一章と最終章以外は基本的に結構短めなんでさっくり読んでくだせぇ
所で、修正前の話は3万文字くらいしかなかったのに、修正後の文字数を確認したら6万文字まで膨れ上がってたんですよねぇ。って前もこんな話したな…。(@_@)
「なんでそんなに濡れている」
「水被ってきたんだよ…」
誠が復帰して五日ほどたった。
その間、任務三昧で特にこれと言ったことはない。
そして今日もまたリングの着信で目を覚ました誠は眠気覚ましに冷水を顔面にぶっかけ、眠気を飛ばすと任務を確認し、いつもの集合場所である地下への階段にやって来た…わけなのだが。
「あの馬鹿は?」
「まだ来てない」
「ちっ、メール気づいてねぇのか」
まだ律しかいないのだ。任務の通達がきて10分近く経過しているのにまだ紡はやってこないのだ。
しかしそれも無理もない。なんせ現在時刻は午前2時。まだまだ皆寝ている時間帯だ。
だが殲滅隊の任務において時間など関係ない。任務が来たら行かなくてはいけない。そういう規則なのだ。
このまま待っていても時間ばかりが過ぎていくだけだろう。
そう判断した誠と律は紡の部屋へ向かうことにした。
そうして紡の部屋の扉を叩く、だが反応はない。どうするか、と考えていると律が誠を押しのけ部屋のドアノブに鍵を差し込んだ。
「なんでお前が紡の部屋の鍵持ってんだよ」
「前に似たようなことがあった。その時の任務は一人で行った。
任務を終えて帰ると筑波が謝りながら合鍵を差し出してきた」
それは誠が復帰する前の話だ。
今回同様早い時間帯に任務が入り、紡の部屋に行った律
だが紡は寝ており、鍵を持っていなかった律は時間も時間のため扉の前から大声を出して紡を起こす、という行為が出来ずにいた。
更に遅くなると不死者の被害が甚大になる恐れもあったことから一人で任務に向かったのだ。
幸い不死者は花無で、律一人で対処ができた。
そうして地下通路に戻って来ると丁度起きて向かおうとしていたらしい紡と遭遇
瞬間紡が階段を滑り落ちながら「ごめんりっちゃぁぁぁぁぁん」と号泣しながら誤ってきたのだ。
そして「お納めください」という言葉を添え、そっと鍵を差し出してきた…ということがあったわけで。
律がカギを開けたことで部屋に入る誠たち。紡は案の定寝ていた。
スヤスヤと心底安らかに眠る紡に律は近寄る。
「起きろ筑波」
律が紡の肩をタップして声をかける。だが全く起きる気配はない。誠は紡に近寄ると口を大きく開き。
「起きろや寝坊助が!!」
思いっきり布団を引っぺがした。
その拍子で布団を抱き枕のようにしていた紡は布団ごと床に落下
数秒もぞもぞと動いたのち、眉を顰めながらゆっくりと目を開ける。
「な、に……」
「任務が入った、早く準備しろ」
「……ぼく、まだねむい」
「そんなの俺等だってそうだわ。はよ起きろ」
「ん”-」
唸り声を上げると紡はよたよたと起き上がり、欠伸交じりに着替えだす。
「任務の詳細…って?」
「20分程前からM地区で女が消えてるって連絡が来た」
「20分前……?家出とかじゃないの?散歩とか…」
「一人や二人程度ならその解釈になる。
だが20分間で12人が一斉に行方を晦ました。それも特定のエリアじゃなく、東西南北全てのエリアでだ」
「死体が見つかってない以上不死者だって断定は出来てないが…不自然である事には変わりないからな。通報が入って俺等が駆り出されることになったみたいだ」
「ん、そっかぁ」
紡の着替えも完了したことで、三人は揃って部屋を出ると、そのまま地下へと向かう。
「あれ?ハコちゃん林檎食べてる!」
そうしていつもの通り地下への階段を下ったところで、気が付く。
地下通路にハコビがいること自体はいつも通りだ。なんらわからない光景といえる。
だが違うのは、ハコビの目の前には赤い林檎が数個おかれており、ハコビがむしゃむしゃと林檎を齧っているということだ。
「不死者って食事を必要としないんじゃねぇのか?」
「そのはずだ」
