夜の帷が消えるまで   作:発狂する雑草

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あと少しでこの章も終わり。
いやぁ早い!早すぎるよ!!!なんてこったい!


第二項

『少し休息します。ここからは貴方一人で回してください。では』

「…」

 

東チーム頭脳である物集女(もぶめ)才良(ざいりょ)のもとへそんな連絡が届いたのは数分前のことだ。

紡を撃破した茉莉は戦闘後そんな連絡を寄こしていた。

これにより、頭脳である才良が茉莉が戻ってくるまでの間一人で回さないといけないわけだが、彼は喋ることもなく顔を顰め画面を見つめるだけだ。

その様子は傍目からすれば冷静に戦場を見極めているようだが…実際は全然違う。

 

(どどどどど、どうすりゃいいんだコレぇ?!?!!?てかあっちのチーム強すぎるだろ!いや夜縁倒したって聞いてはいたけど!!!

でもここまで強いとか思うわけないだろ!これどうすりゃいいんだ!?

早緑戻ってきてくれねぇし!休んでんじゃねぇよ働けよ!!

今動けんのなんてもう狗星だけだぞ!?

胴体二人は状況的に無理って通信遮断されたし!なんか向こうチームに暗号も奪われちゃってるし!詰んでるって!もうこれ勝てない奴だって終わったって!!!)

 

冷静どころか内心荒れ狂いながら涙を流していた。

だが彼はその心情をオクビにも出さない。ただ、一粒冷や汗を流すだけ。

その表情のまま彼は画面を見据え、ただ一言呟く。

 

「さて、どうしたものか」と。

 

 

 

 

・・・・・

 

 

 

 

「いやどうしたものかじゃないでしょ!!」

 

その言葉に思わず叫んだのは科学部隊の環であった。彼は頭を抱え深い溜息を吐く。

 

「マジ動け!働け!才良(ざいりょ)くん!!君しか指示出せる人今いないんだから!君がやらないとどうにもならないでしょうが!!!」

「大変そうですね。お疲れ様です」

 

不憫な物を見る様に楓がいう。そんな中日向は「彼は科学部隊の人ですよね?」と聞けば、隊長である環はげんなりしながらゲームから顔を上げる。

 

「そ、うなんだけど……才良くんは実力の推薦じゃないから。ぶっちゃけマジ予想通り」

「そうなんですか?」

「自己推薦なんだよね~、彼は」

「でもそれが通るってことは実力があると判断されたのでは?」

「いや、恐らくは献金(けんきん)主義に基いての決定ではないでしょうか」

 

西は実力至上主義だが、東は献金至上主義というやつだ。

要するに金のあるやつが上に登れる世界、ということだ。

 

「マジそういうことなんだよなぁ」

「にしても、それはそれで妙ですね。東はこの大会に心血を注いでいる。

幾ら献金主義制度があるとはいえ、この大会への参加を了承するとはとても…」

「だからこそ飛鳥を投下したんだろ」

 

つまんなさそうに善が足を組んで言う。

 

「いわば力の調整だよ。金しか能がないような実力無しのお荷物を投入する。

そうなれば力の均一が取れない。だから飛鳥を投下して他二人を入れ替えさせる為に多少の荒事に目を瞑った…いや、適当に言いくるめて飛鳥に命令でもしたんだろ?」

「……」

 

沈黙を守る環。それをみて善はわざとらしい声を上げる。

 

「いやぁ、ホントそっちのやり方は理解できないなぁ

金あるだけの雑魚に地位を与えるだけでも意味わかんないのに

その雑魚のためだけに殲滅業を行える人員を敢えて潰すなんて、どうかしてるよね。全くさ」

「あはは、善くんその話は俺も耳が痛いかなぁ」

 

僅かに顔を引きつらせる環を横目に善は欠伸しながらひらひらと手を振る。

 

「ああ、そういえばそうだっけ?ごめんごめん」

 

対して悪びれも無く平謝りをする善は画面に目をやった。

その画面にはビルの中を徘徊する飛鳥の姿が映っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ど、どうしよぅ……」

「……氷雨達が来るまで隠れて待機」

 

叶恋と律は器用に隠れながら小さい声で話す。

 

(脳でも外には出れる。だが回答を述べる時は、ここのマイクに声を吹き込まないといけない。

一時的に離れて相手が別のビルを探しに行ったら戻ってくるか?)

