雑草はこのエピソード結構好きです。悪趣味って?知ってる~!!(≧◇≦)
_____4年前
任務へ向かうために利用する、ハコビのいる地下通路
少し長めの階段は殲滅隊本部へ繋がっている。
その階段に繋がる扉が開く。地下通路へ続く階段を降りてきたのは一人の少女だった。
黒いリボンのついたカチューシャを付け、ピンクゴールドのショートヘアを揺らして降りてくる。
服は改造されており、ショート丈のジャケットに、ショートパンツと少々露出のある服装だ。
名前は
「久々にお前と任務することになるとは思わなかったわ。独走するんじゃないわよ善」
声をかけた先には、壁を背に片足を立て座る人影が一つ。
短めの髪を横で一つに括る、面倒くさそうに望の方へと視線を投げる。
この人物こそ将来断罪部隊の隊長となる天満善であった。善は小さな溜息を吐き出すと、ユルリと顔を上げる。
「なーんで遅い奴に歩幅合わせないといけないのさ。独走しなくて済むように望君が合わせればいい話でしょ」
「……お前に協調性を学べって言う方が無理な話だったわね」
「そーいうこと」
善は薄く笑うと立ち上がる。そんな彼に望はやれやれと首を振る。
「てか護くん遅くない?」
「そうね。遅刻なんてすること滅多にないから…どうしたのかしら………」
何処か心配そうな表情で首を傾げる望
善は特に気にしている様子もなく呑気に欠伸を零す。
と、そこで扉が開いた。
「あ、もう来てたんだ…」
開いた扉の方へ目を向ければ、丁度やってきたらしい護の姿があった。
護は善と望を見るなりへらりと笑って見せる。
「久しぶりですね。二人共」
「やぁ護くん。相変わらず幸薄そうな顔してる上に今にも死にそうな顔色してるけど元気?」
「そんな軽口叩いてる場合じゃないでしょ!!護、大丈夫なのその顔色!隈も酷いし!!」
笑っている護の目の下にはべったりと隈が出来上がっている。その上、長い髪はボサボサでかなり痛んでいるのがよくわかる。
頬だって痩せこけていて、顔色は真っ白だ。誰がどう見ても体調が悪いと分かる。
「大丈夫。心配しないで」
だが護はなおも笑う。望が顔を歪める。
「心配しないでって…無理に決まってるでしょ!?幼馴染がこんな姿になってて心配するなって方が無理よ!」
「そんなことより早く行こーよ」
「そんな事って……お前一応同期なのよ!ちょっとは心配したらどうなの!?」
幼馴染である望は無理して笑う護を心配するが、善は表情を変えることなくいう。
善の対応に望は怒鳴るが、善は面倒くさそうに片耳を抑える。
「科学部隊の奴らは皆似たような顔してるし、そんなもんでしょ」
「だからって…!」
「いや、善くんのいうとおり…自分はまだマシな方…先輩とかもっと酷いし…」
「……科学部隊ってそんなに忙しいの?」
「…まぁ、実験とか研究には何時間もかかるし、資料集めたり色々神経削られるから………それに…っ」
そこまで言いかけて護の言葉が途切れる。
白い顔を一層白くし、唇を震わせる。
護の脳内には涙を流す男の顔が浮かび上がっていた。それは昨日行った”拷問の記憶”
叫ぶ声。すすり泣く声。怒号と鈍い何かを殴りつける音。金属が打ち合う音。ぴちゃぴちゃという水の音。吐瀉物の匂い。鉄の匂い。アンモニアの刺激臭。ゴミ溜めの中にいるような酷い匂い。
ひんやりと冷たい地面。肌寒い部屋。頬を流れる汗。金属の無機質な温度。両手に纏わりつく生ぬるい温度。液体の感触。口内に広がる鉄の味。胃から込上げる酸味。ガタガタと震える体。ガンガンと痛む頭。ギンギンと痛む鼓膜。ぐわりと揺れる視界。
昏い
昏い
昏い
昏い
赤
赤
赤
赤
赤
赤
「っ………!」
今まで見てきた非人道的な光景を思い出し、思わず吐きそうになる護。口を押えて蹲りながら込みあがって来るソレを必死に抑え込む。
それを察したのだろう。望は慌てて護の方へと駆け寄ると背中を摩る。
「今日の任務、休んだ方がいいんじゃないの?
