『試合終了です』
そんな楓の声が響く。
『勝利陣営は東チームです。おめでとうございます。
では好評に移りますので、フィールドに居る隊員の転送を行います』
声と共に、フィールドにいるメンバーの元にハコビが現れ、気付けば最初の拠点に移動させられている。西チームはというと誠が「くそっ」と叫び地面を殴り、律は眉根を僅かに寄せ、叶恋と紡は「ご、ごごごごめんなさい!」と只管謝り
護は「まぁ相手が相手ですからね…」と疲れた様に溜息を吐き、天緒は「兎にも角にもお疲れ様」と労う。
一方東チームはというと、彼方は「予想以上に面白かったにゃ~」とケラケラ笑い
萌はお山座りをして「役に立たなくてごめんなさい。煮るのも焼くのも止めてくださいお願いします」と頭にキノコを生やし
和真は「飛鳥すげぇ!バババドーンって!ドーンって何だあれ!すげぇ!!」と目を輝かせてバシバシと飛鳥の肩を叩き、茉莉はつまらなさそうにしており
才良はそのまま無表情。だが内心は(狗星よくやった!!!)と内心叫び、勝利をもぎ取った飛鳥は特に何か言う訳でもなく、武器を直す。
そんな両チームのリングが起動し、最初の時同様に別部屋にいる隊長たちの様子が映し出される。
『さて、まずはマジお疲れ様でした!座るなりなんなりして休憩していいから、マジ気軽に崩しちゃってね』
環がテンション高めに喋りだす。
勝利したから嬉しかったのかもしれない。
そのまま機嫌よさそうに話す。
『まぁこっちは今から各チームの講評やってくから、次に活かせるように適当に聞いてくれると助かるって感じ。じゃ、まずは西チームから!』
環の言葉に誠たちは地面に座りながらも聞きの体勢に入る。
『今回のステージは濃霧且つ森林
なかなか戦うことのない場所での戦闘は、やっぱり難しかったっしょ?
それでも、かなり上手いこと立ち回ってて俺的にはマジ吃驚したかな!
全体的にチームワークがしっかりしてて、マジ息ぴったりって感じ。
まぁチーム自体はかなりバランスよくてビビったね!それに、一人一人臨機応変に動けてて、あの判断力はマジやばいって感じかな!はい次堤くん。何かある?』
『……一人一人の能力値に個人差が出過ぎ。お互いの足を引っ張っている。
全体的に視野も狭い。想定外の事態に弱く詰めが甘い。殲滅隊として致命的』
『まぁ、でも六人中三人が入隊半年だし、それでこの動きは相当善戦したと思うからあんま落ち込まないでねー』
堤が辛口に批評し、環がフォローすることで、西チームへの好評は終わる。
『じゃぁ次は東チームかな。矢張り普段から単独任務に行っているだけあって一人一人の力量がかなり強い印象かな。
かなり時間を稼がれちゃった。それにウチとしてもかなりいい経験をさせてもらったと思うよ。
武器の扱いもかなり手慣れていて、持ち技も多い。
ほぼ真後ろからの攻撃すら感知するは本当に凄いと思うし、異常事態でも焦ることなく冷静に見極め動くのは流石と言わざる負えないね』
『いやいや、別に無理して褒める事でもないでしょ。折角の好評、素直にやってやった方がアイツ等の為だって』
口を開いたのは善であった。善が日向に「ちょーだい」と手を差し出せば日向は肩を竦めて善にマイクを渡す。
善は頬杖をつきながら口を開く。
『えーっと?先輩集団VSひよっこ軍団の戦い。
正直もうちょっと早く決着がつくかと思ったんだけどなぁ
これはうちのメンバーが優秀だったのか、それとも東の皆さんが雑魚だったのか、それは分からないけれど
ウチのひよっこに負かされた間抜けくん。聞こえてる~?
