久しぶりに亜怜さんもこんにちはするZE☆
亜怜さん書くの難し~!!!!
殲滅隊本部。廊下
あまり明かりが灯っていない薄暗い廊下を一人の少女がふらふらと歩いていた。
「……」
その顔は何処か沈んでいる。普段来ているフリルだらけの隊服はところどころ破け、リボンなどの飾りはいくつか取れ掛かっている。
服がそのような状態であることから予想できる通り、素肌には細かい傷が出来ており、黒いブーツは砂に塗れて白く汚れている。
右足は痛めているのか少し引きづり、壁に片手をついて歩いていた。
「叶恋ちゃん、大丈夫!?」
そうやってゆっくりと歩いていれば前方から女性の声が響いた。
叶恋が放漫な動きで顔を上げればそこには
彼女は叶恋を見て目を大きく見開き、驚いたように駆け寄って来る。
彼女を見て叶恋は少しだけ顔を強張らせた。
「あ、亜怜、さん…」
小さい声で名前を呼べば彼女は顔を顰めて叶恋の傷を痛ましそうに見る。
「任務帰り……よね?凄い怪我してるじゃない!ほら、早く医務室にいらっしゃい。手当をするわ」
「え、あー、いや、でもぉ…」
「手を貸すわ」
もごもごと口を動かす叶恋の空いている方の手を亜怜は優しく掴む。
「足を捻っているのね?凄く腫れ上がっているわ…こんな足で帰って来て痛かったでしょう?ほら、私の方に体を傾けて良いからね」
「あ、い、いえ!叶恋ちゃんはぁ、その断罪部隊に帰りますからぁ…」
「駄目よ!あそこは碌に手当てができる人が居ないんだから。それにここからなら支援部隊の方が近いし、ね?」
「……じゃぁ、そのぉ、よろしくお願いしますぅ」
苦笑いした叶恋は大人しく亜怜に支えてもらうことを選んだ。
彼女に体を預けながら、支援部隊にある医務室へと向かう。
そうして部屋に入るなり、叶恋はひょいっと診察台に乗せられ、テキパキと手当をされて行く。
腫れた足に氷を固定するために、長い包帯を丁寧かつ素早い手捌きで巻いていく。
包帯は一切の波を打つことも無く、きゅっと氷ごと叶恋の患部を抑える。
そうして次に顔や体の傷に消毒液を塗り込みガーゼを貼ってもらう。
一通り手当てを終えた亜怜は心配そうな表情で叶恋をみる。
「にしても叶恋ちゃんにしては派手に怪我をしたわね。それほどまでに強い人だったの?」
「……そうなんですよぉ!結構強くってぇ!」
「…そう、ところで手当てをする時、傷口が少し焼けたような痕があったわ。基本的に人が人を襲う時、肉を焼くような行動はしないはずだけど…これは?」
亜怜の言葉に叶恋はドキリと肩を撥ねさせる。
「あー、いや、えーっとぉ……そう!人間を相手にしていたんですけどぉ、その帰りに不死者の殲滅任務にいっててぇ!」
「不死者に?断罪では基本的に殲滅の任務はないでしょう?」
「い、いやぁ、たまには来るのでぇ!」
ダラダラと汗を流しながらいう叶恋
瞳をきょろきょろとさせている様子は明らかに挙動不審であり、誰が見ても嘘だとわかる。
それは亜怜にもわかったのだろう。彼女は冷静に叶恋の証言は崩していく。
「…手当てをしている時に気が付いたけど、叶恋ちゃんの体
ここ数日で出来たような傷がいくつもあったわ。たまに、という割には随分と頻繁なのね?」
「……」
亜怜の言葉に言い返すことが出来なくなったのだろう。叶恋は口を閉じて黙り込む。
そんな彼女の手を亜怜は握る。
「貴方が心配なのよ。どうしてこんなに傷だらけなの…?教えて欲しいの、叶恋ちゃん」
そういって眉を下げる亜怜に叶恋は目を逸らす。
「これはその……自業自得で出来た傷っていうかぁ…」
「自業自得?」
「だからぁ、そのぉ、気にしないでください」
「…どうしても言えない事情があるのね」
