夜の帷が消えるまで   作:発狂する雑草

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この話を書いている現在時刻は夜の7時なのですが、めっちゃお腹空いたな、って思いながら書いています。
うーん、はらへったー!!因みに本日の晩御飯はオムライス。うまうま


第三項

「おーーーーい!飛鳥ぁぁぁぁ!」

 

廊下を歩いていた飛鳥

そんな彼の背中にドンッと勢いよく衝撃が走った。

衝撃を受けた飛鳥は苛立ったように振り返れば、そこにはニコニコ笑顔を浮かべた綾瀬和真(あやせかずま)の姿があった。

そしてその横にはうんざりとした様な表情の早緑茉莉(さみどりまつり)の姿があった。

その表情から面倒ごとの予感を察知したのだろう。飛鳥は顔を顰める。

 

「……何の用だよテメェ等」

 

そう聞けば和真はパッと顔を明るくさせ、満面の笑みで言った。

 

「遠征に備えて一緒に訓練しようぜ!」

「はぁ?」

 

”一緒”と”訓練”という言葉に呆れかえる飛鳥

ニコニコと笑う和真。反対に引っ張られてきたらしい茉莉はうんざりとした表情を浮かべる。

 

「ほら、彼も乗り気でないでしょう。

僕も乗り気ではないので、この汚い手を放していただいてよろしいでしょうか」

「ええ、ノリ悪いぜ二人共!!てよ!やっぱZ地区に挑むならある程度の連携はいると思うんだ!

俺らも、しゅばばばばー!がちゃーん!!みたいなことやりてぇじゃん!」

「人語を喋れよ」

「西の奴らがやってただろ!カキンカキン!シュシュシュッドーン!ってやつ!連携したらああいうの出来そうじゃん!!」

 

そういって身振り手振りをしながら説明する和真

だが擬音が多すぎて全く分からない。頭が痛いと言いたげに茉莉と飛鳥は頭を押さえるが、和真はそれすら気づかない様子で喋り続ける。

 

「それに連携は大事だって何回も言ってんだろ!!なら、訓練はしとくべきじゃん!!てことでやろうぜ!!!」

「…馬鹿の癖に意見しないでくれます?」

「バカ!?」

 

ジトッとした目で和真を睨む茉莉。飛鳥は少し考え

 

「……ちょっとだけなら付き合ってやるよ」

「本気で言ってます?」

 

乗り気でない茉莉と違い、飛鳥は反対に少し乗り気のような姿勢を見せる。

 

「今までの任務地なら問題なくとも今回の遠征先は場所が場所だ。

今は夜縁が現れてる。なら共闘は出来た方が良いのは…まァ間違ってねェ」

 

ふいっと顔を背けて言う飛鳥

 

「さっすが飛鳥!わかってんな!!」

「一々うるせェんだよ。テメェは」

「じゃ、早速訓練場にレッツゴー!」

「引っ張らないでくれますか?」

 

そのまま二人を引っ張っていく和真。そうして三人は仲良く訓練場に足を踏み込んでいった。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「楽しかったな!!」

「楽しかねェよ…そもそも連携云々どうなったンだよ…」

「悪ィ!やっぱ性に合わんかった!」

 

そうへらっと笑う和真の足を飛鳥はゲシッと蹴った。

 

「最悪です。汗なんてかきたくなかったのに……」

「戦闘部隊に所属しておきながらそれは無理だろうが」

 

呆れたように薄い汗を拭いながらいう飛鳥の言葉を無視する茉莉……と

そこで和真はくるっと茉莉を見る。その目は興味津々と言いたげに輝いている。

 

「ところでさ、俺茉莉に聞きたいことがあるんだけどさ!」

「なんでしょう」

「なんで兄弟の事嫌いなん?」

「はい?」

 

突然飛んできた質問にポカンッとする茉莉

 

「何故突然そんなこと……」

「いやさ、大会の時にあのちびっ子と話してただろ?それからずっと気になっててさ!」

「いや、貴方あそこにいたんですか?確か氷雨誠を追ってたはずでは……ああ、いえ、そういえば貴方地獄耳でしたっけ」

「そういうこと!後半の方聞こえなくて気になってたんだよ!で、なんでー?」

「……貴方デリカシーないって言われません?」

「なんで分ったんだ!?まさかテレパシーをっ」

「違いますよ、馬鹿ですか?ああ、馬鹿でしたね、貴方は」

「ひっど!!」

 

