夜の帷が消えるまで   作:発狂する雑草

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この章もまた短くなると思います。
大体2節で、1節3項までしかないと思いますので、まぁサクッと終わることでしょう。仕方ないのです。雑草の貧困な脳みそじゃ今までにバラまいた伏線を何とか回収することで手一杯で、あまりデカい騒動をバカスカ起こせないのです。
想像力と語彙力と文才をください( ̄д ̄)


第二項

「最近おもんないなぁ、なんかおもろいことあれへんのかいな」

 

鉄と腐臭が香る明かりのつかない部屋の中

である(まと)はつまらなさそうに首の後ろを引掻きながらいう。

彼の前には同じく夜縁であり、彼の姉である子禽(ことり)が錆びついて悲鳴を上げているベッドに腰かけていた。

彼等の足元には大量の血溜まりと、まだ生きているらしい痛みに呻いている人々が転がっている。

絡は暇を潰すようにその内の一人を踏みつけた。

 

「ぼちぼちドカーンっと襲撃行きたいんやけど」

「そうは言うてもねぇ、巫蠱(ふこ)があかんっちゅうならあかんえ」

「巫蠱は何考えてるんやろうな」

 

不満げに絡がいえば、子禽は「さぁ?」と首をもたげながら絡が踏みつけている女を見る。

 

「それ使うさかい、殺さんといてな」

「分かってんで姉貴」

「それにしても、(らい)の死から暫くたったっちゅうのになんもあれから動いてへん。どうなってるんやろうね」

「毎日人間コソコソ捕まえて遊ぶのも飽いてきたしな。月美(つきみ)さんも見つかれへんし」

 

絡は呻いていた女を足で持ち上げると、子禽の座っている小汚い骨組だけのベッドに蹴る様にして放り投げた。

それにより、女の口からは潰れた蛙のような潰れた声が上がり、その重みによってベッドが軋んだ。

子禽はエヅク女の頬を細く白い指で撫でる。

 

「月美なぁ、ちょい被害妄想激しい子やったけど、銀髪の綺麗な子やったさかい。色んな人に大切に愛でられとった。

まぁ、そやさかい、臆病な性格でウチ等みたいに表立って行動したりはしいひんやろうし

生きてるとしたら、どっかでひっそり隠れてる思うんやけど」

「せやからこそ、見つかれへんのやんな」

「もうかれこれ百年以上会うてへん。あの子がおったら少しは人間を殺すのも楽やのに」

 

滑った子禽の手は女の首に辿り着き、その首を掴んだ。

かひゅっと女の口から息が漏れる。子禽は蔦を出すと、その蔦を首に突きさした。

蔦の一部が僅かに膨らみ、その膨らみが女の首へと流れていく。

脈を流れる血液のように、どくどくと膨らんでは蔦を移動し女の中へ入っていく。

瞬間、女がびくんっと体を跳ねあがらせ、ピクピクと痙攣を起こして赤い泡を噴き出した。

 

「あ”あ”……あっ、あ、ああ、!あ……あ”!」

 

悲鳴にもならない掠れた声で断続的に声を上げる女

だが次第に声も聞こえなくなってくる。

その様子を見ながら子禽は「あー、そやけど月美が見つかったら、そらそれで困るかもしれへんなぁ」とぼやいた。

その言葉に絡は首を傾げる。

 

「なんで?」

「だって月美見つかったら巫蠱はウチと子供作る必要のうなりかねへんやん?そら困るし」

「姉貴、5年しか待てへんしな。今後を考えるんやったら、そらせえへんやろうな」

 

と、そこでついに女の口から花が溢れ出し、全身に血管が浮き出て来て、顔の一部が水腫れのように膨れ上がり、充血を始め。

 

「あ”____」

 

バンッという音を上げ、女の顔が中心から破裂した。

瞬間、その破裂部位から大きな目玉が出現し人間の体は原形を留めず服を引き裂き化け物へと成り果てる。

酷く醜悪な姿。子禽は平然と、絡は「うぇ」と何処か引いたような目で女だったものをみる。

 

