夜の帷が消えるまで   作:発狂する雑草

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ちょこっと長めかもねっ( *´艸`)


第三項

蓮と朔が町長、登坂の家へ忍び込んでかれこれ一週間が経過した。

あのあと彼らは何食わぬ顔で芽吹たち沢田一家と生活し、時折情報収集に出掛けたくらいで、コレと言って特別なことは何もしていない。

そして特に何事もなく、水祭りは開催された。

 

「……思ってイた以上に…」

 

人が多い、そんな印象だった。

決して広くはない道を、若い夫婦と思しき人たちや子供連れがぞろぞろと歩いている。

そりゃあ他の町とは比べ物にならないが過疎の町にしてはだいぶ若年層の人たちで賑わっていた。

 

「他エリアの人たちは殆ど関与してないミたいだったノに…祭だから純粋に楽しみに来てるのカナ」

 

町の真ん中。ちょっとした広場のようになっているそこには木で組まれた櫓のようなものがあり。その周りを小さな提灯が囲んでいる。

一見すると、盆踊りの舞台のようにも見える光景だ。

 

「その割には雰囲気が祭りとは思えませんけどね」

「確か二…じゃァやっぱり来てルのは他エリアの一部関与してる人たちカナ」

 

子供は楽しげにしているが大人はそうでもない。

どこか暗い顔、チラホラ楽しそうな表情を受かべている人達もいるが殆どが凡そ祭りに行く人間の顔をしていない。

朔は家の扉からそれを眺め「葬式って感じですね」と何処か馬鹿にするように笑った。

 

「さて、この町の祭りについては知ってるんですけど、一応聞かせてもらいましょうか」

 

朔が笑みを浮かべ外から視線をはずすと前を見た。

正確には前方少し下を、だ。

そこには、全身体を切り裂かれ、地面に寝そべった男の姿があった。

男は脂汗と血液を流して床に伏している。彼は地べたを這いつくばりながらも朔と蓮、両者を睨みあげた。

 

「こんなっ、ことをしてただで済むと思ってるのか!?」

 

今までの優しげな姿が嘘だったかのように男は血相を変えて怒鳴る。だが彼等は一切気にした様子もない。

 

「そレこっちのセリフ」

 

蓮はグリっと男の頭を踏みつける。

男の口から呻き声が漏れた。

 

「この祭りでいなくなった人間の特徴、女か10代の若い男が犠牲になってルんデしょ?

大方、僕達を今年の犠牲者とシて使うつモリで滞在させテタくせに」

「っ、黙れ、この、異常者共が!!!!」

 

男が叫ぶ。辺りに血の匂いが充満する。

それは男の血の匂いだ。否、それだけではない。

蓮と朔の近くには肉塊が二つ転がっている。それは、早苗と芽吹であった。

彼らは床に転がっている。彼らの表情はいつも通り。特に苦痛に歪んでもいない顔が2つ、そこにあった。

蓮は不思議そうに小首をかしげると二人の頭をそっと撫でる。

 

「二人がソウちゃんに会いたいって言ってたカラ、死人に会うなら死なないと、これ常識だヨ。

それに、自分の妻の死体でご飯を食べテタ貴方に言われたくナイ」

 

この男は自分の妻を賜物として差し出し、その際のお金で生活してきたのだ。

それを言えば男はまた取り乱したように「黙れ黙れ!」と騒ぐ。

 

「どうせ祭りの次の賜物はお前等だ!お前等二人は死ぬしかない!」

 

笑う男を二人は見下ろす。

 

「構わナい」

「このエリアの人間は全員処罰されます。全ては”断罪”の名のもとに」

 

朔が手に持ったチェンソーを振りぬいた瞬間、男の首から大量の鮮血が噴き出し顔や室内を真っ赤に染め上げた。

 

「…極力痛みがないように」

 

【断罪部隊部隊員 出雲朔】

 

「大丈夫?朔」

 

