夜の帷が消えるまで   作:発狂する雑草

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今回の話はちょこっと長めだぞ!


第二項

「遠征ですカ?」

 

言葉を聞いて目を丸くする蓮に善は肯定する様に頷く。

 

「そうそう、この間浅葱さんから連絡が来てさ、急遽決定したんだけどね。

東と協定して指折りの隊員連れてZ地区に情報収集等々をするために向かうことになったわけ

で、その遠征組に君等が選ばれたんだよね。

一般隊員にお知らせするのはもうちょっと先だから、君ら喋ったらだめだよ」

「まぁ大丈夫だとは思うっすけど。一応これ、機密っすから」

 

會の言葉に、知らされた川上蓮(かわかみれん)出雲朔(いずもさく)は頷いた。

 

「とはいえ、俺ぶっちゃけ不死者相手にしたくないんすけどね。アイツ等きもいっスし」

「ぐちゃぐちゃですもんね」

「夢に出た日には悪夢決定ダよネ」

「ホント死体とか不死者が好きだっていう楓さんの気持ちが分からないっス」

「なら魅力を語って差し上げましょうか?」

 

會、蓮、朔がそれぞれ不死者の見た目に関して話していれば、突然そんな声が響く。

その声に會と蓮、朔は肩をビクッと跳ねさせた。

振り返れば、扉が開いておりそこから「どうも」と相変わらず目の下にくっきりと隈を作った来栖(くるす)(かえで)の姿があった。

彼の姿を見て會は顔を引き攣らせる。そんな彼を見て楓はコテりと首を傾げた。

 

「それにしても可笑しいですね、垣本君。前に語った時は興味を持ってくださっていたのに…あれは嘘だったんですか?」

「え、あ、いやぁ…あはは」

 

顔をヒクつかせる會

 

「まぁ、それに関してはオイオイ聞くとして」

「え”」

「遠征のメンバーですが、先ほど連絡があり東と西に新たにメンバーを増員する話が決定したらしいです」

 

そう言ってくる楓

 

「ああ、やっぱり?前に情報回ってきたとき人数少ないなって思ってたんだよね」

「ということで、大幅な増員として開発部隊から数名の隊員と支援からは亜怜さんを含めた数名の隊員が増員されることとなりました」

「あれ、戦闘からは来ないんだ?」

「ええ。東は狗星くんを中心に戦闘の人間を大量に導入するようですが、此方はあくまで資料を手に入れることが目的ですから。勿論出来る事なら不死者の死骸や生け捕りも狙ってはいますがね」

「隊長格は俺と亜怜さんだけなんすか?」

 

會が首を傾げ乍ら聞けば、楓は少し思い出す様な動作をした後、一つ頷く。

 

「一応その予定ですね。本部が襲撃されることは……まぁまずないでしょうが、もしもの時の為にも私や日向(ひゅうが)くん、充幸くんは本部待機

本来善くんは本部待機の予定だったんですが変更で日向(ひなた)くんと同じく、もしもの時の為Z地区からもここからも近い地区での任務が入る予定になりましたね」

「うぇ、それ本来日向(ひゅうが)の役だったのに…」

 

本来本部に待機できるはずだった善は楓の報告に顔を歪める。

そんな善を見て朔はケラケラと笑う。

 

「本当に日向(ひなた)と善さんは大変ですね。面倒な役押し付けられて」

「まぁ、幸村くんは優秀ですからね」

「楓くん?一人忘れてるよ?」

「いやアンタは日向(ひなた)君と違ってそれしかとりえないっすよ」

「善さんは書類仕事できナいし人望もナイけど強いカラ、大丈夫」

「蓮くん、君のそれは褒めてるの?貶してるの?」

 

笑顔で聞く善に蓮はスーッと眼を逸らした。

まぁ彼は顔に雑面をつけているので逸らされたのは雑面に描かれた顔なのだが。

 

「まぁそういうことなのであまりプレッシャーを感じないでいいですよ。二週間の準備期間があります。その間に色々準備しておいてください」

「わかりました」

「了解っす」

「ハイ」

「さ、ということで、垣本君はこっちにきてください」

「へ?」

 

がしっと楓は會の肩を掴む。掴まれた會はサッと顔色を真っ青にした。

逃げようとするが楓からは逃がさないとでも言いたげにがっつりと肩を掴まれていて逃げられそうにない。

 

