夜の帷が消えるまで   作:発狂する雑草

41 / 112
今回は三年生組による球技大会です!
球技大会。皆さんはどういう感じでした?そもそもやりました?
雑草のところはドッジボールオンリーでしたね。
毎回外野から只管怯え、逃げ惑う内野の連中へ日々のストレスと恨みを込めて全力投球してました(笑)
オラオラ逃げ惑えら!!!ハハハッ!安全地帯から一方的に蹂躙される気分はどうだッ?!あ" ぁ?!

…ふぅ、学年MVPにこそなれませんでしたが、クラスMVPにはなりましたイェイ(●´ω`●)


酩酊賛歌〜球技大会〜

7月の行事といえば何が思い浮かぶだろう。

矢張り世間一般的に言えば七夕、なんかが思い浮かぶのではないだろうか。

だがここ、殲滅学園では違う。

殲滅学園での7月といえば。

 

【ドキドキ届け!ずっきゅん七夕球技!!!】

 

「相変わらずネーミングセンスゼロだよね」

 

殲滅学園の7月の伝統行事といえばコレだ。端的に言えば”球技大会”というやつだ。

体育館、運動場にはデカデカとのぼりが飾ってある。

その下では元気に球技を行っている人たちの姿がある。

そしてそれは、(よい)も同じだ。

 

「善!打たせないわよ!」

「うぉっ」

 

制服ではなく、動きやすいパーカータイプの体操服を着て、コートの真ん中でボケーっとしていた善

そんな善のもとへボールが飛んできたため、反射的にそれを両手で掴んだ。

現在善がやっている球技はバスケなのだが、受け取ったボールは普通のバスケットボールではない。

角の丸い星型のボール。七夕ということでこういったデザインになっているそうで、毎年このボールを利用することになっている。

だがそのボールは、全くと言っていいほど固くはなく、ふにゅふにゅと柔らかい綿のような感触がする。

 

(跳ねないし、これボールじゃなくて絶対クッション…)

「なに揉み揉みしてんのよ!!つか躱してんじゃないわよ!バカにしてんの!?」

「うるさいなぁ、はいはい」

 

善のボールを奪おうとしてくる一見女子生徒に見える男子生徒、虫生(むしゅう)(のぞむ)の手や、飛んでくる大声を適当にあしらいながら、善は星のボールを片手で掴むとそのままポイっと投げた。

投げられたボールは高い軌道を通ってそのままゴールリングへ突っ込んだ。

勿論ボールではないので、リングを通ったボールはそのまま地面にべちゃっと落ちた。

すぐに望が「攻めろ攻めろ!」と叫びながらボールを取りに向かった。

走り回る彼らを横目に善はスコアボードを見る。

点差はがっつりと離れ、時間だって残り僅か。とてもじゃないが逆転できるとは思えない状況

善にはすでに試合の結果がわかってしまった。だからだろう。冷めた目ではぁ、っと溜息を吐き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって運動場。

ベンチに腰を下ろした善は頭にタオルを掛け、ぼーっとしていた。

そんな善の頬に冷たい飲み物が押し当てられ、思わず「つめたっ」と善はびくりと体を揺らす。

飲み物が差し出された方を見れば、そこにはタオルを首に引っかけた日向(ひゅうが)の姿

彼も彼で飲み物を買ったらしく、反対の手には飲みさしの缶ジュースが握られている。

善は「ありがと」と言って缶ジュースを受け取る。善の隣に日向(ひゅうが)が腰を下ろした。

 

「お疲れさん。勝ったか?」

「勝ったならここにいないし~」

「そりゃそうか」

 

善はもらったジュースを飲む。

 

「一回戦敗退。相手が悪かったわ。ほぼ全員バスケ部だよ?無理無理

マトモに練習もしてない素人集団が勝てるかっての」

日向(ひなた)はテニス部相手に無双してるけどな」

 

日向(ひゅうが)が顎で指す先を見る。ベンチから少し離れた先

沢山のギャラリーに囲まれているコートではテニスの試合が行われている。

そこでは、現在進行形でテニス部を相手にぼこぼこにしている日向(ひなた)の姿があった。

相手は同じ三年生で、全国にまで出た選手だ。

きっと本人は早々負けることがないと思っていただろう。だが現実は悲惨だ。おかげで相手は半泣きだ。

対する日向(ひなた)は涼しい顔を崩すことはなく、とても爽やかだ。大粒の汗を垂れ流し、必死の表情を浮かべる相手とは大違いである。

しかもギャラリーの多くは日向(ひなた)を応援しているという事実に気づいてしまったのだろう。

等々相手は膝から崩れ落ちた。仕方ない。彼はよく耐えた。

そんな彼に同情の目を向けながら善は「はぁ」とため息を吐く。

 

「アレはおかしいんだよ…そもそもあいつ、裏で結構練習してたじゃん」

「負けず嫌いだからな」

「で?日向(ひゅうが)は勝ったの?サッカーだっけ?そっちも負けたからここにいるの?」

「勝ったわ。思ったより早く試合が終わったから見に来たんだよ。

ほんっと、星ボールが蹴りづらいのなんのって…あれクッションだろ。絶対」

「あ、やっぱそうだよね」

 

やはりあの星ボールはクッションだったらしい。

バスケはバウンドさえさせなければある程度試合を進められはするが、サッカーまでもあのクッションボールだったなら、それはそれはやりづらいことだろう。

 

「よく勝てたな」

「ま、ギリだったがな。お前だけだぞ。初戦で敗退したの」

「……」

 

それを言われ、善は微妙な顔をして、飲み切った缶ジュースを握りつぶす。

 

