夜の帷が消えるまで   作:発狂する雑草

33 / 112
区切りが難しくて最近、もう区切んなくてよくね?って思い始めている雑草です。うぇい
みなさん夏休みは満喫しておりますでしょうかね。
雑草の夏休みはすでに終わりましたよ。はははっ
また楽しくも辛い日々の始まりですねぇ
あ”ー、夏休み、もう一か月伸びねぇかなぁぁ(^v^)


第二項

「さて、と、じゃぁ早速やるか」

 

模擬試合をするため、戦場模倣室へとやってきた誠たち。

軽く準備体操をしながら誠が言えば全員が頷く。

 

「チーム分けだが、さっきのペアでいいんだよな?あ、でもそうなると叶恋が一人か」

「あ、叶恋ちゃんは全然いいよぉ!寧ろ一人の方が気が楽っていうかぁ」

 

誠の言葉に叶恋が首を横に振っていう。

他ならぬ本人が「いい」というので、叶恋は一人チームとなった。

ペア決めは終わった。次は

 

「ルールどうする?」

「あ?普通に戦闘でいいじゃねぇか」

「まぁそれでもいいんだけど、怪我しかねないし」

「小さな怪我なら問題ないですが、うっかり大けがを負わせた場合、新人育成期間だというのに練習できなくなります」

「大問題」

 

肝心のルールが決まらない。

何かとタフな誠や紡なら兎も角他三人は別にそういうわけではない。

相手に大けがを負わせてしまった場合、練習が滞ってしまう。

細心の注意を払ってやる、というのもありにはありだが、その場合は別の方へ意識が向いてしまい、どの道練習にならないだろう。

 

「それならば、こういうルールはどうでしょう」

「あ、ミユちゃん!」

 

ふと声がして、そちらに目を向ければ補給用のボトルやタオルを大量に入れた籠を抱えて、充幸が戦場摸倣室へ入って来たところだった。

 

「なんかあんのか?」

「これです」

 

充幸は籠を床に置くと中から空気の抜けた風船を取り出した。

 

「殲滅隊はあくまで不死者を狩る組織

不死者の目に見立ててターゲットとなるものを相手から奪ったり壊したりするんです。

腕に風船の紐を括りつけ、風船を割ったら負け、というルールでやっていたそうです」

 

同じく籠から空気入れを取り出し、シュコシュコと風船に空気を入れていく充幸

そして膨らんだ風船を投げ渡す。

 

「おもしれぇ、それで行こうぜ」

「うん賛成!」

「自分もいいですよ」

「同じく」

「わかったぁ」

 

全員が膨らんだ風船を紐で腕に縛りつける。

 

「じゃぁ次、場所はどこにします?」

「場所?」

「森でお願いします」

「分かりました」

 

首を傾げた誠の代わりに葵が答えれば充幸は頷いてカチカチと部屋についたグリッチを捻る。

瞬間、部屋に森が発生する。誠は驚きながら木に触れた。

さっきまで何もなかったはずの場所に現れた木は、しっかりと物体としての感触が存在した。

 

「すげぇ、これ仮想空間か?」

「そういえば氷雨くんは実際に戦場摸倣室の仕掛けを利用したのは初めてでしたね。

この部屋は色んな環境を限りなく模倣した仮想空間を展開できる部屋となっています。

オブジェクトの追加や天候なんかも好きに弄れますが、それは後ほどご自分で色々試してください。

あ、あと、部屋の広さ自体は変わっていませんので、壁に衝突しないようにだけお気を付けください」

「分かった!あとミユちゃん審判お願いね!」

「わかりました」

 

充幸に審判を任せ、彼らはそれぞれバラけてオブジェクト等に身を潜めた。

全員の動きが完全に止まったのを確認して、充幸は咳ばらいを一つする。

 

「それでは、模擬試合を行います。

ルールは簡単です。皆さんが体に付けた風船、それが貴方方の命となっています。

試合時間は10分。敵チームの風船を一つ破壊するごとにそのチームに1ポイント入ります。

また、試合終了後に風船を保持している方がチームにいる場合は、生存点が加算されます。

それでは全チーム準備は良いですね?それでは…………開始!」

 

充幸の試合開始の声と同時に、出てきたのは叶恋であった。

通常、こういう試合では一人チームで分が悪い彼女は隠密するべきなのに、開始早々姿を現した叶恋に木の木陰から見ていた誠は不審気に彼女を見る。

 

「何考えてんだ?普通は状況見る為に隠密するのが定石じゃねぇのかよ」

 

そんな誠の疑問に答えたのは、誠より離れた場所で隠密していた護であった。

 

〈いや、彼女は一人チーム。隠密する相手を見つけるにも情報戦できついですし、隠密を続けていても得られるポイントは一点だけ。

理想は乱闘に紛れて落とすことですが…乱戦がいつ起きるのか

そもそも乱戦が起きず、自分の知らないところで戦闘が起こり、終わってしまうくらいなら、自分を囮にして点を取った方がいい…という判断でしょうね。

もっとも射撃される可能性は高くなってしまいますが…〉

 

