夜の帷が消えるまで   作:発狂する雑草

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今回は飛鳥くんと日向くんのお話!
この二人の会話好きなんで書いてて楽しかった!(>_<)


第二項

「へぁぁぁぁ!!」

 

殲滅隊本部・東拠点

いつも通り任務に実験にと忙しくする科学部隊が利用する実験室

薄暗いそこに神楽城(かぐらぎ)(もえ)の気の抜ける悲鳴が響いた。

ばっさばっさと重たいフードのついた上着を羽織った彼はわかりやすく「大慌て」と言いたげに両手足をバタバタと慌ただしく動かした。

そんな彼に同じく科学部隊に入っている由宇(ゆう)彼方(かなた)が声をかける。

 

「かぐらん。どうかしたアルか?」

「そ、そそそそそれがぁ!今日外せない用事があったのにうっかり外の任務受けちゃってたんでしたぁ!どどどど、どうしましょう!時間かぶっちゃいますぅ!!!ぜぇぇぇぇったい外せないのにぃぃ!!!!」

 

半泣きになって悲鳴を上げる萌に彼方は「あちゃー」と頭を抑える。

 

「かぐらんはよく仕事押し付けられるアルからなぁ。ちゃんとスケジュール管理はしたほうがいいっていつも言ってるアルよ~」

「すすすすみませぇぇぇん!!!ひ、一先ず(たまき)隊長に連絡してきますぅぅぅ!!!!」

 

ぴぇぇぇっと泣きながら萌は走って環の部屋へと走っていった。その後ろ姿を見ながら、彼方は立ち入り禁止部屋に足を向ける。

そうして、ドアノブに手をかけ、少し部屋を開いたところでピタリと動きを止める。

自身のリングが鳴ったからだ。ボタンを押し画面を開けばそこには一通のメールを受信していた。

 

「……あらぁ」

 

メールを開き、内容を目で追いながら一番下に掛かれた送り主の名前が目に付く。

それを見て彼方は目を瞬かせると彼もまた踵を返して部屋を出て行くのであった。

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

「……クソが、今日の任務はもうなかったっつーのに。誰だよスケジュール管理もマトモにできねェダボは」

 

そう苛立ち気に舌を打ったのは狗星(いぬほし)飛鳥(あすか)はリングの画面を覗きながらそう呟いた。漏れそうになる欠伸を噛み殺し、任務地へ向かうための地下への階段へと向かう。

 

「お、狗星じゃねぇか!」

 

そこで知らない隊員が馴れ馴れしく飛鳥と肩を組んできた。

酒で酔っぱらっているのか酒臭く、顔は赤くなっている。飛鳥は無表情のまま男の方を見る。

 

「誰だテメェ」

「おいおい忘れんなよ!この間一緒に飲んだ渡辺だっつのー!」

「あ?」

 

言われて飛鳥は少し考える。

だが生憎記憶にない。そもそも飛鳥は酒が飲めない。

此奴の記憶違いか、なんて思っていると渡部と名乗った男はバシバシと飛鳥の背中を叩く。

 

「まぁいいや。お前今日非番なんだろ?いい女手に入ったからよ。一緒に遊ばね?」

「……興味ねェよ。つかやっぱテメェのこと知らねェし、馴れ馴れしいんだよ」

 

手を振り払い飛鳥は足を進めようとするが、男は懲りずにウザ絡みを続ける。

 

「オイオイ言い方きつくね?つかさぁ、んなこと言っていいのか?」

「あ?」

「俺はこの組織に多大なる寄付をやってんの。つまり価値で言えばお前より上なんだよ。

お前なんか、上に頼んだらいつでも消してやれるんだぜー?その辺ちゃーんっと分かってんの?」

 

先程の態度から一変し、こちらを下に見るかのようなニヤついた表情を浮かべる男

瞬間、男の頬に凄まじい衝撃が走る。同時に、腹にめり込んでくる凄まじい圧迫感。男が地面に手を付き、嘔吐する。

だが、そのあと、背中に衝撃が走り、男は自身が吐いた吐瀉物の中に顔面を沈めることになる。

生暖かい温度と同時に、口内のすっぱい味と同じく、酸性の匂いが鼻を刺激する。

 

「な、にをっ」

 

「なにをするんだ」と抗議しようとした……だが、男の言葉は途中で止まる。

何故か…首にあてがわれた長刀の刃が理由であった。

男はひんやりとした金属の感触に情けなくも引き攣った悲鳴を上げる。

 