【断罪部隊部隊員 川上蓮】

 

「あはは…何回やっても断罪はなれないですね…すみません。行きましょうか」

「ウン。時間ハ大事。サクサクいこウ」

 

二人は祭りの方に歩き出す。家から少し離れた辺りで広場の方かは一人の年若い女がやって来るのが見えた。

彼女もこちらが見えたのだろう。ランプを揺らして紫空たちの方へ駆けてくる。

 

「あら、あなた方が蓮様と朔様ですか?」

 

聞かれ、二人は頷く。すると女はホッと表情を緩ませ、二人を見る。

 

「そうですか、ならよかった。

今夜は水祭り。この街伝統のお祭りなので、どうぞお二人も参加していってください」

 

笑みを浮かべる女性はキョロキョロと辺りを見回す。

 

「ところで沢田さん達を知りませんか?彼等もまだ参加していなくて……。

この祭りはこの街の住人全員参加が義務付けられているものでして

あの方々はいつも手伝いをするため、直ぐに来て下さるんですけど」

 

「可笑しいですね」と頬に手を当てる女性に連は「ああ」と笑う。

 

「彼等ナら殺したのデもう来ないですヨ」

「………ぇ?」

「殺しタから」

 

ふと女は朔の手に血の付いたチェンソーが握られ、その刀身が人工照明の光に反射してきらりと怪しく煌めくのを見た。

瞬間女の顔から血の気が失せ真っ青になり「ひっ」と引き攣った短い悲鳴を上げ、へなへなと地面に尻もちをついた女に蓮は近づいて行き、感情の乗らない声色で語り掛ける。

 

「この村の方、この祭りの最中…不死者に人間を捧げてますよね?」

「っ、知らな、知らないわ!!!」

「本当二?」

「本当よ!!」

「……そう」

 

にっこり、と微笑む。

 

「嘘はいけませんヨ?」

 

すらり、と蓮も武器を取り出す。

取り出した武器は大鎌が握られている。鎌の刃がギラリと不気味に光る。それをみて、女は怯え上がり、短く息を繰り返す。

蓮はそのまま女に近づく。

 

「ねぇオネエサン、本当に知らないノ?」

「……し、知らない」

「……」

「あ゛っ、!?」

 

どすり、と女の首すれすれに刃が突き立てられる。女は爛々と苛烈に光るその瞳から目が離せなくなった。

あと数ミリズレていれば、刃が首を貫いただろう事を理解しているから恐ろしい。

まるで蛇に睨まれた蛙のように女は身体を硬直させた。

 

「噓は駄目ダってバ、今度はグサッと行っちゃうヨ」

「……ひ」

 

蓮の言葉を聞いて女は恐怖で歯をカチカチ鳴らしながら嗚咽を漏らす。

そして、ついに堪えきれなくなったのか涙をボロボロ流しながら泣きじゃくり始めた。

そんな様子の女を見て、蓮はやれやれと言った表情を浮かべると、ゆっくりと刃を引き抜くと女の前にしゃがみこむ。

 

「そんなに泣かないデ、僕が悪いことをしているみたいジャないですカ」

「あ"ああああ!!!!!」

 

女は後ろに隠していた包丁で、蓮の首元に向かって薙いだ。

蓮はまるで予想でもしていたかのようにその手を掴むと後ろの木に手首ごと押し付けると、鎌を掴んでいた手で女の顎を掴み、顔を近づける。

 

「何をヤっても無駄デす」

「いやぁ!!!いやぁぁ!!!!」

 

蓮から逃れようと必死に藻掻く女

だが蓮の腕はピクリとも動かない。

その時奥の方から「まだか!」という男の声が響く。そのあと、何人かの足音。

少し遠くの闇がぼんやりと明るくなっているのがうっすら見える。

それを見た女は「ここです!助けて!!!」と叫んだ。

 

「あまりこういうことはしたくないんですけど…仕方ないですね。あっちは俺が担当します」

 