「君が正しく理解するまで、私が根気強く死体の魅力を語ってあげますので。ああ、ただ話すだけというのは時間がもったいないので勿論研究をしながらですが」

「い、いやぁ、あの…邪魔したら悪いっすし」

「邪魔だなんて思っていませんよ。私自身自分の趣味があまり良い物でないことくらいは承知していますが、やはり趣味を語れる人間がいると言うことは良いことなので、私としては願ってもみないので、ね?」

 

そのままするりと會の腕を掴む。

 

「え、あ、あのっ、ちょっ、俺このあと用事が!って、まって力強っ!?」

 

そうしてズルズルと引きずられるようにして會は廊下へ引っ張り出されて行った。

それをみて、蓮はパンッと手を叩き、何処からともなく木魚を持ってくる朔

 

「南無」

「會のことは忘れる迄忘れません…!!」

「いや、會君生きてるから」

 

思わず善がツッコミを入れる。

 

「にしても、まさかこんな話が僕等に回って来るとは思って無かっタデス。僕等、入隊して日も浅イし」

「入隊歴っていうより、どっちかといえば連携とかに重きを置いたんじゃない?」

「やっぱりそうなんですか?」

「どういうコト…?」

「さっき楓くんも言ってたでしょ。今回西の狙いとしては資料の奪取

それに重きを置くなら実力もそこそこで連携も強くて、かつ普段からそういう仕事やってる断罪がってことで白羽の矢が立ったんでしょ」

「なるほド。まぁ、何はともあレ、選ばれたかラニは頑張りマス」

 

蓮は意気込みを持って頷いた。

と、そこで彼は首を傾げる。

 

「所デ、叶恋(かこ)は?」

 

現在断罪部隊室には朔、蓮、善、さっきまで會もいたが、最後の一人である松田(まつだ)叶恋(かこ)の姿だけが見えないのだ。

 

「まだ任務なんじゃないですかね?」

「いや、さっき任務終わったってリングに連絡入ってたからそれはないと思うけど…」

 

三人は未だに戻ってこない叶恋に首をかしげるのだった。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「あ、あの本当に助かりましたぁ!ありがとうございましたぁ!」

 

同時刻

頭を下げる叶恋。そしてそれを「別に構わないよ」と微笑む日向(ひなた)の姿が、殲滅隊基地内では見られた。

 

「本当に…日向(ひなた)隊長が居なかったらヤバかったですぅ……叶恋ちゃん死んでたかもぉ…命の恩人ですぅ!」

「大袈裟だよ。それより怪我はない?」

「ないですぅ!!」

「ならよかった」

 

ニコッと再び微笑まれ「はわ」と叶恋の口から言葉が漏れる。

その顔を見ながら叶恋は「あのあの!」と声を上げる。

 

「お礼、お礼させてください!」

「え、いや別にそんなのいいよ。当然のことをしたまでだしね」

「いえいえ!本当に助かったのでぇ!」

 

食い下がる叶恋に日向(ひなた)はきょとんとする。その様子に叶恋は「ハッ!」とした顔をし、今度はオロオロと目を右往左往させる。

 

「ごめんなさい!もしかして用事とか、ありましたかぁ…?」

 

途端に塩らしくなる叶恋の様子が面白かったのは日向(ひなた)はクスクスと笑いを零すと「大丈夫、用事はないよ」と笑う。

 

「それならお茶に付き合ってもらおうかな」

「ぜひ!」

 

日向(ひなた)に言われ、コクコクと頷く叶恋。彼女は隣を歩きつつ日向(ひなた)を見る。

 

(こんな近くで見たの何気に初めてかもぉ…!練習じゃ全然話せなかったしぃ

普段も部隊違うから全然合わないしぃ……にしても、やっぱりカッコイイなぁ日向(ひなた)隊長…日向(ひゅうが)副隊長も双子なだけあってかっこいいけどぉ、なんかとげとげしくて怖いしぃ。

でも日向(ひなた)隊長は口調も相まって本当に王子様みたいなんだよねぇ)

「どうかした?」

「あ、いえ!!なんでもないですぅ!!」

 

顔をわずかに赤くしてブンブンと首を横に振って否定する叶恋。その様子が面白いのか日向(ひなた)が小さく笑った。

そうして食堂に到着すれば日向(ひなた)は「席取っておいてくれるかな?」という。

 

「え、でも席ガラガラで…とる必要なんか」

 

なんて言っているが日向(ひなた)は叶恋を置いて直ぐに食事を作っている支援部隊の人たちに声をかける。

声を掛けられた叔母さんは嬉しそうな顔をして「あら日向(ひなた)ちゃんじゃない!相変わらずかっこいいわねぇ」なんてデレデレしながら紅茶のオーダーを受けている。叶恋は適当な席に座る。

 

日向(ひなた)隊長、隊員から人気高いのは知ってたけどぉ、おばちゃんたちも虜にしてるとは…しかも対応の仕方が慣れてるぅ!)