気まずそうにする叶恋に亜怜は息を吐く。そうして
「あの子に何か言われているの?」
「え?」
「貴方の任務を管理しているのはあの子でしょう?脅されているんじゃないの?」
あの子、というのは善のことを指しているのだと叶恋はすぐに理解する。
慌てて彼女は首を横に振った。
「よ、善さんは悪くないんですぅ!脅されてないですぅ!」
「大丈夫よ。私が言ってきてあげるから」
「待って待って!本当に待ってぇ!!」
亜怜は部屋を出ようとするので、慌てて寝台を下りようとする叶恋
だが慌て過ぎたからかべチャッと床に落下した。
「ぐぶっ」という乙女に有るまじき声を上げる叶恋に亜怜は驚いた表情で「大丈夫!?」と抱き起す。
叶恋はそれに返事をすることはなく、代わりにガバッと勢いよく顔を上げる。
打ったからか額や鼻頭を赤くしながら、彼女は涙目で叫んだ。
「善さんの任務を代わりに行ってるだけなんですぅぅ!!」
「は?」
叶恋の言葉に亜怜は目を瞬かせる。
その反応に、叶恋はハッと我に返り……顔を青くさせると自身の口を塞いだ。
だが、彼女はすでに言ってしまっている。その行動をとったところで意味はない。
そうして唖然としていた亜怜だったが、次の瞬間その表情は怒りそのものへと姿を変える。
「最低ね」
低い、低い声が響いた。
その声を出したのは亜怜だった。彼女の瞳は怒りに塗れ、忌々しいとばかりにその美しい
「自分が楽したいからって、こんな小さな子に多大な仕事を押し付けるなんてどうかしているわ」
「あっ、いや、ちがっ!誤解でっ」
弁解しようとする叶恋だったが、亜怜は彼女の体を離すと立ち上がる。その瞳は酷く淀んでいる。
「思えば半年前も組織に顔を出す回数が減ってたわよね。そのせいで會くんが書類を殆ど一人でやっていて大変そうにしていたもの…本当にどうしてあんなのが隊長をやっているのかしら。
どうせなら
断罪部隊の皆は優秀で優しい子ばかりなのに……本当にどうして隊長なんてしていられるのかしら」
亜怜は窓の外を見る。
丁度戦場摸倣室が見えているそこでは、
窓に反射した亜怜の顔は無表情で酷く冷たい目をしている。
「今だってそうよ。どうして周りへの迷惑を考えることができないのかしら。
自分がどれだけ疎まれているか、分かっていないわけじゃあるまいし。本当に、図々しく居座って…有り得ないわよ」
棘のある言葉を発する言う亜怜、だが
「あっ、あ、ち、ちがうんですぅ!」
叶恋が焦ったように声を上げる。
その声に亜怜は振り返る。
「別に善さんは悪くないんですよぉ!!」
「いいえ、悪いに決まっているわ。自分の隊員に任務を押し付けるなんて隊長として異常よ。可哀想に……こんなにボロボロになって」
「いやだからぁ」
「ああ、外に聞かれるのが心配?大丈夫、この部屋は防音だから聞かれないわ。だから安心して__」
「叶恋ちゃんが言い出したんですぅ!!!」
叶恋が遮る様に声を上げる。
それにより、亜怜の口が止まる。
「ご、ごめんなさい!誤解させちゃって!その、叶恋ちゃんが言い出したんですよぉ…善さんの任務の手伝いがしたいってぇ…。
善さんは寧ろ”止めとけ”って止めてくれたくらいでぇ…でもそれを振り切ったのは叶恋ちゃんなんで、本当に善さんは何も悪くないんですぅ…!」
涙目になりながら説明をする叶恋。亜怜は少し目を瞬かせて「そうだったの」と眉を下げる。
「でも、どうしてそんなことを?」
「……実は休みが欲しくてぇ」
「休み?」
キョトンとする亜怜に叶恋は頷く。
「断罪部隊……他の部隊もそうですけど丸々一日休みになることって早々ないじゃないですかぁ
偶に長期任務っていう名目で休暇は貰えるんですけどぉ。