確か今回の花咲が珍しそうだから死骸を持って来いって言われてるのよね?望と善だけで何とかなるわ。だから護はここで休めばいいわよ」
「…そういうわけにはいかない。今回の任務は隊長直々に言われたから…」
「それでもっ」
顔色の悪い護を心配した望がなおも食い下がろうとする。
そんな彼らを見て善は何処か呆れたような表情で彼らを見ていた。
その視線に気づいたのだろう。護は望を引きはがすと取り繕う様に笑う。
「大丈夫だから」
無理して笑う彼に望は悔しそうに唇を噛む。
しばしの沈黙。軈て善は「時間がもったいないんだけど。この後も色々立て込んでるし…そろそろ行かない?」と二人に促した。
善の言葉に望は弾かれたように善の方を振り返る。
「だから、お前はなんでそんな!」
「ハコビ、Y地区に送ってY地区」
「ちょっと勝手に!」
望が言い切るより早くハコビがくるんと一周する。瞬間景色が切り替わり、彼らはY地区へ繋がる通路へと飛ばされる。
Y地区と通じる扉の方へ向かいながら善は振り返ることなく口を開く。
「サクッと討伐すりゃ解決する話でしょ。無駄話したって体調が回復するわけじゃないんだし」
地上への扉を開く。
そのまま地下への扉を隠すための小屋の扉を開こうとする善。
そんな善を押し退け、望は護の手を掴んで扉のドアノブを回した。
「望達は東周りに行くから、お前は一人で西の方に行けば!」
「え、怒ってんの?子供じゃないんだから、この程度で怒らないでよ」
「うっさい!どうせお前は一人でも問題なく動けるでしょ!!足手纏いは少ない方がいいってよく言ってたもんね!」
「いや、それはそうだけど…体調不良者抱えて戦えるわけ?望くん弱いのに?」
「っ!!戦えるわよ!!!!」
善を置いて小屋を出て行く望と護
善は首の後ろをガリガリと搔くと片腕を上げ、ぶんぶんと手を振りながら望たちの方へ声をかける。
「おーい、花咲見つけたらちゃんとこっちにも連絡回してねー
倒したらじゃなくて見つけたらだよー、あれ?聞こえてる?おーい」
「…」
「よ、呼んでるけど…」
「………」
護が無言の望に恐る恐る声を掛ければ、むっとしたまま望は振り返る。
「うるっさいわね!わかったから!!!はやくいけ!!!!」
望が叫べば善はやれやれと言いたげに肩を竦め、指示された西の方へと立ち去っていく。
「自分は絶対報連相しないくせに、望たちにばっかり強要してくるんだから…いつまでも雑魚雑魚って…ほんっと腹立つ」
「まぁまぁ」
「それより護。体調は本当に大丈夫なの?」
「大丈夫。心配かけてごめんね」
「別に心配くらい幾らでもかけて良いの。ただ…無理はしないでほしいだけで」
「……そっか…ありがとう」
微笑んだ護に笑みを返し、望たちは二人で先へと進む。
「それにしても、寒いわね」
「Y地区はよく雪が降る地区で有名だから…」
空からは止まることなく降って来る雪を見上げながら二人はハクリと白い息を吐く。
外は一面真っ白で、まるで別世界に来たような錯覚さえ覚える。だがこれは任務で、こんなに美しい場所にも不死者はいる。それを殺すのが仕事なのだ。
「そうしてもよかったの?善くんと離れちゃって…確か今回の任務13体の不死者の殲滅だけど」