「チーム戦苦手。個人戦がよかったなー」

「ジャンケンで負けたお前がわるいだろ」

「球技はクソ」

「おいおい…」

「あ、日向(ひゅうが)センパーイ」

 

不意にうきうきと楽しそうな声が日向(ひゅうが)を呼んだ。

まただ、と善が呻きそうになったのを隠すように日向(ひゅうが)が振り返る。

その先にいるのは一年生の女子三人。

真ん中の子が半歩前に出て、顔を赤くし、もじもじと視線を彷徨わせている。

 

「あのぅ、ちょっとお話があるんですけど……」

 

ただ、両脇に控える女子の目が善に向かって「邪魔」と告げていた。

この状況になってまで察せられないほど善は鈍くない。間違いなくこれは告白だ。

日向(ひなた)といい日向(ひゅうが)といい、人気ですこと…と内心呟きながら善は立ち上がる。

 

「先に教室戻ってる」

「あ?日向(ひなた)のこと待たねぇのか?」

「暑いんだよ。それに試合なんて、どーせ日向(ひなた)が勝つだろうし」

「閉会式は?」

「サボる」

「風紀委員長がサボんなよ…じゃ、また後でな」

「ん」

 

そういって善は一人校舎へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

善が教室に戻れば、教室の窓際には笹が飾ってあった。

そう、笹。七夕の短冊を飾るための笹だ。

笹にはすでに短冊がかけられ、隣の小さな机には短冊とペンが置かれていた。

その他にも、画用紙で作ったらしい飾りなんかも置かれていて、窓際に座った善は何気なく一つ指でつまみ上げた。

それは大きな丸い花のついた吹き流しだ。開いた窓から吹き込む風に吹かれ、善の黒髪とともにフワフワと揺れる。

 

「さ~さ~の~は~さーらさら~」

 

それを見ながら善はついつい七夕の歌を口ずさむ。

そうして、吹き流しを笹に括りつけると、吊るされた短冊に手を伸ばす。

歌を口ずさみながら一枚一枚ひっくり返していく。

 

「皆、ロマンティストねー」

 

短冊に書かれている願いの内容は様々だ。

”運命の人に会いたい”とか”行きたい大学に合格できますように”とか”大金持ちになりたい”とか”家族の健康”とかそういうありきたりな夢ばかりが掛かれている。そうして次の短冊に手を伸ばすと

 

「さぼり魔の風紀委員長なんて聞いて呆れるね」

 

教室の扉が開いてそんな声が響いた。

顔を上げればそこには日向(ひなた)がいて、その後ろには日向(ひゅうが)の姿があった。

 

「なんでここに…閉会式まだやってるけど」

「さぼったに決まってるでしょ」

「人のこと言えないじゃん」

「俺はチーム戦だから問題ねぇが、こいつ個人戦で優勝しておきながら表彰サボったんだぜ」

「うわ…」

 

ジトッとした目で善が日向(ひなた)を見るが、彼はどこ吹く風だ。

 

「それで?人の願い事覗き見してどうしたの?」

「人聞き悪いな。願い事を書く上での参考にしようと思っただけだよ」

「盗み見を正当化しようとすんなよ」

 

溜息を吐きながら日向(ひゅうが)は椅子に座る。

 

「大体、願いなんざなんだっていいだろ。どうせそんなもんに書いたって叶わねぇんだから」

「なんて夢のないことを」

「お前だって本気で叶うとは思ってねぇだろ」

「まーね。こんなもので叶う願いとかたかが知れてるし」

 

なんていいながらも善はペンを抜く。

 

「とかいいながら書くんだ?」

「こういう行事には乗っかる主義なんで…でもなに書こうかな。織姫彦星伝説になぞられて好きな人が見つかりますように、とか?」

「好きな人ねぇ…それより歌が上手くなりますように、とかそういうのにしたら?」

「なんで歌?」

「七夕は芸事や書道の上達を願う行事だって言われてるからだよ」

「織姫彦星どこいった…」

「クリスマスと似たようなものでしょ。体よく変形してその文化が浸透してるの」

「なるほど」

 

そうして善は少し考え、短冊に文字を書く。

 

「なんて書いたんだ?」

「バスケの上達を願った」

「あ?もう終わったのにか?」

「そうだよ?ところで恋人は出来たわけ?」

 

ペンを置きながら善は日向(ひゅうが)に問いかける。日向(ひゅうが)は興味なさそうに言う。

 

「振った」

「うわ勿体な~可愛かったのに」

日向(ひゅうが)如きが人を振るなんて、何様って感じだよね」

「それな」

「あ”ぁ!?どういう意味だテメェら!!」

 

そう切れる日向(ひゅうが)

善と日向(ひなた)は示し合わせたようにクスクスと笑う。

それに日向(ひゅうが)は不機嫌そうに鼻を鳴らす。

 

「恋愛とか興味ねぇんだよ。愛の恋だの意味わかんねぇし…こうやってお前らと駄弁ってる時間のがずっと大事だろうが」

「……日向(ひゅうが)、ついにツンデレ属性に手を出すとはね」

「うるせぇな!!!」

「この時間が大事、ね。たまにはいいこと言うじゃん。んじゃそんなお友達のお二人さんに提案です」

 

そういって善はポケットから三枚の飲食用チケットを取り出す。

 

「この後、どっか食べに行かない?」

「賛成」

「ま、俺らこのままここにいても先生に見つかって怒られそうだしな。行くか」

 

そんな会話をしながら彼らは教室を出ていく。

窓から風が吹き込む。あおられた白の短冊には【この日常が続きますように】と書かれ、静かに揺れているのだった。




この三人が雑草は個人的に好きなので、いっぱいかけて満足です!!
次回もお楽しみに~
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。