「…………あ!もしかしてご飯を必要としないだけで味覚はあるんじゃないかな!!だから娯楽みたいな意味で食べてる、とか!」
紡が閃いたとばかりに言えば「そうだ」とでも言いたげにハコビはふさふさの尻尾をべしべしと地面に叩き付けた。
「林檎一つ作んのだってかなりの労力を要するってんのにいい気なもんだ」
ケッと誠が顔を顰め、林檎を一つ拾い上げていう。
ハコビがおもちゃを取り上げられた子供の用に誠の足元で林檎を見ながらぴょんぴょんと跳ねる。
その様子を見た紡は「マコちゃんが作ってるわけじゃないんだから」といい、誠が持っていた林檎を取り返すとハコビの前においてやる。
「それに僕等が大変な思いをしなくて済んでるのはハコちゃんのおかげだもん。これくらいはいいんじゃない?」
再び地面に置かれた林檎。自身の半分のデカさもあるそれをハコビはパクっと一飲みにした。
マジックで書かれた口ではなく、その下。何も書かれていない空間に穴が開き林檎だけが消える。どうやらあそこが口だったらしい。
「じゃ、ハコちゃん。今日もお願いね」
紡がハコビの頭を撫でて「M地区にお願い」と言えば一瞬で視界が白で埋め尽くされ、見覚えのあるあの空間に戻って来る。
「にしても今回は各エリアで起こってるわけだが、やっぱどこの地区も回る感じか?」
「ああ」
「じゃぁ色々買い食いしよーよ!お腹空いたし!」
「お前ほんと飯しか頭にねぇな」
地下の奥。各地区へと繋がる巨大な扉をリングで開きながら誠達は話す。
そうして開かれた扉を出て、民家を出れば冷たい風が頬を撫でた。
民家の外に一歩踏み出せば人の気配で溢れており、当たりには家が立ち並んでいる。
リングに送られたメールを開き、一緒に添付されていたM地区の地図を取り出す。
「いうほどデカくないな、この地区。これなら大体1エリア15分くらいで周り切れるんじゃないか?まずは東から手分けして聞き込みでもしてくか」
地図を確認しながら次の動きについて決める誠
「わぁ団子あるよ!」
だが残念なことに寝起きの腹ペコ怪獣にはそんなことより食事に意識が行ったらしい。
こんな時間帯だというのに開いている数少ない店舗の中から団子の店を目敏く見つけた紡。そんな紡を誠は心底げんなりした様子で見る。
「…お前ホント」
「あれ、ロボットがいる!!!」
「は?ロボ___おおおおおおすげぇ!あれ熱血ファイトマンの立体フィギュアじゃねぇか!!!」
紡が指さした先に目を向ける。M地区の広場の中央。そこにはバカでかいロボットが直立していた。
熱血ファイトマン
黒の法被に赤の鉢巻、そして両手には赤のポンポンを付けた巨大な刀を持ったいかついロボットだ。
元は不死者に町を壊された人々を応援したいという気持ちから考案されたキャラクターだが、その見た目が一部の層に受け、絵本やポスターなどが制作されるようになり、更には漫画などといったものを作り始める人々も現れはじめ
それらがマインドコミュニティ*1で流行り正式にアニメ化が行われ、そこから一気に人気キャラクターとなったのだ。
そのロボットを見た誠はキラキラと目を輝かせながらはしゃぎ、だだだっと二人は広場へかけていく。
ロボットの下にはのぼり旗が建てられており【フェス開催中!】と書かれていた。
フェスだからだろう、沢山の熱血ファイトマンの商品が並んでいる。
「そういやどっかの地区で10周年のフェスやるっつってたけどM地区か!でっか!すげぇ写真撮りてぇ!」
「わぁぁぁ!キャラクター饅頭だ!しかもいろんな味ある!おいしそう!!」
「あ、熱血ファイトマンの専用刀売ってんじゃねぇか!」
「うっわなにあれ!お茶漬けシリーズもいっぱいある!へぇぇ!全部おいしそう!」
「……」
子供のようにはしゃぐ二人の後ろには律の姿があり、彼は何処か白けた視線を二人に向けた。
ジトッとした目を向けても二人はきゃいきゃいとはしゃいでいるため気づくことはなく、律は溜息を吐く。
「20分後にここ集合」
それだけいうと律はさっさと立ち去っていく。