「花咲はその内1体だけでしょ。残りは全部ただの花無しじゃない。平気よ」
ずんずんと進んでいく望。そしてそれを心配そうにしながらついて行く護
「……護。止まって」
望が真剣な声色で護に指示を出す。望はリングに触れ、大きめなナイフを取り出すと構える。
それをみて護もまた、ボウガンをリングから取り出した。
そうして、しばらく辺りの様子を探る。
あるのは銀世界。そして奥の方には僅かな木々の影
その影を真剣に見つめる。そうして…木々の影の奥深くから突然不死者の手が伸びてきた。
速度の速い大きな両手。望は護の腕を掴み、後ろに下がりながらナイフを振った。ギャッと花の無い不死者が喚いた。
「〒薙繧↑√縲〒薙繧↑√縲逞〒帙薙繧↑√縲>励縺協∬縲>」
理解のできない言語を喋りながら不死者は望と護目掛けて襲い掛かる。
「護は後方援護をお願い!」
「わかった!」
護の前に立ちナイフを構える望
護は望の邪魔にならないように後方に下がるとボウガンを構えた。
望は前線にて不死者の元へと駆ける。
斬られていない手を伸ばしてくるがそれを一刀両断すると、グッと地面に足を踏みしめ、低い態勢になって構える。
再生した手を伸ばそうとした不死者。その不死者の顔に矢が撃ち込まれる。それにより不死者は悲鳴ともとれる声を上げ、傾いた。
望は深く踏み込むと一気に上へと舞い上がり、くるりと回転しながら落下
重力による加速により、通常より数倍の重さの加わった一撃を不死者の額にある目玉目掛けてぶつける。
それにより不死者が地面に伏した………が、傷が浅かったのだろう。起き上がって来る不死者
その瞬間、護はボウガンの引き金を引いて矢を撃ち出す。矢は不死者に当たり、今度こそ不死者の目玉を貫き、その体躯が地面に沈んだ。
「望!次、右から来てる!」
息をついたのも束の間。再び別の不死者が右から向かってくる。
それは花無し。ただの花無しとはいえ連戦だ。疲労だって多少は溜まっているだろう。
だがナイフを構えた望の口角は僅かに上がっている。気分が、紅潮していた。
望の脳裏には無惨にも散っていった幾多の同胞たちの顔が思い浮かんでは消えていく。
こんな世界に居れば、そりゃ仲間の死など腐るほど見る。
昨日まで楽しく話していたチームメイトは不死者によって上半身と下半身を引き裂かれて死んだ。
昨日まで背中を預け会えていたチームメイトは腹を貫かれて死んだ。
一緒に食事をとっていた友人は不死者によって両腕を切られ、出血多量により息絶えたと後日聞かされた。
人が死ぬのは一瞬だ。絶対に大丈夫なんて保障、どこにもなくて。
人の生死の話を聞いても、自分だけは違う。自分の周りだけは違うと心のどこかで思っていた愚かな思い込みは見事に打ち砕かれた。
中にはそれこそ普通だと捉え、慣れたと言う人間もいた。
だが望はいつまでたっても慣れることが出来なかった。
望がここに来たのは、成り行きだ。
だからこそ、望は最初、不死者に恐れをなし続けた。だがそれが間違いだと直ぐに気付いた。
弱い奴は、何も守れない。弱い奴は、搾取され続ける。
だから望は不死者を殺す力を欲した。一人でも仲間を失わないために。もう二度とあんな思いをしないために。
(不死者を殺せてる。望は少しずつだけど強くなれてる…!)