叶恋ちゃんとしてはそういうのも無しで休みが欲しくてぇ……あと、叶恋ちゃんだけじゃなくて善さんの休みもぉ。
叶恋ちゃんの休みは比較的簡単に取れるんですけどぉ善さんの休みって本当に中々取れないみたいでぇ。
取れても任務詰められちゃって非番が潰されること多いみたいでぇ…。
だから叶恋ちゃんも任務の消費を手伝ってるんですぅ。そのぉ、邪魔されないように申請ださずに内緒で非番取れる様にってぇ……でも善さんに振られる任務って量が多くってぇ…ちょっと……えへへ」
頬をカリカリ掻く叶恋。亜怜の顔が険しくなり始め慌てて叶恋は弁解する。
「そ、それにぃ!ほらぁ、叶恋ちゃんあんまり強くないからぁ…丁度いい訓練にもなるっていうかぁ!大会、出たんですけど叶恋ちゃん足引っ張っちゃってたしぃ…最近は夜縁が出てきてて自衛できないとヤバいじゃないですかぁ!だからある意味丁度いいっていうかぁ!」
前の大会の事を思い出して苦笑いする叶恋。だが亜怜の顔は未だ険しいままだ。軈てボソリと告げる。
「例え叶恋ちゃんが言い出したことだとしても、やっぱり最低よ」
「……!」
「それだけの怪我をするってことは任務のレベルが叶恋ちゃんに見合ってない。
これは貴方が弱いって言っている訳じゃないわ。人にはそれぞれペースってものがあるもの。
一から、二も三もとばして四に挑めば潰れるのは目に見えているはずよ」
「で、でも任務は実際に行ってみないと、どのくらい強い不死者が現れるのかわからないものですしぃ…」
「それでもよ。隊長ならそんなに怪我をしてくる時点で止める責任があるわ。それを止めもしないなんて…どうかしてる……それで叶恋ちゃんが死んだらどうするの?
夜縁対策というなら、あの子が貴方の自主練習に付き合ってあげればいいだけのこと。あそこで遊んでいるんじゃなくてね。
やっぱり、いつまでたっても変わってないのよ…人を思いやる心が欠如している。
だから、こんな酷いことが平気で出来るし平然と人の心を踏み荒らすの」
亜怜は未だ床に座り込んでいる叶恋の前にしゃがみ込む。
そうして優しい言葉で語り掛ける。
「ねぇ叶恋ちゃん。断罪部隊なんてやめて支援部隊にこない?
貴方が心配なのよ……私、今でも後悔してるの。貴方がここに来た時、どう声をかけていいか分からなかった。
でも、躊躇なんてしている場合じゃ無かった。先に声をかけて、ここへ勧誘するべきだった。
心も体もボロボロだったのに、必要以上に傷つけられて……。
もっと早くに声をかけていれば貴方に苦しい思いをさせることなく守れた筈なのに………本当に、ごめんなさい」
しゃがみ込んで、下から叶恋を見上げながら両手を握り締める亜怜。そんな亜怜を見つめる叶恋……やがて、叶恋は小さく口を開く。
「亜怜さん…」
「なにかしら」
「亜怜さんには叶恋ちゃんが可哀そうだって思う?叶恋の今やってることは、選択は間違ってるって思う?」
「……え?」
質問の意図が分からないのか亜怜は面喰ったような表情を浮かべる。
そんな中、叶恋は何かを思い出すように目を細める。
「……お兄ちゃんはねぇ、機械を弄るのと寝るのが好きなの。
のんびりしてて優しくて頭もいい。でも肌荒れが酷くて頬っぺたちょっとザラってしてた。
二番目のお兄ちゃんもねぇ自由な感じ。ちょっと意地悪だけど優しいんだよ?誕生日になったら欲しい物買ってくれたんだ。
お母ちゃんも凄く優しい人だよ?叶恋ちゃんが悲しい思いをすると守ろうとしてくれるの。
お仕事忙しいのに私の話を聞いてくれるの。ご飯もね、凄くおいしくて……叶恋ちゃん。お母さんが作ったご飯が一番好き。
お父ちゃんはね、嫌い。怖いから…」