そうして誠は目的の写真を撮り一通り楽しんだ後「はっ」とした顔をして我に返る。
(お、俺としたことが普通に楽しんじまった。紡は…)
紡は腕いっぱいに饅頭を抱え込み、早速一つ袋を破いて食べている。
「お前働けよ。俺が言えたことじゃねぇけど」
「んごがががお!」
「だから何言ってるか分かんねぇっつの…じゃ、俺行くから、サボんなよ」
「んごご!」
返事らしき鳴き声を聞き、誠は漸く聞き込みを開始する。
まずはゆっくり歩きながらあちこちを観察する。
(やっぱ時間が時間なだけに全然人いねぇ、そりゃそうだ。この時間は皆寝てるんだから。
店も数店舗しかないし、不死者がいるとは思えない程静かだ)
さて、どうやって情報収集しようかと考える誠
人が全然いないんじゃ情報収集も一苦労だろう。
一回どこかの店に入ってみるか、と考え始めたところでトントンと肩を叩かれる。
「そこのお兄さん!」
同時に声を掛けられ振り返れば、そこには袴をはいた少女が立っていた。
長い黒髪に黒い目をした女は誠を前にしてにこりと微笑んだ。
「見たところ余所から来た人でしょう?ここまでくるのは大変でしょうからねぇ。よければうちで休んでいきませんか?」
そういって指さしたのは和風の菓子を扱う店だ。
このタイミングで話しかけてきたあたり彼女は客引きとして誠に声をかけたのだろう。
本来の誠ならすげなく断るのだが、丁度何処かの店に入って情報を集めようかと考えていた矢先のことだ。丁度いいと誠は頷く。
「ありがとうございます。では遠慮なく」
誠は女の先導のもと店に入ると席に腰を下ろした。声をかけてきた女は嬉しそうな顔でいそいそと近寄ってくる。
「ありがとうございます!何を注文しますか?」
立てられた看板にメニューが乗ってる。
通常の和菓子にしては少々値段が高いのは恐らく観光地となっている地区だから、なのだろう。
「お茶と、それから大福一つで」
「かしこまりました!」
背を向けて奥へ下がる女。客引きのためとはいえよく人にあんなに愛想を振りまくことが出来るものだ。
ニコニコと微笑んで一々客の言動に喜んで、誠が店員側なら絶対につかれるだろうな、と思う。
「おまたせしました」
「どうも」
盆を受け取って代金を払い、茶を飲む。他に客もいないからか女は傍を離れようとしなかった。だが情報を取りたい誠からすればそれは好都合といえる。
「あの、お兄さんはどうしてここに?あ、この地区には熱血ファイトマンのフェスが今やっていますし、それを見に来たんですか?」
そう聞いてくる女
(殲滅隊のジャケットは生地が特殊なだけでただのジャケットにみえる。
中の服は基本自由だし、殲滅隊の存在は知ってても殲滅隊員と関わる人間はそういないからただの一般人だと勘違いしてんのか…。
ま、殲滅隊をよく思わねぇ奴らもいるにはいるし、勘違いさせたままでいいか)
誠は入れたての温かなお茶を啜る。
「…熱血ファイトマンが好きっていうのもあるんですけど。俺、旅が趣味でして」
「旅人さんなんですか!若いのに凄い…!!」
「そうでもないですよ。それで、色んな地区を回ってるんです。少し前にこの地区につきましてね。少し観光していたんです」
「そうなんですか!この時間ですからあまり店は出てないんですけど…でも、いい街でしょう?」
「はい、とても……所で、ついさっき小耳に挟んだんですが、この地区で行方不明者が出たって本当ですか」
聞けば女の表情が僅かに強張ったのがわかる。誠は内心「ビンゴ」と呟く。
女は顔を暗くしながら困ったような表情を浮かべる。
「…そうらしいですね。10分ほど前でしょうか?一部の町の人が騒いでいましたから…皆さん出かけただけだろうってあまり相手にしてはいませんでしたけど」
「もし何か知ってることがあれば教えてくれませんか?ほら、なにせこんな世の中ですから。知らないより知ってる方がいいでしょう?」
首を傾げ、立っている女を見上げる誠。
