夜の帷が消えるまで   作:発狂する雑草

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【前章のあらすじ】

新人育成計画に参加した誠たち
その過程で誠は天満との会話や、犬成の過去を聞き、より一層”生きること”への疑問を抱えてしまう。
そんな中、日向の言葉で生きることへのきっかけを多少掴むことが出来た誠はより技を磨き、ついに育成期間を終え、日常に戻っていく。

無慈悲な雑草の一言〈なんのための育成期間だと思ってるの?ということでトラブル発生じゃァァァ!!


第五章 舞ウ扶郎花
第一節 第一項


さて、本日は待ちに待った東西交流会当日

今回の会場は東の殲滅隊本部であるため、西に所属している誠たちは起き抜け早々に集り、すでに移動を始めていた。

東の本拠点へ行くにはS地区を通らないといけない。 そのため現在彼らはS地区へきている訳だが、S地区もまた殲滅隊拠点を支援する地区。

D地区とそこまで大差はない場所となっており、街並みも似通り、雰囲気も近しい物を感じる。

 

(D地区と比べて街灯すくねぇんだな、S地区は)

 

ただ違う所を上げるなら明るさの違いくらいだろう。

D地区は大体10歩歩けば街灯があるが、ここは30歩ほど歩かないと次の街灯に辿り着くことが出来ない。

D地区を歩き慣れている身としては少々薄気味悪さを感じてしまう。

そうして一層暗い場所、S地区にある所謂”殲滅隊試験会場”の館へ辿り着く。

門をくぐり、館の裏手に回ればD地区同様本拠地へ移動するための機体が設置されており、彼らは中に入っていく。

 

「気合入れてくぞお前等」

「う、うん……緊張するけど頑張ろう」

「……」

「いつも通りやれば大丈夫だよ!」

「そうですね」

「うん……がんばろ」

 

全員が士気を上げ、転送作業を済ませれば、一瞬視界がブラックアウトする。

そうして僅か1秒。段々視界が開けてくる。

どうやら到着したらしい。機体を開けば既に拠点への扉が開いている。

 

「入って良いってコト、だよな?」

「多分そうですね」

 

誠が確認する様に護に聞けば護はコクリと頷く。そうして、少し躊躇こそしながらも中に入る。

すると目の前には看板が一つ。そこには【交流会参加者→】と書かれた案内板が立てられていた。

指示に従い右の道を進めば、そこは大きな体育館のような場所

その奥には今回の出場者が既に待ち構えているのが見えた。

シルエットでしか見えないが全員体躯がいい。

 

「アイツ等が相手?」

「な、なんていうか、滅茶苦茶強そう…」

「あれで俺等と同じ三年以内の新人なのか」

「どんな奴が相手だろうが関係ねぇ、ぶっとばしゃいいだろ」

「うん」

「……え」

「ん、どうしたよ叶恋」

 

気合を入れる彼等。その中で一人だけ明らかに違う反応をする。否、一人ではない。

 

「待ってください。彼が今回出てくるのは可笑しいでしょう。明らかにルール違反ですよ」

 

護もまた、他とは違う反応をする。護の言葉に誠は首を傾げる。

 

「ルール違反って何が___」

「成程、そうきたか」

「!!」

 

唐突に響く第三者の声。彼等が振り返ればそこには戦闘部隊隊長の、雪村(ゆきむら)日向(ひなた)の姿。そしてそんな彼のすぐ後ろには欠伸を零す開発部隊隊長の来栖(くるす)(かえで)の姿があった。

 

「日向くん!楓くんやほやほー」

 

真っ先に彼らに声をかけたのは東の殲滅隊、科学部隊隊長(みささぎ)(たまき)

その隣には戦闘部隊部隊長美景(みかげ)(つつむ)の姿もある。

声を掛けられた日向は笑顔で応対する。

 

「こんにちは陵さん。待たせてしまってすみません」

「全然!マジ時間ぴったりだし気にしないでオケだから!