そう言って朔は村人の声の方へ走る。静かになった森の中、蓮は女に目を戻す。

 

「さて、そろそろ教えてもらわないと困るんデスケド」

 

丁寧に言う蓮の言葉には何処か言いようのない圧が掛かっている。しかし女は顔を固くさせるだけで、口を開かない。

 

「この街の祭り、不死者と手を組んでいることは既にわかっていマス。

ただ何処に不死者がイるのか、それだけがわからナイ。どうか教えテくダさイ」

「……」

「どうしても言えなイんデすか…なら」

 

蓮は彼女の拘束を解く。代わりに女の肩に足を掛けるとそのまま逃げられないように力を加えて押さえつけ、首スレスレに鎌を刺した。

「ひっ」と女の口から悲鳴が漏れる。

 

「話すナら貴方は生かシてあげます。

話さないなら…分かりますね?」 

「!」

「5秒以内に応えてクださイ。5,4」

「あ、う…」

「3,2」

「わ、たしは」

「1」

 

そうして鎌を振り上げ

 

「言う!いうから!!!!」

 

女が悲鳴交じりに叫べば刃は女の首の薄皮一枚を破いた所で止まる。

つーっと首から血が流れ出すが蓮は鎌を下ろすと「たすカりまス」と優しい声色でいう。

その声に女は体を震わせ、俯くとまるで懺悔するかのようにボソボソと話し出す。

 

「主様は…広場の大きな井戸に住んでます」

「井戸?」

「……街で出た死体を基本的に…投げ込みます。

後は、半年に一度祭りで生贄を三人捧げるんです」

「その生贄というのは?」

「……稀に来る旅行客の若い人…いない場合は街や、他エリアから…」

「そしテその口止めに金品を渡してイた、と」

「……」

 

女は何も言わない。だた震えて頭を垂れるだけだ。

まるで神に許しを請う信者のように。

蓮は彼女を今度こそ開放する。

 

「ありがとうございました。お陰様で不死者を殺せマス」

「……………お願い、します」

「ん?」

「殺さないで…貴方たちにとって主様はただの化け物だろうけど、私達にとっては神様も同然なの。

この地区は長らく水が出なくて、雨も降らないから作物も取れずにずっと……。

流行り病まで伝染して、でも水も食料も手に入らないし、お金もないからどうすることも出来なくて…。

それを救ってくれたのが主様なんです!!!

人は助けてくれなかったけど…主様は助けてくれた!!!それが…それがたとえ偶々だったとしても…それでも私達にとっては救いなんです!!!

お願いします!殺さないで…!!!!!!」

 

泣き始めた女を蓮は無言で見下ろす。

 

「惨めダ」

 

やがて唯一見える口元を釣り上げて笑った。

 

「大丈夫デス。貴女方の愛した主様にはスグ会エますカラ」

 

 

 

 

 

 

「蓮、おかえり」

 

蓮が女から離れて、朔が消えていった広場へと様子を見に行けばそこには大量の人が転がっていた。

 

「血の匂いシなイね」

「無闇な殺傷は良くないですから」

「ソレもソうか」

 

蓮が言う通りその場に血の匂いはとくにしない。

彼らはどうやら気絶しているだけのようだ。

その他にも子供が数人

うち一人は縄で縛られて倒れている。恐らくこの子供が蓮たちとともに投げ入れられる予定だった生贄、なのだろう。

そんな彼らの傍らで無傷の紫空が立っていた。

 

「ソレより怪我は?」

「ない。情報はどうでした?」

「その奥の井戸に不死者がイルってサ」

「あの女性は?」

「放置シタ。多分逃げないカラ大丈夫」

「そう。なら行きましょ」

 

