夜縁を打ち破った誠たちはその功績により、三年に一度東にある殲滅隊との交流を図る東西交流会への出場を告げられることとなり、各々悩みを抱えながらも交流会に向けての訓練が始まる。
無慈悲な雑草の一言〈内容が平和だから何も言えない!!!(ー_ー)
第一節 第一項
「育成期間開始から半月が経過しました。当初の予定通り合同訓練をして頂きます」
本日はいよいよ合同訓練期間。それにともない参加者の顔合わせが行われる手筈となっているわけで。
戦闘部隊の訓練場には参加するメンバーが集まっている。
そんな彼らの前に立つのは今回のサポートを任されている
彼女は揃ったメンバーを見回し…そして首を傾げた。
「松田さんは?」
今回の参加者は6人なのだが、この場には不参加者の充幸を合わせて6人しかいない。
本来7人必要だというのに一人足りないのだ。
と、そこで扉が勢いよく開かれた。
「わあぁぁ!もう皆揃ってるぅ!!」
部屋に飛び込んできた少女はハーフツインテールにした黒髪を振り乱して慌てたような表情を浮かべていた。
そんな彼女を見て充幸は呆れたような表情を向ける。
「松田さん、遅いですよ」
「ごめんなさいぃ…でもほら、ギリギリ集合時間には間に合いましたしぃ、セーフって事で!」
「五分前行動が当然でしょう。現に皆さん既に集まってます」
「うぅ、はぁい」
充幸に軽く注意され、彼女はしゅんっとした顔をしながらトボトボと参加メンバーの輪の中へと入っていく。
そうして充幸が空気を切り替えるようにパチンっと柏手を打った。
全員の意識がそちらに向く。こほんっと充幸は一つ咳払いをする。
「さて、全員揃いましたし早速自己紹介と行きましょう。
では私から。知ってる方も多いと思いますが支援部隊副隊長の皇充幸です。
皆さんのサポートをさせていただきます。よろしくお願いします」
綺麗なお辞儀をした彼女。しっかり45度まで上体を倒し顔を上げる。
そうして”次は貴方です”と言いたげに紡の方を見た。
見られた紡は充幸の心情を正しく理解したらしく「はい!!」と三角座りのまま右手を勢いよく上げる。
「戦闘部隊の筑波紡だよ!みなさんよろしく!!」
「…戦闘部隊の氷雨誠です。よろしくおねがいします」
「戦闘部隊、
紡が自己紹介したことで、隣に座っていた誠と律も同じように自己紹介をさらっとする。
すんなりと戦闘部隊の三人が自己紹介を終えたタイミングで、律の近くに座っていた少女。後からやってきた彼女が勢いよく立ち上がった。
「叶恋ちゃんは断罪部隊に所属してる
松に田んぼの田に叶う恋って書くよぉ!!将来の夢はかぁっこいい王子様と結婚して幸せになることで~す!よろしくねっ!!!!」
きゃぴっとウィンクを決めて彼女は座る。
テンションの高さと、勢いのある喋り方。そして殺伐とした理由で入って来ることの多い殲滅隊に似つかわしくない動機。それらすべてに圧倒され、どう反応していいのかわからなかった彼らの間に呆然とした空気が流れる。
そんななか、最初に我に返ったらしい充幸は咳ばらいを一つすれば、叶恋の隣に座っていた青年が慌てて立ち上がった。
ぼさついた長い髪を一つにくくり、猫のような一重の瞳をぱちぱちと瞬かせた青年
見えにくいが、どうやら首からネックレスを下げているようで、その先端は服の中に入っているらしい。彼はぎゅっとネックレスを服の上から掴む様に胸元を握って口を開く。
「あっ、自分は開発部隊の
「同じく開発部隊所属、
ペストマスクを嵌め、黒髪をオレンジに斑に染めた目を覆うほどの長い前髪の青年、天緒もまた、護に続いて頭を下げる。
彼で参加メンバーは最後だ。
「以上六名で新人育成に挑んでいただきます。
今日は顔合わせですのでこれより各自自由に交流を行ってください。では」
充幸が話し終わると彼女はさっさと訓練場を出て行ってしまう。
「一先ず近くの人と交流することにしましょうか」
彼女が出ていったことで、どうするのがいいのかわからなくなってしまった彼らに声をかけたのは恐らくメンバー内で最年長と思われる護であった。
彼の言葉により、彼らは二人ずつになって固まる。
「改めてよろしく」
「うんっ、よろしくね!」
天緒と紡。
天緒は無表情で、紡は笑顔で握手を交わした。
「僕近接が得意!」
「…基本は遠距離…かな。でも近接もできなくはない」
「へぇすごい!!!」
「けど最近はあんまり近接戦闘してないから鈍ってるかも」
そういう天緒に紡は「練習付き合うよ!」と笑う。
「ありがとう。助かる」
「開発って普段どんな仕事するの?研究?」
「うん。でも偶に誰かの探しものとかもする」
「捜し物?あ、僕ごはん探しなら負けない自信あるよ!!お肉の匂いとかしたら絶対見つけられるもん!」
「ご飯…もし探すことがあったら呼ぶね」
「うん!!」
「因みに飲み物とかの探索とかもできるの?」
「いける!多分!!」
キラキラと目を輝かせ握りこぶしを作る紡
ご飯や飲み物探しなど絶対にありえない探索物といえる。彼らの会話を誠が聞いていたら全力で突っ込むことだろう。
だが悲しいかな。このペアどちらも馬鹿と天然という最悪の属性相性であった。
永遠とボケを続ける泥沼がそこには展開されているのだった。
「…よろしく」