ぎゃんっと吠える和真、飛鳥は何も言わずただ水を飲んでる。

 

「でも俺気になるんだから仕方なくね!?俺の家、皆すげぇ仲良しなんだぜ!」

 

そういって楽しそうに機器を取り出す和真

それはリングとはまた別の通信機器であり、その画面には和真の両親であろう男女に抱きしめられて笑っている和真の姿があった。

幼少期の写真なのか少し髪の長い幼い和真の姿が映っている。

その写真から茉莉は興味なさそうに目を逸らす。

 

「ああ、そうですか。僕には理解できない世界ですね。なんせ僕、家族を全員売っぱらったので」

「え"」

 

茉莉の言葉に固まる和真。隣で聞いていた飛鳥もこればかりは驚いたのか目を見開いた。

 

「え?売るってなんでだ!?もしかして嫌いだったからか!?」

「それもありますが…僕の家、元々人身売買を行っていまして」

「お、おお…」

「人身売買は犯罪ですが中々捕まえることができないじゃないですか」

 

一見証拠が多く残りそうな人身売買

だが現在の人身売買は姑息な手を利用することで証拠を減らしているのだ。

それを知っている飛鳥は顔を顰める。

 

「あァ、最近は養子に迎える、送りだすっつーのを建前にしてっからなァ…金銭のやり取りは口頭ですることで証拠を減らす」

「そうです。被害者が告発すれば早いんですが、売られるということは居場所がないことを表します。

被害者は大半が子供。告発してしまえば路頭に迷いかねないのでやめてしまう場合が多い。

最も心を折られて助けを求めること事態、考えに入れられない人もいますがね」

「人身売買ってえぐ!!」

 

驚いたように目を丸くする和真

今までそういう世界に触れたことがない和真にとってその話題は驚くものだった。

 

「殲滅隊の仕事は大半が不死者に関係することですが、一応治安維持も仕事のうちですからね。

捕まえにくい人身売買の大本を絶ったとなれば大きな功績を得られる事が多いんです。

なので、殲滅体に入ってすぐに両親を売りました」

「ああ、売るってそういう…」

 

つまり人身売買を行ったという訳ではなく、殲滅隊に告発した、ということなのだろう。

茉莉は僅かに笑みを浮かべる。

 

「ええ、とてもいい功績に変わりましたよ。

因みに親が溜め込んでいた金もしっかり回収したので僕の懐は暖かい」

 

にこっと微笑む茉莉に対して飛鳥は「こいつこわ」なんて思う。だが和真だけは彼の顔を見つめ、こてんと首を傾げた。

 

「なんでしょう?」

「いや、お前の両親のこととかはわかったんだけど…肝心の兄弟の話聞けてないなぁって」

「はい?」

 

和真は体を揺らす。

 

「俺が聞きたいのはなんで兄弟を嫌ってんのかだって!

いや、嫌うこと自体を否定してるわけじゃなくて…なんていうの?お前の嫌うってなんかちょっと違うっぽいじゃん?こう、ドロドロォっとした感じじゃなくて、ギシギシージクジクーって感じでさ。

なんか理由がある感じっていうの?だからそれが知りたいなって!」

「……無神経ですね、貴方本当に」

 

茉莉は溜息を吐く。

 

「僕と充幸は父親違いの兄妹なんです。それも、充幸は不倫で出来た、ね」

「!」

「相手は僕の父の弟である叔父さんでしてね。ですが父は母も、叔父さんも憎むことが出来なかったらしく、代わりに彼らの間に生まれた充幸を目の敵にしました。

まぁ当然ですよね。愛した女の罪の生き証人、それも情がある母や叔父さんとは違い父からすればただの他人。だから昔から疎まれてましたよ」

「ふーん、それで?」

「はい?」

「だから続きだよ続き!それは茉莉の父親がその、充幸?ってやつを嫌う理由だろ?俺が知りたいのは茉莉が嫌う理由!」

「……」

 

