夜の帷が消えるまで   作:発狂する雑草

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夏休み、毎日が日曜日!と言いたいところなんですけどやること多すぎて(´┐`)ウェェって感じですね☆


第三項

「あ、目が覚めた!?良かったぁ!」

 

充幸は気が付けば支援部隊にあるベッドに寝かされていた。

彼女の視界に真っ先に移りこんできたのは、今回彼女と同じ任務に就いていた紡であった。

あの任務の後、紡は気絶してしまった充幸を本部まで連れて帰ってきたのだ。

彼は涙目になりながら目を覚ました充幸に抱きつくと、しきりに「よかったぁ」と繰り返す。

そんな彼に少し困惑しながら彼女は疑問を口にする。

 

「あの、不死者は」

「バッチリ倒したよぉ!そんなことより痛い所とか無い!?大丈夫なの!?」

「ええ、強いて言えば貴方に抱きつかれて少し痛いです」

「あぇ!?ごめんねっ!!」

 

叫びながら紡はバッと体を離す。

そして「亜怜さん呼んでくる!あと水も持ってくる!」と言うなり、充幸の返答を待つことなく部屋を飛び出していった。

まるで嵐が過ぎ去ったかのような勢いで去っていく紡

落とされる静寂の中、充幸は自身に掛けられていた布団に目を落とした。

 

(騒がしい人…………でも、もしかしてずっとここに居たの?私なんかを心配して?)

 

不自然に凹んだ布団をそっと撫でながら充幸は考える。

考える彼女の顔には困惑と同時に僅かに笑みが浮かんでいる。きっとそれは、本人も気づいてはいないのだろう。

 

「あら、充幸。目を覚ましたのね」

「亜怜さん!」

 

扉が開き、其方に目をやればそこには亜怜が入ってきている所だった。

すぐに充幸は頭を下げる。

 

「すみません。心配をおかけして」

「いいのよ」

 

亜怜は小さく笑みを浮かべたまま充幸の頬に触れる。

 

「うん。顔色もいいわね」

「は、はい…」

「でもそうね。一応大事を取って副隊長の仕事は暫くお休みしましょうか」

「…………え?」

 

亜怜の言葉にキョトンとする充幸

 

「そ、そんな必要ありません!私は大丈夫です!全然平気なので!任務に出れますし!業務もこなせますから!!」

 

必死になって訴える充幸。

その表情は赤みがさした顔から一変して真っ白だ。

しかしそんな彼女を前に目を細め「落ち着いて」と亜怜は優しく宥める。

 

「大丈夫よ。ただ貴方にお手伝いして欲しいことがあってね。それをやって欲しいのよ」

「お手伝い…ですか?」

「ええ、そうよ。貴方にしか出来ない事なの」

「私にしか……」

 

亜怜の言葉に充幸はいつもの落ち着きを取り戻した。

 

「大丈夫かしら?」

「はい……すみません。それで私の仕事とは?」

「もうすぐ新人育成期間があるっていう通達が午前のうちにリングに来ていたんだけど…それは見ているかしら?」

「はい。目は通しています」

「流石ね。貴方が任務に行っている間、メンバーが発表されたの。貴方には参加者への説明。およびサポートをしてほしいの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「新人育成?」

 

充幸は水を持ってきた紡と共に律と誠のいる病室へとやって来ていた。

律の頬にはガーゼ、頭と脇腹には包帯が巻いている。

誠に関してはギプスを肩に嵌めている。

彼はあの後、亜怜により結局療養室へ入れられたのだ。

 

さて、どうして充幸がここに来たのか。理由は簡単

新人育成についての説明をしに来たのだ。

 

「その…新人育成期間ってなにするんですか?」

「そのままですね。その年に入ってきた戦闘部隊隊員から3人

断罪部隊、開発部隊から3人選出し集中的に戦闘訓練を受けてもらいます」

「なんで人数制限があるんですか?全員じゃだめなんですか」

 

誠の質問に彼女は頷く。

 

「訓練に使用できる部屋が狭いんですよね。

更にあまり人数が多いとこちらの手も回りませんし…ということで人数制限が設けられています。

断罪や開発の人数次第では枠が増えることもありますが…基本的戦闘から3人、となっていますね」

「最後の質問」

 

律が手を挙げる。

 