朔はチェーンソーの刃についた血を払うと、不死者が潜んでいるであろう井戸の元へ行く。

そこにはボロボロで所々欠けた井戸があった。

覗き込めば真っ暗闇で何も見えそうにない。

しかし二人は何の躊躇もなく井戸に飛び込んだ。

二人は落下する最中、獲物を振り上げると地面目掛けて勢いよく振り下ろした。

瞬間、刃に何かの感覚が腕に伝わった。

暗く狭い井戸の中、二人はその場から飛び退けば、闇の奥から水が大量に出てくる。

 

「水の塊ですね」

「…僕らあの水飲んでたノ?」

「早急に駆除して忘れてしまうのが吉とみました」

 

なんて話ながら押し寄せる水の塊を喰らう。

井戸が狭すぎて逃げることが出来ず一度井戸から出る。

普通の人間ならば出ることが出来ない深さでも彼等ならなんてことはない。

 

「あの水攻撃、ちょっと厄介です」

「暗闇で弱点が何処カわかりズらいケド、水の中。大体体の中心にあった」

 

這い上がってくる水

速度こそ無いが着実に彼らを追い詰めんと躙り寄ってくる。

 

「なら、蓮があの鬱陶しい水、どうにかしてください。俺は不死者の核を壊します」

「了解」

 

朔は水の中に再び落ちていく。同時に蓮は鎌を両手で握りなおし、タッと井戸の壁を蹴り外へ飛び出すとそのまま鎌を振り上げた。

そうして鎌を…井戸周辺の地面に思い切り叩きつけた。

バキッと地面にヒビが入る。

だが、まだ足りない。

 

「もう一度」

 

再び、今度は先程より高く飛んだ蓮はもう一度地面に大鎌を叩きつけた。

それにより、ヒビが入っていた地面が割れ、ばしゃっと水が溢れ出してくる。

そして水の中に潜っていた朔の周りから水が抜けていく。

 

(水の溜まる速度が遅かった。ということは無限に水が出せるとしても1秒間で排出できる量は限られている)

 

水が抜け、やがて紫空の肩くらいまで水位が落ちる。

常人ならばそれだけ水が溜まっていればマトモに身動きもできなかっただろう。"常人"ならば。

 

上へと飛んだ朔

そのまま水を踏む。朔の足は水の中に沈むことはなく僅かに凹んだだけだった。

水を足場にし、朔は前方にいる不死者の元へ真っ直ぐに飛ぶ。

宛らロケットを彷彿とさせる動きだった。

そうして、朔の唸りを上げるチェーンソーが不死者の弱点をぶち抜いた。

 

チェーンソーが核と接触した瞬間、水は核を中心に吹き出すように赤黒く染まり一気に透明を飲み込んだ。

当然、核を切った朔もそれに巻き込まれ、全身真っ赤に染まった。

灰色の髪はすっかり赤髪に変わっている。

ブンブンと犬のように頭を振って井戸を出る。

井戸の外には割れた地面から不死者の血が漏れ出したのか所々赤いぬかるみが出来上がり、そこには地面を破壊した張本人である蓮が何処にいたのか町長の登坂や逃がした女を捕まえていた、

だが彼らは蓮に捕まえられていることなど気にもとめず、ただ呆然と井戸の方を見つめていた。

そんな彼らを横目に朔は地面に転がされている子供を掴み肩に担ぐ。

 

「それでは、子供は支援で検査

そっちの二人とここで倒れてる連中は全員尋問に掛け、罪状によっては処罰

他エリアに逃げた方も後で捕まえて関係ありそうな方だけ連行って流れで良いですかね?」

「異議なし」

 

朔の言葉に頷いた蓮は「暴れられたら面倒だから」と呟くと登坂と女を気絶させ、抱きかかえる。

そうして蓮は疲れたように溜息を吐き出した。

 

「早く戻って仕事さっサと終わラせて風呂に入りタい」

「と、その前にあの子供達がそろそろ起きてくることでしょうし迎えに行きましょう」

「ウン…それにしても開発部隊の発明品(おふざけの産物)すごいネ。本物みたいな色と匂いだった」

「ハロウィンの余りですね。開発部隊はそういうものに謎に力入れますから。

それにしても逆ドッキリにアレは些か性格が悪いと思いますよ」

 