「分かってねぇのはテメェだろ」

 

少し長刀を動かせば、薄い皮が破け軽い痛みと同時にどろりと男の首から一筋血が流れる。

それを持ち上げ、長刀を振り上げる。キラリと照明で長刀の切っ先が鈍く光る。そうして、飛鳥は相変わらず無表情で男を見下ろす。

 

「死体がどうやって喋るんだよ」

 

そういうなり飛鳥は長刀を振り下ろした。振り下された長刀は…。

 

「っ!!!!」

 

男の顔スレスレに突き刺さっていた。男は顔を真っ青にしてフルフルと震える。

アンモニアの匂いがし、其方を見れば男の股間や床はシミを作っていた。

それに飛鳥は目を細めて、不快そうに足を退ける。

 

「きたねぇなァ…全部テメェで片せよ」

 

それだけいうと長刀を直して飛鳥は男を放置してさっさと任務地へと向かった。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「なんでテメェが居るんだよ」

「奇遇ですね。僕もV地区での任務だったんですよ。被ったようです」

 

任務に向かうため飛鳥はV地区へとやって来ていた。

任務の内容はいたって普通のもので、不死者を倒すだけだ。

とはいえ、場所はかなり辺鄙であり、辺り一面森林という感じだ。

足元には瓦解した建物の断片が散乱しているものの、細かい為ほぼ平地と言っても過言ではないだろう。

そんな場所を歩いていれば見知った顔に出くわした。それは西の殲滅隊に所属している雪村日向(ひなた)であった。向こうは飛鳥を見つけたことで目を丸くして、少し驚いているらしかった。

だが飛鳥は嫌そうに顔を顰めた。

 

「なんでテメェら西と定期的に被んだよ。わけわかんねェ」

「伝達ミスか、態とか……いずれかは分かりませんが、まぁこれも縁ですよ。仲良くしましょう」

「……ちっ、テメェ今回の任務なんだよ?」

 

聞かれ、日向(ひなた)は「花咲き3体の討伐ですね」というと飛鳥もまた「同じだ」という。

どうやら任務が完全に同じだったらしい。

「さっさと仕事終わらせるためにも仕方ねェから共闘してやる」といい、ズカズカと奥へと歩いていく飛鳥。そんな彼に日向(ひなた)は「心強くて助かります」と笑みを浮かべると飛鳥の後を追いかけ、横に並ぶ。

 

「テメェは確か武器的に後衛支援だろ」

「いえ、どちらかというと普段は前衛ですね」

「…んなひょろい成りで不死者の討伐とか出来ンのかよ」

「できますよ。寧ろ身軽さが売りなので」

「へぇ」

 

目を細めながら、飛鳥は日向(ひなた)を見る。

背は高いほうだろう。185㎝はあるのだから。

しかし、着痩せしているのかは分からないが体は薄く。見えている手首は男の割に細く肌なんかは雪のように真っ白だ。とても強そうには思えない。涼し気な表情を浮かべ、にこやかに笑っている。

 

(不死者がいるってのに、隙だらけ…別段警戒している雰囲気も無い。今闇討ちでも食らったら簡単に死にそうだなァ)

 

思わずそんなことを考えていたのが伝わったのだろう。日向(ひなた)は苦笑いを浮かべる。

 

「……信じてませんね。まぁそれも無理ないですよね

6年前の大会でしか飛鳥さんは僕の戦闘を見たことがありませんし。

しかもあの大会、(よい)が初っ端特攻を決めたせいでほぼ僕等出番なかったですし」

「…」

 

日向(ひなた)の言葉にあの日の光景が蘇り、飛鳥は思わず顔を顰めた。

前回の…飛鳥が初めて参加した前大会では6対6のバトルロワイアル制であった。

残機として用意された風船が先に全部割れたチームが負け、という単純明快なゲーム

まず、経験値の少ない一年は圧倒的に不利で、三年が勝てるような、そんな温いゲームであった……筈だった。

 

 

”現殲滅隊最強とか言われてたから結構期待してたのに。ぜーんぜん強くないじゃん。拍子抜け”

 

 

気づけば飛鳥は地面に倒れていて、そんな飛鳥を下した善はつまらなさそうな表情で彼のことを見下ろしていた。

そんな光景を思い出す飛鳥に日向(ひなた)は「そんな顔しないでくださいよ」と苦笑いする。

 