何かに駆り立てられるように、不死者の肉を削いでいく望
護はその姿を見て心配そうな顔をするが自分の仕事に専念するべくボウガンの矢を打ち続ける。
「ぎゃぁぁぁぁ」
トカゲのような舌を持った不死者の攻撃をすべて躱し、隙を見せた瞬間に斬撃を叩き込む。
絶叫した不死者はのたうち回って地面に転がる。確実に死んだことを見届けると、望は護の方へと向かう。
「えーっと、今二体やったから残りは11体ね」
「善くんも狩ってると思うし多分もうちょっと数は少ないんじゃないかな…」
「だといいけ___」
瞬間望たちの足元の地面がひび割れ…崩れた。
「っ」
下から出てきたのは不死者。振り返ろうとした望の体が横に吹き飛んだ。
目を見開く護の目の前には大きな目玉の華
不味いと脳内で警報が鳴り、下がろうとする…が、それよりはるかに速い速度で地面に叩き付けられ、かひゅっと喉から息が漏れる。
視界が揺れて、頭がガンガンと痛み、同時に腹の辺りが酷く熱くなる。
見れば、不死者の体から生えたと思われる氷が腹に突き刺さっていて、腹部が紅く染まっていた。
幸い、即死ではなかった。だがこのままでは間違いなく死ぬだろう。
膝を付き、痛みをこらえながら氷を引き抜くと腹を押さえ、護はどうすればこの窮地を抜けられるか、必死に頭を働かそうとする。だが痛みでうまく頭が回らない。
「っ、護!」
「のぞ、む……来たら駄目だ!!」
望は腕を抑えながらも立ち上がり、護の元に駆け寄ろうとしていた。
しかし、望はそこで動きを止める。護は気づいていた。
不死者の視線が自分ではなく、望に向いていることに。
それはまるで、餌を見つけた獣のように。そして、氷を体から生やした不死者は望に襲い掛かる。
望は一瞬硬直したが直ぐに我に戻り、ナイフを構える。
そして不死者と望の距離が5メートルほどになった時、望は跳んだ。
望が不死者に向けて投げたナイフが不死者に突き刺さり、その勢いのまま望は空中で回転しながら不死者の上に着地しようとするが、すぐに不死者は体を捩って攻撃をかわす。
望は舌打ちをしながらもグイッと血を拭い、護を背に不死者の体を切り祓う。
「っ、護!善に連絡しなさい!!」
「わ、わかった!」
一瞬の隙。望が護へ指示を出す。護は荒く息を吐きながらもリングを起動させる。
「よ、善く…ん。花咲が、こっちにっ」
「あ”ぁ、あがッ」
「!」
望の左腕に亀裂が走る。
みれば望の右腕は不死者に触られていて、その触られた部分から氷柱が生え、望の皮膚を突き破ったのだ。
手のひらも腕も氷柱によってズタズタとなり、ぽたぽたと赤い液体が宙に舞って地面を赤く染めていく。
「っ、望!」
望が床に座り込んだ。
「あ…」
〈護くん。今すぐ位置送って〉
「の、のぞ」
〈護くん!〉
リングからの声なんて、もう彼の耳には入ってこなかった。
(どうしよう、どうすれば望を助けられる!?善くんは絶対に間に合わないっ!自分が、自分が何とかしないと!!!)
焦る視界に飛び込んできたのは地面に落ちた弓矢だった。転げるようにしてソレに飛びつきボウガンに入れて構える。
護は立ち上がると、氷柱の刺さった腕をそのままに、片腕だけで必死に不死者にくらいつく。
だが、片腕で花咲には勝てるわけもなくて、どんどんと傷だらけになっていく。
それでも彼は正面から不死者に飛び掛かった。
(大丈夫。まだ間に合う。だから…冷静に、当ててっ)
ボウガンを構え、目玉の部分に標準を定める。そのまま矢を飛ばす。
「っ」
指を押すと同時に眩暈が起こり、視界がぐらんっと揺れる。
「あ”あああああああああ!?」
「の、ぞむ…!」
そして顔を上げた時には…望の体に氷の氷柱が突き刺さっていた。
胸に刺さり、背中を貫通するように一本、氷柱が突き刺さっている。
望の体が衝撃により仰け反る。少量の血が突き刺さった胸から吹きだして、地面に散らばった。