「はい、不死者の一丁上がり」

「相変わらずキショイ成り方やな。巫蠱は世界を不死者で溢れさせたいって言うとったけど、こんなんばっかりやとちょい嫌やな」

「そうやねぇ、やけど偶に愛らしい子もできるんやで?」

「どんな確率やねんソレ…ほんで、こいつ等はどないすんの?全員不死者に変えるん?」

「あー…なんかもう満足したしなぁ」

「なら殺してええ?」

「ええよ。人間なんて生かしたって得あらへんし」

 

子禽がいえば、絡は「なら遠慮なく」というなり藻搔く人間たちの上にドカリと座ると、バリバリと頭から喰らっていく。

咀嚼音が響く静かな室内に、小さな足音が響く。

 

「ママ~、えほんよんでー」

「お、婁邪(るか)やん、ええよええよ。こっちおいで」

 

入ってきたのは婁邪だった。だぼだぼとした服で一生懸命駆け寄って来る婁邪の手には一冊の本を持っており、それをみて子禽が笑顔で受け入れる。

婁邪は嬉しそうに喜ぶと、絵本を開いて渡せば子禽は先程出来上がった不死者を椅子のようにして座る。

それをみて食事を半分ほど済ませた絡が雑に口を拭い、婁邪を抱え上げて子禽の膝に座らせた。

 

「さて、読みましょか…と、その前に(にな)は来んでええの?」

 

部屋の扉の方へと声をかければ、少しして螺が扉の角から顔を出した。

 

「アタシはいい…」

「そう?ええで偶には甘えても。不死者は成長早いとはいえ、まだ五歳やさかい。恥ずかしいこっちゃあらへんで?」

「別に恥ずかしいとかそういうんじゃないわ…それにパパに呼ばれてるからすぐ行かないと駄目なの」

「へぇ、そうなんや。なら早う行きな。あんまり待たしたら可哀そうやし」

「あ、ついでにこの死体、持って行ってくれへん?もう俺は腹いっぱいやし」

 

足で死体を蹴り上げる絡。その死体はゴロゴロと転がり螺の足元へ

螺は顔を僅かに顰め乍ら死体の顔を見下ろす。

 

「わかった」

 

頷くと、螺は死体を掴み歩き出した。

小柄な体だが力の強い螺はズルズルと死体を引きづって廊下を歩いていれば、目の前に人影が出来る。

 

「やぁ螺」

「あ、お父様」

 

そこに居たのは巫蠱であった。

 

「遅くなってごめんなさい」

「いいんだよ、別に。そこまで急ぎという訳でもないからね」

 

そういって螺の頭を撫でる巫蠱

それに螺は何かに耐えるように俯く。その様子を見て巫蠱は少し目を細める。

 

「……やはり儡が死んだのが辛いのかい?」

 

聞けば螺はハッとした顔をして、慌ててブンブンと首を横に振った。

 

「辛くなんてない!これっぽっちも!」

「…そうかい。でも近頃お前は暗い顔をする事が増えたから」

「……そんなことは」

「無理をするものじゃない。家族なのだから。何かあったら頼りなさい」

「は、はい……」

 

ぎこちない笑みを浮かべながら頷く螺。そんな螺に笑みを向ける巫蠱

その視線から逃げるように少し顔を横にして「それで、用事って結局何だったんですか?」と螺は聞いた。

 

「それだけどね。螺を見込んで一つ私の手伝いをしてほしいんだよ」

「手伝い?」

「実は先日拾い物をしたんだが、それの監視と情報を収取してきてほしくてね。

ほら、儡が死んだ時に言っただろう?そろそろ決着をつけたい、っとね。

前回みたいな半端な事はしない。全勢力を持って奴らを根絶(ねだ)やしにしようと思ってね」

「…だから、最近殺戮(さつりく)を禁止にしているんですか…?警戒されないように」

「理解が早くて助かるよ」

 

長い前髪を揺らし笑みを浮かべる巫蠱

その瞳が次の瞬間を()いを帯びた。

 

「ただね、その拾い物も中々私たちと会えないようなんだ。だから、大きな混乱を何処かで起こさないといけない。

その役を螺にやって欲しい。別に奴らの前に現れて戦わなくてもいい。適当に混乱を起こし、その間に接触してほしい」

 