「あれは、善が特殊過ぎただけですよ。だってあの子、入隊前は亜怜(あれん)さんに稽古みて貰ってましたから。新人というには余りにも強かった。

それに、狗星さんだって何度も善に一対一で勝ってるじゃないですか。あの子結構顔に出るんですぐわかるんですよね。微妙に悔しそうっていうか」

 

そういってクスクスと笑う日向(ひなた)

 

「……だからなんだ。俺が入隊2カ月の…それも高々12の餓鬼に負けたことに変わりねェわ」

 

飛鳥は無表情のまま吐き捨てると長刀を取り出した。

同時に、不死者が一体飛び出してくる。

それを視界に入れるより先に飛鳥は一歩踏み込み、足のバネを意識して飛びあがり長刀を振り下ろす。長刀は正確に不死者の目玉を切り捨てる。

能力を使う暇もなく地面に転げ落ちる不死者。そうして地面に着地すると同時に横に体を向ける。

そこにはまた別の不死者が水の塊のようなものを手のひらで発生させたのが見えた。

流石に不味く、一旦下がろうとしたところで銃声が響く。日向(ひなた)だった。

彼の撃った弾丸は一寸の狂いもなく不死者の眼球を貫く。

不死者の巨体が傾いたところで、飛鳥がもう一つの目玉を素早く抉る。それによりあっさり二体目も動かなくなった。

それを見届け、飛鳥は長刀の血脂を振り払うと呆れたように日向(ひなた)を振り返った。

 

「お前、やっぱ後衛支援じゃねェか。

普段一人でどうやって任務やってんだァ?…ああ、西は単独ほぼねェンだったか?」

「いえ、隊長や副隊長は基本一人ですよ。

今回は狗星さんがいたので支援に回っただけで、普段はちゃんと前衛に出てやってます」

 

にこやかな笑みを浮かべる日向(ひなた)

此奴本当に大丈夫か?なんて思いつつも飛鳥は更に奥に進む……と。

 

「あ?」

「なんか冷えますね」

 

突然辺りがひんやりと辺りが冷気を帯び始めた。

「さむ」と呟き腕をされば吐く息が僅かに白く濁る。

 

「……おい、流石に気付いてるよな」

「勿論」

 

明かに不死者の気配に飛鳥が振り向くことなく言えば日向(ひなた)は静かに肯定する。

そうして、その声と同時に飛鳥が足に力を籠め、不死者がいるであろう場所目掛けて飛び掛かり、長刀を振るう。そこにはやはり不死者がいた。

だがそれは、刃はひらりと躱す。

 

「躱してんじゃねぇぞ。くそ不死者がよォ」

 

飛鳥は長刀をふる。不死者の白い髪が舞う。空洞の顔面の中から、不死者の目玉がのぞく…そこ以外に目玉らしいものは見当たらない。

 

(目玉は一つだけ…っぽいな、ならさっさと殺しちまうか)

 

不死者の手から氷が生み出されるが、素早く手首を返し刃を水平に構え真横に薙ぐ。

それにより、氷の粒が空に舞いキラキラと落ちる。

だが、不死者は怯まず突撃しようとして来る。横から飛んできた銃弾がその目玉を捉える。

反応し、不死者は体を捻じったモノの、弾は目玉を掠めたのか直ぐに奥へと飛んで逃げる。

そのまま一転翻し、空中で氷を大量に出現させると、一斉放射…広範囲の攻撃

 

「落とし漏れは任せてください」

「舐めんなよ餓鬼が」

 

飛鳥は大きく長刀を振った。瞬間、暴風が吹き荒れる。

風から身を守るように手を翳して耳を澄ませば、両隣の木々がひしゃげ、崩れていく音がした。

まるで縦横無尽に跳弾する弾丸だ……そうして

 

「死ね、雑魚が」

 

目にもとまらぬ速度で飛鳥が長刀を持ち特攻。そのまま振りかざし振り下ろし……一閃

目を凝らし、土煙の奥を覗けば、遥か向こうの突き当たりで木にのめり込んだ不死者の姿。

その目玉には、深々と傷が出来上がっており、目玉からは血が噴き出している。そうして不死者はボロボロと地面に膝から崩れ落ちた。死んだのだろう。

 

「おみごと」

「余裕に決まってんだろォが……つかよ、テメェ……何のつもりだ?」

 