 

しかし飛鳥はバカスカ建物を破壊しつつ周辺を荒らしまわっている。

飛鳥の手には一本の薙刀が握られ、それを振り回し壁や家具を破壊して回っているのだ。特に喋ることも無く、黙々と

 

(片っ端から壊していく…あの方法は時間かかる。つまり俺等がいることを確信してる。

ここを離れたところで居座られる可能性が高い…どこでバレたんだ)

(……そういえばあの人、目が凄く良いって噂で聞いたぁ。

でもビルの窓にはカーテンが掛かってたしぃ、霧に葉っぱで視界は最悪のはずだよぉ…そんな中、カーテン越しに見えたのぉ……?)

 

しかし二人で何とか出来る状況でもないならば、今は隠れるしかできないと二人は息を殺し、そして

 

「みつけた」

 

壁の向こうに僅かに映った影。それを発見した飛鳥は漸く獲物を見つけたことで口角を上げ、一気に走り出す。

 

「不味いバレた……逃げてもこの距離じゃ撒けない。迎撃しかない」

「うん、叶恋ちゃんもそう思うよぉ」

 

二人はそれぞれ武器を出す。

まずは中距離を行える叶恋がモーニングスターを飛ばす。しかし、それは長刀によって位置をずらされる、が、まるで生き物のように鎖がしなり、飛鳥に鎖が絡み、鉄球が再び襲い掛かる。

だがそれすら予想していたのか飛鳥は振り返ることなくそれを躱す。そしてそれを見越していた律が一歩踏み出す。

 

二人の斧と薙刀の刃がかち合う。

火花が散ったがやはり力で勝るのは飛鳥で、踏ん張ろうと律は足に力を込めるものの薙ぎ払われてしまう。

直後モーニングスターが襲い掛かるが

 

「あ!」

「っ」

 

同時に律が踏み込んでしまい、モーニングスターの鎖が律に当たりそうになる。

二人はお互いそれを交わすようにモーニングスターの鎖を引き、同時に律は体制を低くするが、それは飛鳥の前では決定的な隙となる。回し蹴りが放たれ、律は後ろに吹き飛ばされた。

 

「だ、大丈夫ぅ?!」

「…いいから前に集中しろ」

「う、うん……」

 

少し暗い顔で頷く叶恋。律は思わず舌打ちをしそうになる。

 

(松田と殆どペア訓練したこと無かったのが裏目に出た。ここまで合わせにくいとは)

 

二人はあまりペア練ということを行っていなかった。

その結果、二人の息が全く持ってあって終らず、互いに互いの足を引っ張ってしまっているのが現状であった。だがしかし、今更嘆いてたところで現状は変わらない。頭を回すしかないのだ。

しかし、相手が悪かった。

頭を回す暇など与えないとばかりに飛鳥はドンドンと追撃の体制に入る。駆け出し、少し離れた場所から飛躍する。

天上にぶつかるすれすれのジャンプ。そこから勢いよく振り下ろされる長刀

上段からの振り下ろし、加えて体の回転を利用し、更に威力が上がる。

咄嗟に鎖を放つ叶恋だが、それを蹴りで吹き飛ばしそのまま一括。間一髪で防いだ律の腕から、みしりと嫌な感触が響き、踏みしめた地面に濃紺のブーツが比喩でもなんでもなくめり込み、斧の取っ手が破壊された。

直ぐに後ろに下がったことで長刀の餌食にはならなかったモノの、振り落とされた刃は地面を砕き、崩壊させた。

 

(威力が高い。筑波以上の馬鹿力にプラスして、落下速度に脚、胴、腕、肩、全部の筋肉フル活用して切りかかって来た。だからこそこの化け物じみた威力……ほんとに同じ人間か…?)