「叶恋ちゃん…」
「…でも、皆居なくなっちゃった。あのね、家族で旅行に行こうってことになって…そしたらね。事故にあっちゃった。
叶恋ちゃんはね。お母ちゃんが庇ってくれたから頭ぶつけただけだけど、他は皆死んじゃった。
心臓の音が弱くなって、体温が徐々に抜けて、柔らかい皮膚が段々固くなってくの」
目を伏せた彼女の顔に影が差す。
そんな彼女を痛ましい顔で亜怜は首を振る。
「…叶恋ちゃん。いいのよ…そんな辛いこと、言わなくて」
「……辛いこと…うん、そうかも。辛いこと……なんだろうねぇ、他の人からすれば」
「……は?」
「悲しかった。でも…辛くはないの」
叶恋は目を細めて、そっと震えた手を握り締める。
「だって今でも鮮明に思い出せるの。誕生日に叶恋ちゃんがあげたものも、貰ったものも、写真も
皆が居た時の記憶もいなくなっちゃった記憶も……その時の感情が全部しっかり残ってる。残ってるの。
悲しいことは多かった。でも別にそれを辛い記憶だとは思ってない。
だって辛い記憶なんて思っちゃったら思い出したくなくなっちゃう。
叶恋ちゃんが……ちゃんと家族に愛されてたって記憶も忘れちゃう」
叶恋の言葉に亜怜は僅かに眉根を寄せるだけで何も言わない。言えないのだ。
なんせ彼女には叶恋の価値観、その考え方が理解できなかった。何を言えば正解なのか判断できなかったのだろう。
黙り込む彼女を前に、目を伏せていた叶恋は顔を上げる。
真剣な、真っ直ぐとした目で叶恋は亜怜をみた。
「叶恋ちゃんは……可哀想じゃない!
家族に愛されてたもん。それに断罪部隊での生活は楽しいよ。
過酷なことは多いしぃ、怖いことも苦しいこともやっぱり仕事上あるけどぉ……それでもっ、楽しいこともいっぱいある!
あそこは皆が思ってるよりずっとあったかい!
叶恋ちゃんは不幸じゃない。可哀想だって思われると自分が……急に惨めになった気持ちになる」
「か、叶恋ちゃん落ち着いて!私は別に、そんなつもりで言ったわけじゃっ」
「亜怜さん」
叶恋は亜怜の言葉を遮って立ち上がる。
「叶恋ちゃんを…善さんへの嫌がらせに使おうとしないで」
きっぱりと言い切る叶恋に亜怜は床に座り込みながら目を見開いた。
先程までしゃべろうとした言葉を忘れてしまったかのように、はくり、と彼女の唇から息が漏れる。
「叶恋ちゃんは善さんだから選んだの。善さんが好きだから……感謝してるから、善さんの所に居る」
「……」
「…手当、ありがとうございました」
頭を下げると、叶恋はそそくさと部屋を出て行った。
今回は完全に二人の問答でおわりですねぇ。ここが区切りやすかったんや……。
でもあれです。亜怜さんと善は絶対に分かり合えないですねぇ、ははは
教育方針に例えるなら亜怜さんは1~100、とまでは行かずとも自分が引いたレールを子供にある程度歩ませたいタイプです。
子供を思っているからこそ、失敗させたくないし、危ない目に遭ってほしくない。
反対に善は放任主義タイプ
多少の援助や守護はしますが、基本自分で好きなように生きろ、みたいなタイプです。勿論それに伴う責任は自己責任です。
要するに真逆なんですよね。二人の思想って。
叶恋ちゃんをはじめとした断罪部隊の面々は総じて我が強く、目標がしっかりあるタイプです。そういう人間にとっては善みたいなタイプと相性がいい
逆に、あまり物事を決められない。はっきりとした目標もあまり持てない充幸のようなタイプにはアレコレ決めてくれる亜怜のような人の方があっているのでしょう。
まぁそれはそれとして、二人にはちょっとした因縁があるので、それが原因で(一方的に)仲が悪いだけなんですけどネ!(*´▽`*)