「よろしくお願いしまぁす!」
一方律と叶恋もまた、話し合っていた。
「夜縁倒したって聞いたよぉ!強いんだねぇ!」
「…別に」
「叶恋ちゃんとあんまり歳変わらないよねぇ?尊敬しちゃう!」
「……」
「あれれ?会話とか苦手なタイプ?」
こてん、と首を傾げる叶恋
だが律は会話する気がないのか別の場所を見つめ、静かに目を瞑る。
急に話さなくなった律に叶恋はきょとんとした顔で首を傾げ、ハテナを飛ばすのだった。
「てことは、護さんって7年前から居るんですか?!え、でもこの育成期間って皆新人だって……」
最後に誠と護
誠は驚いたような顔で護を見れば、護は困ったように頬を掻いた。
「育成期間で抜擢される新人は基本戦闘部隊だけなんです。恐らく死にやすい1年目を集中的にトレーニングして死亡率を下げようという考えではないでしょうか」
「それなら1年全員受けさせたほうがいいんじゃ…」
「上の考えはよくわかりませんが…なんでも抜擢された1年は任務の量が異様に増えるらしいですよ」
「……等価交換ってことか…」
「で、開発は基本戦闘しませんので、新人でなくとも抜擢される事が多いんです。天緒くんも三年目ですしね。
断罪はそもそも人数がいないので志願制らしいです」
「へぇ…てか断罪部隊って人数いないんですね」
「まぁ、不人気ですから。
人を…友人や身内、恋人でも容赦なく殺したり拷問したりする仕事……誰もやりたくないでしょう?」
護の言葉に誠は「それは……まぁ」と曖昧に頷く。
必要な仕事だということは理解している。だが納得はやはり難しい。
全くの知らない他人でも人を拷問し、殺すことに抵抗があるというのに、自分に近しい友人や恋人、家族まで手に掛けなくてはいけない仕事など、考えただけでぞっとしてしまう。
誠の回答から、彼の考えていることが理解できたのだろう。
護は「考えただけでぞっとしますよね」と苦笑いする。
「元々断罪は開発部隊の仕事だったんですけど、今の断罪部隊の隊長が”楽しそう”っていう理由で断罪部隊を新しく立ち上げたので
ウチの組織じゃ数年前に二つに分断したんですよ。
だから断罪と開発は一括りにされることが多いですね」
「な、なるほど」
誠は少し顔を顰める。
(断罪の隊長ってアイツだよな。アイツ拷問趣味なのかよ……)
断罪部隊で体調をしている
「まぁそういう訳で、知恵の部分じゃ多少の協力は出来ると思いますよ。
ただ自分、戦闘は全然できないし、どんくさいから期待はしないでくださいね」
自信がなさそうに笑う護に誠は思わず苦笑いする。
「でもまぁ、協力戦闘といっても状況によりけりなので…護さんはなんの武器を使うんですか?」
「自分は基本ボウガンですね」
「ボウガン?弓じゃなくて?」
「自分、腕の筋力が全くなくて…弓を引く力がないんですよね。
ボウガンなら矢をセットしてボタン押すだけで矢を自動で引いてくれる仕様になってるので」
「なら銃でもいいんじゃ…射程長いですし、リロードも早いじゃないですか」
「振動が…」
「…あぁ」
銃はぱっと見簡単に扱えそうで、その実振動が強い。
一切鍛えていない人間が撃った場合、一発撃っただけで肩が外れた。なんて事例が出てくるくらいには。
「だから筋力を必要としないボウガンを使うようにしてるんです」
「成程。なら護さんは基本隠密ですか?」
「まぁそうですね。サポートを主にしてますので、協力戦闘のさいは好きに動いてもらっていいですよ」
場所も状況も内容も、殆ど分かっていない現状で作戦を立てろ、という方が難しい。
運とタラレバを想定し、あとは土壇場の対応力で切り抜けるしかないのだ。
「あ、ねぇマコちゃんたち!今から”戦場摸倣室”で模擬戦するんだけど。どうせならチーム形式でやらない?」
一応話し合いも一段落ついたところで、同じく話を終えたらしい紡が誠と護を誘った。
誘われた二人は顔を合わせる。
「いきます?」
「丁度いい機会ですし、やっておきましょうか」
「そうと決まれば…おーい、律と…叶恋…だっけ?お前等も行くぞ!」
誠が少し離れた場所に座る叶恋と律に声をかける。
「あ、うん!勅使河原くんはぁどーするー?」
「……」
叶恋は誠の言葉に弾かれるように返事を返すと、傍で黙り込んでいる律に声をかける。
だが律は返事をしない、なんなら叶恋の方を見ることもない。
「む、むしぃ…?」
声をかけた叶恋。だが反応しない律
無視されているという事実にショックを受けた叶恋は律を誘うことを諦め、のそのそと立ち上がって誠たちのもとへ行く。
「ど、どうしよぉ。叶恋ちゃん早速嫌われちゃったのかなぁ?」
「アイツは大抵誰にでもああだから気にしなくていいぞ」
誠が落ち込む叶恋にいうと叶恋は「そうなんだぁ、ならいいけどぉ」と安堵しながらもやはり気になるのかチラチラと律の方を見た。
律は未だに一人ポツンと座っているだけだ。
そうして誠たちは訓練場に隣接した戦場模倣室に移動するのだった。
第4章突入でございます。
ここまで更新できた事実に雑草は驚いております。
まぁでもあれですね。これも予約投稿さまのおかげですかねぇ
予約投稿機能が無かったらホント、どれだけハーメルン頻繁に使用するとしてもここまで更新できないだろうなぁ、はははっ(*´▽`*)