「何でしょうか」

「なんで俺達が選ばれたんですか」

「いくつか選考基準はありますが……1番わかりやすいのは功績ですかね。

基本的に後期の隊員は不利になりやすいですが…貴方方は夜縁を葬っている。

それは大変輝かしい功績です。ですので貴方方が選ばれた………ということだと思います」

「思うって……」

「選手の選抜は各隊の隊長たちが話し合って決めますから、その意図は私にはわからないのです。しかし客観的に見て、そういう意図かと」

「成程」

 

納得する彼等。充幸は続ける。

 

「育成は本日から一月半実施予定です。

任務は時折入りますが、基本はここで訓練に励んでもらうことになります」

「訓練……」

「最初の半月は個人での訓練。そして最後の一ヶ月は他部隊との合同訓練となります。

この先、他部隊とも協力戦闘を行う機会が増えることを想定してのことです。

とはいえ、貴方方二人はその傷では任務どころか個人練習すら難しそうなので、今はリハビリに励んでください」

「僕は?」

「筑波くんは個人練習に励んでください。

あと任務に関しては…すみません。私は暫く同行できそうにないので他の支援隊員が付き添うこととなります。

それとこの練習期間、私は貴方方のサポートをするように言われていますので何かあればココに連絡をください」

 

充幸は自身のリングと誠達のリングを触れさせる。ピコンっとリングから通知音が響く。

 

「リング同士の連絡先の交換はこうやってやります」

 

誠達のリングに充幸の連絡先が入ったのがわかる。

それを充幸自身も確認してから頭を下げる。

 

「では、私達はもう行きます。お大事に」

「じゃーねマコちゃんりっちゃん!」

 

充幸と紡は病室を出て行く。静かになった部屋で誠と律は再びベッドに寝転がると天井を眺める。

 

「1月半の集中育成…か」

 

誠がぼやく。

 

「おい」

 

そこで律が声をかけてくる。

 

(…此奴から話しかけてくるとか珍しいな)

 

誠は目だけを律に向ける。

 

「どうした?」

「お前、自分なんかが選抜されて良かったのか…とか思ってるか?」

「…いきなりなんだよ」

「他意はない。お前は面倒な性格をしてる。

事実今回、夜縁を討伐したっていうのに、ずっと納得いってなさそうな顔してる。功績の話をされた時もだ」

 

言われて誠は顔を歪める。

 

「……確かにな。俺は功績に関しては納得してない部分はある。

でも、だからって辞退する気はない。

隊長が俺等を選んだんだ。それは隊長が俺等なら育成する価値があるって思ってくれたから選抜してくれたってことだろ。俺はその期待に応えたい」

「隊長の為か?」

「は」

 

 

____他人を理由に

 

 

律の言葉と、あの日善に言われた言葉が重なったような気がして、誠は歯を嚙み締めて首を横に振る。

 

「違う……俺は、俺は…強くなりたい。

不死者を殺したいから、其の為には力がいる。

この期間を使えば、強くなる秘訣が分かるかもしれない。

折角手に入ったチャンスだ。溝に捨てる気はねぇよ」

 

其れだけいうと誠は布団の中に潜り込む。

律は暫くもっこりと膨れ上がった掛布団を見つめ、やがて肺に溜まった息を吐き出した。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

『ここには訓練グッズが揃ってますので、ここで好きなだけ個人練習に励んでください』

 

「って言われたし、早速がんばるぞー!」

 

充幸と分かれて数分。紡は現在一人であった。

もう任務も無いので、ここで個人練習に勤しむことしか術はないわけなのだが

 

「あ、あれ……」

 

まずサンドバッグを思いっきり殴ってみた。瞬間紡の力でサンドバッグが吹き飛んだ。

サンドバックにくっついていた金具は見事に大破、壁に激突したサンドバックは何がどうなったのか、布が弾け、中身の布たちが露出した。

 

「えいっ……あ」

 

ダンベルやプッシュアップバーを握る。だが握力により一瞬で破損。握った金属が拉げ、錘が地面に落っこちた。

 

「……」

 

トレーニングチューブは少し引っ張っただけで紐が引きちぎれてばらばらになり地面に散らばった。

残ったのは紡が持っていた部分のみだ。それを無言で見つめる紡

 

「脆いよぉぉ」

 

