夜の帷が消えるまで   作:発狂する雑草

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新キャラいっぱいだい☆


第二節 第一項

「P地区………いやぁ、中々に辺鄙な村のようですね」

「ウン。集落って感じ」

 

P地区に足を踏み入れた二人の青年が辺りを見回しながらそういう。

片方は灰色のふわふわとした髪に軍服の帽子を被った青年。目の色も灰色で、丸くて大きな眼鏡をかけている。

彼の手にはゲーム機が持たれている。

もう一人はにっこり顔の書かれた雑面。フードのついた上着に、赤マフラーと顔周りが一切見えない青年だ。

二人は不死者殲滅隊の隊員であり、今日はこの村にやって来ていた。

 

「蓮。こんなとこに不死者なんてホントにいると思います?」

「さぁ?でも(さく)。不死者は何処に隠れてるか分からないから油断しちゃダメだヨ」

「わかってますよ」

 

そうして二人は歩き出す。小さな木造の家が間隔を開けて立ち並び、辺りには緑で溢れている。

明かりは街頭ではなくランプが木に吊り下げられて並んでいるだけで、薄暗く感じてしまう。

見渡す限り、車も走っておらず、駅等の建物も見受けられない。

その代わりにそこかしこに古い井戸が設置されている。

 

「不気味ですね」

「あんマり人がいなイのも原因かも知れないネ」

「まぁ今回は休暇も込みですし、のんびり聞き込みでもしつつ宿でも探すとしますか」

 

誰もいないかのようにシンと静まり返った町。時刻は午後11時で寝ている住民も多いのかもしれない。

静かで暗い坂道を、並んで歩く。遠目で見た建物はどれもこれも古く、不死者が到来したら一瞬で吹き飛んでいきそうだ。空を見上げれば、村全体が暗いからなのか星が一層輝いて見える。自然か多いからか、心なしか空気もおいしいような気がした。

そんな見渡しのいい街にて、一人の男が目に付いた。二人は直ぐに声を掛ける。

 

「あの。少しいいですか?」

 

朔が声を掛ければ男は此方を振り返った。どうやら水を汲んでいたようだ。

水道の通っている近年には珍しく、水の入ったバケツを抱えた男性はこちらを見ると驚いたような表情を浮かべた。

 

「おや、見ない顔ですね。観光客の方ですか?」

 

聞かれて彼らは頷く。

 

「ええ。実は泊まるトコを探していまして。しりません?」

「こりゃ珍しいこともあるもんだ。ああ、でもこの地区はどこも宿が無くてね。俺の家に来ませんか?野宿はおつらいでしょう」

「それは助かりますけど…迷惑では?」

「はは、なに困ったときは助け合うに限る。遠慮しなくていいですよ」

「アリガトウ……ございマス」

 

蓮が頭を下げると男は「頭なんてさげないでください」と言うと彼は素直に頭を上げた。

そうして男が家に向かって歩き出す。

 

「水、重そうですね。持ちましょうか」

「いえいえ。もう慣れてますから大丈夫ですよ。お気遣いありがとうございます」

 

そんな話をしている間に、彼らは宿となる男の家に辿り着いた。

先に中に入った男に続き二人も家の中に入れば、そこには二人の子供がいた。

 

「おとうちゃん!おかえり!」

「おかぇりぃ!」

 

まだ幼そうな子供が出迎えるために走ってやって来る。父らしい男はバケツを床に置き、二人を抱え上げると「ただいま」といって笑う。そんな彼に釣られるように子供たちもキャッキャと笑う。

そんな彼らを微笑ましそうに見る朔と蓮。彼らの視線に気づいたのだろう。男は苦笑いして彼らを見る。

 

「おっと失礼。お客さんの前で恥ずかしい」

「いえいえ、可愛いお子さんですね。いくつなんです?」

「こっちの子は今年で10です。この子は7つ」

 

「ほら、あいさつしなさい」と促され子供達は男の腕の中で元気に名前を名乗った。

 

「おれ、めぶき!よろしくお兄ちゃん!」

「ぼくさなえ!よろしくねおにぃちゃん!」

「俺は出雲朔(いずもさく)っていいます。どうぞよろしく」

川上蓮(かわかみれん)デス。よろシくお願いしマす」

 

二人も子供に名乗りを上げる。男はそれを微笑ましそうな顔で見る。

 

「お二人はもうご飯は食べましたか?まだのようでしたら用意しますよ」

「いえいえ、食事は済ませてますので平気です。

ただ、少し布団をかりても?俺は平気ですが、蓮は疲れてるみたいでして」

「おや、それはいけない!芽吹、布団を用意してくれ」

「わかった!」

 