 

日向(ひなた)は「ありがとうございます」と照れる事無く笑顔を振り撒いている。

その光景をボケ―っと見ていれば、目の前に紅茶が置かれる、ついでにケーキも置かれる。

日向(ひなた)のケーキはチョコケーキ、叶恋のケーキは苺のショートケーキだ。

 

「えっ、ケーキ!?こ、これ有料じゃっ!ごめんなさい!お金払います!」

「ああ、いいよいいよ。叔母さん達がサービスだってくれたものだから。いい人たちだよね。本当に」

 

今まで叶恋はそんな経験をしたことがない為わからなかったが、日向(ひなた)ならそういうサービスを受けることもあるのかもしれない、と叶恋は考え直す。

 

「そ、そうなんですかぁ…?でも叶恋ちゃんまで貰ってよかったんですかねぇ」

「いいんじゃないかな?君の分も渡されたし」

「そうですかぁ…なら、いただきます!」

 

手をそっと合わせて苺の乗ったショートケーキを食べる。

一口食べた瞬間叶恋の瞳がキラキラと輝き、頬が紅潮する。

 

「んー、おいしいぃ!」

「ならよかった」

 

頬を抑えて喜ぶ叶恋を見て、笑みを浮かべる日向(ひなた)。ふとそこで叶恋はじっとケーキを見る。

 

「どうかした?」

「あ、いえ…本物はもっとおいしかったのかなって」

「ほんもの?」

 

首を傾げる日向(ひなた)だが、数秒して叶恋の言葉の真意に気づいたのか「ああ、そういう」と納得したように頷く。

 

「僕等はアーティシャルフード(これ)しか食べたこと無いから、本来のショートケーキの味とか考えたことも無かったなぁ」

「あはは、ですよね。でも叶恋ちゃん偶に思うんですぅ。これは本来偽物で、科学の力で限りなく近しい物を作った食べ物……なら、本来の食べ物ってこれよりもっとおいしいのかなぁって。

そうだとしたら、どんな味がするんだろうって……あ、でもお肉はアーティシャルフードのほうがいいです!ほら、本物のお肉って生き物を殺して、その…皮とか臓器とかとって作るらしいですしぃ…」

 

僅かに顔を引き攣らせる叶恋

アーティシャルフードしか食べたことがない叶恋にとって生き物を殺して食べる、という文化が恐ろしく感じてしまうのだろう。

それに同意するように日向(ひなた)は苦笑いを浮かべる。

 

「ああ、そうらしいね。僕等からしたら想像がつかなくてちょっとゾッとする話だけど、昔の人はそれが当たり前だったっていうんだから驚きだよ」

「初めて本で読んだ時は思わず二度見しちゃいましたぁ…」

 

頬を掻きながら叶恋が言う。そんな様子を見て「わかるなぁ」と頷きながら、日向(ひなた)もまた紅茶を飲む。

紅茶を飲む姿すら絵になって、叶恋は思わずぼーっとその様子に見入る。

 

「それにしても、こうやってちゃんと二人で話したのも初めてだね」

 

日向(ひなた)が口を開く。その言葉にハッとした叶恋はワンテンポ返答に送れながらも「そ、そうですね!」と頷いた。

 

「あんまり喋ってる所見たこと無かったから、喋るの好きじゃないのかなって思ってた」

「そんなことないですよぉ!叶恋ちゃん喋るのすごく好きですもん!」

「どうやらそうみたいだね?」

 

クスクスと再び笑う日向(ひなた)に、叶恋は何だか恥ずかしくなって頬を染めながら表情を隠すように紅茶を飲む。

 

「顔紅くしてどうかしたの?」

 

すこし意地悪く笑う姿に叶恋はむすっとした顔をする。

 

「…日向(ひなた)隊長は思ったより意地悪ですぅ」

「そうだよ。しらなかった?」

 

ニっと悪戯に成功した様な笑みを浮かべる日向(ひなた)に、叶恋は「顔が良いから何も言えない…っ」と内心叫ぶ。

 