それより楓くん!前回の会議来てくれなくてマジテンション下がったんだけど。まぁ会えてマジ嬉しいよ!」

「ああ、環さん一年半ぶり位ですかね。前回は行けなくてすみません。こちらも立て込んでいまして」

「そういうことなら全然オケだから、マジ安心してね!」

「はぁ、そう言ってもらえると助かります」

「ところで、彼らが変更選手ですか?」

 

日向が聞けば環は「そうそう」と肯定する。

 

「いやぁ急遽変更しちゃってマジごめんね。皆交流会、張り切りすぎてたのか怪我しちゃってさ」

「そうですか。まぁそれは別に構わないんです。ただ代打は同じ3年以内の人間から選ばれるはずなんですが、其方の彼。見覚えあるんですよね」

 

そういって日向が見たのは先程から無表情で立つ、褐色肌にプラチナブロンドの髪を持った長身の男だった。

彼へ向ける日向の視線に気づいたのか環は苦笑いする。

 

「やっぱそこ気になっちゃうよね…。

いやぁ其れが、三年以内の子達、この二人しかマジ出られない状態でさ。写真送ったの、みてない?」

「いいえ。みましたよ」

「まぁあの通りでさ、だからやむなしに、彼を最後の代打として出したってワケ」

「成程。そういうことなら仕方ないですね」

「なんかマジごめんね?さてと全員揃ったしソロソロはじめ___」

「遅れましたー、ごめーん」

「……」

 

最後にやって来たのは善であった。

東、西ともに何人かが軽く顔を顰めたのがわかったが、善は全く持って気にする様子もなくニッコリ笑顔を浮かべて近寄って来る。

 

「やぁやぁ東の皆さんご機嫌よう。あはは、言った通りホントに掃除してくれたんだ。

いい心がけじゃん。これからも定期的に掃除して清潔さ保てばいいと思うよ」

 

善はニコッと笑っていえば、そこで「ちッ」という舌打ちが響いた。

舌を打ったのは先程注目を浴びていた褐色肌の青年だった。善は青年の方を見て「うげ」と顔を顰める。

 

「うわ…獣臭いと思ったら駄犬ちゃんじゃん。動物は大昔に滅んでんだから君も滅ぶなりなんなりすれば?」

(ん、駄犬…?)

 

善の発した言葉に誠が反応する。

だが誠が疑問口にする前に男は血管を浮き出させて善を睨む。

 

「だれが駄犬だテメェ殺すぞ」

「誰も君のことなんて言ってないじゃん。でも一発で自分の事だと思うあたりやっぱ自覚あったんだね?」

 

前に出て来た男に向かって善がいえば、男はガッと善の胸倉をつかむ。

 

「テメェ完全に俺の方見て行ってただろうがァ」

「は?見てないけど、自意識過剰?引くわ…てか何怒ってんの?あ、更年期か」

「俺ァまだ28だクソガキ

そもそもテメェ遅れて来てるくせに何ナマ言ってんだァ?あぁ?」

「もー、キャンキャンキャンキャンうるさいなぁ。発情期ってやつ?さっさと去勢しろよ駄犬」

「……マジで泣かすぞ餓鬼」

「鳴かされるの間違いじゃなくて?」

「殺す」

 

キレる男に、薄い笑みを浮かべて煽り返す善、と

 

「まーまー、そのくらいにしよ飛鳥くん!」

「善、そのくらいにしないと駄目だよ」

 

環が飛鳥と呼ばれた男の腕を掴んで善から引きはがし、日向もまた善を緩く羽交い締めにする。

それにより、二人が各々を掴んだ人間を見る。

 

「命令すンじゃねェよ、成金野郎が」

「痛いとこ刺すなぁ…でもほら、首領がマジ怒っちゃうから、ね?」

「……」

 

首領という言葉が出て口を閉じる飛鳥

対する善は日向に捕獲され、ぷるぷると震えていた。

 

「ちょっ日向、爪先立ち辛いんだけど…!」

 

善と日向の身長差は20センチ程ある。そんな彼に羽交い締めにされれば爪先立ちになってしまうのも仕方がないというもので。

 

「駄目だよ?」

「ちょっ、腕あげないで?!攣る攣る!!足がっ、性格悪いぞ日向!!!」

「もう絡んじゃ駄目だよ?わかった?」

「わかったわかった!!!」

 

各々注意を受け、二人は大人しく離れる。

 

「まぁ今日は折角の交流会なんだから、テンション上げてこーよ」

 

環が空気を切り替えるように手を打ちながら言えば、同意する様に日向も「ですね」と頷く。

その横で善はボソリと「もう帰りたい」と呟けばそれを目敏く聞こえたらしい飛鳥が「なら帰れよ」という。

 

「は?」

「あ?」

「さてと、皆交流会開始は今から10分後。東チームは東のブースに、西も西のブースに移動して待機しておいてね」

「ぐえっ」

 

日向は話しながら飛鳥と第2ラウンドに突入しようとする善の腹に片腕を回すとぐいっと引っ張り、ズルズルと他の隊長たちと共に立ち去っていく。

残された出場者たちもゾロゾロとブースへ向かう。

 