不死者は死んだ。それによりもう彼らの任務は終了した。

だが、飛鳥は静かに日向(ひなた)の方を振り返る。その表情は”無”だ。

そんな飛鳥の前……そこには少し離れた場所で”銃口を飛鳥に向けた”日向(ひなた)の姿があった。

その顔には未だ涼しい笑みを浮かべている。彼は飛鳥の言葉に笑みを深める。

 

「まぁ言いたいことは山ほどあるでしょうが…一先ず動かないで貰っていいですかね?」

 

眉一つ動かすことなく、飛鳥を見据えながら日向(ひなた)がそう告げる。

その様子に飛鳥は無表情のまま…だが口角だけを僅かに上げた。

 

「西は人に銃口を向ける文化でもあンのかァ?」

「いいえ。ないですよ」

「そうかよォ。ならこりゃ裏切り行為ってやつに当たるんじゃねェのか?

いいのかァ?ンなことして、あのクソ餓鬼が殺しに来ちまってもよォ」

 

裏切り行為を行えば、断罪部隊が動く。それを仄めかす飛鳥

だが日向(ひなた)の態度は依然として変わらない。

 

「そうでしょうね。いくら東の人間とはいえ殺すのはタブーです。

順当にいけば僕は善に殺される。

ですが罪というのはそもそも明るみに出なければ罪とならないんですよ。

そう考えれば、この状況は非常に都合がいい。なんせこれは任務ですから。

死人が出たっていくらでも言い訳が出来る…目撃者もいませんしね」

「成程なァ、人殺すにはうってつけっつーことか」

 

そこで飛鳥はニヤッと笑みを浮かべた。

そのまま長刀を掴み、その切っ先を日向(ひなた)の方へと向ける。

 

「テメェ自分の力を過信しすぎじゃねェか?この距離なら俺の方が早ェぞ」

「僕、射撃には自信があるんです」

「なら試してみるか?」

 

にやっと笑う飛鳥。それに対して日向(ひなた)もにやりとした笑みを返す。

 

「そうですね……でもそれは…”今”じゃない」

 

瞬間、日向(ひなた)が銃弾を発砲する。

それに飛鳥が反応し、銃弾を叩き切ろうとして

 

「!!」

 

瞬間、銃弾は飛鳥の顔の隣を抜け、何かにぶつかって弾けた。

 

「なっ」

 

小規模な爆発が背後で起きる。突然襲って来た熱量に驚きつつも今までの経験から脳内は冷静なのだろう。

何が起こったのか一瞬で理解した飛鳥は直ぐに木の裏へ身を隠す。

先程まで飛鳥が居た場所に小さな爆発と共に打ち込まれる銃弾

飛鳥は目を細め、同じく身を隠した日向(ひなた)を睨む。

 

「テメェ、どういう状況か説明しやがれ」

「貴方が言った通りですよ。任務にかこつけて僕等を殺そうとする存在……”裏切り者”がいるってだけです」

 

対して驚きもせず日向(ひなた)がいう。

飛鳥が僅かに身動ぎする。瞬間飛鳥の僅かにはみ出した肩を狙って銃弾が撃ち込まれる。

飛鳥はその精密すぎる射撃に驚愕し、日向(ひなた)をみる。

 

「どうするつもりだ」

「そうですね。初弾から凡そ予想はしていましたが、やはり相手は相当腕が立つ様ですし、下手に出ずに牽制することにしましょうか。

飛鳥さん、相手の場所”見えて”ますよね?相手と対局になる様に刃を調整することは可能ですか?

あと相手の場所、そこの木を12時として相手の場所を教えて下さい」

「あ?まぁ出来ねぇことはねぇが」

 

飛鳥はチラッと射撃の方向を見る。次の瞬間銃弾が撃ち込まれ、すぐに顔を引っ込める。

だが彼には今の一瞬で十分だったらしい。

 

「……2キロくらい離れてんぞ。あれ」

「構いませんよ。相手は音からしてスナイパーライフル

ライフル系統は改良の甲斐あってかかなり射程範囲が広い。

僕もライフル銃なので、距離はそこまで困りません。

まぁ威力は半減しますが…怪我をさせれば相手は引きます」

「ああ、そうかよ」

 

飛鳥は指示通りに刃を微調整する。

 

「できたぞ。場所は…一時と二時の大体ど真ん中だな」

「…なるほど、ありがとうございます……しっかり持っててくださいね」

「あ?」

 