和真の言葉に、茉莉は無言になる。

やや間を空けて、重々しそうに口を開く。

 

「親が嫌うから僕も嫌う。それだけですよ」

「うっそだぁ、茉莉は絶対そういうタイプじゃないって」

「貴方が僕の何を知ってるんですか」

「知らない!」

「……僕をおちょくってます?」

「ううん、でも図星だろ?」

「はぁ?」

 

要領を得ないとばかりに顔を顰める茉莉に、和真はケラケラ笑いながら茉莉を見る。

 

「だって呼吸の音かわったもん」

「!」

「さっきはハーハーって感じだったのに今度はひゅーひゅーってさ。

嫌いだ嫌いだって言ってるわりに本気で嫌悪してる風に見えないし…あ、わかった!お前、ホントは仲よくしたかったんじゃないのか!?

もしそうならさ!会いに行けよっ!!場所分かってんだろ?あっ、一人が怖いなら俺も一緒に___」

「余計なお世話ですよ」

 

差し出された手。それを茉莉は冷たい声と共に払い落とした。

ぱちんっという乾いた音が響くなか、茉莉はタオルを掴むとそのまま訓練場を立ち去っていく。

残された和真は首を傾げる。

 

「あれ?なんかプンプンってなったけど…もしかして怒ったのか?なんで??」

 

本気でわかっていない様子の和真に半分空気になりかけていた飛鳥はため息を吐く。

 

「お前、空気くらい読めよ」

「へ?空気は吸うもんだろ?」

 

思わず返されたその言葉に飛鳥は呆れたように溜息を吐くのだった。

 

 

 

 

 

 

___本当は仲よくしたかったんじゃないのか?

 

 

「……出鱈目なこといいやがって」

 

一人、訓練室を出てきた茉莉は顔を顰め、速足で廊下を歩く。

彼の口調は普段と違って荒っぽく、ギリっと奥歯を嚙み締め、荒々しく自室の扉を開け、閉じる。

ガンっという音が鳴るのも気にせず茉莉は上着を床に投げ捨てると、皺が寄ることも気にせずシャツの状態でベッドに寝転んだ。

 

彼は忌々しそうに顔を顰め、目を瞑る。

 

瞼の裏に見える光景

自身の頭をなでる大人。大量に渡されたプレゼントたち。小さいころはよく花冠を作っていた。

何故か。それを渡すと嬉しそうにする少女がいたからだ。

その日も彼は花冠を作って少女の元へ向かった。

だが少女はどこにもいなかった。

個室でお金を数えて笑う男女。弱りはて地面に倒れ…一定期間が過ぎれば消えていく子供、増えるプレゼントの数

こちらを見て、笑みを浮かべる大人

これが自身の家の現状。これがこの世界の普通。綺麗なものなんてどこにもない。

 

 

____ああ、これが

 

 

地面に落ちた花冠を踏みつけた。

 

 

 

「この世界に必要な物なんて金以外ない。

金があれば、なんでも手に入る。それこそ命すら買える」

 

 

それが幼い子供が気づいてしまった現実だった。

 

 

 

「……くだらな」

 

 

ぼろっと茉莉は小さく、低く呟いた。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「昨日は取り乱してしまってすみません」

 

翌日、ケロッとした表情で茉莉が現れた。見れば茉莉は今日も和真に捕まったらしい。

それをみて和真の精神面の強さに飛鳥は一周回って感心する。

そんな飛鳥の心情など露知らず、和真はぺかーッとした笑みを浮かべる。

 

「飛鳥!今日も訓練付き合ってくれよ!」

「昨日だけっつっただろ…つかテメェ、連携だなんだって言いながら結局ただの戦闘訓練だったじゃねェか」

「いいじゃん!いいじゃん!それに準備期間、任務は極端に少なくなるし、どうせ暇だろ!な!な!」

 

ズイと顔を近づけてくる和真。その顔を片手で掴んで離す。

 

「昨日は僕が折れたんです。貴方も折れるべきだ」

 