「どうする」

「どうするって何が?」

 

律の言葉に紡が聞き返せば、律は溜息を吐く。

 

「相手は今の会話から想定する限り全員三年以上。

戦闘部隊の内一人は四年以上ここで生き残ってる猛者だ。何かしら策の一つでも講じておいた方が良い」

「た、確かに」

「でも、叶恋ちゃんたち、向こうの情報殆どわからないもんねぇ…強いて言えば化学部隊の面々の情報だけしかないしぃ」

「それに、ルール説明も詳しくされていませんしね」

「ウン、僕等何も分からない」

「……必要ねぇよ」

「え?」

 

不安げにする彼等。その中で、ぼそっと誠が呟いた。

 

「秘策だ?んなもん必要ねぇ、誰が相手だろうが俺は叩き潰すだけだ。それに……」

 

誠は律と叶恋を見る。

 

「作戦立案も指示出しも頭脳であるお前等二人の仕事だろ。

頭脳に選ばれるっつーことはそれ相応の能力を持ってるっつーことだ。なら、状況見て臨機応変に支持の一つくらい出しやがれ」

 

誠の言葉に律と叶恋は顔を合わせる。

 

「……結局俺等任せか」

「でも……うん、氷雨くんの言う通りかもぉ…こんな状況だからこそ、叶恋ちゃんたちが頑張らないとだもんねぇ」

「ああ、ぜってぇ勝つぞ」

 

誠は一人めらりと目に炎を宿してそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

「にしても、ホントに彼らが?」

 

一方東側も話しながら移動していた。

まず口を開いたのはマッシュの赤毛に若葉色の瞳をした青年

彼は首を傾げながら、先程顔を合わせたで西のメンバーの顔を思い浮かべている。

 

【戦闘部隊隊員 早緑(さみどり)茉莉(まつり)

 

「そうでごあす!彼等が夜縁をぶっころしたんでごあすよ!やばやばごあす~!!」

 

支離滅裂な事を言う、水玉のバンダナに奇抜なフェイスペイントをした糸目の青年が笑みを浮かべながらいう。

 

【科学部隊隊員 由宇(ゆう)彼方(かなた)

 

「歯ごたえのなさそうな奴らで拍子抜けだ」

 

スキンヘッドに、口の横に傷のある、サングラスをかけた大柄の男が詰まらなさそうにいう。

 

【科学部隊隊員 物集女(もぶめ)才良(ざいりょ)

 

「そ、そうですね…相手は一年目の子ばかりみたいですし。

でも相手は元からチームを組んでるって報告書に書いてて今回はチーム戦らしいですけど…。

僕等、ほぼ初対面なんですが、だ、大丈夫…なんですかね。

あっ、別に文句があるとかそういうのじゃないんで!発言してごめんなさい!!怒らないでください!殺さないでくださいぃ!!!」

 

オドオドとし、長い前髪で片目を隠した青年が泣きそうになりながら叫ぶ。

 

【科学部隊隊員 神楽城(かぐらぎ)(もえ)

 

「わはは!知らねぇけど俺はドキドキワクワクできりゃそれでいいぜ!!」

 

褐色に黒髪、黒目にサングラス。耳には花札に近しい色や模様が刻まれた細いタッセルピアスを付けた青年が笑う。

 

【戦闘部隊隊員 綾瀬(あやせ)和真(かずま)

 

「あんま油断すんじゃねェよ。一年だろうが夜縁潰してる時点で実力はホンモンだろ」

 

白に近い金髪に褐色、青い目をした青年が、顔を顰めながらそういう。

 

【戦闘部隊隊員 狗星(いぬぼし)飛鳥(あすか)

 

「不足はねェ、勝つのは俺等だ」

 

無表情から一転。ニヤッと飛鳥は好戦的な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

先に言われていた拠点には地面に【西】【東】が掘られ、花の絵が描かれた旗が掲げられていた。

その近くには台が一つ置かれていて、そこには丸い的が複数枚置かれていた。

 

『両チーム拠点についたのが確認されたので東西交流会の説明を始めます』

 

囲われた拠点へ全員が入ったところで、彼らの手首にあるリングが自動的に動き出した。

びゅんっという電子音と共に起動したリングの画面には、何所かの一室での映像が映し出された。

そこには各部隊の隊長たちの姿。

たった今喋っているのは、ここまで一切話していなかった堤であった。

彼は、堂々とカンペを見ながらピクリとも表情を変える事も無く淡々と説明を読み上げる。

 

