いやぁ早いなぁ、第三節でこの章は終了です。
ほんと早いな!?今回は短いですし。
ということで、過去編も一旦は終わりです(^0_0^)
護は頭を抱えていた。
薄暗い部屋の隅っこで、膝を抱えて蹲って、体を縮こまらせる。
この部屋は護の部屋であった。
あの一件からすでに数日。彼の唯一見える手はやせ細り、殆ど皮と骨に近い状態となっていた。
その様子から、彼がここ最近まともに食事をとれていないのがよくわかる。
彼が終始「うるさい。どっかいけ。あっちにいけ。くるな、うるさい、うるさい」と膝に顔をうずめて耳を押さえて震えている。
そんな部屋の中に光が入り込む。
部屋の扉が開き、廊下の明かりが入り込んだのだ。
部屋主の許可もなく、部屋の中に入ってきたのは開発部隊隊員の
彼はいつもの笑みを浮かべ、部屋の闇に沈んでいる護のもとへと歩み寄る。
「話は聞きましたよ護。苦しいですね」
朔は護の前にしゃがみこむと、声をかける。
優しい声だった。労わる様に、壊れ物を扱うように、優しく優しく声をかける。
その間も護はずっと「何で、どうして、だって」と呟いている。
「護は善さんを許せませんか?」
善、という言葉に護はピクッと反応する。
そのまま少しだけ顔を上げる。
頬は前よりもコケて草臥れている。頬骨も出てきていて…髪も更にぼさぼさだ。
だが、その瞳の奥の淀みのさらに奥には風化されることなく揺れる怒りが宿っていた。
「許せない……自分、ちゃんと望にさよならっていえてない。
ちゃんと言いたかった……謝って…今までありがとうって言いたかった。なのに、言えなかったっ!最後なのに……っ」
護の瞳から涙が溢れる。ポロポロ、ポロポロと。大量に涙を零す。
その涙を隠すように、護はまた下を向く。
彼の膝の間には箱が一つ。その中には望のネックレスが入っていた。
それをみた護の顔が歪む。何かに耐えるように…。
「でも、きっとあれは仕方ないことだって思うんです。
善くんのいうとおり、望は…死体で、花咲だって持って帰らないといけなくて。
だから、仕方ないって…。だから……だから自分は許します。
いつか必ず……望もきっとそうした方がいいっていうはずだから。
わかってる、だから…でも、でも…いつかって、いつですか…?
いつになったら自分は善くんを許せる?数十年数百年たっても許せる世界が想像できない。考えただけで吐き気がして…でも、許さないといけなくて___」
「哀れですね」
「…え?」
思わず顔を上げる護。朔は憐れむような目で彼を見る。
「許せというはずだ?許さないといけない?それは結局のところ君が思っている事ではないのでしょう?
君に心無い言葉を掛けたのだって、それは善さんにとって彼はとるに足らない存在だったから、ただの他人だから言えることですよ」
「そ、れは……」
ひゅっと護の喉から変な音が響く。
「だってそうでしょう?大事な幼馴染が死んだと言われて善さんはどんな顔をしてました?
死体を持ち帰ってないと言われた時、君はどう思った?何を感じた?
その感情をなかったことにして相手を許せるんですか?
許せないからこんなことになっているんでしょう?
幼馴染を失い、最後の別れすらできなかった君はずっと傷ついて
それを知らず相手は平然と生きていて……それは本当に正しいことなんですか?
例え事情があったとしても、君の気持ちをないがしろにしていい理由になるんですか?
許すという行いは過去を清算し、水に流す、なんて耳障りのいい言葉を並べていますが
結局のところ、加害者の行動を手放しに肯定し
被害者は加害者を肯定したことで”何もなかった”ことにして終わらせる行為です。
貴方は善さんの行動を肯定できますか?全部なかったことにして終わらせることができるんですか??本当に?
許しというものは決して押し付けられていい物じゃないですよ。
もし、誰にも許せと言われなくても君が自分以外の誰かがそういうから許すって時点で、許さないといけないと感じている時点で、それは許しを押し付けられていることと同意じゃないですか?
俺なら、身内を亡くした人間に”許せ”なんて言わないですよ。
例えそこにどんな理由があったとしても。
故人が帰ってくることはないが亡くした方のポッカリと空いた心の傷が消えることも無い。
どうやったって一生癒えることはないんですから……護なら、それが分かるはずでしょう?」
「……ぁ」
護は言葉を失う。
「じ、ぶん……は」
「護のしたいようにしていいんです。大丈夫。君の意思を否定する人間はここにはいいません。君の心を傷つける人間はいませんよ」
朔は護の頭をポンと撫でる。
それにより、護の目から涙がボロボロと零れ落ちる。
廊下の光が眩しくて、朔の顔は見えない。
それでも護は朔の顔を見上げて、そして口を開いた。
「自分はっ、どうしても…っ」
「うん」
「どうしても…」
「_____善くんを許せない、許したく、ない」
「なので自分は善くんのことが嫌いなんですよ」
善が嫌い。その経緯を語り終えた護は、上記の言葉で締めくくった。
全てを語り終える頃には、護の雰囲気は何処か変わっていた。
その異様な雰囲気に呑まれ、誠の喉が鳴る。ひんやりとした物が背を駆け上がった。
顔を強張らせた誠の方を、護はどこか感情の抜け落ちた目で見る。
「誠くん。自分は最低だと思います?いつまでも過去の事を引き攣ってる自分は可笑しいと思います?」
首を傾げる護に誠は息を詰まらせる。護の瞳が、酷く淀んでいたからだ。
その目を見て、ひくりと喉が引きつり、僅かな汗が滲む……が、誠はゆっくりと顔を横に振り、否定する。
だって誠は知っている。身近な人を亡くすと言うのは、想像以上に苦痛であることを。
だからこそ、気持ちが分かる。だからこそ、誠は護を最低だとは思わなかった。
実際に体験しているからこそ、思えるはずがなかった。
ただ…ただ、彼から発せらえる雰囲気は明かに異常な気がした。
何か悍ましいものを抱えているような、そんな気がした。
だが護は、誠の返答に少しほっとした顔をする。
「よかった。話し出したは良いですけど、これで引かれたら今後の交流会に影響が出ちゃいますから」
困ったように眉を下げる護に誠も曖昧に返す。
そこで護はニコッと笑みを浮かべ空気を切り替えるようにパンッと一度柏手を打った。高い破裂音が空に響き、ふっと空気が僅かに軽くなったのがわかる。
「さて、休憩はここまでにして、今日はもう寝ましょうか。時間も時間ですしね」
「…そうですね」
訓練室を出ていく護の背中
その背中を誠はじっと見て、そして
「…」
そっと眼を逸らし、彼もまた訓練室を出ていった。
いやぁ今回ちょっと短めだったかな。
所で名探偵コ〇ンってあるじゃないですか。あの見た目も頭脳も(社会的には)子供である主人公がよく「真実はいつも一つ!」っていいますよね?
あれ、ちょっと違うと思うんですよ。
だってほら、事実は一つでも真実はその人の解釈次第じゃないですか。
その人の気持ちや精神状態次第で真実はいくらでも変わりますし
事実はいつも一つで、真実は無限大っていうのが雑草の意見ですね、はい。
真実が必ずしも事実とは限らない…なんつって!(*^^*)