女はほんの少し顔を赤くすると「で、では私の知ってることを…」と頷くと、そのまま誠の隣に腰を下ろした。
ーーーーーーー
「で、結局大福食っただけで何の収穫も得られなかったと」
「もうマコちゃんサボっちゃ駄目だぞ!」
「サボってはねぇよ!」
「は?」
「……悪い」
あれから20分が経過していた。
誠は広場にて紡達と合流するなり早速とばかりに互いの情報を共有していた。
あのあと大人しく話を聞いていたが、説明が回り諄い上に言い方を変えて何度も同じことを説明してくる。
要するに事前の情報とほぼ変わらなかった。完全な時間の無駄だったわけだ。
そんな誠を揶揄うようにいう紡に言い返したら思わぬ方向から反感を喰らった。
だがそれも仕方がない。何故なら誠の背中には熱血ファイトマンの刀剣が眩いばかりに光り輝いているのだから。
「仕事中」
「つい衝動的に…そこに売ってたし、お前らが来るまでの間我慢できなかったんだよ…!ま、まぁそれは置いておいて!お前等は何か情報取れたのかよ」
「ここは漉し餡より粒餡の方が美味しいよ!」
「んな情報いらねぇよ!」
紡の脳天に熱血ファイトマンの刀剣の切っ先を落とせば、紡は「いたい!」と叫んだ。
だが誠は完全に無視すると熱血ファイトマンをリスペクトした方法で格好よく背中に刀剣を差し戻した。
その様子を律は無表情で見つめていた。心なしか目の温度がいつもより冷たい気もしたが気のせいということにしておこう。
「律は?」
「…俺の方も大した情報は出なかった。ただ今回の行方不明の件は不死者が絡んでるのは間違いないって事はわかった」
「なに?」
「調べてる道中に偶々被害者の親とあった。
他の連中は家出かもしれないから事を荒立てたくないと渋る中
殲滅隊に通報を入れた張本人たちだったらしい。
制服のワッペンを見るなり飛びついてきた。で、話を聞いたところ……見たそうだ」
「見たって」
「攫われるところ」
一時間くらい前のことだ。
自宅にて寝静まっていた彼らはふと、娘の部屋から派手な物音とくぐもった悲鳴が聞こえてきたそうだ。
それを聞き、ただ事ではないと感じた彼らは慌てて見に行ったらしい。
そして見てしまったのだ。窓にいる”何か”を。
カーテンが邪魔で正体こそ見えなかったものの、その何かは娘の腕を掴みあげると、そのまま窓から出ていったようだ。
両親は直ぐに窓の下を覗き込んだものの、そこには最初から誰もいなかったかのように何もなかった。
部屋は2階にあり、鍵がかかっていたはずの窓は力づくで叩き壊された形跡が残っていたそうだ。
「並の人間に出来るか?そんなこと」
「無理だな」
「てことは不死者で確定なんだね」
「ああ」
「成程な。でも東で取れる情報はそれだけだろうな…なら他のエリアにもいくか」
「一番被害の出た北の方なら何かあるかもしれないな」
そうして三人は40分ほど時間をかけて各エリアにて聞き込みを行い。南エリアにあるベンチに座り込んでいた。
「あ”ー、疲れたよぉ」
「町のやつの証言はほぼ全員同じだったな」
「まぁ発生からそこまで時間もたってないもんね…町の人たちが騒いでいるから知ってるって程度で詳しいことは誰も知らないし…」
脚をばたつかせる紡と捜査に行き詰まり溜息を吐く誠の横で、律は一人腕を組んで何かを考えこんでいる。
そんな律の様子に紡は首を傾げる。
「ねぇりっちゃん、さっきから何か考え込んでるみたいだけど…何か分かったの?」
「…」
律は紡の返答に答えることこそなかったが、ポケットから四つ折りにした紙を取り出してみせた。開けばその紙には女の写真が張り付けられている。
「これは……行方不明者捜索のビラ?」
「東の家族が張ってたのと、あと北の方に何枚か貼ってただろ。貰って来た」
そこにあったのは4枚のビラだ。
それぞれ名前と行方不明になっているらしい女の顔写真が張り付けられ、その下にはデカデカとした文字で”探しています”というメッセージと共に、恐らく家族の電話番号らしき数字が掛かれている。