そう、早苗も芽生も死んでいない。気を失っていただけだった。

そんな彼らは現在父親の…正真正銘の死体とともにいる。

父親の罪を…この村の人間の行いを知らない小さな少年たちは大事な肉親の死体を…終末へ向かって滅んでいく村を見て何を思うのか

 

「僕等断罪人。罪なき者は裁けない…ソウちゃんにはその内自力で会いに行っテもらわなきゃネ」

 

濁った誰かの絶叫が暗い空に重く響いた。

 

 

 

 

 

・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

とある部屋の中

机が1つ、そこそこ大きい机が1つ。

クッションの置かれたソファが2つ。

壁側にはドレッサーが置かれていて、台の上には黒のポーチやら可愛らしいリボンやら、液体の入った小瓶やらが置かれている。

そのドレッサーの前、そこには一人の少女が座っていた。

 

「んーんんん〜」

 

鼻歌を歌いながらオレンジのリップを口に塗る彼女は鏡を覗き込んでニコっと笑う。

 

「うんっ!今日もバッチリ超可愛い〜!」

 

身だしなみに気をつけているように見えて、思いっきり跳ねている黒髪なぞ無視して彼女はナルシストと捉えられかねないセリフを吐く。

 

彼女が身に纏っている制服は甘く改造されており、フリルにリボンが沢山ついていて、とても制服とは思えないカスタムが施されている。

また頬や腕、足にはボディーステッチが入っている。

服装も相まって人形のようだ……髪さえ整っていればだが。

 

「あ、そーだ!ネイルも塗っちゃお〜」

 

そういってネイルが入っているらしい小瓶を手にすると、それを塗ろうと慎重に爪に筆をおろして…。

 

「ただいま」

「ただいまデス」

 

勢いよく扉が開く。扉を開けて入って来たのは朔と蓮の二人だ。

突然開いた扉の音に驚いた少女は「みゃっ」と少し飛び上がる。その際ネイルが思いっきり爪ごと指をピンクに染めたのは言うまでもない。

 

「あああ!!!塗りすぎたぁっ!もう!いきなり入ってこないでよぉ!!__ってげぇ!きったな!?!

腐臭と血の匂いがすごいんですけどぉ!!

もう二人共部屋でお風呂入ってから来てよぉ!

その状態で叶恋(かこ)ちゃんに近づかないでぇ!!!ていうか臭いぃ!早く出てってぇ!!!!」

 

少女、叶恋は座っていたドレッサーの椅子から降りると鼻をつまんで二人からバッと距離を取る。

彼女の言う通り現在仕事を終えてきた朔と蓮は血まみれ汗塗れで最低な匂いがしている。

鼻をつまみ逃げる彼女を前に帰還した二人は顔を合わせ、次の瞬間ニマァっと笑みを浮かべると手をくにゃくにゃ揺らして叶恋に近寄る。

 

「まぁまぁ叶恋、そんな釣れない事言わないでくださいよー」

「そうそう、仲よくしヨウ?」

「いーやー!!!」

 

威嚇するようにブンブンと赤いリボンを振り回して朔たちをどうにかこうにか追っ払おうとする。

まぁリボンはただの布なので攻撃力はゼロであり、当然そんなものの為に止まってやるほど朔も蓮も優しくなかった。

そのまま血まみれの体で朔と蓮は叶恋をサンドイッチする。

 

「ほんとに無理ぃぃ!!!最低!!!」

 

涙目になりながらベジベジと二人の体を叩き叫ぶ叶恋

彼女の反応が面白かったのか、二人がケラケラと笑い声をあげていると

 

「いや、アンタ等何やってんすか…」

 

入って来たのは断罪部隊副隊長をやっている會であった。

彼は三人に呆れた表情を浮かべる。

 