「あ、そ、そうだ!報告書見て思ったんですけどヒナタ隊長とヒュウガ副隊長って名前の漢字同じなんですね!」

「ん?ああ、そうだよ。紛らわしいから下の名前は基本的にひらがなで描くことが多いんだけどね。大事な書類とかとなると漢字で書かざるを得なくてね」

「やっぱり兄弟と漢字同じだと不便ですよね?なのにどうして……あっ、すみません!余計なこと…」

「いいよ。もっともな疑問だしね。両親いわく僕らがずーっと二人一緒に仲良く、明るく笑って生きていけることを祈って敢えて同じ漢字にしたって言ってたかな。その願い通り兄弟仲はずっと良好だし。それに、昔は忘れ物とかした時、持ち物の名前が同じだったから教官の目をごまかしたりできたからいいこともあるよ」

「えっ、ヒナタ隊長でも忘れ物とかするの?!」

「あはは、買いかぶり過ぎだよ。僕も人間だから忘れ物の一つや2つするときはあるさ」

 

そういってヒナタはふふっと楽しそうに笑う。

思わずこぼれたような、年相応の笑みに叶恋はわずかに心臓が跳ねるのがわかった。

 

「そ、そうなんですね…あ、もしかしてそういうのも見越して、ご両親はお名前つけたんですかね?」

「そうかも」

 

ティーカップをソーサーに乗せ立ち上がる。

 

「さて、と、そろそろ行こうかな」

「あ、叶恋ちゃんも食べ終わったのでぇ!」

 

いうと叶恋もまた、お皿を持った。そうしてカウンターに持っていく。

 

「あの、紅茶美味しかったですぅ!」

「あらそれはよかったわ」

「それと、ケーキ

叶恋ちゃんまでオマケしてもらっちゃって…ホントにありがとうございましたぁ!」

 

笑顔で叶恋が言えば、おばちゃんは「あら?」と首を傾げ…そしてニマァと笑うと「ふふ、お礼を言う相手を間違ってるわよぉ」と笑みを浮かべる。

 

「え?」

「そのケーキは日向(ひなた)ちゃんが注文したものだからねぇ」

「え」

「ちょっ、それ言わないでくださいよ」

「あらあらごめんなさいねぇ」

 

確実に確信犯であろうおばちゃんは「若いっていいわねぇ」と二ヤツきながら皿を持って奥へと引っ込んでいく。

叶恋がそっと日向(ひなた)に目をやれば、日向(ひなた)は「絶対あれわざとでしょ…全く」と困ったように頬をひっかいていた。

 

「あ、あのケーキ、態々?」

「ケーキ好きだって聞いてね。君に付き合ってもらう訳だしさ」

「で、でもこれは私のお礼なのにぃ…全然お礼できてないですよぉ」

「話し相手になってくれただけで十分。それにほら、最近頑張ってるって聞いてるしね」

 

日向(ひなた)はポンポンっと叶恋の頭を撫でる。

 

「!!」

「頑張ってる後輩に先輩からのご褒美。まぁだから、そんな顔しないで素直に受け取ってよ」

 

僅かに日向(ひなた)がしゃがんだことで顔の距離が近づく。

その笑みに叶恋は顔を真っ赤にして「あ、りがとうございますっ」というと「どういたしまして」と笑みを浮かべて離れていく。

 

「今日は話せてよかったよ」

 

それだけいって日向(ひなた)颯爽(さっそう)とその場を去っていく。

 

「やっぱリアル王子だぁ……」

 

一人残った叶恋は首まで真っ赤にさせてそう呟いた。




叶恋と日向の会話
なんかこういう展開少女漫画にありそうだな…なんて思いながら書いてました。
雑草、少女漫画好きなんですけど一個言いたいことがあるんですよ。
よく「君に恋なんてしない」とか「アンタなんて嫌い!」みたいなタイトルの少女漫画って見掛けるじゃないですか。
でもそういう漫画って必ず一巻の最後で恋に落ちてるんですよね。
まぁ大人の御都合なんでしょうけど、毎度ツッコミを入れてしまうという…まぁ面白いんでいいんですけどねっ!

最近は究極のヤンデレとメンヘラを掛け合わせた殺し屋の男と心臓の弱い良家のお嬢様の漫画にハマっています(わかる人はわかるやつ)
愛の重い子っていいですよねぇ!!!!っていつも発狂している雑草です。
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