 

律がそう思うのも仕方がない。

飛鳥のそれは通常肉体に出せる能力ではない。しかしこれは、紡のそれとは違い過ぎる。

紡の力は体質であり、生まれつき常人より筋肉質という特殊人間である。

飛鳥は別にそういう訳ではない。だが飛鳥の力は紡より優に勝っている。何故か。

彼は殲滅隊トップの力を宿しているため、単に力量の差というのもある。だがそれだけではない。

紡はただたんに腕の力だけで振っているが、飛鳥は足の筋肉と胴体の筋肉、腕の筋肉肩の筋肉、全てをフルで活用しつつ、落下速度その全てを利用し、そこから生まれた攻撃は紡の物を遥に凌ぐ

 

(ここまで……経験の差は出るものなのか)

 

ぐん、と振り下した状態

取っ手が折れ、地面に下ろされたままの律の斧を器用に踏み込んで……否、踏みつけて、飛鳥の体が再び宙に舞う。

隙だらけなその機動に、釣られるように踏まれた斧の短い取ってを掴んで振るった時には……もう遅かった。

 

「!?」

 

あり得ない体勢から、あり得ない角度で、あり得ないタイミングの物理法則を無視して振るわれる長刀に、応じる防御が間に合わない。

 

「て、勅使河原(てしがわら)くん…!」

「くっ」

 

釣られた斧を反射で掲げたのは悪手だった。

半ば巻き込まれる形で斬撃を受けた刀身は、あっさりと手から離れて吹き飛ばされる。

斧が落下し、地面に突き刺さった。

着地した飛鳥の手のひらの中で、長刀の柄がぐるんと器用に回る。縦に長く、横に広く。

素人が握れば思い通りに振り回すことが難しいその刃を、飛鳥は重心の移動を伴って曲芸のように思うがままに斬り上げ、斬り下げ、叩きつける。

そうして縦横無尽にその攻撃が再び飛んできた所で、叶恋が前に出る。

カンッという音と共に、なんとか長刀を防ぐが鉄球に罅が入る。

それを見ながら叶恋は律に声をかける。

 

「勅使河原君!一旦武器を収めるスイッチ押してぇ!」

「は?」

「距離が離れすぎて無ければ回収できるのぉ!早くぅ!!っ!」

 

いわれて律は直ぐに武器を回収するべく手を伸ばす。それにより、地面に落ちた斧が此方に飛んできて、一時腕輪の中に戻る。そうして再び取り出して

 

(腕が……痺れてマトモに握れない……)

 

先程の攻撃を受けたことで、ぷるぷると手が震えて握ることが出来ない。しかし時間はない。

 

「い”っ」

 

それを告げる様に、叶恋の鉄球が一刀両断される。トゲの入った天球は綺麗に割れ

その破片を飛鳥の回し蹴りにより叶恋、律、両者を襲う。銃弾にも勝るそれに叶恋は顔を歪め、自身の足に意識を向けてしまった。

僅か1秒。その間に飛鳥は叶恋に接近し

 

「下がれ!」

 

刃が叶恋に振り下ろされそうになった直後、どこからともなくそんな声が響く……と、同時にガンッという派手な音と共に壁が吹き飛んだ。

瓦解した壁の破片が飛び散り、大きな塊の一つが飛鳥に直撃するが大したダメージにはなりえない。

そうして立ち上った砂埃の中。黒いシルエットがゆっくりと浮かび上がる。そこから出て来たのは

 

「ギリ間に合ったか」

 

誠と天緒であった。

 

「思ったより来るのはえェなァ」

 

ケホっと軽く咳き込みながら飛鳥は何処か機嫌よさそうに口角を上げる。天緒は頭脳の二人に駆け寄った。

 

「二人共大丈夫?」

「何とか」

「助けてくれてありがとうですぅ!」

「ううん、もっと早く来れなくてごめんね。と、これ」

 

天緒は紙を叶恋の手に握らせる。

 

「これ…」

「僕等で足止めしてるから、二人は謎解きして」

 