芽吹が男の腕の中から飛び出すと、部屋の中に布団を敷く。

 

「ありがとうございます」

 

朔は感謝を言い蓮を寝かせる。

その間、朔は「何か手伝うことがあれば言ってください。ただで泊まるのも気が引けますんで」という。

 

「いや、でも客人に仕事をさせるわけには」

「あ、じゃぁ兄ちゃん僕たちと遊んでよ!」

「遊ぼうよおにぃちゃん!!」

 

男が渋る中、朔の両腕を子供二人が引っ張った。

 

「そうですね。何か手伝ってくださるのでしたら是非その子等と遊んであげてください」

 

男にも言われ、朔は「わかりました」と快く了承し子供と遊ぶことにするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はは、お疲れ様です」

「子供は体力が凄まじいですねぇ…俺、もうへとへと…」

 

あれから数時間が経過した。

子供と外へ出かけた朔を男が迎え入れる。

暑さから袖をまくっている朔の両腕には二人の子供が疲れたのか眠り込んでいる。

そんな彼らを抱きかかえ、疲れを露わにする朔に男もまた苦笑した。

子供をすでに敷かれている布団に転がした朔

彼に男は水の入ったコップを渡せば彼は「ありがとうございます」というと水を一気に飲み干した。

 

「ん、この水美味しいですね」

「ええ、ウチの地区の名物みたいなものなんですよ。ほらこの町、水道こそないですが代わりに井戸が沢山あったでしょ?この水で作った作物も美味しいので、明日の食事は是非とも楽しみにしていてください」

 

男は続けて「風呂を沸かしましたので入ってきてください」と伝える。

 

「いやぁ、何から何まですみません」

「こちらが好きでやっていますのでお気になさらず」

 

男の返答に「それじゃぁ入ってきます」と一言言って風呂へと向かう朔

すると風呂場の前には起きたらしい蓮が浴場の前に立っていた。

先に風呂を浴びたのだろう。服装は特に変わっていないがその体からは僅かに湯気が上がり、見える髪はしっとりと濡れている。

 

「オカエリ」

「ん、ただいま」

「不死者イタ?」

「探したけど見つからなかったです。そっちは?」

「ナイ」

「あらぁ、まぁ今日はいいんじゃないですか?疲れましたし」

 

入れ替わる様にして朔が風呂に入っていく。

それを見送って蓮は先程寝かされていた部屋に座る。すると男がそろりと部屋に入って来る。

 

「どうですか?ゆっくり休めましたか?」

「おかげ様で、グッスリ寝れマシタ。どうもありがとうゴザイマス」

「それならよかった。ところで貴方方はどれくらい滞在しようと思っているので?」

「本来なら2週間ほど滞在しようと考えてマシタケド、宿が無いようですし、ここで迷惑になるのもあれなので、明日には此処を立とうと思ってマス」

 

蓮が言えば男は「いえいえ、明日と言わず2週間泊って行ってください」と笑う。

 

「ウチは他と比べて少し裕福でしてね。あまり贅沢なもてなしは出来ませんが2週間ほどなら全然平気なのでそうしてください」

「迷惑になリませんカ?」

「迷惑なんてとんでもない!それに、この村には子供がほとんどいなくて……この子達の遊び相手もいないんですよ。だからこの子達の遊び相手になって欲しいという意味でも、是非」

 

男は傍らで眠っている子供たちの頭を撫でながら言う。

男の言葉に蓮は「なら、お言葉に甘えさせてもらいマス」といった。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

コツンコツンと砂利を踏みしめる音が響く。

地面にはゴミ袋がいくつも転がっており、生えた雑草は干上がっている。

辺りに漂う匂いもあまりいい物とは言えず。所々には人の吐瀉物や血なんかもへばりついている。

 

「何度来てもここは醜悪だね。ちょっとは清掃すりゃいいのに」

「こっちは殲滅に力入れてるからね」

「だとしても荒れすぎでしょS地区…病気なりそー」

 

善と日向(ひなた)はとある場所にやって来ていた。

不死者殲滅隊は東と西に二つ基地が存在する。

善達がいる本拠地は西。そして今来ているのは東の組織であった。

何故態々ここに二人がやって来たのかというと、一か月半後に控えている交流会の打ち合わせをするためだった。

西と同じ大きな館。試験会場となっている場所の裏手に回れば、そこには大きな筐体が一つ置かれている。

その中に入り込むなり「にゃぁん」というハコビの鳴き声と同時に一瞬で景色が変わる。

 

「とうちゃーく、お邪魔しまーす」

 

