝手に広げんじゃねぇよカスが落ちたら掃除面倒臭くなるだろうが!!机の上で食え!!!

律、テメェは人のベッドに乗り上げんな!今すぐ降りろ!!!!つかテメェら靴くらい揃えろ!!!」

「ごめんねー、気をつけるよー、あ、これ美味しい」

「……」

 

言っても聞く耳を持たない二人にぴくぴくと米神を引き攣らせつつ、ドカッと地面に座る誠、そんな彼を見て紡はへらりと笑う。

 

「まぁまぁ怒らないでよマコちゃん!ほーらマコちゃんの好きなガーリックビスコ!ニンニク超マシマシ五倍!焼肉塩レモン味!今日の任務地で見つけたの!はいどーぞ!」

「いらねぇよ!いつ俺がそれ好きだっつったよ?!

つかそれ匂いすげぇきついやつだろうが!この距離感なのに既ににんにくの匂いやべぇんだよ仕舞え!部屋ににんにくの匂いうつったらどうすんだ?!」

「え、幸せになるよ?」

「それお前だけだろ!」

「あ、でもお腹すいて寝れなくなるからやっぱやだ!」

「しるか!!!!」

 

叫ぶ誠に紡は「ごめんごめん!」と謝る。

 

「そんなきれっきれなマコちゃんにねー、最近見つけた幸せに慣れる方法を教えちゃう!」

「は?幸せだ?」

 

「うん!これさえあれば、もうどんな嫌なことがあってもへっちゃらな呪文なんだ!!すごいでしょ!」

「へぇ?いいぞ、やってみろよ」

「これはねー、定食屋のおばちゃんに教えてもらったんだけどー」

 

そうして紡は誠の両手を掴んだ。

そしてそのままぺたんっと手と手を合わせる。合掌のポーズだ。

 

「お手々のシワと」

「シワを合わせて、幸せ(皺合わせ)…なんてクソつまんねぇこと、言うんじゃねぇよな?」

「え」

「掌が合わさるなら指の節も合わさる。寧ろ不幸せ(節合わせ)だ」

 

律が続くように言葉を吐き出す。

その言葉を聞いて彼らの間に沈黙が落ちる。

痛いほどの沈黙。その沈黙を作った張本人である紡に誠と律の冷めた目が向けられる。まぁ律はもとより冷めた目をしているが。

その目に耐え切れなくなったのだろう。紡の頬がじわじわ赤くなり。

 

「ほら!ガーリック食べて幸せー!!!」

「ふが?!」

 

紡は顔を真っ赤にして思いっきりガーリックビスコを誠の口の中に捩じ込んだ。

突然ねじ込まれた誠は数回咽ると、紡を睨む。睨まれた紡は誤魔化すようにへらっと笑う。

 

「げほっ、はぁ……お前なぁ!!」

「え、えへへ、知ってたんだね」

「…割りと知ってるやつ多いぞそれ」

「そうなんだぁ、残念!マコちゃん幸薄そうな顔してるからてっきり」

「さっきから喧嘩うってるよな??買うぞ?」

「冗談だよー、なんか悩んでそうだったから。で、そろそろ復帰できそう?」

「……それが、まだ時間かかりそうなんだよ」

 

誠は二人に事情を話す。

事情を聴いた紡は「ふーん」と軽く相槌を打つ。

 

「それは大変だね……達成できそう?」

「今の所難しそうだな……」

「そっかぁ」

「正直なんで勝てないのか全然わかんねぇ。いやそりゃあ実力の差っていうのが一番なんだろうけど…なんかそれだけじゃない気がして……。

でも亜怜さんに聞いても自分で考えるのも訓練よっていって言われるし…」

 

そういって溜息を吐く誠。律は紡の缶の中に埋まって居た苺ミルクの紙パックを抜き取るとストローを突き刺して飲む。

 

「一回目を瞑って戦え」

 

一口苺ミルクを飲んだ律の言葉に誠は思わず眉を顰める。

 

「はぁ?何言ってんだよお前!目ぇつぶったら見えなくなるじゃねぇか!」

「お前は目で見て動く癖がある」

「は?」

「え?それ普通のことじゃないの?」

 

律の言葉に「何を言ってるんだ」と言いたげに眉を寄せる誠

紡もまたきょとんとした顔をして聞き返す。

彼等の疑問はもっともといえる。誰だって目で見てから動くものなのだから。

だが律は首を少し横に振って見せた。

 

「筑波は目で見てると”思い込んでる”だけだ」

「見てると、思い込む…?」

 

律の返答に要領を得ない紡は首を傾げる。

 

「背後から攻撃が迫ってきている場合、筑波は振り返りながら獲物を振る。気配や戦闘における勘に近いものを利用して動く。

対して目で見てから動く奴は、振り返って攻撃が来てると”認識”してから初めて獲物を振る。

どれだけ動きが俊敏でも見てから動けば遅れるのは必然。

特に自分より動きの速い相手には完全に悪手だ。お前はまず見ることをやめろ」

「……」

 

見る……そんなこと、誠は考えもしなかった。

きっと自分一人ならその結論にはどう頑張っても思い至らなかっただろうと誠は思う。

 

「律」

「…?」

「ありがとう」

 

だから誠は感謝を素直に伝える。

言われた律はキョトンとした表情を浮かべた後「早く復帰しろ」と紙パックをゴミ箱に投げ捨て、ごろりと誠たちに背を向けるように寝返りを打った。

律から視線を外した誠は目の前で意外そうな顔をして律の背中を見る紡を見た。

 

「なぁ紡」

「ん?なぁに?」

「疲れてるとこ悪いんだが、ちょっと訓練手伝ってくれねぇか」

 

誠が頼むと紡は直ぐは数回瞬いたあと「うん!」と快く頷く。どことなく嬉しそうだ。

そんな紡に感謝を言い、誠は適当に目を隠せそうな長細い布を手に取ると、彼らは部屋を出て行った。




(ガーリックビスコ、焼き肉塩レモン味…食べてみたいと思う雑草→)(´▽`)
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