「ぁ…あぁ…じ、じぶっ…自分が…っ!!!!」
「っ…大丈夫…だよ。護…」
ケホっと血を吐きながら望が笑う。
「護のせいじゃ、ないから」
望はザクッとナイフを不死者目掛けて刺そうとする。だがそれはいとも簡単に防がれ、投げ飛ばされる。
べちゃっという音と共に落ちた体を痛む体に鞭打って駆け寄り、抱き起こす。
胸から洩れた血が、地面の護の手と膝を濡らす。
「望!望!!」
「っ、あ…ぉ…」
「あ、ご、めん。ごめん、ごめんッ望っ!」
護は腹の痛みに顔を歪めながらも望を何とか背負う。
「なに、してるの……早く…逃げて」
望に護は目を見開き首を振る。
「……もう、体に力が入らないの」
言った望の手から、握られていたナイフが滑り落ちる。
「どうせ助からない………お願い。護を、巻き込みたく…ない。望の分まで、生きて…それだけで……い、いから…」
「嫌だ!!!」
逃げて、と続けようとした言葉を護は大声で遮った。
「嫌だ、絶対にっ、離さ、ない!!!例え助からなかったとしても置いてったりしないから…!ぜったい、ぜったいぜったい…っ!!」
しかしそんな二人の耳に、ざくっと”死の声”が響く。
「逃、げて!!!」
「嫌だ!!!」
「っ、望を背負ったまま、じゃ!戦えない”!!お願い!!離し”て!自分を守れ!!!!」
そう叫ぶ。そんな彼らの背中に不死者が氷の生えた体の一部を掲げて立っている。そして、それは
「っ」
護の足を裂く。脚から血が噴き出し望ごと彼らは雪の中へと倒れこんだ。
「っ、あ”あがっ」
「護!…っ」
望は力の入らない手を必死に伸ばす。手の先にはボウガン
「ぁ、ぉい」
「あああああああっ」
「護!!!」
「っ、!」
護が望を見る。
望は震える手でボウガンを持ち上げて笑う。
「大丈夫…護は射撃の腕がいいから…ちゃんと狙えば大丈夫。だから…」
再び振り上げられるソレ。護は望からボウガンを受け取り、構え
「あ”ああああああああああッ!!!!」
ボウガンの矢が目玉を貫いた。
・・・・・・
「は、はは……はははは、やった、やった、よ…望………望?」
矢だらけで、ピクリとも動かなくなった不死者が転がっている雪原。
護はそれを見下ろし、笑いながら後ろを振り返る。
そこには笑った幼馴染の姿などなく、地面に倒れたまま動かない望の姿がそこにはあった。
一瞬で現実に引き戻されるような錯覚を覚える。手足が震え、手からボウガンが落ちる。
がくがくと崩れ落ちそうな足で望に近寄る。
「のぞむ……ねぇ、望ってば、起きてよ望」
何度も名前を呼んで、肩を揺する。しかし望は起きる気配を見せない。
降ろされた瞼がピクリと痙攣することもなく、雪で凍ったのかぴったりと張り付いている。
「……のぞむ…おきて、ってば…おきて」
息をしていない、冷たい。
分かっていた。護はもうわかっていた。彼が…望がすでに死んでいるということに。
ぽろりと涙が頬を伝って、凍り付いた望の頬に落ちる。
「…平穏に、暮らせれば…それでよかったのに。望と、一緒に…どうして、どう、して…自分…どう…あ…ぅ…あ”あぁぁ…あああああああッ」
ボロボロと涙を流す。肩を震わせ、一人咽び泣く護
「こんなとこにいた」
「ぁ……?」
彼の背中に声をかけた。
護がゆっくりと振り返れば、数十分前に別れた善の姿があった。
善はそのまま護の隣までやって来ると、ちらっと望の方を見て、その近くにしゃがみ込んだ。
望の死体は原型こそあれど、酷いものだった。
片腕には氷の刃が大量に突き出していてぐちゃぐちゃで、今でこそ固まっているが顔は血で汚れている。
心臓部分は血でぬれていて。ぴくりとも動かない。
「うん、バッチリ絶命してんね」
「っ……」
「因みに聞くけど何があった?」
「…は、花咲が…地面から、現れて…っ
それで、それ、で…望が戦おうとして…そしたら氷柱が刺さって…胸にも…それで、それ、で…」