筐体から降りると目の前に聳え立つ大きな建物。不死者殲滅隊東本部だ。

善は一切の躊躇いも無く大きな扉を押し開け中に入る。扉を開け、視界に飛び込んできたのは西拠点と何ら変わらない内装。だが西とは違い壁や床は汚れており、異臭が漂っている。

善は「うげ」と顔を歪める。

 

「善、大丈夫?」

「だいじょばない…早く部屋入ろ。頭痛くなってきた」

 

そうして二人はロビーを通り抜けると左手にある部屋に入る。

部屋には大きめの黒ソファーに黒色の机が置かれている。そしてソファーには二人の男が座っていた。

 

「あ、来た来た。待ってたよ」

 

明るい茶髪をポンパドールにし、明るい笑みを浮かべて此方に手を振ってくる男

 

【科学部隊部隊長 (みささぎ)(たまき)

 

「…………」

 

その傍らには無表情でソファーに座る男。脱力しきっており、まるで糸の切れた人形の様だ。

猫の手形が付いた掛け布団を膝にかけ、首には猫のタトゥーを入れた金と黒のメッシュ、分厚い眼鏡をかけている。

 

【戦闘部隊部隊長 美景(みかげ)(つつむ)

 

彼等の姿を見て、先程までしんどそうな顔をしていた善の表情がコロリとにっこり笑顔に変わった。

 

「あ、生きてたんだね環くん。てっきり死んじゃったかと思ってたよー」

「バッチリ生きてるわ!俺のト報聞いてないっしょ!?」

 

笑顔で不謹慎なことを言う善に環が少し身を乗り出して突っ込む。

それに対して善は「やれやれ」とでも言いたげな顔をすると、ポケットから一本の折れかけの枝を取り出した。

 

「ありゃ残念。折角その辺で見付けた缶拾って来たのにな」

「それ何に使うつもりだったワケ?俺の御供え物?え、そのゴミお供えしようと思ってたん?マジ酷くね?」

「ゴミなんかじゃないよ。ほら見てこの凛々しく曲がった曲線を。きっと沢山の人たちの思いを一心に受け止めて来たのが伺える聖なる枝だよ?」

「おもいはおもいでも”重い”っしょ。

つーか確実に踏みつけられて曲っただけだし。なんなら曲る通り越して割れてるし

人の重みに耐えかねてバッキリいってるから。マジ全然受け止められてねぇから。なに?俺に壊れろってコト??」

「二年ぶりの再会を祝して持ってきたこの貴重な枝をあげるよ。あ、お礼はいいよ。アストのチョコレートとかで」

「もってくるならもうちょっとマシな物にしてくんない!?あと何気にたっかいチョコレート強請ってこないでほしいんですけど!マージ図々しいわ!」

「もー、ごちゃごちゃうるさいなぁ。人からのプレゼントにケチ付けるのは大人としてどうなの」

「明らかにプレゼントじゃないし!マジゴミ押し付けて来てるだけじゃん!?嫌がらせ?」

「うん」

「そこはマジ否定しようよ…」

「環くんは今日も元気ねー」

「……うん、なんかもういいや…」

「あ、堤ちゃんもお久」

 

初っ端からの善の悪ふざけに巻き込まれ、既に疲れた顔をする環を尻目に善は彼らの対面に置かれた黒ソファーに腰を下ろした。

 

「なんだろ。なんかマジ疲れたんだけど……堤くんは兎も角日向(ひなた)くんは止めようよ。君ストッパーでしょ」

「すみません。楽しそうだったので、つい」

「マジ楽しくないんですけどー」

「次からは止めますね。と、お詫びといっては何ですが、これよければ」

 

そういって日向(ひなた)は手にぶら下げていた紙袋を机に置く。

その紙袋に記されたマークを見て目を瞬かせる環

 

「え、これ行列ができてる高級店の焼き菓子っしょ?マジいいの?」

「ぜひ受け取ってください」

「マジ日向(ひなた)くん良い子…」

 

「マジありがとう」といいながら環は袋を受け取った。そんな彼らのやり取りを退屈そうに見ていた善は、ぽいっと床に枝を置いた。

 

「缶おかないでよー、中身残ってたらマジ掃除面倒だから」

「置いてなんかないよ。捨てたんだ」

「悪質!!!」

「はいはい堤ちゃんプレゼントだよー」

「?」

「はいはい堤くんにゴミ押し付けないでねー」

 

拾った缶を善が堤に渡せば、堤が缶に手を伸ばす。

その缶を堤が受け取る前に環が抜き取ると、普通にゴミ箱に放り投げた。

そうして環は溜息を吐き、辺りを見回す。

 