昨日は嫌がっていた茉莉が、今日は乗り気なようで、飛鳥に言ってくる。

その様子に飛鳥は眉根を寄せる。

 

「お前、いいのかよ」

「なにがでしょう」

「此奴とやるの」

「別に構いませんが?」

 

薄く笑みを浮かべる茉莉

 

「いつまでも感情を引き攣るのは二流のやることですから。直ぐに切り替えることこそプロというものでしょう?」

「そうかよ…」

「んじゃ決まり!いくぞー!!!」

 

ケッと顔を顰め、飛鳥もまた和真に引っ張られ、今日また訓練場について行った。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 

 

 

 

「所で貴方、昔は髪長かったらしいですね」

「なんでそれ知ってんだ」

「情報を漁ったらすぐに出ましたよ」

 

訓練終了後。昨日同様汗をぬぐった彼らは、パタパタと手で顔を仰ぎながらそんな話をふる茉莉

 

「え、飛鳥髪長かったのか!?どれくらい!?」

 

そしてそんな話題に和真が食いついてこないはずもなく、興味津々とばかりに聞いてくる。茉莉は思い出すように「そうですね」と呟くと。

 

「これくらい、ですかね」

 

腰よりした。太もも辺りに両手を置く

 

「え、めっちゃ長いじゃん!」

「高めの場所で一つくぐりにしてそれくらいだったので、下ろせばもっと長かったのでは?」

「……まァな」

 

どうでもよさそうな顔で返事を還す飛鳥

しかしそんな彼をおいて茉莉と和真は話を続ける。

 

「写真見ましたけど、かなり綺麗に伸ばしてましたね。あそこまで真っ直ぐに伸びてる方、そう見かけませんよ」

「へぇ、長かった時期があったんだな…でもならなんで切っちまったんだ?

髪って綺麗に伸ばすの大変なんだろ?枝毛とか、湿気とかでゴアゴアってなるって母ちゃんが良く言ってたし!」

「別に」

「……あ!もしかして失恋とかか!?昔からよく言うもんな!失恋したら切るって!」

「それはそれは…傷を抉ってしまいましたかね。すみません」

「ちげェよ…」

 

今までどうでもよさそうな態度しか取っていなかった飛鳥だが、流石に出鱈目を信じられるのは嫌だったのだろう。ぐっと眉根にシワを寄せ否定する。

やがて舌打ちをするとガシガシと首の後ろをひっかく。

 

「別にそう言うんじゃねェし。髪伸ばしてたのも深い意味はねぇよ」

「そうなんですか?あれだけ丁寧に伸ばしていたのに。時折物寂しそうに髪先を触っていらっしゃるのでてっきり…」

 

すると和真は「飛鳥はまた伸ばしたりしないのか?!」と聞く。

聞かれた飛鳥は「伸ばさねェよ、鬱陶しい」と一蹴する。そうしてすくっと立ち上がる。

 

「なんか無性に苛ついてきた。お前等、もう一戦付き合えよ」

 

二人を見下ろして言う飛鳥

そんな飛鳥に和真と茉莉は顔を合わせ、げんなりしながら飛鳥を見上げる。

 

「飛鳥、それを人は八つ当たりという」

「大人げないですよ。いくら苛立ったからって無関係の僕等に当たらないでください。迷惑です」

「うるせェ、いいから付き合え」

 

無表情のまま…いや、僅かに米神をぴくぴくとさせながら飛鳥は二人の首根っこを掴みあげると、そのまま訓練場にまた入っていくのだった。




今回は東サイドのお話
このメンバーの話をあまり掘り下げる機会が無いので、ここでどうにかこうにか掘り下げたい所存!!
飛鳥君たち三人は結構お気に入りなので絡ませることが出来て雑草は満足です(≧▽≦)
因みに余談ですが雑草は彼ら三人を「しりトリオ」と呼んでいたりします(笑)
あすか→かずま→まつり、ってね。適当に名前つけたんですけど、後から振り返ったらうまい具合にしりとりになっていたんですよねぇ、なんて奇跡
後から気づいて「よし、こいつ等しりトリオって呼ぶか(真顔)」ってなったんですよねぇ、ヘヘヘッ(●´ω`●)
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