機械を通して護が解説をしてくれる。

その解説を聞き、誠は叶恋を見る。

 

「全くの考えなしってわけじゃないのか…でも、あれにノコノコ出てくるバカなんて」

「てぇぇい!!」

「いたわ」

 

飛び出していったのは紡であった。

紡は素早く木製のツヴァイハンダーを取り出すと振り上げる。

それを叶恋は咄嗟に後ろに下がって回避する。それにより紡の武器は地面にめり込み、罅が僅かに入る。

勿論ツヴァイハンダーも少し欠けた。

それをみて叶恋は驚いたように目を丸くする。

 

「わぁ、すっごい力だねぇ……筑波くんだっけぇ?歳幾つ?」

「僕?僕はねぇ、15歳だよ!」

「一個上なんだねぇ!仲よくしよぉ!!」

 

彼女が取り出したのは、木製のモーニングスターだった。

モーニングスターの持つ部位には刃のような形の木がついており、近距離接戦にも向いているような形態になっていた。

鉄球を勢いよく振れば紡が飛びのく。そのままガラ空きになった叶恋の懐に飛び込み右斜めから振り下ろされたツヴァイハンダー。

だがそれを叶恋は体を左へと寄せつつ右足を引くことで回避した。

その際、体の遠心力を利用した蹴りを放つ。だが、それは紡のツヴァイハンダーで受け止めていた。

 

しかし、彼女の狙いはここだ。

 

叶恋は下に下ろしたモーニングスターの掴み部分を素早く突き出す。

すると紡の肩に浮遊する風船目掛けて持ち手の鋭利な部分が伸びる。

それに気づいた紡は慌てて後ろに下がる。だが風船が後ろに下がることはなかった。

紡が慌てて後ろに下がったことで風が発生。本来守るべき風船が、あろうことか紡の前に出てしまったのだ。

それにより、叶恋の武器は的確に紡の風船に向かって進み。

 

「あ」

 

ピュンと風を切る音が響く。

その音が響いた瞬間割れる風船……その的は紡の風船であった。

割れた瞬間紡と叶恋は固まる。

だがすぐに叶恋だけその場から飛びのく。

見れば地面にはゴムが石礫に付けられた弓矢が二本落ちていた。

一本は紡の風船の残骸の近くに。もう一本は先程叶恋がいた場所に転がっている。

 

「あの距離から、すげぇ……」

 

その弓矢は間違いなく護のボウガンから放たれたものだった。

誠は思わず感嘆の声を漏らす。

 

〈狡い手ではありますけど、許してくださいね〉

 

その間に護は場所を把握されないように直ぐに走り出す、が

 

〈あっ〉

 

リングの向こうから護の声が響く。

 

「え、ちょっ護さん?」

「…………すみません。やられました」

「えっ」

 

護の首根っこを掴んで立ち、風船を踏みつけて割ったのは天緒だった。

彼は茂みに潜んで場所替えを行うため走っていた護に奇襲をかけたのだ。

 

〈仇は取った。あとは松田さんと、誠くん……〉

 

そんな声が通信機の向こうから聞こえ、誠は天緒に護がやられたことを悟る。

 

(俺はこのまま隠密してもいいが……)

 

思案する中、突然視界の端に写り込んだモーニングスター

 

「うお!?」

 

慌てて身を引けばそこにはいつの間に来たのか、音もなく接近してきた叶恋の姿があった。

誠がいた木に足を掛けながら、彼女はモーニングスターを構えて誠を見る。

 

「もぉ!獲物の横取り何て酷いよぉ!叶恋ちゃん怒っちゃったからねぇ!!」

「俺じゃねぇよ」

「連帯責任!同罪だもん!」

 

飛んでくる球を誠は刀で受け流した。そうして体術と共に合わせて飛んでくる攻撃を誠は凌ぎ続ける。

防戦一択。誠は少しずつ後退しながら叶恋の攻撃に反撃することなく受け続ける。

 

そしてその時はきた。

 

カンッという疳高い音と共に、叶恋のモーニングスターを誠の刀が噛んだ。

がっちりと捉えたまま誠は叶恋のモーニングスターを抑え、彼女の風船目掛けて蹴りを放つ。このルールは相手を倒すことが目的じゃない、的を壊せば勝ちなのだ。

 

「器用なことをするねぇ!」

 

だがしかし、叶恋は蹴りを放たれる前に回避行動をとっていた。

自身の足で紐を踏みつけることで風船を下げ、逃がしつつ後ろに飛んで距離を取る。

誠の蹴りは見事に宙を切る。思わず誠は舌を打った。

 

(読まれてた。此奴馬鹿っぽいくせに強ぇ……いや紡追い詰める時の動きみてたから弱くはないとは思ってたが)

 

こうなれば、と誠は自身の風船を掴むと背中部分に片腕で隠し、そのまま切りかかる。

 

「え、それずるくなぁい!?」

 

叫ぶ叶恋。だがずらしてはいけないなんて言うルールもない。

しかしそのまま攻撃を仕掛けても勝てる見込みがない。

 

(断罪は拷問と処刑だけじゃない。対人戦もやるに決まってる。

ならあっちの方が対人戦に長けてんのは当然か)

 

更に言うと現在誠は片腕で行っている。ただでさえ戦闘技術に差があるのにこの状態じゃ勝てるはずがない。

既にこの短時間で誠はそのことに気づいている。ならばどうするか。

 

「へ」

 

誠の足が下から上へあげられる。その際、彼の爪先が、あるものを掬い上げた。

それは叶恋の”スカートの裾”であった。

ふわりと舞い上がるスカート。それによりスカートの下がしっかりとあらわになる。

出て来たのは

 

「アマピュアのパンツって餓鬼かよ」

 

小さなお友達から大きなお友達まで皆大好き

甘やかピュアリン♡魔法少女。略して”アマピュア”の絶対的主人公、生クリームのキャラクターパンツだった!