巫蠱は一枚の写真を渡す。それを受け取りマジマジと見つめる螺

 

「これが拾い物?」

「そう。できるかい?」

「…任せてください」

 

頷き螺は写真を服の中へとしまった。

 

「助かるよ……と、この死体は私が代わりに捨ててこよう」

「え、でも」

「ささやかながらのお礼だよ。さぁ部屋に戻ってゆっくりやすみ。この後も色々(かさ)んでいる訳だしね」

「…ありがとうございます」

 

頷いた螺はそのまま死体を置いて部屋へと足を向ける。下を向きながら速足で去っていく螺の姿が見えなくなった辺りで巫蠱は振り返る。

 

「さてと…盗み聞きとは感心しないな」

 

声をかければ、振り返った先の廊下の角から絡が姿を現した。

へらへらと笑った彼は巫蠱の方へと進み出る。

 

「怖いなぁ。そないに怒らんといてやお義兄(にい)さん?」

義弟(ぎてい)を叱るのも兄の役目だとは思わないかい?」

「それもそうやか。堪忍な気になってもうて。とはいえ、俺の拾い物を有効につこてくれてるみたいでよかったわ」

「ああ、本当にいい拾い物をしてきてくれたものだ。君には感謝しているよ」

「ええでええで。俺もおもろかったし。ホンマにあの時の顔は最高やった。

ガタガタ震えて狩る対象であるはずの俺に懇願するんや。

”殺さんとって”って。無様でおもろかったわぁ」

 

クツクツ笑う絡。だがそこで彼は真顔になった。

 

「ただ、ここに連れてこよう思たら急に暴れ出して…あれは鬱陶しかったわ。殺したろか思た」

 

巫蠱は微笑を零す。

 

「それくらいは許してあげなさい。そのお陰で私たちの目標には大きく一歩を進める事となったのだから」

 

そういう彼の口元には笑みが浮かんでおり、目は弓なりに細まって”愉快”という二文字が浮かんでいるのがありありと分かる。しかし、それに素知らぬふりをして絡は頷く。

 

「そうやな…なぁ、その囮っちゅうの、俺も行ってええ?」

「それは螺に聞いてごらん」

「ならいけるな。あの子ええ子やさかい絶対断れへんもん。

最近暴れた足りんでほんまに暇やったんや。丁度ええ暇潰しが出来て最高やな…流石に姉貴は連れて行ったらあかんよな?」

 

「姉貴も引き籠もり生活ええ加減飽いたって言うとって、暴れたそうなんやけど」と絡が言えば、巫蠱は笑みを浮かべたまま顔を横に振る。

 

「すまないね。私の妻をただの様子見で危険に晒す訳にもいかないのだよ。

でも確かに、あまり外に行かないのもストレスか…なら今度近くの海辺にでも逢引(あいびき)にでも行く事にしようか」

「うわぁ、相変わらずやな…俺のことももうちょい可愛がって欲しいもんやな」

「私としては十分可愛がっているつもりだよ」

 

笑みを浮かべたままいう巫蠱。だが、絡は肩を竦める。

 

「嘘やん。俺と喋ってる時、お義兄さん少し敵意滲ましてくるのに……まさか無意識なわけあれへんよなあ?」

「ふふ、それは悪いことをしたね。だが、君が私の家族であり義弟であることには変わりない。何より愛した妻の弟だ。大切に思っているんだよ?」

「へーへー、そんなんにしときましょ。これ以上藪蛇突いて食べられたないもん。それにしても…楽しみやなぁ」

「ああ、全くだ」

 

巫蠱は窓から見える月を見上げニヤリと笑う。

 

「奴らが地獄の底に落ちるその瞬間が、今から楽しみだ」




今回は夜縁サイド!
夜縁のキャラも好きだから書けて楽しいという。
いやぁ、敵とはいえ性癖反映してるから個人的に好きなキャラばっかだぁ
特に作者のお気に入りは子禽と絡の姉弟です。
方言コンビいいですよねぇ。雑草の性癖が出てるって?グヘヘ知ってる(´艸`*)
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