ぺたんっと床に座り込んだ紡はべしべしと思わず床を叩く。たったそれだけで地面に凹みが生じる。

 

「何やってるんですか」

 

そこへ充幸がやって来る。

 

「あ、充幸さぁん!」

「凄いですねコレ……全部あなたが一人で?」

「うぅ、僕生まれつき人より力が強くて……」

「知ってますよ。筋肉が常人より数倍多いんですよね?書類で見ましたから」

 

言いながら充幸はトレーを紡に差し出す。トレーに乗っていたのは少し崩れたおにぎりとお茶

 

「おにぎり!!!」

「直ぐにお腹がすく、と聞いていたので一応持ってきました。

ただ食堂は今閉まってる状態で……私が代わりに作ったのですが、料理を作ることが殆どなくて、美味しくなかったら近くのお店で」

 

充幸がいうのを無視して紡はさっとおにぎりを掴むと口の中へ含む。

塩が多いのだろう。時折じゃりじゃりという音が鳴る。だが紡は満面の笑みでおにぎりを頬張っていく。

ボロボロと形を保てず崩壊するおにぎり。それを器用に零さないように食べきった紡は「ごちそうさまでした!」と言ってお茶を飲み干す。

 

「すごくおいしかった!ありがとう充幸さん!!僕元気出たよ!です!!」

 

グッと握り拳を作っていう紡。充幸は少し照れたように視線を逸らすと「それなら、よかったです」と呟く。

 

「でさ、充幸さん!僕これから如何すればいいのかな…何やっても全部壊れちゃって…」

「不死者を狩る組織としては心強くはありますけどね」

 

充幸は壊れたグッズを拾いあげていう。

 

「仕方ありません。あまり気乗りはしませんが、チームメイトの二人が回復するまでの間、私が一対一で相手します」

「え、いいの?」

「まぁ、貴方に比べれば弱いかもしれませんが…私だって何年も不死者狩りをしています。今回の任務での汚名は返上して見せましょう」

 

思わぬ提案をしてくる充幸に紡はキラキラとした目を向けて大きく頷く。

 

「うん!お願いします!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ」

「だ、大丈夫?」

「大丈夫…です」

 

あれから数十分

クタクタになった充幸と比較的ピンピンとしている紡がトレーニングルームから出てくる。

彼等は宣言通り一対一の勝負を10本先取のルールで行ったわけなのだが、結果はデジタル表に表示されている通り3対7で充幸の敗北により試合は幕を閉じた。

 

「っ、まだ入隊僅かの新人に真っ向勝負で負けるなんて……!!」

 

床に両手をつきながら落ち込む充幸。その頬に冷たい物が触れてビクリと肩が跳ねる。

顔を上げれば自動販売機でジュースを買って来たらしい紡が立っていた。

 

「はい、これ買って来た!です!林檎飲めますか!」

「飲めます……ありがとうございます」

 

言って充幸が受け取れば、紡はオレンジジュースを両手でしっかり持って彼女の隣に腰を下ろす。

 

「すみません。私の力不足です……こんなのじゃ訓練にならないですよね」

「…」

「私がもっと強ければ、お役に立つ事が出来たのに…不甲斐無いです」

「うーん、強いとか弱いとかはよく分からないけど、充幸さんは役に立ってない事も、不甲斐無いこともないよ?」

「……お世辞でも、そういってくれると嬉しいです」

「お世辞とかじゃないよ!」

 

紡がジュースを飲みながらそういう。

 

「充幸さんが僕に協力しようって思ってくれただけで僕は嬉しいし、任務でも充幸さんがいなかったら勝てなかった。それに今の訓練も三回負けちゃったし。

あれ結構悔しかったから!もしよかったらこれからも僕の訓練に付き合ってよ!」

「…私なんかでいいんですか?」

「充幸さんがいいの!!」

「!」

 

真っすぐな紡の言葉に充幸は暫し目を見張り。数秒固まった後にそっぽを向く。

 

「そうですか…まぁ私は貴方達のサポートを任されているので、そう言われてしまえばやる他ないですね」

「やった!!」

 

充幸の返答に心底嬉しそうに喜ぶ紡。そんな彼を見て充幸は眩しそうに目を細めるのだった。

 




次回新キャラ大登場、ワッショイヽ (´∀`)メ (´∀`)メ (´∀`)ノワッショイ
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