 

「~~~~~っ!?!?!?」

 

顔を真っ赤にした叶恋は声にならない悲鳴を上げ、スカートを押さえつけてその場にしゃがみ込んだ。

そんな彼女の風船に誠は素早く一発入れる。

ぱんっと軽い音を立てて風船が割れた瞬間、叶恋は我に返ったように「あ」と声を上げ、地面に落ちた風船の残骸と紐を見つめ、肩を震わせる。そして

 

「っ、この、最低屑野郎がぁ!!!!」

「ごふっ」

 

涙目になりながら、彼女の右ストレートが唸りを上げる。割と油断していた誠の顎に拳がクリーンヒット、そのままぴゅーんっと吹き飛んだ。

 

「あ”」

 

そうして不幸にも飛んだ先、天緒が立っていた木のすぐ下に誠が飛んでくる形となる。誠は長い前髪越しに天緒の細い瞳とばっちりと目が合い

 

「らっきー」

 

次の瞬間、誠は天緒の蹴りにより、風船ごと地面に叩き落されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・

 

 

 

 

 

 

 

「ということで、3点取得した筑波君達のチームの勝ちですね」

 

模擬試合が終了した。

充幸は風船の残骸を拾いながら、勝利チームである紡たちに「おめでとうございます」と賛辞を贈る。

だが紡はシュンっとした表情を浮かべる。

 

「ごめんねテッちゃん。僕最初に脱落しちゃって…」

「いいよ。紡君のおかげで僕も動きやすかったから」

「て、テッちゃん!」

 

優しい天緒の言葉に感極まったように瞳を潤ませガバッと抱きつく紡。その頭を撫でる天緒

ほんわかとする空間であった。この一部を切り取れば、だが

 

「最低だよぉ!このゲスぅ!!ゲスチーム!!」

 

勝利チームとは別に敗北した叶恋は、同じく敗北した誠と護を睨み付け、ぴぇぴぇ叫ぶ。

彼女が「下衆」と連行する理由は勿論先程の試合だ。

点が取れると思えば横取りされ、追い詰めたらスカートを捲られ、パンツを見られ、挙句鼻で笑われ風船を割られた。そりゃキレるというものだ。

そんな彼女を前にアタフタする護と、顎を腫らし、天緒に蹴られた腹を撫でながら顔を顰める誠

収集がつかなそうな状況を見かねた充幸が彼らに近寄る。

 

「まぁ、正直女性のスカートを捲るのはどうかと思いますが、これも勝負ですから。それにしっかりやり返したわけですし」

 

同じ女子である充幸が言えば叶恋はブスくれた表情で「そうだけどぉ」とプクッと頬を膨らませ、涙目で誠を睨む。

誠はバツが悪そうな顔で「悪かったよ」と謝ると話題を変えるように「それで」と口を開く。

 

「これからどうするんですか?訓練って毎日ここで模擬試合でもするんですか?」

「いえ、模擬試合は一週間に一度くらいの頻度でするのはどうでしょうか。

今日の模擬試合で課題なども見つかったことでしょうし

暫くはペアでの個人訓練や他ペアとの軽い手合わせなどをして過ごすのもありなのでは?皆さん任務や仕事も多かれ少なかれあることですし」

「ソレもそうですね。ならそうしましょうかり皆さんいいですかね?」

 

護が他のメンバーにも尋ねれば全員から頷きが返される。

全員が賛成したことで明日からの訓練の内容も決まり、一先ず今日は解散となるのだった。




【世界観メモ14】
戦場模倣室とは訓練場に隣接した部屋で、室内にいながら外を再現できる貴重な部屋
オブジェクトの設置なんかも可能で天気や景色、地面の調子などなど、カスタムして理想の戦場を作りあげることも可能
ただし部屋のサイズ自体は変わらないので広い草原などのステージを作ってもしっかり壁は存在し
調子に乗って駆け回って負傷する可能性もあるので気をつけなくてはいけない。
因みに紡ここ半月で計9回も壁に顔をぶつけていたりする。


アマピュアは熱血ファイトマンと同じようなポジション
この話を書いていて思い出したんですけど、小さい頃はキャラパンにちょっと憧れてた時期があったなぁ
服屋さんとか行ってキャラパンがあると遠くからチラチラ見てました。
恥ずかしくて買ってとは口が裂けても言えなかったけど(当時小3さんとか、そのへんだった)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。