「會くん助けてよぉ!二人が叶恋ちゃんに意地悪するのぉ!!」

「意地悪何てしてないです。末っ子を可愛がってるだけですよ」

「そうそう」

「…仲いいのはいいっすけど、ここ隊長執務室(共有スペース)なんで、変な匂い撒き散らさないでほしいんスけど。わかったらさっさと風呂に入ってくるっす」

 

二人の首根っこを掴み、執務室の奥にあるシャワースペースへ連れて行くと二人は「はーい」といって大人しく中に入っていく。

 

「うぇぇん!ありがとぉ!會くぅん!」

 

顔を手で隠しながら叶恋は會の元へ行き抱きつこうとする、が…會がツンっと彼女の額を指先で突き留めれば「あう」と鳴き声を漏らして、立ち止まる。

 

「噓泣き入らないっす。てか明日遅れちゃ駄目っすよ」

「んぅ?なんかあったっけぇ?」

 

ケロッとした様子で顔を上げる彼女に會はため息を吐く。

 

「明日が顔合わせの日だって言ったじゃないっすか。新人育成、行く気ないんすか?」

「え?………あああ!そういえばそうだったぁ!!すっかり忘れてたよぉ!!大変!明日付けるリボン選ばなきゃっ!あ、髪の毛は會くんが結んでねぇ!!!

明日!起床時間になったらここ集合だからぁ!」

「は?嫌っすよ。というかそろそろ自分で結べるようになってくれます?」

「括れるけどぉ、ボサボサになっちゃうんだも〜ん。お願い!ねっ?ねっ!」

「………」

 

お願いっと手を合わせる叶恋

會はため息を吐く。

 

「寝坊したら知らないっすよ」

「やった!大好きおかあさん!!」

「誰がお母さんすか?!?!結んでやらねぇっすよ!?」

 

會のツッコミが炸裂する。

だがその頃には既に叶恋は部屋を出ていっていた。

 

「マイペースめ…」

 

ため息を吐く會

だがマイペースなのは何も叶恋だけではない。

 

「あ、會くん、洗髪剤きれタから買ってきテヨ。あとついでにアイスも」

 

シャワースペースの方から蓮の声が聞こえてくる。

ピクッと會の額が引き攣る。

 

「…副隊長をパシリに使うとか良い度胸してるっすね?」

「地位使って脅しテくるとかサイテー。見損なっタ」

「喧しいっすよ!?」

「會くんケチだネ」

「だから喧しいっす!!!」

「お願いママ」

「あ、ジュースも買ってほしいですママ」

「誰がママだ!アンタみたいな厄介児生んだ覚えねぇっす!!朔も悪乗りしないでくれません?!」

「男の体じゃ子供は産めナいんダから当然。そもソも本当にママじゃナイし…過労で可笑しくなっタ……?」

「重症ですかね。休みます?」

「さも俺が可笑しいみたいなこと言ってくるの止めてもらっていいっすか??」

 

そう呟きながら、會は買い物袋を持つ。

悲しいかな、彼はなんだかんだ頼まれ事を引き受けてしまう苦労人体質の人間であった。

彼は、外に出る格好に着替えてから扉を開けると同時に深い溜め息を吐く。

 

「ホント、断罪はキャラ濃い奴しかいねぇっす」

 

こうして苦労人、會の戦いはまだまだ続くのだった。




次回3章終了だぞ!!はっっっやいね!!!!
會くんは苦労人です。

因みに彼の断罪諸君に対する印象は…?

善→人の心がない。クズ
朔→まとも枠。ただめっちゃいじってくる。
蓮→良心的に見えてぶっ飛んでる。紫空とは混ぜるな危険
叶恋→一番無害。マイペースを地で行くやつ

断罪メンバーからの會くんへの印象は…?

朔→お疲れ様です副隊長
蓮→まま…?
叶恋→お母さん2号
善→書類処理機

なんだかんだ仲のいい…?断罪部隊でした〜((´^ω^))
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