瞬間、日向(ひなた)は飛鳥の長刀目掛けて銃を数発発砲する。

 

「!」

 

キンッという高い金属の音が二度木々の中を木霊する。そうして撃たれた銃弾は金属によって跳弾し

 

「……マジか」

 

真っすぐ銃弾は、発砲していた人物の元へ飛んだ。

一発目こそ躱していたが、二発目は、その躱した先すら想定していたのか見事に命中したらしい。

腕を痛めたのか片腕を抑えている。そのまま、その人物は武器を片付けるとさっさと立ち去って行った。

それを確認して飛鳥は木の陰から出てくるが、その目は完全に日向(ひなた)を見て引いていた。

 

「お前、どんな射撃センス持ってんだよ。一周回ってキモいぞ」

「善にも全く同じこと言われましたね」

「……」

 

善という言葉に目に見えて機嫌を悪くする飛鳥に、日向(ひなた)はクスクスと笑いを零しニヤッと笑う。

 

「だから言ったでしょう?射撃には自信があるって」

 

したり顔で笑う日向(ひなた)。そんな彼を見て「うぇ」と顔を顰める飛鳥だったが、そこで彼は一つ疑問が浮かべた。

 

「所でお前、なんであの距離で奇襲がすぐわかった?俺と違って視力は普通だろ」

「気配や視線には敏感なもので」

 

肩を竦める彼はニコッと笑みを浮かべる。

 

「でも狗星さんが動かないでくれて良かったです。勿論撃つ気はありませんでしたが、貴方が本気で切りかかってくれば、僕にはどうすることも出来ませんでしたから」

「ほんとかよ…撃つ気満々に見えたぞ」「信用ないなぁ」「お前みてぇなニヤニヤしてるやつ信用できねぇんだよ」「…」きょとりとする日向。やがて「目はいいのに視野は狭いんですね」といった。「あ??」

 

内心飛鳥は吐き捨てる。

飛鳥とて伊達に殲滅隊をしていない。裏切りが本気かどうか、ある程度人間の心理くらいは察しが付く。しかし飛鳥はあの時の日向(ひなた)の話を本気だと思った。何故か、理由は簡単だ。

 

(俺があそこで動いたら本気で撃つ気だっただろォが)

 

銃を向ける。あの瞬間の日向(ひなた)の目、あれは間違いなく本気であった。

だが、それを言ったところで、きっと襤褸(ぼろ)を出さないだろう。

それが目に見えているため、飛鳥は気づかなかった振りをする。

 

「あ、ところで、狗星さん…見えました?」

「……、顔は見えなかったが、ワッペンならギリな」

 

日向(ひなた)の問いかけに飛鳥はすぐに意味を理解し、いう。

不死者殲滅隊は西と東の違いを分ける為、ワッペンのデザインが少し違う。

黒色の生地に、金色で太陽のようなマークが描かれているのだが、そのワッペンの違いは、中央に描かれた武器の違いだ。

東は銃。西は刀が描かれている。

だが、色味まで一緒なので、普通遠目でそんな物、分かる訳がない…そう、飛鳥以外は

 

「ありゃ……東のだった」

「…やっぱりそうですか」

 

飛鳥の目に映った姿。酷くボンヤリとしていたが、あれは間違いなく東のワッペンであった。

顔に関してはフードを被っていたせいで見えなかったが、ワッペンだけは間違いない。

飛鳥の言葉が大方予想通りだったのだろう。日向(ひなた)は静かに目を細める。

 

「一先ず、この話はあのクソ餓鬼にいっとけよ。こっちも、科学の連中に報告しとく」

「わかりました。何か分かれば僕にも共有してくださると嬉しいです。もうそっちだけの問題ではないので」

「…ボスが許可だすかどうかは知らねェぞ」

「いいえ、きっと許可は出しますよ」

「あ?」

「では」

 

言い分に疑問を持った飛鳥。だがそんな彼に背を向け「では」とその場を一人立ち去る日向(ひなた)

その後ろ姿を見て、飛鳥は顔を顰めた後、さっさと一人拠点へと戻って行った。




絶対飛鳥くんって日向君みたいなタイプ苦手そうですよね。
そこが見えないっていうか、本心が見えにくいタイプは苦手そうです。
ただ作者はこういう関係が好きです。
割と単純そうな人と、逆に色々考えるタイプが会話してるのを見るのが好きです。
良い組み合わせ。よきよき。
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