「ところで、楓くんは?遅刻?」

 

環が首を傾げながら聞く。その疑問に答えたのは、同じく善の隣に腰かけた日向(ひなた)であった。

 

「一応声はかけたんですけど……」

 

 

 

 

思い出すのは数時間前のことだった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「楓くーん。いるー?」

 

日向(ひなた)と善の二人は未だ研究に没頭しているらしい楓の元を訪れていた。

研究机には怪しげな薬やら器具やらが転がっており、その近くには積み上げられた肉

それらの一つを指でつまみ、天井の光に翳していた楓は善の声で振り返る。

 

「おや、天満くんと雪村くんじゃないですか」

「うわ、なんか生臭いと思ったら……今なんの研究してるの…?」

 

善が顔を顰め乍ら聞けば楓はなんてことないように「思考生物の生成です」と答える。

 

「思考生物の生成?」

「ええ、一から思考し動く生物を作っています」

「…なに?人造人間でも作るってコト?」

「人造人間は機械人間じゃないですか。

そうではなく、ただの肉塊に思考回路を埋め込みたいんですよ」

「…できないんじゃないですか?普通に考えて」

 

日向(ひなた)が聞けば楓は意味が分からないと言いたげに首を傾げる。

 

「人間は皮を剥がせばただの生肉ですよ?」

「うわ…」

「嫌な言い方~」

「事実でしょう?

ただの肉が思考し喋り動いている。しかも一人一人違う思考を抱えて。

とても不思議です。

人造人間は実際にいますが百パーセント生肉から作られた生物はいない。なぜでしょう?とても気になります」

「…因みに完成したらどうするの?ペットみたいに飼う?」

「殺しますが?」

 

これまた至極当然と言いたげな顔でいう楓

そんな楓に善と日向(ひなた)は何処か呆れた顔をする。

だが楓はその反応を気にした様子はなく「それでどうしてここへ?」と要件を聞き。

善は「打ち合わせやるから来てよ」と本来の目的をいう。

そして楓の返答は…。

 

 

 

 

 

 

 

「”あんな人体に悪そうな場所へ出向くくらいなら、睡眠をとった方がよっぽど有意義”…ってさ」

 

善がへらっと笑いながら言えばピシリと環が固まる。

表情はわかりやすく引き攣っている。固い笑みを浮かべながら彼は口を開く。

 

「……ま、まぁ、そっちの小奇麗なばかりのマジ腑抜け連中に比べればそう評価されても仕方ないっていうかー?」

「まぁ確かにね。なんせウチは人前でヤルだけの勇気もってる奴なんていないし」

 

満面の笑みを張り付けながら善が言えば環の眉が僅かに跳ねる。それを見ながら善は続ける。

 

「いやぁ、さっきちらっと見えちゃったんだよね。この部屋に来る途中の廊下の角でさ。

にしてもよくやるよね。恥ずかしげもなく人の見える場所で盛っちゃって。

さすが献金主義。実力主義(うち)とはわけが違うね。

金にモノいわせるだけあって建物とかは綺麗だけど内事情は汚れまくってるし、物理的にも穢れてる。

無理だわあーいうの。さっすが東。神経も図太ければ肝も据わっててソンケーするー」

「善、揉め事は程々にしないと駄目だよ」

「何言ってるの?褒めてるだけじゃん」

 

クスクスと善は笑う。日向(ひなた)は肩をすくめ、環は「相変わらずマジ辛口うけるー」と苦笑いする。

彼の隣に座っている堤はというと、相変わらず無表情のまま、ぼーっと天井を見ているだけだ。

それまで場を引っ掻き回していた善が「さて」と手を合わせて笑う。

 

「雑談もこの辺にそろそろ会議はじめようか」

「急に仕切るじゃん。善くんのせいでマジ話進まなかったのに」

「え、まだ話足りないって?いいよー、何時間でも話して」

「さっさと始めようか日向(ひなた)くん!」

「ですね」

 

善の言葉を遮って会議を始める環。その意見に日向(ひなた)が賛成したことにより、漸く会議が開始される。

議題は…そう。

 

 

 

「贄の箱庭について」




東の殲滅隊の治安はそれはもう悪い様子。きゃー、こあぁぁい(>_<)

因みに西は開発部隊となっており、東は科学部隊という表記ですが、これは誤字ではなく仕様です。
更に余談ですが殲滅隊には一応軍帽的なものがあります。(あのツバがついてる感じの)
ただ、皆邪魔じゃね?ってことで大半が被ってないです。なので現在被っているのは紫空くんくらいでしょう。
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