短く告げると天緒もまた、飛鳥の前に立つ。

 

「松田」

「な、なに?」

「お前一人で解読やれ」

「え、で、でも叶恋ちゃんは……」

「お前の武器じゃもう戦えない。あの二人だけにやらせるより、三人で足止めした方が時間は稼げる。

ソレに……」

 

律はチラッと叶恋を見る。

 

「頭脳に選ばれたって事は選ばれるだけの実力はあるってコトだ。任せたぞ」

「!」

 

告げると律もまた駆け出す。

叶恋はバーコード部分を一先ずリングを当て、リングに表示された文字に目を落とす。

【3\/ZS_DS_F__C_D__NX_J】という数字の羅刹が書かれている。

それをみて、また何かしらの暗号だと察するが、混乱する叶恋にこれを解く方法は俄然思いつかない。

 

(どうしようどうしよう!叶恋ちゃんが頑張らないといけないのにぃ!!)

 

紙を見つめ考えるが全然閃かない。焦りか、自身への情けなさからかジワリと涙が滲む。

 

「どう、すればぁ」

 

暗号を見つめる叶恋の脳内にとある会話が思い起こされる。

 

 

『善さん、どうして叶恋ちゃんを頭脳にしたの?』

 

 

少し前に自分が善に聞いた言葉であった。

 

『正直天緒くんと迷ったんだよね。断罪の本職はその名の通り断罪もあるけど、隠密しての情報収集とかも主だから。手足の方が向いてるし、逆に天緒くんは長らく殲滅隊に務めているだけあって頭の回転早いし決定的な失敗を犯さないし』

『うぐぐ……知ってるけどぉ、でもなら尚更なんでぇ?』

『叶恋ちゃんって窮地に追いやられれば追いやられるほど返って冷静になるタイプでしょ

無意識に最適を弾き出せるって言えばいいのかな?まぁそれを見込んでって感じ?あれだね、期待も込みってとこ』

 

善はサラッと告げた。

 

(叶恋ちゃんは、そんな凄くないよぉ…)

 

先程からお荷物にしかなっていないこの現状

自身はまだ日は浅いとはいえ律の先輩である事には変わりないのにずっとマトモにカバーすらできていない。それが情けなくて仕方ない。

 

(っ、でも、みんな頑張ってる…善さんも期待してるって言ってくれた……なにより、任せたって叶恋ちゃんに任せてくれた…なら、少しでも役に立たないと)

 

ぐしっと出そうになっていた涙を拭うと叶恋は立ち上がる。

 

(一先ずモニターの場所に移動)

 

モニターのある部屋はここの一つ上の階、そうして叶恋は紙を握り締め、階段へ向けて走り出した。

 

 

 

 

 

決航する力の中、誠と天緒は二人係なのにもかかわらず苦戦を強いられていた。

そんななか、斧が振り下ろされる。飛鳥は後退する。

そうして突然やって来たその人物を見て誠はあっと声を上げる。

 

「は、お前なんで此処にいるんだよ!」

「三人でやったほうが効率いいだろうが……あっちは松田に任せてるから問題ない」

 

合流した律に驚く二人。だが当の本人である律はあっけらかんと言い放つ。そして三人は飛鳥を見据える。

 

「…くるぞ」

 

三人はそれぞれ戦闘態勢に入ると同時に剣戟の煌めきが鮮やかに乱舞した。

三人は連携し誠と律が特攻。場を見て天緒が援護という形を確立する。

しかし、飛鳥は柄や刃を使い弾き払い、叩きつける。

ただ三対一は流石にきついのか先程のような一方的な試合にはなりはしない、だが

 

(これでも決抗すらしないのかよ)

 

それでも、やはり押されているのは誠たちだ。足を止めての、両者脊髄反射のみでの削り合い

天緒の援護はチマチマしたもののみで、足元に糸を流し、ひっかけようとするが、それすらも利用して飛鳥はドンドンと不利を強いて行く。

 

「っ」

 