あの時の光景を思い出すだけで頭痛がして
「う”ぐ…」
嘔気がこみ上げ、我慢できず吐き出す。
ここ数日まともなものを食べられていなかったからだろう。水分と胃液を雪にまき散らす。
ぜぇぜぇと何度も呼吸を荒げる。
”大丈夫?護”
そういって背中を摩ってくれる彼はどこにもいない。
昏くなった瞳からぽろぽろと涙が溢れ、また吐き出す。
「……君もう帰れよ。怪我酷いし、どうせ殆ど動けないでしょ」
そんな護を見下ろしながら善がいう。
その瞳は酷く冷たい。望の死を悲しんでいるようにはとても思えなくて。
「なんで……」
「ん?」
「なんでそんな…平気そうなんだよ……!」
涙を零しながら護は善を睨みつけた。
その質問に善は少し首を傾げ
「そんなの決まってんじゃん」
少しだけ口角を上げる。
「それが”ここ”だからだよ」
「!」
「悲しんでる暇があるなら動かないと自分が死ぬ。
1年以上ここで過ごしてるくせにそんなことすら理解してないなんてね」
「……」
「ほら、分かったらさっさと帰れ。特別に送ってってあげるから」
言われて、護は立ち上がる。そして望を抱き上げようとして、手を拒まれる。
「なにしてんの?」
「なにって……連れて、帰ろうと」
「は?なんで?」
「な、なんでって……そんなの当然だろ!?」
「いや、不死者がまだ彷徨いてる状況で何言ってんの?死体なんて荷物にしかならないんだから持たない方がいいに決まってんじゃん」
「そういう問題じゃ!!」
護の背を善は押す。
「あー、もう面倒臭いな。今帰るなら後で死体を持って帰るの、考えてあげてもいい」
「!」
「どうせ今の君じゃ死体は運べない。わかったら早く帰ってくれる?」
「絶対、絶対だから」
善により護は無理矢理本部へと帰された。
善が「連れて帰る」と言ってくれたから、護は善を信じた。
信じたからこそ、大人しく言うことを聞いて帰ったと言うのに、だというのに
「なんで……なんで連れて帰るって言ったのに!」
善は死体を持ち帰ってはくれなかった。護はその事実に激高し、力のままに叫びながら善の胸倉をつかむ。しかし善は涼し気な顔を崩さない。
「いやぁよく考えたら花咲の死骸も持って帰んなきゃいけないことに気づいてさ。
あんなバカでかい死骸に、死体までもって帰るのはちょっとねぇ?
それにほら、考えはしたからさ、嘘はついてないし。
不死者討伐後で疲れてて余計な労働したくなかったんだよね。
いやぁごめんね?あぁ、でも大丈夫。埋葬はしておいたから」
ヘナっと笑う善。そこには微塵も反省の色は見せず本気で悪いと思っていないことが目に見えて護は顔を顰める。
「なんで、そんなっ!」
「死体持って帰った所でどのみち埋めるなら変わらないじゃん。ぶっちゃけお荷物だし。
てか君も死んだ奴の事でうじうじするなよ。どれだけ嘆いても死人は戻ってこない、引きづったって意味ないんだから。切り替えてこ。
ほら、これあげるから元気だしなって」
そういって赤い指が差し出されたのは…望が持っていたネックレスだった。
それを見た瞬間護の目の前が真っ赤に染まる。
「!!」
瞬間、護はガッと善の頬を殴りつけた。
善は地面に尻餅をつく。前髪で隠れて表情は見えない。それでも護はキッと善を強く睨みつける。
「荷物?うじうじするな?切り替えろ…?」
その口から出るのは酷く憎しみに守れた声
「そんな軽々しく言えるなんて…人の心が無いんですね」
吐き捨てる。
「望は何だかんだ、善君の事心配してたのに…なのにお前は…!!!」
強く拳を握る。
爪が皮膚に刺さっていようと関係ない。
「お前がなんで周りに嫌われてんのかよく分かった」
血が出てしまうくらい、ギリっと奥歯を嚙み締め、護は吐き捨てた。
「屑が」
善へのヘイトがえらいことになってますねぇ、はははっ
まぁ雑草はそう仕向けたんですけどね!!
大丈夫さ!雑草は善ちゃんのこと好きだからねっ!!(*´з`)