『ルールの開示です。それぞれの拠点には数枚の的が台にて置かれていると思います。

一人一枚取り、体の見える場所に張付けてください。

その的は皆さんの命となり、それが破壊された時点で拠点へと強制退場となります。

……まず皆さんはハコビによって、今回のステージとなる地点へと飛ばされます。

そのステージの中には、宝箱が一つ設置されており

中に入ったヒントを元に頭脳として指名された隊員が正解を相手チームより先に導き出す。というシステムとなってます。

 

それでは、役職の詳しい紹介にうつります。

 

まず頭脳

頭脳は幾つかある建物の中の一つに飛ばされる手筈となっています。

そこではモニターが配置されており、自身のリングを翳している間のみ、操作が可能となっております。

モニターを操作し、回答をしてください。

 

また、モニターには宝箱がある場所のヒントが配布されており

仲間が何処にいるのかも分かるのでリングを通じて仲間に直接指示を出したりも出来ます。

さらにもう一つ、敵の胴体がどこにいるのかわかります。

ただし、頭脳一人に対して敵の胴体一人だけしか見えないため、二人のうち片方が撃破された場合、敵の片方の姿が見れなくなります。

 

続いて胴体

最初に味方頭脳がどこに飛ばされているのかがデバイスにて分かります。

そのため、護衛にすぐ向かうことが可能となっています。

また敵手足が味方頭脳の100メートル以内に接近した場合通知がいきますので、それも活用してください。

 

最後に手足ですが主に頭脳の指示を受け、宝箱を探したり胴体同じく護衛、敵戦力を削ぐことがメインです』

『さぁて!気になる勝利条件だけどっ!』

 

そこで善が堤のマイクを掻っ攫い、意気揚々と話し始める。

 

『勝利条件は大きく分けて2つ!!一つは相手の頭脳二人の的を破壊する!

脳味噌がなくなったら人間死ぬし、解答権を持てるのは頭脳組だから、胴体のみなさーん、しっかり守ってあげてねー

二つ目は相手の頭脳より先に正解を回答すること。今大会じゃこっちが王道かなぁ

 

禁止事項は二つ。大会じゃ何してもオッケーだけど人殺しが起きそうってこっちが判断したら時点で強制退場させちゃうから気を付けてー

もう一つは何処ぞの脳筋馬鹿は全てのビルのモニター破壊してやろうとか企みそうだから先に言っておくけど

モニターや、その周辺の機械の破壊は禁止だから。

破った時点でそのチームの敗北は決まるんで、壊さないように気を付けてね。

そんじゃ開始は5分後!仲間と協力して敵を殲滅☆ぶっ殺せ~!』

『マジ殺しちゃ駄目だから!!!』

 

そこでプチリと電源が落ちる。

 

「取り敢えず、この的を体のどこかにくっつければいいんだよな」

 

彼等はそれぞれの場所に設置されている台の上から的を一枚とる。

薄いが少し固めなソレには接着部分が付いており、触った手が少しべたりとした。

それを体の一部に張付ける。多くが急所や、やられたら死ぬような場所にくっつけた。

 

「というか、武器って……本物使うんですか」

 

心臓に的を貼った誠が聞けば、護は少し苦い顔をする。

 

「まぁそうですね。ただ改良版で威力などは落とされてますけど、やろうと思えば普通に相手殺せるような代物ではありますね。

なので、やりすぎないように気を付けないとなので色々神経すり減りそうです」

「殺しが起きそうなら強制退場って言ってたけど……でも、これ腕落ちたりしかねないんじゃ…だ、大丈夫…?」

 

怯えたように自身の腕を押さえてプルプルと震える紡、だが天緒は緩く首を振り「今まで大会で四肢が取れた人はいないらしいからそこは大丈夫だと思う」という。

その言葉に幾分か安心を得たのだろう、紡は「そ、それならいいのかな…?」と少しだけ肩の力を抜いた。

 

そうして彼らはそれぞれの武器を持ち、ハコビが鎮座している場所に近づく。

 

「それじゃ、ハコビ、よろしく」

 

天緒がハコビに話しかける。ぴこんっとハコビの耳が立ち上がり

 

「!」

 

ハコビがぴょんッと跳ねた瞬間、彼等は各場所へと飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

_____交流会、開幕




新キャラ大集合!!前章から出てきた狗星くん。作者のお気に入りキャラの一人なんで、出せてよかったぜぇ
狗星くんと善ちゃん、組織が違うからあんまり会えないけど、雑草は彼等の煽りあいがすごく好きなので、もっと書きたい所存
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