飛鳥の長刀が猛威を振るう。

リーチの長さと勢いの良さにより、誠の体は横に流れ同時にその横に居た律を巻き込む。

その二人をカバーするように天緒が攻撃を仕掛けるが。

 

「それはもう見飽きた」

「くっ……」

 

攻撃すらいともたやすく躱され、地面に会った瓦礫の破片を投げつけられる、が

 

「ばん」

 

その時、壁がまたもや爆発した。

 

(爆弾仕掛けてやがったのか…小賢しいなァおい)

 

直ぐに察して舌を打つ飛鳥。だが行動する時の速度は人よりずっと早い

 

「なっ」

「だが視界が悪くなンのはお互い様、だろ?」

 

爆風による視界の悪さ。

しかし、飛鳥は的確に天緒の場所を探し当てて長刀を振るう。

それにより、接近を察することができなかった天緒は防御行動が遅れ、まんまと的を割られる。

しかしその余韻に浸ることも無く、飛鳥は振り向きざまに長刀を振るう。

先程吹き飛ばした二人の気配がしたからだ。そして振った感じ、僅かな抵抗勘

だが明らかに感触が軽い。そして視界が晴れ、それが見える。

 

(上着…)

 

長刀の先端で揺れるのは誠の上着、そして

 

「!」

 

ふった長刀ギリギリ下。明かに異常なほど高度を下げ、ほぼ地面と平行に走っているのは律

其処に居ると思っておらず流石の飛鳥もぎょっとする。同時に上空には飛び上がった誠の姿

ワンテンポ早く誠が攻撃を仕掛ける。刀を振り下ろせば飛鳥は当然防御する。それを予想していたのだろう、誠の刀は飛鳥の長刀と噛みあう事無くすり抜けると、救い上げるように長刀の先端部分を刀で上へと弾き上げた。

予想外のそれに飛鳥の腕が長刀ごと上に弾かれ、下への防御が間に合わず、律の攻撃を僅かに受け、蹈鞴を踏む。

 

「…はは、ほんと苛つくなァおい」

 

言葉とは裏腹に顔には笑みが浮かび上がっている。ダメージは負った。だが気になるようなレベルでもない。

 

「ぜってェ潰してやるよ餓鬼共」

 

目を細めて飛鳥は笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

なんとかモニターのある部屋に入った叶恋は呼吸を落ち着かせて暗号に目を落とし、必死に頭を回す。

 

「えっと、えっと」

 

下からは物凄い爆音が響く。

 

「きゃっ!」

 

そこで物凄い揺れが起き、地面に倒れ込む叶恋

 

「っ、地面に亀裂が」

 

地面には亀裂が入り僅かに下の階が見えている。

 

「な、なにがぁ……じゃないよぉ!」

 

慌てて起き上がり、ぐるりと部屋を見渡せば、天井が僅かに崩れたのか本棚は倒れ、天井から落ちて来た岩で、本の在りかが分からなくなっていた。

 

「早くしないとぉ…本を掘り出す時間はない…なら叶恋ちゃんが考えるしかっ……その為には一旦落ち着かないきゃ」

 

目を瞑り一つ深呼吸

 

(……まず、この暗号、さっきの暗号と似てる。

やり方自体はきっと変わらない。問題はこの\/の意味

さっきのやつから考えるなら、方向を表しているはずだけどぉ…)

 

近くの紙を引っ張り出して紙にペンを走らせていく。

 

(やっぱり…交互)

 

そうして書いていくが…。

 

(…一つ解くだけでも時間がかかっちゃう。最後まで解読しないと答えがあっているのかすらわからない…もしこれじゃなかったら)

 

そう不安が心を満たすが、すぐに頭を振る。

 

(ぐだぐだ考えている時間はないもん。今は一刻も早く答えを出すしかない)

 

叶恋は紙に文字を書いていく。

そうして時計の針が進み

 

「!」

 

叶恋が顔を上げる。

 

「で、できたぁ!」

 

喜びながらも早く回答をするために自身のリングをモニター画面に翳し

 

「答えは___」

 

 

 

 

 

・・・・

 

 

 

 

 