多少違いはあれどどれも似たような内容で、特に変わった点はないように思える至って普通のビラだ。
だが誠は四枚のビラを一つ一つ見回して……そして彼女らの共通点に気が付いた。
「全員黒髪黒目だな」
「うん。年齢層も近そうだし髪も皆長いね」
共通点、それは被害者たちの外見だ。
黒髪というのは決して珍しくない。ただ黒目な人間は少々この時代じゃ珍しい特徴となっているのだ。
更に年齢も見た所似通っているうえ、綺麗で長い黒髪は胸辺りまで伸びている。
「被害者は全員特徴が共通してる。女で、大体20代前半の黒の長髪に黒目」
律がここまでわかっている女たちの共通点を淡々と上げていく。
「…つまり、不死者は狙って襲ってるってこと?」
「そういうことだ」
紡の疑問に頷く律。誠は酷く嫌な予感がした。
「おい、普通の不死者に”狙って襲う”なんて器用なことする頭、俺にはあるように思えねぇんだが」
「奇遇だな。俺もだ」
その言葉に、誠は冷や汗を流しながらも「やはり」と思う。
そう、今回の不死者は
「夜縁」
誠と律の声が重なった。
二人の言葉を聞いて、紡だけが「え、夜縁!?」と驚きの声を上げ、慌てだす。
「た、大変だよ!直ぐに本部に連絡して応援を呼ばなきゃ!」
「分かってる。俺達はココで待機だ。夜縁は俺達だけじゃ相手に出来ない。
前回の足止めも結局無駄に終わった。今回はここで大人しくしてるのが吉だ」
「ああ、今回は前回みたく大規模な被害は出てない。
そもそも黒髪のやつは結構いるが、髪長い奴も、黒目のやつは早々居ねぇんだ。大人しくして……」
そこで誠の言葉が途切れる。脳裏にあの声と顔が過る。
___そこのお兄さん!
そういえばあの店員……長い黒髪の女だった。そしてその目は確か…黒だった気がする。
そこで誠は勢いよく立ち上がる。突然立ち上がった誠に律と紡は彼の方を見上げる。
紡はきょとんとしているが優秀な脳みそを持っている律は誠の次の行動が想像でき、無表情ながら何処か険しい顔をする。
「お前…まさか」
「黒髪に黒目のやつ、俺見た。ソイツが襲われてるかも知れねぇ!」
「え、ちょっ、マコちゃん!!」
それだけ言って誠は飛び出し、東エリアへ急ごうとして
「待て」
突然首根っこを鷲掴まれる。
ぐえっとカエルのような声を出して振り返れば、律が誠の首を掴んで立っていた。
「夜縁が出る前なら戦闘も避けられる!兎に角今は避難させてッ」
「落ち着け」
今度は背中に担いでいた熱血ファイトマン刀の持ち手で誠の脳天を殴打した。
ゴンッというそこそこ痛そうな音が鳴り、誠は呻き声をあげながら頭を押さえ律を睨む。
「ッ!何すんだよ!」
キレる誠。だが律はどこまでも冷静だ。静かな目で誠を見る。
「お前が話を聞かないからだろ。お前一人で行ってどうする。避難と言ってもその途中で夜縁に出くわせば前回の二の前になることくらい想像に難くない」
「なら見捨てんのか!?」
「そうは言って無い。どうせ止めたってお前はいく。
そうなればいざという時の戦力も減り、被害が増える危険がある。それは避けたい。
丁度次の被害になりかねない人間もいる。俺等も行く」
「は……?」
律の口から出てきた言葉に思わず呆気にとられる誠
まさか「自分もついていく」と律が言うとは思っていなかったのだ。
そんな誠の間の抜けた顔に律はもう一度、今度はべしっと音が出る程度に熱血ファイトマン刀を顔面に叩きつけると紡の方を見た。
「東エリア…40分たってる。生存率は低い。覚悟はしとけ。筑波は本部連絡。すぐ支援に避難誘導するよう伝えろ」
テキパキと指示を出す律
その言動が理解できなくて、いや、信じられなくて誠は顔に熱血ファイトマン刀で叩かれ、ほんの少し赤くなった鼻を押さえながらもなお目を見開いて固まる。
そしてそろっと紡に声をかける。
「な、なぁ紡。此奴なんか変なもんでも食ったんじゃねぇの?」
誠はこの気持ちを共有するべく紡に言う。だが紡はニコニコと嬉しそうに笑うだけで何も言わない。
誠は首を掻きながらため息を吐き「遅かったら置いてくからな」といい彼らに背を向け。
「何様だ」
そして思いっきり熱血ファイトマン刀で後頭部をぶん殴られるのだった。
ちょっと日常っぽい回
仕方ないやん!!ふざけれるときにふざけないと!終始シリアスになっちまうんだよ!!!
今回は誠君にもお茶目(?)なシーンがあるってところを見せたかった!
そのために熱血ファイトマン作った。
ちょっと楽しかったです!!!
【世界観メモ12】
マインドコミュニティ
現代で言うところのツ〇ッターの大規模バージョンみたいなもので、通信機器があれば誰でも気軽に使用、他地区の人と関わりあえる。
また、片手に収まる程度の大きさのものなら
マインドコミュニティと連携できる電光シールと呼ばれる商品を購入し張り付け
マインドコミュニティの設定から相手を選択することで物を相手のもとへ転送させることも可能
因みに大きなものの運搬が必要な場合は正式な会社に頼み、最終的に支援の仕事として依頼が割り振られがち。