君の敗因は”油断”
いくら勝てる戦いでも油断という隙があれば、勝てるものも勝てなくなる…何て常識なのにね?それこそ殲滅隊として致命的
他にも動けない状態にされたやつ。負けこそしなかったが実はちょっと危なかった奴にも言えるからしっかり反省してね。
にしてもお笑い草だなぁ。ルールギリギリでのメンバーチェンジにグレーラインの武器の持ち込みまでやったのにも関わらずこの結果
ウチは事前情報全面ぱぁになったのにね。
そもそも今回のコンセプトはチーム戦なのに、連携がゴミ。どっかの犬が駆けずり回ったおかげで勝てただけ、何なら約一名完全に置物状態だったしね。
ま、勝利は勝利だ。東の皆さんおめでとーございまーす!』
『…言い方はあれですが、言ってること自体は真っ当だと私も思います。東の皆さんは実力がある。
今回の反省を活かし、更に強くなることを期待しています』
楓が言って締めくくる。
『それでは第23回、東西殲滅交流会を終了いたします。お疲れ様でした』
こうして長いようで短い交流会は幕を閉じるのだった。
・・・・・・
「まぁ、ね、負けちゃいましたけど終わったことですし、あんま引きずらずにいきましょう、ね?」
好評も終え、落ち込むメンバーの肩を叩いて笑う護
「一人も落とせなかった自分が言うのもあれですけど、失敗は次に活かせば言いんですよ。
これは本番じゃなくて練習みたいなものなんだから。
自分たちにとっての本番は殲滅の仕事をすることでしょ?ならこれは一種の遊びですよ。遊びなら失敗しても問題ない。
今回気づけた失敗を本番で繰り返さないように心がければそれで良いですから」
護がいう。その言葉を聞いて悔しがっていた誠が顔をあげる。
「……確かに、どれだけ唸っても結果は変わんねーし。
なら、ここでうだうだしてないで一つでも多く失敗を克服できるようにした方が先決か……」
「そうですよ」
「なら、すぐ帰って修行する」
立ち上がる誠に紡が「ええ?!」と声をあげる。
「休むのも修行だよ!ちょっと休もうよ!僕お腹すいた!」
「それならこの後ごはん食べに行こう。お疲れさまってことで」
「賛成!」
すでに立ち直っているメンバーは、
「ねぇ、律くん」
「なに」
「律くん、これなにか分かる?」
自分が書いた文字を見せる叶恋。
その紙を見て律は少し思案し、文字を書いていく。
そうしていくつか書いたのち「わたしたちのしょうり…」と答えを言う。
「あはは……やっぱり律くんはすごいなぁ…叶恋ちゃん、全然わからなくてさぁ。時間ロスしちゃったよぉ。任せてくれたのに……叶恋ちゃん、結局最後まで役に立てなかったねぇ…」
「……それ今言ったってもう遅いだろ。
それに、あの時はあれが最善だった。俺は後悔してない……それに」
「?」
「別にこの大会で役に立たなかったとしても、松田は俺より価値があるんだから問題ない」
「……へ?」
「相変わらずトゲトゲにゃんねぇミンミンはー」
「腹立つだけだろうがァ」
ケッと顔を顰める飛鳥はそう吐き捨てるとちらっと他の面子を見る。
全員先程の好評が効いているらしい。最後に一つ舌打ちをこぼしてから飛鳥は踵を返す。
続いて他メンバーもぞろぞろと帰り出す。西と違い食事に行く気配など微塵もない。
そんな中、置物と言う評価をもらった才良は表情を崩すことなくサングラスをクイっとあげると彼もまた一人帰り出す。無言で歩く中、彼は脳内で叫ぶ。
(空気おもかったぁぁぁぁ!!!!いや、僕が置物なのは的を得てるけど、あんな大々的に言わなくてもいいじゃん!あいつ噂通りの屑だ!!!)
内心では頭を抱えつつも気高く歩く。そうして、馴染みの建物に入りホっと息をついた。
「つ、かれたぁ…僕なにもしてないけど」
声を出しながら、ずるりと座り込む。
「はぁぁぁ、面白半分で参加するんじゃなかった…」
呟き、ゆっくりと壁に手を突きながら立ち上がり、彼は自分が所属している化学部隊の研究室に入る。
そうして、もう一度息を吐き
「あ?」
とある部屋が僅かに開いていることに気づく。それはこの部屋の奥。薄暗くところどころ錆びついている扉の部屋
「あそこ、確か立ち入り禁止部屋の……」
いつ見てもぴったりと閉じられている部屋の扉
だが今は僅かに開いている。僅かな光が漏れていて、薄いピンクが細々と部屋を照らしているのがわかる。それを見ると、好奇心が刺激されてしまい少しずつ近づく。
(普段はダメだって言われてるけど、鍵開けっぱのやつが悪いに決まってるし。いざとなれば家のこと引き合いに出せばいいし)
姑息なことを考えつつ、好奇心に敗北した彼は部屋の扉に手をかけ、わずかに開ける。
そうして、中を覗き
「_______え」
部屋の光景に目を見開いて固まる。
「な、んだ……アレ」
「あはっ」
「!」
後ろから掛けられた声に驚き才良が振り返るとそこには"鉄パイプ"を振りかぶった彼方の姿
次の瞬間、彼は悲鳴を上げることも無く意識は闇に消えていった。
鉄パイプを放り投げた彼方は息を吐いた。
彼の足元には血の水溜まりができており、後頭部から血を流した才良の姿があった。
だがまだ絶命はしていないのだろう、苦し気に呻いている。
「全く、入るなっていってたのに入っちゃうなんて悪い子にゃん」
しゃがみ込んで、血を流す才良に言う彼方。勿論才良には聞こえていないだろう。
鉄パイプをその辺に放ると、ぴくぴくと痙攣している彼の足を掴み部屋の扉を開いて中へと引きづる彼方
「ま、いい材料も手に入ったと思っておくにゃん」
彼方はにんまりと嗤った。
____舞ウ扶郎花ハ地へ堕チル
【あったかもしれない会話】
「天満君。君、まともなことが言えたんですね」
「喧嘩売ってる?楓くん」
「いえ。感心しただけです」
「六年前の大会でも、それくらい連携のこと考えてくれたら僕らは楽だったんだけどね」
「日向くんたちは只管天満君の独断行動に振り回されて大変そうでしたもんね」
「ええ、一度本気で締め落とすことを画策してた程度には」
「……ごめんなさいでしたー」
____役者は出揃った。ここからがこの物語の本番
さぁ、少年少女よ。夜の帷を打ち破れ。
どんな真相があろうとも。それしか___この膨大な物語を終える方法はないのだから。