「律!」

「分かってる」

 

二人は強敵を前に歯噛みしながら一心不乱に武器をふるう。

だがそれは相手も同じ、繰り出される刃は鋭く苛烈で容赦の欠片もない。

 

(不味い、天緒さんを落とされたのはかなり痛手だ)

(時間を稼ぎすらできるかどうか……)

 

ぎりっと奥歯を嚙み締め、ひたすら斬撃を流す事だけに集中する。

時間を稼ぐ手っ取り早い方法は防御に転じる事、少しでも長く脱落しないことだ。そうして二人は只管に斬撃が来るのを構え

 

「あ!」

 

突然飛鳥が二人に背を向ける。それに驚く二人、飛鳥が駆ける先は階段

 

「上に行く気か!」

 

上には叶恋が居る。つまり、行かれたら不味い。

冷静に考えれば二人の相手をするより、叶恋を撃破する方がずっと賢い

そうして叶恋を撃破後、律を倒してしまえばいい。

このゲームは頭脳を落としてしまえば勝ちなのだから。

荒い言葉遣いに反して冷静な判断に思わず律は悪態を内心で吐きつつ、走り出す飛鳥を誠と共に追う。

だが、この距離間。足は向こうの方が早い、逃げ切られる。 

 

「逃がすか!」

 

仕方ないと、誠は鞘を投げる。

それを躱す飛鳥だが、先ほどと同じ手を使えば、いともたやすくブーメランのように鞘が回転し戻って来る。至近距離の攻撃に、少し行動が遅れ、ぶつかる事はなかったものの、少し体勢を崩し減速する。

その間に一気に距離を縮め、切り込む律、合流し再び切りかかる誠

 

「糞見てェな戦い方しやがって」

「褒め言葉だな」

「くそ生意気が」

 

斬撃と銃撃を織り交ぜ、攻めて攻めて、攻め続ける。

鍔迫り合いに負けた飛鳥は、また後ろに下がった。すこしずつ確実に削って削って、それにより飛鳥の表情が険しくなる。

このまま、押し込めれば行けるかもしれない

そんな思考が、ちらりと頭を掠める。しかし同時に、違和感を覚えた。これは、おかしい。あまりにも

 

(大人しすぎる)

 

警告が全身に、悪寒という形で伝わった刹那

 

「テメェ等は、まぁ新人にしては強ェよ。だがな」

 

遂に、牙を剥いた。

 

「所詮”下位の猿真似”だ」

 

急所を抉り穿つように喰らいつく、超速の刺突

目にも止まらぬその一撃は、律の右脇腹にあった的をもっていった。

喰らった律も何がなんだかわからず、そのまハコビにより消える。

残った誠はタラリと汗を流し、そして

 

「思考停止っつーのはなァ、一番の命取りなんだよ」

 

そういうやいなや、飛鳥は手に持った長刀を天井に向けて投げつけた。天井に空いた亀裂を縫って長刀が突き抜ける。

その長刀をつい目で追ってしまった誠の額に衝撃が走り、息が漏れる。

同時に何かが割れる感触……目の前で何かが落下し…地面に目をやれば、そこには割れた自身の的が落ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「____うそ」

 

同時刻

マイクにて答えを報告をしようとしていた叶恋だが、彼女は今地面に座り込んでいた。

その理由は突然地面から突き出て来た長刀

足元には穴が開いており、叶恋の首からは僅かに血が垂れている。

そんな叶恋の心臓にあった的は見当たらない。

叶恋のすぐ横の壁には長刀が下から斜め上に刺さっている。その長刀のすぐ下

そこには叶恋の的があり、的は中心から綺麗に真っ二つに割れていた。




もう今回で平和なお話は終わりでしょう!
ははは、平和な世界にお別れを告げる時間です!
え?今までの話も結構ひどかったって?いやいや、まだ本番ははじまっていないのですよ。
六章からが本番どすえ~

それはそれとして熱いですよね。まだ全然!
なんで?季節考えてみ?10月よ?10月
熱いんですけどっ!!秋よ早く来い。
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